★PCゲームパーツレビュー★
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6軸検出に対応したヘッドトラッキングセンサー
TrackIR 4: PRO
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ゲーム用デバイスとしてマウス、キーボードと各種レポートを続けている筆者だが、今回はゲーム用デバイスの中でも特にユニークなジャンルの製品をご紹介したい。今回レポートする「TrackIR 4: PRO」は、フライトシムやレースシム等のコックピットビュー型ゲームで絶大な威力を発揮するヘッドラッキングセンサーの最新版。プレーヤーの頭の動きを検出して画面内の視点の動きをシンクロしてくれるという、VR(バーチャルリアリティ)環境を構築するためには必須のデバイスだ。
■ ゲーム用ヘッドトラッキングセンサーのスタンダード「Track IR」
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左が「TrackIR 4:PRO」、右は前作「TrackIR 3」である。より小型でスリムなデザインとなった
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3Dゲームのグラフィックスの進化が退屈なまでに高まってしまった今、より没頭できる仮想空間を演出するために、我々が注目すべき分野は入力機器だ。と、昨年「Track IR 3」のレビューでも同じようなことを書いた前科があるので、今回は能書きは省くとして、とにかく、今回紹介する「TrackIR4:PRO」は仮想空間への没入感を増すための画期的な能力を備えた新兵器なのである。
本製品シリーズをご存知ない方のために簡単に紹介すると、本製品はヘッドトラッキングセンサーと呼ばれるデバイスの一種である。つまり、頭(ヘッド)の動きを追跡(トラッキング)するセンサーであり、ユーザーの頭の動きを画面内の視点の動きに変換し、3D空間内で自由に辺りを見回すような動作をフリーハンドで可能にする。画面内の動きが頭の動きに追従するので、きわめて自然な感触でゲーム内世界にインタラクションすることが可能だ。マウスで視点を操作するよりも、ずっと高いレベルで没入感を得られるというわけだ。
ヘッドトラッキングセンサーという製品ジャンルには、当然複数のアプローチによる多彩な選択肢があるのだが、たとえばジャイロセンサーや加速度センサーを用いる製品は、簡単に調べるだけでも相当敷居の高い価格設定であることがわかる(10万円以上のものが主流)。それに比べて、赤外線カメラを使うこの「Track IR」シリーズはずば抜けて安価なのが特徴だ。実売価格2万円程度で手に入るお手ごろ感、しかも後述するように非常に高性能かつゲーム向きであること。この2点が相まって、じわじわと、確実に、シェアを伸ばしているのだ。いまやゲーム用途のヘッドトラッキングセンサーではデファクトスタンダードと言っても差し支えない。
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デザインが一新され非常にスマートな感じに。幅はおよそ4cmで、厚みは1cm程しかないという薄さ。モニターの上などにおいて使用するので、取り回しが良くなったことは非常に嬉しいポイントだ
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・基本性能向上に加え、画期的な「6DOF」機能を標準搭載
「TrackIR」では、プレーヤーの頭に取り付けた反射材に赤外線ビームを放ち、それを赤外線カメラで撮影し、あとはソフトウェア的に頭の動きをゲーム内の動きに変換する。このため赤外線カメラの性能さえ向上すれば、トラッキングセンサーとしての性能が向上していく余地がある。その期待通りに、「TrackIR」「TrackIR 2」「TrackIR3」と新バージョンが発売されるたび、読み取り解像度やフレームレートが向上してきた。
今回登場した「TrackIR 4」では、前作「TrackI R3」に比べて読み取り解像度がおよそ2倍(358×290ドット → 716×290ドット)となり、レスポンスタイムがおよそ25%向上した。また赤外線カメラの視野角が33度から46度へと向上し、プレーヤーが大きな動きをしたときにカメラ受像範囲をはみ出してしまうリスクが減少し、より扱いやすくなった。スキャンレート(読み取り頻度)は「Track IR 3: PRO」と同じ120FPS。この速度は一般的なUSBマウスに匹敵する速度なので実用上の問題は全くないといえるだろう。それどころか、他の方式のヘッドトラッキングセンサーは軒並みこれよりずっと低速な読み取り頻度なので、実はこの点、「TrackIR」シリーズの性能の高さが際立っているのだ。
そして何よりも大きな変更点として声を大にせねばならないのは、「Track IR 3: PRO」では有料のオプションとして提供されていた「6DOF」機能が標準搭載となったことだ。この機能については次章で詳しく説明するが、ヘッドトラッキングセンサーの世界に革命を起こしたといっても過言ではない、スゴい機能なのである。
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本製品に標準添付される「ベクタークリップ」。このクリップについている三つの反射材が赤外線カメラに捉えられ、6軸の動き検出を可能にする。このクリップが付属するため、「TrackIR 3」以前の反射シールは付属しなくなった
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推奨品のTrackHat(別売)。標準添付のクリップはこのように装着して使用する。帽子は光を反射しにくい素材のものなら何でも使えるので、TrackHatを使わない場合はコンビニなどで安いバイザーを買ってきてもいいだろう
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■ TrackIR4で標準搭載となった「6DOF(6軸自由度)」とは何か?
