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会場:日本教育会館
次に中村氏は、中国で人気のベスト10にランクインしたソフトを紹介。国産タイトルの人気が上がっており、また、「World of Warcraft 」の人気が高いことをあげた。中国ではアイテム課金制のゲームが増えてきており、特に業界トップである「盛大ネットワーク」が自社のタイトルをアイテム課金制に移行したのが象徴的だという。 RMTに関する積極的な姿勢は中国では特に顕著で、ゲーム内にRMTを行なうメーカー「Ebay China」へのリンクが設定されている作品も出始めている。日本のように「RMTはゲームの世界観を壊す」といった意見は見られず、RMTを第3者がビジネスとして行なうか、直接メーカーが行なうかという議論が盛んだ。 ゲームに関しての今関心が集まっているのは、若年層へのゲームの浸透だ。「ゲーム依存症」に対する危機意識が高く、中国は政府として、「健全なゲーム」をメーカーに求めているという。一方台湾メーカーからは「愛情アパート」というゲーム内で男女のプレーヤーが現実の距離を超えて擬似的な“同棲”を楽しむようなゲームが生まれたりもしているとのことだ。
中国は自国のタイトルが爆発的に増え、海外に進出を果たすタイトルもある。RMTはゲームと切り離せないほどに発達し、新しいビジネスモデルとして盛んである。一方、ゲームのプレイ時間を制限させるための働きかけもあり、ゲームに対する懸念も表面化している。日本や韓国とは違うユニークな市場であることを改めて認識できるレポートである。
■「JX Online」は何故ベトナムで成功したか? KINGSOFTの海外戦略 「Global Strategy of JX Online」というタイトルで講演を行なった中国KINGSOFTのCOO、Bruce Ren氏。KINGSOFTは中国版オフィスともいえるワープロや表計算の機能を持つ総合的なソフトウェアや、アンチウィルスソフトなど販売する中国最大手のソフトメーカーである。MMORPGも制作し、その高い認知度で大きくアピールしている。
Ren氏は成功の第1の理由を「ベトナムで最初に進出したMMORPGだからだ」と語る。ベトナムと中国は歴史的に交流もあり、文化的な近いものがあり、武侠ジャンルや映画などの好みが似ている。また、ベトナムは人口の60%が'70年代以降に生まれたという国民全体が若い国であり、新しいコンテンツを積極的に取り入れたのだという。 しかし、ただ運が成功を呼んだのではないのは明らかだ。Ren氏は「ベトナムのユーザーが使っているほとんどのソフトは英語版をそのまま使っている、ベトナム語のソフトがほとんどない」という点をあげる。KINGSOFTは現地のパブリッシャーにリソースを渡し、ゲームをベトナム語に翻訳、アイテムの名前などもベトナムのセンスにあわせて変更し、ローカライズを行なった。 「ベトナム語で楽しめるゲーム」というポイントが多くのユーザーを獲得したのだ。筆者はかつて韓国のゲームショウで「World of Warcraft 」の取材し、なぜ韓国で好調なのかを質問したことがあるが、返ってきた答えは、「韓国で始めて完全に韓国語にローカライズされた欧米産MMORPGだからだと思う」というものだった。この成功のケースは、日本でも、おそらく世界中で当てはまるだろう。
KINGSOFTは3Dの要素を加え、グラフィックスを強化した「JX Online II」を開発している。また、中国では他のメーカーもシンガポールやタイ、インドネシアなどに続々と進出している。今回、Ren氏はどちらかというと淡々と戦略を語ったが、まだまだ様々な成功のための秘訣がありそうである。KINGSOFTの成功は、中国国内のみならず、世界中のメーカーが参考し、より細かく研究し、議論されていくのではないだろうか。
■ ディスカッションで見えてくる中国のユーザーの姿、メーカーの特色 中国セッションの締めくくりは、中村彰憲氏が司会を務め、Golden Humanの Tony Wong氏と、KINGSOFTのBruce Ren氏によるパネルディスカッション、中村氏は様々なテーマで中国メーカーならではの意見を求めた。
次に中村氏は市場規模を例にあげ、メーカーが発表している市場規模を当てはめると、上位のメーカーだけでほとんど市場が占有されてしまう計算になる。これが本当ならば新規のメーカーが参入するのは難しいのではないかという質問をした。これに対しWong氏は確かに上位メーカーは「巨人」です。しかし、その巨人を必ずしも倒さなくてもいい。大事なのは新しいユーザーを魅了するアイデアであり、競争するのではなく、自分たちがアピールできる確かなものが必要となる、と答えた。 これも中国のメーカーの特色なのかな、と思わせたのは、中村氏が第九城市による「World of Warcraft 」の派手なアピール戦略を例に、両社の戦略を聞いたのだが、ここでもほとんどノーコメントだったところだ。「映画スターを看板にしたりしていますよね?」と中村氏が話を振ったにもかかわらずである。Ren氏は「広報部から、これだけのお金が必要です! と言われても、本当にそうなのか疑問なんですよ」と苦笑して見せたが、ここも中国メーカーならではの深い戦略があるのではないかと感じさせられる。 「もう少し具体的に」という中村氏の言葉にRen氏は「具体的な数字はなかなか公表できませんが、200万米ドルという金額がプロモーションの指標になりますね。これ以下だと認知してもらうのは難しいと思っています」と答えた。 この後話題は変わり、Ren氏は中国は1人っ子政策のため、両親の祖父母も含めて、「財布が6つある」と冗談を交えて紹介。子供に対する期待が大きく、だからこそゲームに対しての警戒心が強くコンソールのゲーム機は買い与えない。しかし、PCは“勉強用”として積極的に与えられているという。実際はそれを使ってゲームをする子供が多い。 Wong氏は個人の家でゲームをする環境ができても、子供達はネットカフェに行くことが多いと語る。それは、友達とゲームをする楽しさが大きいからだという。中国のユーザー達にはゲームはネットカフェの方が楽しいという認識があるようだ。 中村氏が次のテーマとして選んだのは、「政府とのやりとり」である。米Electronic Artsや米UBI Softが中国で苦戦し、コーエーがMMORPGを運営しようとして許可が出ない一方、バンダイナムコは「ウルトラマンティガ」をテレビ放映と同時に関連商品を販売し大きな成功を収めた例を挙げた。今までのビジネスでは、商品の許可などがなかなか下りず、テレビと商品展開がちぐはぐになって失敗した事例も多かった、ここには何か秘訣があるのだろうか。 この質問にRen氏は、「中国は変わりつつある。国民の声に耳を傾けるようになっているし、また、外資のメーカーでも成功しているところもある。ただし、気をつけなくてはいけないのは、中国とうまくやっていく、ということを常に考えなくてはならない。組織的な動きを先導したり、政府そのものを批判するおそれがないかのように考えなくてはならない。インターネットでは特にそこに注意が必要だ。 また、中国ではゲームに対する批判が強いのも留意しておく必要がある。親や祖父母が『ゲームのせいで子供に悪影響が出た』という批判の声は、今は中国では大きい。しかし、私はそうは思わない。日本ではもっと研究されていると思うが、手を動かし、ゲームで能動的な行動をとることは、勉強などにも役立つと思う。やりすぎてはいけないという点に注意して、ゲームがプラスになる部分をきちんと見ていきたい」と語った。
最後にRen氏は「海外に進出する上で考えなくてはいけないのは、パートナーと共に発展することだと私は思っている。利益を共有することこそが、私が大事だと考えている」と言葉を結んだ。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2006年2月10日) [Reported by 勝田哲也]
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