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会場:日本教育会館
Wong氏のその姿勢には、自作の技術に対する強い自信がうかがえた。本稿ではその技術によって生み出された「完美世界」の独自性と、中国でのゲーム開発に関してWong氏の見解を紹介したい。
■ 世界の描写とユーザーのインタラクティブ性にこだわる「完美世界」 サービスイン2カ月目で同時接続7万人のユーザーを擁する「完美世界」。世界観の基本は中国でなじみの深い「武侠もの」となっていて、プレーヤーは、太古から脈々と続く「完璧な世界」に外部から崩壊の危機が迫るという状況に、武術の達人としてに立ち向かっていく。Golden Humanはこの作品の開発に3年間という時間と、200万ドルの資金をかけたと。中国ではMMORPGの寿命は18カ月~24カ月といわれるMMORPGゲームの寿命を意識し36カ月はもつゲームを目指したとのことだ。
さらに「完美世界」では、プレーヤーは自分の家を建てる事もできる。もちろんその家も壁の色やテクスチャも自由にカスタマイズできる。屋根の上に自分の名前を大きく描くことも可能だ。実際のカスタマイズには大きな手間がかかりそうだが、ここまでの自由度を持ったMMORPGは日本や韓国はもちろん、欧米でもそれほどないだろう。 この自由度を実現したのが、Golden Humanが独自に開発した3Dエンジンである。「完美世界」はこの3Dエンジンのデモンストレーションと言っても過言ではない。Won氏を古くから知る立命館大学助教授、中村彰憲氏によれば、Won氏は昔から3Dエンジンによる世界の描画に情熱を持っていたという。このカスタマイズ性の開放は、世界の創造の楽しさをユーザーにも提供しようというWon氏の主張が見えそうだ。 独自の3Dエンジンによる描画は、キャラクタの“重なり合い”でも発揮される。その1つが、「デュアルライディング機能」である。本作ではペットの動物に2人乗りすることができ、2人のプレーヤーが重なる描写が極めて自然に表現されている。さらに、ペットを2段重ねてさらに人が乗り、飛んでいくといったことをしても、キャラクタ同士の重なり合いでポリゴンがめり込んだりしないのである。 ハグ機能もあり、キャラクタを「お姫様抱っこ」で抱き上げることができる。これまでの3DMMORPGでも抱きついたりなつくようなしぐさをするようなものはあったが、空気を抱いているようなもどかしいものが多く、キャラクタが密着しているような表現は難しかった。本作ならではの3Dエンジンへのこだわりがユニークな方向で発揮されているポイントだと感じた。 Won氏は他にも本作ならではの要素として、「ラジオ機能」を紹介。ラジオ放送局と提携し、実際のラジオのライブ放送をゲーム内で楽しむことができるのである。Won氏は今後ラジオ放送局のDJに質問や音楽のリクエストも投げかけられるシステムを搭載するつもりだと語った。この他にも有料アイテムとして、好きな言葉を打ち込んでゲーム内に花火を打ち上げるサービスも用意しているという。 今回、Won氏はゲーム性や物語の背景よりも、本作ならではの特徴を多く語った。技術的なチャレンジという点からも、非常にユニークな作品であるということを感じた。 Won氏は次に中国でのゲーム開発に関して様々な見解を語った。Golden HumanはPCソフトの最大手で、中国で一番最後までパッケージゲームを制作していた会社だった。パッケージゲームの販売を断念したのは2003年、以降はオンラインゲームの開発にシフトしたという。撤退の原因は中国市場に氾濫している海賊版の存在である。Won氏はGolden Humanの撤退によって中国のパッケージゲームの開発者はいなくなり、パッケージゲームの未来も無くなったと語った。 自社でのゲーム開発にこだわる理由として、中国の家電が徐々にクォリティをあげ国産品がシェアを伸ばしていることに触れ、ゲームでも同じ状況であるという。中国人のメンタリティに合うタイトル開発は自社開発しかない。ゲーム内のアップデートや様々なイベントに対応するのにも開発と運営の柔軟な連携が重要だと指摘する。 中国ではゲーム産業の位置づけは、コンテンツ産業に属している。コンテンツ産業はメンタリティ、つまり思想を充足する産業であるため、中国では政府の統制や監視を少なからず受けるという。特に外資系の企業には監視の目が行きやすく、中国でゲーム産業で進出をしようとする外国企業には中国政府との強いつながりを持つ企業とのパートナーシップが求められる傾向がある。
中国では外国で作られたゲームを直接持ち込むことは難しい。Won氏は講演の最後に、中国でゲームを展開しようとするメーカーは、単に運営会社を探そうとするのではなく現地企業との共同開発を模索する動きが必要だと語った。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2006年2月11日) [Reported by 三浦尋一]
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