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★PCゲームレビュー★

これが世界最高峰のターンベースストラテジー
ゲームデザインのひとつの完成形がここに

Civilization IV(前編)

  • ジャンル:ターンベースストラテジー
  • 開発元:Firaxis Games
  • 発売元:2K Games
  • 価格:49.99ドル(輸入版:7,000円前後)
  • 対応OS:Windows XP
  • 発売日:2005年11月1日(発売中)



 去る11月頭に欧米で発売された「Civilization IV」は、2005年のベストゲームとも期待されるビッグタイトル。ではあるものの、渋い外観と地味なアピールによって日本国内ではいまひとつマイナー感漂うものがある。個人的にこれは非常に残念なことなので、微力ながら本稿でこの中毒ゲームの魅力をお伝えする努力をしてみたい。

 と、発売前夜まではそう思ったのだが、実際に本作を光の速さで入手後は、壊滅的にハマってしまい、結果として本稿を読者の方々に送り届ける使命を果たす日が大変遅れてしまった。そのお詫びとして前後編の特大レビューで同作の魅力をお伝えしていく所存である。同シリーズの大ファンも、そうではない方も、ぜひご一読いただきたい。


■ 世界的「寝不足ゲーム」シリーズの真髄

「Civ I」で聴いた記憶のある不思議な音楽(リミックス)をバックに、地球、大陸、そして人類の誕生が語られる。悠久の歴史を感じます
ゲームの根幹を成す要素のひとつ、「外交」。多岐にわたる交渉の材料を提示し、戦略的立場の強化を図るのだ
 「Civilization IV」は、ターン制ストラテジーゲームの傑作として名高い「SID Meier's Civilization」(以下「Civ」)シリーズの最新作。本シリーズはその名の通り「文明」をテーマにしており、都市を建設し、大地を開拓し、科学技術を発展させ、他文明との競争に打ち勝って偉大な文明を作り上げるという、たいへんスケールの大きなゲームである。

 このような国家建設系のゲームは「Age of Empires」や「Rise of Nations」などに代表されるように珍しくないが、それもそのはずで、「Civ」はこれらのルーツとなった作品なのである。

 ただ、これら派生ゲームとの根本的な違いは、「Civ」は戦争ゲームではない、というところにある。これはゲーム勝利条件がひとつではなく複数で、その中に「最初に移民宇宙船を建設し、アルファ・ケンタウリに人類を送り出す」といったものもあることに象徴される。他文明の滅亡は選択肢のひとつでしかない。もちろん「Civ」にも戦争はあるが、それは有名な言い回しで表現すると「他の手段をもってする政治の延長」である。これが本シリーズの根本的な特徴といえると思う。「AoE」や「RoN」が軍人のゲームとすれば、「Civ」は文民のゲームといえるかもしれない。

・進化を続けて15年

 雑学程度に軽くシリーズの歴史に触れておこう。'91年に発売された初代「Civ」は、当時PCゲーム業界が派手なアクションゲームやフライトシミュレーション全盛だったということもあり、新奇なシステムに映像の地味さも手伝って当初は鳴かず飛ばず。しかしそのユニークで中毒的な面白さの評判が口コミで広がり、じわじわと人気が向上。結果として大変なロングセラーとなった。これ以来、「Civ」シリーズは発売のたびに販売チャートトップを走り続けるビッグタイトルとなる。

 この作品はMicrosoft Windows 3.1への移植等を通じて日本にも知れ渡るところとなり、その破壊的な面白さによって多数の趣味人を壊滅的寝不足症状に陥れた。続く「Civilizaiton II」は、当時PCを購入したてだった筆者も寝食を忘れてハマった記憶が今も生々しい。

 2002年に発売された「Civilization III」拡張パック「Play the World」ではシリーズ初のリアルタイムネットワーク対戦がサポートされた。ターンベースであることと、接続性の悪さも手伝って、再接続を繰り返しながら1プレイ8時間~16時間はかかろうかというある意味拷問のようなマルチプレイではあったが、それでもコアファン層を中心に根強い支持を集め、多くの名作リプレイ記事を生み出した。本作はこの流れを継承している。

・「あと1ターンだけ!」

 このシリーズの魅力、あるいは中毒性の高さは、世界中のプレーヤーが幾度となく発したであろう「Just... One More Turn!!(あと1ターンだけ!)」という悲痛な(心の)叫びに集約されるだろう。なぜこれほど「次のターン」をプレイしたくなるのか?