「TrackIR 3: PRO」が登場したころまでは、一つの反射面をトラッキングする仕様のため、上下左右の振り向き(2軸)しか検出できなかった。このため、傾きも検出可能な「InterTrax」などの製品に自由度ではひけをとっていたのだが、2004年末、赤外線カメラとドライバの向上により、多くのヘッドトラッキングセンサーファン(?)が予想した以上の革命を起こしたのである。なんと、6軸検出が可能になった!
つまり、従来の「左右を向く(Yaw軸)」「上下を向く(Pitch軸)」に加え、頭を傾げる(Roll軸)」「頭を左右に平行移動する(X軸)」「頭を上下に平行移動する(Y軸)」「頭を前進後退させる(Z軸)」を追加した6軸が検出可能となった。これにより、実質的に頭部のすべての動きを検出可能となったといえる。画期的なことだ。どんな動きができるかについては、以下のスクリーンショットを見てほしい。
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黒地に緑色の3点の光点が見えるウィンドウが、赤外線カメラの撮影状況だ。「Vector Clip」の3箇所の反射材を映し出しており、これがユーザの頭の動きをトレースする。動きの感度は柔軟に調整可能で、左側のマネキンが実際の頭の角度、右がゲーム内の入力に使われるため誇張された角度を表示している。ちなみに一番右の写真は光点が1つの「Dot mode」を使用したところだ |
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正面を見ている状態 |
右を向く |
後ろを向く |
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横に平行移動してみる |
画面に近づいてみる |
頭を傾けてみる |
「6DOF」の標準搭載により、対応ゲームのバーチャルリアリティ感覚が大幅に向上したことは疑いの余地がない。たとえば飛行機のコックピットの中で、頭を横にずらして外の景色を見たり、前のめりになって計器類を確認したり、旋回にあわせて頭を傾げてみたりといった、「実際にやりそうな動き」を、本当に肉体的に行なうことができる。これは実際に試してみないことには感動を理解できないかもしれないが、Natural Pointの公式ページでは各種対応ゲームで実際にこの機能を使用した動画を見ることができるので、ぜひ一見してほしい。一歩先の自由度を垣間見ることができるはずだ。
開発元のNatural Pointは、この機能を「6DOF」と呼んでいるが、これはSix-Degrees-Of-Freedom(6軸自由度)の略で、従来の「Track IR」シリーズは「2DOF」、つまり2軸自由度だ。Track IRの公式サイトで対応ゲームの一覧を見ると、対応状況が「2DOF」と「6DOF」が別に示されているので、実際に試すときの参考にしよう。
この「6DOF」機能そのものは前作「TrackIR 3:PRO」でもオプションで対応していたものだが、今回「TrackIR 4:PRO」で標準対応となるにあたり、カメラの視野角が36度から45度へ、およそ3割り広がったことは見逃せない改善点だ。つまり、平行移動も検出するとなると実際にユーザが左右に頭を動かすわけだが、このとき、視野角の狭い「TrackIR 3:PRO」のカメラでは、反射点が簡単に範囲外に飛び出してしまっていたのだ。そのせいで「6DOF」機能を楽しむには実に注意深く動作を行う必要があって、無意識に範囲外に出てしまい、トラッキングが中断されて興ざめすることもあった。「TrackIR 4: PRO」では、この問題をカメラ視野角を広げることで大幅に改善している。このように歯がゆい部分をきっちり改善してくるNatural Pointの姿勢は高く評価したい。
ただ、視野角が広がった変わり相対的に受像する大きさが小さくなっているので、精度が多少犠牲になっているようだ。この差は実際に使ってみて微妙にわかる程度なのだが、現在「TrackIR 2」や「TrackIR 3」で「2DOF」をメインに使用している向きにはご注意願いたい。
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ドライバ画面(Natural Point Software)。ここから全ての設定を行なうことができる。軸モードや感度の設定は「Profile」として別個に保存することができ、対応ゲームリストのそれぞれに割り当てることが可能だ。ドライバはアプリケーションの起動を自動認識して、対応した設定をアクティブにする |
■ 「6DOF」対応ソフトの感触を実際に試してみる
それでは試遊レポートをお伝えしたい。今回は「6DOF」対応ソフトに絞り、ひとつはフライトシム、ひとつはドライブシムで実際の感触を確かめてみた。
・Microsoft Flight Simulator 2004:Century of Flight
