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会場:日本教育会館
■韓国からみたアジアオンラインゲーム市場の動向 韓国ソウル中央大学経営学科の助教授であり、社団法人コンテンツ経営研究所の所長を務める魏 晶玄氏は「アジアオンラインゲーム市場の動向と戦略」というタイトルで氏が分析する日韓中、そして東南アジア市場に関する講演を行なった。
米Blizzard Entertainmentの「World of Warcraft 」は韓国市場で成功したものの、韓国のユーザーは熱狂的にレベルを上げ、短い時間で上限に達し、「何でもっとレベルを上げさせてくれないんだ!」という不満の声を上げ、ゲームから離れてしまった人が多いというのだ。現在はコアユーザーのみが残ってしまい、初心者が入れない雰囲気があるそうだ。 「大航海時代」に関して魏氏は「失敗」と語る。「大航海時代」は正式サービスを急ぎすぎ、コミュニティー形成の前に月額課金制を採用してしまった。魏氏の考えている現在の韓国市場での成功するゲームは、アイテム課金制であり、じっくりと無料期間を設け、ユーザーがゲームの中で失うことを惜しいと思わせるような財産や密接なコミュニティーを作り、そこから課金するべきなのだという。 韓国市場の流れを追随しているのが中国市場だ。近年、中国の技術者は速いペースで技術力を取得し、独自の3DMMORPGを開発するまでになった。開発者も政府の支援を受け急速に増えており、海外へのコンテンツの輸出もはじまっている。2Dグラフィックスの「The Swordman」がベトナムで大きなヒットを記録し、「The World of Qin」もシンガポール、韓国、アメリカ、タイ、マレーシア、インドネシアに進出している。 インフラ的にはまだまだだが、次第に発展しているのがタイやベトナム、マレーシアといった東南アジア諸国。これらの国は韓国や中国と同じようにPC房 (バン) を中心にゲームユーザーを獲得している。しかしブロードバンドのインフラは大都市に限られており、ユーザーは都市ごとに点在している状況だ。無許可で営業しているPCバンも多い。ゲーム性としてはとにかく単純にレベル上げを楽しむようなシンプルなゲームが好まれ、カジュアルゲームのプレーヤーも増えてきている。魏氏は、東南アジアや中国ではオンラインゲームは映画と人気を二分している。それは日本のユーザーと違い他に遊ぶものがなく、PCバンで友達と一緒に遊ぶ娯楽を発見したからだ、と語る。 こういったアジアとは違う流れにあるのが日本の状況だ。日本のユーザーはオンラインゲームに関心が薄く、ゲームといえば、ビデオゲームと、コンシューマゲーム、携帯コンテンツが主流になっている。氏はアーケードゲームである「三国志大戦」や「甲虫王者ムシキング」の流行に注目し、専用筐体での日本ならではのオンラインゲームのビジネスモデルは、今後誕生する可能性があると予測している。何のカードが出てくるかわからないドキドキ感は、アイテム課金制の“くじ”に通じるものがあるというのだ。 オンラインゲームに関してはユーザーが少ないのに韓国産のコンテンツが大量に入り、現在の韓国市場と同じように供給過多になっているという。また、アイテム課金にシフトしているところも韓国と同じ流れである。魏氏はオンラインゲームが日本で普及していないのは、10代のユーザーがほとんどオンラインゲームをやっていないからだと指摘する。次世代のユーザーを育てていないのではないかというのだ。 氏の講演を聴いて考えてしまったのは、日本の開発者がアプローチしている“ゲーム性の深化”は、韓国や中国、東南アジアでは求められるのかという点だ。単純なゲーム性が受けているというアジア地域に、「面白いゲームを作ることこそ普及の鍵だ」と考える日本の開発者のコンテンツがどういった受け取られ方をするか、今後世界に進出していく上でどういった結果を見せられるのかは見守っていきたいところだ。
筆者は、魏氏は、韓国のオンラインゲーム側からの視点として今回世界の市場を語ったと感じた。日本では年末にかけてニンテンドーDSの「マリオカートDS」や「おいでよ どうぶつの森」等によって、子供から女性までの幅広い“オンラインゲームユーザー”が誕生しているという現状がある。次世代ハードにとってもオンラインという要素は外せない視点である。特に日本のオンライン市場は現在大きな転換期を迎えようとしているのかもしれない。
■世界中にサーバーを設置し海外進出を支援する韓国政府 「ゲーム産業の政策支援・成功事例」というタイトルで講演を行なったのは韓国ソフトウエア振興院(KIPA)キム ジョンス氏。KIPAとは、韓国情報通信部の非営利、準政府機関下部団体として、'98年に設立された団体である。
キム氏は、ブロードバンドの普及において、ゲームの果たした役割はかなり大きかったと語る。ベンチャーブームも手伝い、韓国は政府の支援を受けたくさんのゲーム会社が立ち上がり、コンテンツを配信した。KIPAはこれらゲームメーカーに積極的に支援を行なっている。ゲームに必要な技術を支援すると共に、ゲームが快適にプレイできるインフラを整備していった。モーションキャプチャーを収録するための設備のあるスタジオを作り、中小のゲームメーカーに使用させる、といったことも行なっている。 現在でもワイヤレスでネットに接続できるサービスの開発や、PS3用のパンフレットを作成し、参加企業を募るなど、最新技術への誘導を行なっている。同じようにゲーム支援を行なう韓国の文化観光部とも協力をして韓国のゲームショウ「G☆2005」を開催し、今後も継続して開催していく予定だ。 また、「Game & game」というサイトと、世界数カ所にダウンロードサーバーを設置し、世界中から韓国のゲームがプレイしやすい環境を提供している。「NAVYFIELD」や「シルクロードオンライン」といった日本でも運営しているタイトルの他、「KALONLINE」「War Rock」といったものまで、様々なタイトルを用意し、手軽にプレイできる環境を提供している。KIPAは「Game & game」を運営することで、最低限のローカライズ支援と宣伝活動を行なうことで、様々なメーカーの海外進出の支援を行なっているのだ。 この講演の最後に、IGDA日本代表である新 清士氏が、キム氏に「韓国はこれほどの支援が受けられてうらやましい」と声をかけたのだが、キム氏は「日本のメーカーは支援を受けなくてもきちんと海外でやっているでしょう」とやりとりをする場面があった。一面、これは真実だろう。しかし、特に海外に日本のコンテンツを紹介する場合や、市場調査、ローカライズなどには日本の政府でも果たせる役割は大きいと思う。 また反面、韓国のゲーム市場に短期間で似たようなコンテンツが多く生まれ結果としてユーザーの奪い合いになっている現状は、政府の支援が大きかったことも原因の1つと思える。中国もまた大きな支援をして現在多くのコンテンツが生まれている。日本と韓国、中国はゲーム開発においては全く環境が異なるが、欧米以外の海外進出でどうなるかは、これからというところだろう。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2006年2月9日) [Reported by 勝田哲也]
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