 本シリーズのゲームシステムは、単純で小さくて理解しやすい要素の集合だといえる。都市の人口は1で始まり、2、3……20と大きくなっていくが必ず整数だ。マップは古典的なタイル制で、ひとつのタイルから産出する資源は、食料1とか、ハンマー2とかで、暗算できる。都市で生産できる施設やユニットの生産に必要なターン数は明示されるので将来の出来事を見通しやすいし、その効果も、「金銭収入が50%増加」、「研究速度が25%増加」といった按配でわかりやすく、しかもその効果は即座に現れ、必ずプラスになる。

 こういったミクロな構成要素が多く積み重なることで都市ができ、プレーヤーの管理する都市が沢山あることで、有機的な全体としての文明=プレーヤーの資源を構成する。各構成要素の変化はマクロな全体に影響を与えずにいられないので、構成要素を操作し、その全体を管理するプレーヤーにとっては、1ターン、1ターンをプレイするたびに実感できる小さな達成があるわけだ。

 この達成感に加えて、「この建築物が完成すれば……」、「この軍隊が前線に到達すれば……」というように、「このターンを終えたら、次は何が起こるのだろう!」と思える出来事が、数ターン毎、あるいは毎ターン発生し、好奇心を常にかきたてずにいられない。ある達成をしたら、新しいことが可能になり、そのことが、また次の達成につながっていく。この連鎖が、プレーヤーから現実の睡眠時間をどうしようもなく奪い続けるのである。

 個人的にはこのゲームに導入された力学は、ゲームデザイン上のひとつの完成形であり、芸術の領域にすら踏み込んだものとすら思う。海外ファンサイトのフォーラムでは時折「Civで仕事を失いました」的な話がまことしやかに語られてきた。筆者自身も、その直前まで行きそうになったこと幾度。ホントに他人事ではないのである。

 さて、熱が入りすぎて余談が長くなってしまった。本作「Civilization IV」は、2001年にリリースされた前作「III」と、その最後の拡張パックである2003年の「Conquests」から2年以上を経過してのリリースとなるが、その間にまったく新しいゲームといえる刷新が行なわれた。だが決して、その本質は失われていない。

 伝統的ターン制システムはそのままに、グラフィックの3D化やゲームルールが一から見直されるなど大幅なブラッシュアップが施された。また前作で評判が良いといえなかったユーザーインターフェイスが全面的に刷新され、大幅にプレイしやすさが向上した。さらに開発当初からマルチプレイを前提とした工程が取られており、オンラインゲーム時代を飾るにふさわしい「最新式クラシック」というべき貫禄を備えた仕上がりになっている。

3Dグラフィックスを採用し、自由にズームイン・アウトできるようになった。3Dモデルは都市の設備まで表示しており、画面を切り替えずに全体を把握することができるためプレイが迅速になった


■ まずはゲームの基本システムを紹介

プレイする世界はこの世界設定画面で作成する。惑星の大きさ、気温、地形などの基本的な方針を設定すると、新たな世界がランダムに作られるのだ
 「Civ」シリーズは非常にユニークなゲームシステムを持つ作品なので、本シリーズをご存知でない方のために、本作がどのようなゲームであるかを簡単に説明したい。

 本作でプレーヤーは文明の指導者として、紀元前4000年から紀元2050年までのゲーム期間を通して、都市を建設し、人口を増やし、領土を拡張して国力を増し、他の文明との競争に外交的あるいは武力による解決を行ないながら最終的な“勝利”をめざす。その勝利に必要な条件とは、標準のルールでは以下の通りだ。

・宇宙勝利
 科学技術を未来水準にまで到達させ、アルファ・ケンタウリへの移民宇宙船の建設という国家的規模のプロジェクトを世界で最初に完成させる。科学技術の先行と、巨大な工業力が決め手となる。

・外交勝利
 国際連合の盟主となり、全文明による選挙で国連事務総長に選出される。バランスの取れた外交を展開し、ほとんどの有力文明と有効な関係を維持する必要がある。

・文化勝利
 所有する3都市を「伝説的」文化レベルに到達させる。ちなみに1都市を「伝説的」レベルにするだけでもかなりの難事。

・支配勝利
 文明の領土と人口を世界全体の一定割合(設定によるが40%~60%程度)以上にする。軍事中心のプレイなら一般的な勝ち方だが、大型マップだとかなり難しくなる。