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「MSFS2004」は、標準で「6DOF」に完全対応している。今回はBoeing-747でテスト飛行してみた
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「TrackIR 4:PRO」では、ドライバレベルで「MSFS2004」に対応した(「TrackIR3」までは追加DLLをインストールする必要があった)。このため特殊なセットアップ等をしなくても、単にTrackIRドライバ(Natural Point Software)がインストールされていれば「6DOF」機能を完全に使用できる。
元々「MSFS」シリーズはバーチャルコックピットでの視点位置や角度のコントロールが可能な仕様のため、「TrackIR 4:PRO」との相性は抜群だ。
ここではBoeing 747で離陸したときのスクリーンショットを掲載しよう。旅客機というのはとにかく細かい計器が多いもので、従来、バーチャルコックピットでは各計器類が小さすぎて雰囲気を楽しむ以上のことはなかなか難しかった。しかし、本製品の「6DOF」機能により、計器類に頭を近づけることで実際に計器類を間近で見ることができ、小さい数字も読めるようになる。したがって、およそ全ての操作をバーチャルコックピット画面で、しかも手動で煩雑な視点操作をすることなく、完結してしまうことが可能なのだ。これは臨場感がフライトモデルの次に重要なシミュレータでは大きな利点となる。
また、オープンキャノピータイプのレシプロ機などで実際に行なうような動作、たとえば頭を横に傾け、機外の様子を伺う、といった動作もきわめて自然に行なえる。こういった自由度が加わることで空間の認識度が高まるので、シミュレータとしての楽しさが大幅に向上すること請け合いだ。
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時間は早朝。スロットル全開にして加速を始める |
計器類をチラリと確認しつつ、フラップ下げ |
視点操作がクイックなので横の景色を見る余裕もある |
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窓際にぐっと顔を寄せて外の景色を見る |
多少前のめりになりながら計器を確認 |
身を起こして前方視野を確保 |
・GT-Legends
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最新レースシム「GT-Legends」。リアリティのあるバーチャルコックピットを搭載し、「6DOF」に標準対応した
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昨年あたりからレースシムの対応ソフトも大幅に増えてきた。「GT-Legends」はデモ版で「6DOF」に対応しているので、お試し用としてオススメである。
レースシムでは、「運転席に座っている臨場感」というものが車の挙動云々と同じくらい重要だと筆者は考えている。よって「6DOF」に対応しているかどうかは非常に重要なポイントなのである。進行方向を見ながらコーナリングするのは当然だが、そのときドライバーにかかる横Gを想像すれば、頭を傾けてみたい。ライバル車が横に並べば瞬間的に目をやる。こういった動作を文字通り「体感」できる楽しさは、「Track IR」なしには夢に見るほかなかったものだろう。
「GT-Legens」は、フライトシムなみのバーチャルコックピット機能を持つので、「Track IR 4: PRO」の機能を余すことなく発揮できる。振り向き角度に左右それぞれ90度程度の制限があるため真後ろを向くなどはできないのが残念だが、それでも上記に挙げたような動作は完全に行なえる。これほどの臨場感を味わうと、もはや車外視点でドライブするなど、ナンセンスだと思えるほど。ハンドルコントローラとペダルの完全装備でレースシムをプレイしているファンの方々には、ぜひ、「Track IR」を追加の標準装備としていただきたいところだ。
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ガレージからコースへ出るところ。微妙に進行方向を向いているのがおわかりになるだろうか |
頭を下げて計器に視点を寄せてみる。あまり意味ないが気分は上々 |
急カーブを曲がるときに行き先を視野中央に捉えるのは現実では当たり前だと思うが、ゲームで同じことができると感動してしまう |
■ 対応ゲームの拡充とさらなる普及が期待される
「Track IR 4: PRO」の目玉機能である「6DOF」については、現状ではまだ対応ゲームが充分でない状況が続いているのは確かだ。たとえばレースゲームでは「Need for Speed」シリーズなどのメジャータイトルが対応してくれば万々歳だが、こういったゲーム系はそもそもコックピット視点を搭載しなくなってきており、対応しようがない。今後対応ゲームが増えていくのは、やはりバーチャルコックピットを搭載するシミュレータ系が中心になってくると思われる。
