|
会場:San Jose McEnery Convention Center
■ 全プラットフォームにカジュアルゲームを展開するMicrosoft Casual Games
Microsoft Casual Gamesは、母体となるWindowsプラットフォームの圧倒的な浸透力を背景に、ワールドワイドを対象に圧倒的な顧客数を擁している。MSN Messengerの利用者が1億8,000万人、1月あたりのMSN Messenger Gamesの利用者が1,600万人、最大同時接続者数が6万人。男女比率が4対6で、女性の利用率が高いのが特徴である。 ワールドワイドで同接6万人と言うと大したことがないように思えるかもしれないが、MSN Messengerはあくまでチャットツールであり、チャットによるコミュニケーションの延長線上にゲームがある。対戦相手はフレンドリストに登録済みの友人に限定されており、不特定多数を対照したマッチングは制限されている。そのことを考えればこの数字は凄い。 Microsoft Casual Gamesが定義するカジュアルゲームとは以下の通り。
・デジタルディストリビューション オンラインによる流通を大前提としているが、マルチプレイが可能かどうかは必須条件とはしていない。ビジネスモデルは広告やプロモーションによって収益を得る完全無料モデル(MSN Messenger Games)、もしくは時限式の体験版による製品版へのアップグレード課金(MSN Games)、そしてXbox Live! Arcadeでは「マイクロソフトポイント」と呼ばれる課金プラットフォームを利用して、少額課金によってコンテンツが提供されている。 さて、今回「Games on Instant Messenger: Tapping into 170 Million Interactive Users」と「Casual Games for all Platforms: What Works and Why?」の2つのセッションのスピーカーを担当したのは、Microsoft Casual GamesのBryan Trussel氏。Trussel氏は、セッションの冒頭で「電話を使って友人とオンラインプレイ」することを想定した一人芝居を行なった。長いURLや無意味な文字列を含む長ったらしい自分のハンドル、ゲームのインストール方法やアカウント登録を教えるのだが、なかなかうまくいかず、時間ばかりがかかるという内容。 しかし、これがMSN Messengerに直結したMSN Messenger Gamesなら、すべての問題がシームレスに解決されるという論が展開されていくことになるのだが、Trussel氏の主張は基本的に独立系のオンラインゲーム配信は「難しい」ということにあり、具体的な難しさとして、高価な開発費、ネットワーク部分のロジックの構築、レーテンシー、帯域の確保、チート、運営などをあげた。 これらの要件は確かにオンラインゲーム開発のリスクであることは事実だが、日本を含むアジア圏ではすでに数年前から乗り越えるべき課題として取り組まれているのに対して、北米では「Diablo」、「Ultima Online」を生み出し、世界最大規模のユーザーを擁する「World of Warcraft」を展開するオンラインゲーム大国の割に、未だぬぐいがたい認知の低さと、「それならばオフラインゲームでいい」という一種の甘えが伺える。 そしてここからがMicrosoftの凄さなのだが、Trussel氏は結論としてSDKや開発サポートなど、カジュアルゲームの開発に必要なあらゆる要素を提供するから「Microsoft Casual Games向けにゲームを開発しませんか?」と提案する。これは、日本でガンホーの堀誠一氏が構想する「ソフトウェアプラットフォーム」の具体的なアプローチのひとつであり、現在、MicrosoftではWindows Mobile 5.0を通じてPDAのゲームプラットフォーム化にも力を入れており、さらにMicrosoftが携帯ゲーム機をリリースするという話もある(余談だが、今年のGDCでもっともトレンディな話といっていい)。 コンテンツを提供した際のビジネスモデルの仕組みについては明かされなかったものの、MSN GamesやMSN Messenger Gamesでゲームを立ち上げてみるとわかるが、意外と外注タイトルが多いことがわかる。カジュアルゲームは比較的低予算、少人数でも開発しやすいため、今後はMicrosoft Casual Gamesからゲームデベロッパーとしてのキャリアをスタートさせるというシナリオも生まれてきそうだ。 Microsoft Casual Gamesにコンテンツを提供すれば、ポータルの運営や、ネットワークトラブルなどはすべてMicrosoftが代行してくれるわけで、特にオンラインゲーム開発、運営に不慣れなデベロッパーにとってはメリットが大きい。実際に開発キットのデモも行なわれたが、ピアツーピア方式を前提としたオンラインゲームの開発がしやすいように、2画面を同時に表示して、各画面のリアクションを確認できるエミュレーション機能などもあり、確かに開発しやすそうだった。 最後に紹介されたモバイルについては、画面サイズ、ソフトウェア、ハードウェア、インターフェイス、CPU、グラフィックスなどの違いを挙げ、基本的に異なるプラットフォームであることを紹介し、マルチプレイに関しては「さらにプリミティブである」と消極姿勢を維持。 ただし、端末の普及台数は順調に拡大傾向にあり、キャリアを通じた確実性の高い課金決済インフラが整っていること、モバイルゲームの利用者の増大といったポジティブなトレンドを紹介し、ゲームデベロッパーにとって好ましい状況が生まれつつあるという認識を示した。 Trussel氏が、モバイルプラットフォームについて、他のプラットフォームに比べやや他人行儀なのは、Microsoft Casual Gamesそのものがまだ実績を積み上げていないためで、今後のチャレンジとして新たなプロモーション機会の創出、ゲームプラットフォームとして定着化、コミュニティ機能の整備等を挙げ、モバイルゲーム市場への本格進出について意欲を示した。
Microsoft Casual Gamesは、ひとつのプラットフォームとして展開しているという点において、世界的に見てもユニークな位置づけにあるカジュアルゲームポータルといえる。日本での展開については今のところあまり積極的でないのが残念だが、コアゲーマーはもちろん、日頃あまりゲームを意識しないライト層に対しても強力にアピールできる機能を備えている。今後Microsoftが全社的に取り組めば、世界のカジュアルゲームポータル市場はおもしろいことになるかもしれない。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2006年3月23日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|