・征服勝利
 全てのライバル文明を滅亡させる。最後の1文明の最後の1都市まで残らず占領する、または蹂躙して破壊する。AIは粘りに粘るため、実質的に一番難しい勝ち方となっている。

・時間勝利
 ゲームが時間切れとなる2050年の時点で、文化、軍事、領土、人口などから算出されるスコアの総計でトップになること。

 戦争が中心の一般的なストラテジーゲームと違い、本作のプレイは外交が基調となる。交易、技術交換、平和協定などの様々な条約を通じてライバル文明との有利な関係を構築し、非常に難しいが全く戦争しないでゲームに勝利することも可能だ。あるいは逆に年中戦争ばかりしていることも可能だし、どちらも状況によって勝利するための良い選択肢となりうる。

 いずれにしても共通しているのは、勝利のためには国力(文明力)を増進する必要があることだ。国力は領土、人口、都市、科学、文化、生産力、軍事力などの総計で計ることができ、そのどれもがゲーム上の重要な概念として絡み合っている。

都市管理画面。食料と工業の収支のほか、この都市にある施設や、人口が周辺のどのタイルで労働しているかなどの詳しい情報を見て、管理することができる
・都市の建設と運営

 この中でも最重要となるのはやはり領土と人口だ。土地の生産力は場所によって違うので一概にはいえないが、おおむね、領土の広さ=人口扶養力であり、これが科学や文化や軍事を経営するための重大な源泉となる。そして、領土をうまく活用するには都市を適切に運営する必要がある。都市の数と国力はおおむね比例関係にあるが、各都市の効率は、周辺の地形タイルと都市施設によって決まる。

 都市に建設できる施設は全部で100種類ほどもあり膨大だが、大別するといくつかのカテゴリーに分けられる。

 第1のカテゴリーは、銀行や大学、兵舎といった一般施設。これらは基本的にすべての都市に建設できるもので、その都市に対して控えめなプラスの効果を与える。

 第2のカテゴリーは、大不思議(Great Wonder)。世界にひとつずつしか建設できない「ピラミッド」や「空中庭園」など、いわゆる「世界の七不思議」的なものに分類されるものだ。これらの建設には膨大な時間が必要となることもあるが、文明全体に大きな恩恵を与える効果を持ち、極めて戦略的な存在だ。

 第3のカテゴリーは、小不思議(National Wonder)。これは各文明にひとつづつ建設できるもので、文明全体に多少の恩恵を与えるか、それを建設した都市に特徴的な恩恵を与える。小不思議はひとつの都市に2種までしか建設できないため、計画的な建設がキモとなる。

 いずれの施設も、関連する技術を開発済みであることが建設可能になる条件となる。このため、技術開発と都市の改善、改善による技術開発の効率性向上とが相互に共鳴しあって、文明の力が加速度的に高まっていく。

技術ツリー。太古の技術から、現代、近未来までをカバーする。この内容すべて把握したころには、すっかりCiv上級者といえる
・技術ツリー

 技術はRTSファンならおなじみの「技術ツリー」形式で進展していく。本作のそれは少し複雑で、紀元前4000年の「狩猟」や「灌漑」、「道路」などの原始的な技術から、近未来の「ロボット工学」、「核融合」まで、100近い技術を経て発展していく。ひとつひとつの技術が他の技術への必須条件や必要条件となっていたり、関連する施設や軍事ユニットがあったりで、すべてを把握するのは一苦労ではある。しかしながら、ゲーム内ヘルプ機能(Civilopedia=シビロペディア、Civ百科)が充実しているので、学習しながらゲームを進めることができるので心配はいらない。

 また技術の発展により、新たな「政治体制」を選べることも最重要項目だ。政治体制は国力の使い道の質を変える力があり、プレーヤーの戦略に応じて適切に選択することが大切だ。たとえば封建的な政治体制は軍事力の強化にすぐれ、民主主義は科学・文化の増進に適している。

 都市を建設して領土を獲得し、技術によって発展していくことで、都市はより多くの人口を扶養することが可能になり、また多くの「文化」を作り出すようになる。文化は本作の非常に重要な概念だ。なにしろ都市の文化力は、国境の広さを決定するのだから。

・領土の拡張

 本作の国境は、都市の文化産出量に応じた「文化圏」によってきまる。都市ははじめ建設されたマスの隣のマスまでにしか文化圏をもたないが、劇場や図書館といった文化的な施設を作り、維持していくことでこの文化圏を広げていくことができる。より充実した文化施設をもつ都市は、より広い文化圏を持つことができる。

