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会場:San Jose McEnery Convention Center
■ PlayOnlineはクロス展開のための「ユニバーサルプラットフォーム」
Sundi氏は、まずスクウェア・エニックスの事業戦略であるポリモーフィックコンテンツを紹介した。同社のポリモーフィックコンテンツ戦略は、1つのコンテンツをハードウェア、メディア、文化等の垣根を越えて、様々なプラットフォームに展開していくことを特徴としているが、その代表格として「ファイナルファンタジー XI」を取り上げた。 「ファイナルファンタジー XI」は、たびたび紹介されているように、Windows、PS2、それから4月20日にサービスインするXbox 360という3つのプラットフォームで展開し、展開地域も日本、北米、欧州に広がっている。提供言語も日本語、英語に加え、今後ヨーロッパ方面の拡充のためドイツ語とフランス語にも対応が予定されている。また、パッチによるクライアントのアップデートも世界同時配信を実現し、カスタマーサポートも日欧米それぞれのエリアで個別に提供している。現状、世界でもっともリッチなサービス環境を備えているMMORPGといっていい。 Sundi氏は、MMORPGのオペレーションで重要なことは、「新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの満足度の維持」と述べ、そのために必要不可欠なのが、クロスプラットフォーム展開とクロスカルチャルサービスだとした。 クロスプラットフォーム展開のメリットは、なんといっても新規ユーザーの取り込みと、データセンターや回線使用料などのインフラコストの軽減にある。そのクロスプラットフォーム展開を支える重要な要素として紹介されたのが「PlayOnline」である。以前は、スクウェア・エニックスのオンラインゲームポータルというレベルの扱いだったが、Sundi氏は「ユニバーサルプラットフォーム」と再定義し、ユーザーと開発を繋ぐ架け橋として機能するだけでなく、「PlayOnline」によりクライアントのハードウェアに依存しないサービス環境が実現できているとした。 また、開発側にとっても「PlayOnline」APIを共有資産として利用できることは大きなメリットがあるとした。もっとも、「PlayOnline」に関しては、スクウェア・エニックス限定のプラットフォームであり、“GDC参加者”にとってのメリットはゼロに近い。ただ、ユーザーにとっては、「PlayOnline」コンテンツ間でフレンドリストを共用できるだけでなく、専用クライアントを使えばゲームをプレイしていなくてもコミュニケーションが可能な環境が無料で提供されているなど、大きなメリットがある。 次世代機の世代では、ハードウェアプラットフォーム側が「PlayOnline」と同等かそれ以上のコミュニティサービスを含む課金決済システムを持つことは確実であり、その場合の兼ね合いが今後の検討課題となってきそうだが、PlayOnlineがクロスプラットフォーム展開に重要な役割を果たしてきたことは間違いないといえそうだ。 続いてSundi氏は、クロスカルチャルサービスを紹介。同社のクロスカルチャルサービスは、単一のユニバーサルサーバーに全地域のユーザーが接続可能な状態のサービスを指している。また、単にサービスするだけでなく、ゲーム内翻訳システムやすべての地域での公平なサービスの確保を提供する必要があるだろうとした。ちなみに、同社のクロスカルチャルサービスの場合、ナローバンドでのサービスまでサポートしているが、これはPS2対応の名残であり、現在は様々な部分でゲームデザイン上のひずみが生じていることから、今後はブロードバンドが前提になってくるのではないだろうか。 クロスカルチャルサービスのメリットは、日欧米でのピークタイムのズレを活かしたサーバーの効率的な運営による全体のコストの削減と、オフタイム時のプレイでも他地域のユーザーがにぎわう中でプレイできる新たな冒険機会の創出にあるとした。 ちなみにクロスカルチャルサービスの導入に関して、ユーザーの反応は日本では否定的で、欧米では肯定的だという。この件に関しては、かつてAOGC2004の和田洋一代表取締役社長の講演でも指摘したことだが、日本の反応は基本的に先発側の既得権益の侵害の主張であり、手前勝手な部分もあるが、欧米側は後発側にもかかわらず一方的に強制されており、多分に同情の余地がある。
MMORPGには縦横に発展、成長する経済の要素がある以上、原則として新規市場の新規ユーザーに対しては新規世界を用意すべきであり、そうでなければ日本と同質のサービスを提供したことにはならない。既存ユーザーに新規ワールドに対するマイグレーションの機会を与えれば、クロスカルチャルサービスのポリシーも維持できるはずである。ワールドワイド規模のMMORPGだからこそ、ぜひ検討してほしい部分だ。
■ Sage Sundi流コミュニティマネジメントの要諦
Sundi氏は、会員数を維持する上で重要な施策となるコミュニティマネジメントについて、コア層からライト層まで下に行くほど人口が多くなる三角形の図を示し、実はその中にギルドやファンサイトなどを軸とした無数の小さいコミュニティの三角形があり、それぞれのコミュニティの頂点にいる人物がコミュニティ全体の方向性を左右しているというユニークな見解を示した。 つまり、コミュニティをマネジメントする上で重要になるのは、小コミュニティのトップに位置するリーダーの心を掴むべきであり、個々のコミュニティを意識した対策が必要になるという考え方である。そのための施策としてSundi氏は、コミュニティサイトへの接触、インゲームイベントの実施、開発とユーザーのコミュニケーションチャネルの創出などを挙げた。 Sundi氏は、コミュニケーションチャネルの創出のサンプルとして、今年3月に実施されたオフラインイベント「ファンフェスティバル2006」を映像で紹介。2日間に渡って実施された大規模なイベントであり、既報のように「アトルガンの秘宝」のサプライズを開発チーム自らすべて放出するなど、大盤振る舞いのイベントとなった。Sundi氏も企画段階から携わってきたこともあり、「大成功に終わりました」と自信を覗かせた。 こうしたオフラインイベントに関しては、日本での開催については消極的とのことで、Sundi氏はその理由として欧米ではオフラインイベントそのものが非常にポピュラーな存在として認知され、コスプレやディスカッションなど参加者が自分で楽しみを探すのに対し、日本ではそれらがまだ未成熟なためだという。 確かに映像を見ていると、全身竜騎士のアーティファクトに身を包んだ女性コスプレイヤーが元気にはしゃいでいたり、「アトルガンの秘宝」で追加される新ジョブコルセアのコスプレが早くも登場していたりなど、ユーザーが主体となって楽しんでいる。日本にもそうしたユーザーもいるはずだが、日本ではまた別の有効なプロモーションのやり方があるということだろうか。 最後にSundi氏は、欧米向けのNOC(Network Operation Center)の新設と、今後の展開について報告。欧米向けのNOCはこれまでSony Online Entertainmentに業務委託していたが、4月に新しく事務所を借り、すべて自前でコールセンターとGMサポートを行なうようになる。北米の拠点はロサンゼルス、ヨーロッパの拠点はロンドン。それぞれ数十名のスタッフを置き、これまでと変わらないサービスを行なっていくという。
今後の展開については、次期拡張ディスク「アトルガンの秘宝」と、Xbox360への展開。そして、現在水面下で開発が行なわれている次世代MMORPGを紹介。次世代MMORPGに関しては、残念ながら具体的な情報は何も提示されなかった。E3での続報の発表に期待したいところだ。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2006年3月24日) [Reported by 中村聖司]
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