今ではおよそ40タイトルが「Track IR」に対応し、そのうち20タイトル近くが「6DOF」に対応している。既存の「2DOF」対応ゲームも「6DOF」対応を順次進めているし、フライトシムとドライブシム等の新作はおおむね、はじめから「6DOF」に対応してきている状況だ。大きなところでは既に「2DOF」に対応している現代コンバットフライトシム「LockOn」が、現在予定しているバージョン1.2パッチ(Black Shark)で「6DOF」に完全対応する予定。フライトやドライブ以外のゲームでも対応ゲームがじわじわと増えているのも見逃せないところだ。
普及度を見てみると、既に「Track IR」シリーズ自体は、フライトシムやレースシムが「対応しなければならない」標準的な製品になっていると見ていい。それだけに今後も対応ゲームが続々と登場していくものと期待される。それだけに、単にユニークなデバイスとしてではなく、ある意味ゲーマー必携のアイテムとしての価値が高まってきていると言えるかもしれない。
米国では昨年末に登場した「Track IR 4: PRO」だが、日本国内では秋葉原界隈のPCゲーム系店舗でもちらほらと見かけることができるようになった。インターネット通販でも購入が可能なため入手性も良好。初代「Track IR」の頃は、米国から個人輸入するか、秋葉原にしかないような特殊な店舗で運良く目にかける程度だったくらいだから、隔世の感がある。それほどじわじわと普及してきたということだろう。
これからも普及を続けると思われるこのデバイス、今のうちに使い慣れておけば、今後登場してくる各種の対応ゲームでも一歩先のVR感覚を楽しめることだろう。フライトシムやレースシムなどを好むゲーマーの方々にはぜひともオススメしたい、そんな製品である。
対応ゲーム一覧 (2006年1月現在)
フライトシム:
・Aces High 2 (6DOF)
・Rowan's Battle of Britain (2DOF)
・Battle of Britain 2 : Wings of Victory (6DOF)
・Combat Flight Simulator 3 (6DOF)
・Condor (2DOF)
・Enemy Engaged : RAH-66 Comanche vs. KA-52 Hokum (2DOF)
・Falcon 4.0 (2DOF)
・Falcon 4 : Allied Force (2DOF)
・Flight Simulator 2002 (2DOF)
・Flight Simulator 2004 : A Century of Flight (6DOF)
・IL2 Sturmovikシリーズ (2DOF)
・Jane's F/A-18 (2DOF: 追加ファイルが必要)
・Lock On : Modern Air Combat (2DOF)
・Lock On 1.1 : Flaming Cliffs (2DOF+Z軸)
・Lock On 1.2 : Black Shark (6DOF: 発売予定)
・Lunar Pilot (6DOF: Roll軸を除く)
・Mediterranean Air War (6DOF: Roll軸を除く)
・Micro Flight (2DOF)
・MiG Alley (6DOF)
・Over Flanders Field (6DOF: Roll軸を除く)
・Pacific Fighters (2DOF)
・Silent Wings (6DOF)
・Warbirds 2004 (2DOF)
・Wings of War (6DOF)
・X-Plane / X-Cockpit (6DOF)
ドライブ:
・Colin McRae Rally 2004 (6DOF)
・Cross Racing Championship 2005 (6DOF)
・F1 Challenge (2DOF)
・GTR (6DOF)
・GT Legends (6DOF)
・Grand Prix Legends (6DOF: Roll軸を除く。追加ファイルが必要)
・Live For Speed (2DOF)
・NASCAR Racing 2003 Season (6DOF)
・NASCAR SimRacing (6DOF)
・rFactor (6DOF)
・Richard Burns Rally (2DOF)
・TOCA Race Driver 2 (6DOF)
その他:
・Star Wars GalaxiesR: Jump to Lightspeed (2DOF)
・Trainz Railroad Simulator 2006 (2DOF)
・World War II Online (2DOF)
□製品情報
NaturalPoint「Track IR 4: PRO」
http://www.naturalpoint.com/trackir/
(2006年1月24日)
[Reported by kaf@ukeru.jp]
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