 基本的には、文化圏を広げていくことと、まだライバル文明の文化圏が及んでいない空き地に新たな都市を建設することで領土を拡大していく。文化の貧弱な都市がライバル文明の文化的な都市の文化圏に隣接していると寝返ったりするので、単純に都市を増やすだけではダメなのだ。

 技術も都市も文化もライバルとのせめぎあいになる中盤以降は、領土を拡大する手段は戦争となる。戦争ではとにかく最新・高性能のユニットを、いかに沢山用意するか=軍事力が勝敗を分ける。このため特に科学力と工業力が強く影響するところで、文明の所有する土地の状況によっては、あまり良い選択肢にならない場合もある(砂漠や平原ばかりの土地だととても厳しい)。

 このため、土地の状況に応じた基本戦略として平和路線を行くこともあるわけだが、かといって軍事力をおろそかにしていれば、ライバルにナメられて一方的に蹂躙されることもある。逆に無理をして軍事力を充実させ続けることで内政がおろそかになり、科学で遅れを取ることもありがちだ。このような軍事と内政のバランスは、ゲームを通して常にプレーヤーを悩ませる問題であり続けるだろう。

 以上が基本的なゲームの力学になる。いっぺんに説明してしまうとこれほど複雑だったかと筆者自身驚いているが、何もいきなり全部理解する必要はない。本作のプレイはまず紀元前4000年、「都市1個」、「技術数個」、「施設なし」、「政治体制は専制主義のみ」くらいのシンプルな状態から始まり、数百年~数千年の時間(ゲーム内時間では数十~百数十ターン)を通して少しづつ要素が増えていくので、じっくりと学習しながらプレイすることができる。ひとつひとつの要素のルールは単純なので、いきなり全体を把握しなくても、次第に手駒が増えていき、気がつくと全体を把握できているという按配だ。

 このあたり、自分のペースで進められるターン制ならではの醍醐味。じっくり取り組むタイプの楽しみ方をオススメしたいところだ。

紀元前4000年。世界は広大な未知の領域だ 都市を作り、探索を行ない…… 他の文明との新しい出会いがある

新たな開拓者を作り、無主の地に派遣する そして都市を建設し、領土を広げていく いずれ他文明と国境を接し、世界の全貌が明らかになる


■ 基本精神を堅持しつつも徹底的に再構成されたゲームプレイ

 「Civilization IV」の発表の際は、旧シリーズの完成度があまりにも高かったために、詳しい情報が出てくる前には「これ以上いったい何を改善するんだ」とまで言われていたものだが、驚くべきことに、「ゼロから作り直した」といえるほど完全かつ包括的なゲームプレイ上の再構成が行なわれている。この章では、旧作のプレイ経験がある方のために、変更点についてざっと見ていきたい。

 結論を先にまとめてしまうと、従来のシリーズの持つゲーム力学を否定することなく、個々のルールがさらに複合的、包括的にゲームを構成するよう再整理された感じである。初代「Civ」以来のゲームの軸線は決してブレていないが、その軸線を基準として構成されるゲーム全体のありように「ねじり」を加え、よりプレイしやすく、また、より多様性のあるゲーム展開を可能にしたような印象だ。

・ユーザーインターフェイス刷新!

 スクリーンショットを見てのとおり、すべての画面要素が見直され、操作系が大幅に変更された。従来、都市に対する各種操作を行なうには都市管理画面に入らなければならなかったが、本作ではメインマップ画面でほとんどあらゆる操作が可能だ。都市画面を開き、詳細な管理を行なうことは、本当に重要なときだけに限られる。都市の施設もメインマップの3Dモデルとして表示されるので、ズームインするとおおむね確認できる。このためゲームプレイが非常にスムーズになり、迅速化した。また、初心者がゲームを学習しやすくなったと思う。

 また、3D化したことで、自由にズームイン、ズームアウトできるようになり、最大限にズームアウトすると、マップは地球儀のように丸い惑星となる(ただ、この部分のパフォーマンスは極めて悪いので、評判は良くない)。

・マルチプレイ機能大幅強化

 「Civ III:Play the World」、「Civ III:Conquests」でオマケ的にサポートされていたマルチプレイは、本作ではついにメインフィーチャーされた。本作の開発は当初からマルチプレイを念頭に置かれて進められており、各所にその影響が見られる。ユーザーインターフェイスの刷新によるプレイの迅速化は、その一環と言うことができるだろう。

 そして肝心の接続性が大幅に向上した。もっとも典型的な接続形態はGameSpyサービスを経由した方法と、直接ホストIPを指定して接続する方法であるが、どちらの方法でもセッションの確立はほぼ確実で、プレイ中に誰かが切断されることがあっても、そのプレーヤーが再接続してくるまで待ったり、または落ちたプレーヤー文明をコンピュータに任せてゲームを続けることもできる。あらかじめAIに担当させておいた文明に新しいプレーヤーが成り代わることもできる。ゲームを一旦中断し、後日再開する機能も問題なく動作する。

 しかしなお筆者のマルチプレイ経験では、人によってはうまく接続できなかったり、ときどき落ちたり、原因不明の「OUT OF SYNC」状態から復帰できなくなったりすることがあった。ではあっても、この種のゲームとしては接続性が高い部類と言える。

マルチプレイスタート画面が使いやすくなった。最大18人まで参加できる GameSpyロビーを利用して、世界中のプレーヤーと対戦することもできる 誰かが落ちてしまっても、再接続するのを待ったり、AIに託してゲームを続行するかを投票で決められる

いくつかの他国の領土に「明るい」部分があるのがわかるだろうか?これが国教の聖都を保持する効果で、布教した都市の視界を得ることができる
・新要素「宗教」

 いくつかの技術は宗教に関連付けられており、最初に関連する技術を発見した文明に属する都市でその宗教が創始される。例えば「瞑想(Meditation)」を発見すると仏教を創始できる。(他に、ヒンズー教、ユダヤ教、儒教、道教、キリスト教、イスラム教の合計7種類)

 宗教が創始された都市はその宗教の「聖都(Holy City)」となるのだが、聖都を所有する文明は、その宗教を国教にしていれば、その宗教が布教されている都市(ライバル文明も含む)の「視界」を得る! つまり、国教を他国にも広く伝播させておくと、ライバル文明が都市に駐留させている軍事ユニットの状況まで丸見えとなるわけだ。これは非常なメリットだ。

 宗教は「宣教師」ユニットで能動的に布教できるほか、交易路を通じて自動的に伝播することもある。また、ライバル文明に自文明の宗教を広めまくることで、ライバル文明の国教を自文明と同じ宗教に改宗させることも可能。ライバル文明(コンピュータ)の国教が同じだと有効度が非常に高まり、外交面で有利となるのでぜひとも活用したい。また宗教は次に紹介する公民にも深い関係がある。

各個の公民は技術によって解禁される。変更はわりと頻繁に行なうことがあるが、「宗教的」志向を持つ文明は、ペナルティ(無政府状態)無しに公民を変更できるのだ
・柔軟な政治体制システム「公民(Civic)」

 「Civ III」まで、政治体制は専制政治、君主制、民主主義、共産主義、共和制の中からひとつしか選択できなかったが、今回この部分が刷新され非常に柔軟なシステムとなった。

 今回の政治体制は、「政体(Government)」、「法律(Legal)」、「労働(Labor)」、「経済(Economy)」、「宗教(Religion)」と呼ばれる5つの「公民(Civic)」の組み合わせで決まる。各公民には5つの選択肢があるので、全体として5×5=25個の組み合わせがあることになる。

 これにより、例えば「神権政治(Theocracy)で自由市場(Free market)で奴隷制(Slavery)で言論の自由(Free Speech)が保障された警察国家(Police State)」というヘンテコな政治体制を作ることも可能だ。それぞれの公民には軍事、経済、文化等各方面でのメリット・デメリットがあり、その時々の状況に応じた公民を適宜選択することがゲームプレイ上重要な要素となっている。

 これにともなって政治体制変更が頻繁になったので、これにともなう「無政府状態(Anarchy)」(一切の生産活動が停止する期間)が短くなったのも見逃せない調整項目といえる。

・戦略的に重要となった「偉人」、そして「専門家」

 「Civ III」では軍隊のタネか大不思議の建設要員くらいにしか用途の無かった「偉人(Great People)」だが、本作ではその役割が大幅に変更され、軍隊は作れないが、より長期的な視野で活用すべき戦略資源となった。

 偉人は、都市に多くの不思議が建設されていたり、多くの「専門家(Specialist)」が配置されていると生まれやすい。偉人には「偉大な預言者」、「偉大な技術者」、「偉大な科学者」、「偉大な芸術家」、「偉大な商人」の5種があり、それぞれ役割が異なる。例えば偉大な技術者は大不思議を含む建築物を1ターンで完成させる能力を持つが、偉大な芸術家は莫大な文化ポイントを生産する能力を持つ。複数の偉人を同時に消費することで黄金期を発動することもできる。いずれも、能力を発動すると偉人は消費される。

 「専門家」は従来の「Civ」にもあった要素だが、より積極的にコントロールすべき要素となった。専門家は都市の労働者を変換することで配置することができ、「偉人」に似た種類がある。技術者は工業生産を向上させ、科学者は研究、芸術家なら文化といった按配で、配置している限り永続的に作用する。専門家は偉人の出現率に深く影響する。例えば宗教の専門家を多数配置した都市には、偉大な預言者が出現しやすくなる。したがって、「偉大な○○」は狙って出すことが可能だ。

 前述の偉人は、より効果の強い「超専門家(Super Specialist)」として都市に定住させることも可能であり、これは都市の生産力を永続的に向上させる意味で長期的に効いて来る使い方となっている。偉人が生まれたときに他の使い方と比べるにつけて、非常に悩むところになるだろう。

ユニットは戦闘に勝利すると経験値を獲得して昇進していく。左側のリストの横にある青くて小さなアイコンが、アップグレードした内容だ
・軍事ユニットの扱い。「地獄スタック」はもはや通用しない!

 さらに大きく変化したのが戦闘関連のシステムだ。従来の「攻撃力」、「防御力」の概念がなくなり、より包括的な「パワー」という単一のパラメータに置き換えられた。従来、「Civ III」などでは槍兵が騎兵に強いといった歴史的事実を表現するのに、「槍兵は防御力が高く攻撃力がない」といった方法で表現していたが、今回はより直接的に「槍兵は騎兵に対して100%ボーナス」という方式をとっている。

 これによりユニット間の相性がより厳密になり、打撃ユニット、遠隔ユニット、騎乗ユニット、槍ユニット、火薬ユニット、装甲ユニットなどの種類に応じて具体的な相性が設定されるようになった。

 また、ユニットは戦闘に勝利するたびに経験値を獲得し、レベルアップするようになった。レベルアップ時には複数のアップグレードから任意のひとつを選択することができ、最大で4つのアップグレードを後天的に取得することができる。これを利用して、都市攻略に特化した剣士部隊を作ったり、野戦に強い斧兵といった分化が発生するようになったので、従来のように単一のユニットを大量に重ねて運用するだけでは不十分になったことが言えるだろう。

 また、カタパルトや野戦砲などの砲撃兵器は、直接攻撃時に「スタックに対して巻き添えのダメージ」を与えるようになった。すなわち、「Civ III」プレーヤー自慢の大量スタックは、カタパルト一撃で大損害を受けることがあるというわけだ。大量のユニットは適切な規模に分割し運用する必要がある。50も100も重ねた巨大スタック(俗に「地獄スタック」という)はもはや通用しないのである。

 これにより戦闘が複雑になったか、あるいは単純になったかは議論の分かれるところだと思われるが、これまで以上に意味の有る頭の使い方をする必要があることは確かだ。

・技術ツリーも刷新

 技術ツリーに新たな構造が与えられた。従来はひとつの技術に到達するための道筋が一本しか与えられなかったが、今回はひとつの技術に到達するため複数の道筋が利用できるようになり、技術開発の自由度が増した。

 例えば「法律(Code of Laws)」の開発に必要な技術は「商業(Currency)」または「聖職(Priesthood)」のどちらかとなっている。「Civ III」までの技術ツリーであれば「どちらも必要」となっていたところだが、本作の場合「どちらか必要」であるのがポイントで、これにより、従来のようにしらみつぶし的に技術を開発していく必要はなくなった。太古技術である「聖職」からいきなり「法律」へ行ってもいいし、古典技術である「商業」から辿るのも自由だ。

 この変更により、技術的に立ち遅れた文明が一足飛びに最新技術を開発することも可能となったので、技術交換はもちろんのこと、外交を含めた要素として技術ツリーが「より面白い選択」になったといえる。

・その他諸々

 とにかく沢山、重要な変更点があるためひとつひとつを丁寧に見ていくことは難しいが、概要だけでも紹介しておきたい。

 まず、都市が都市数に応じて維持費用を計上するようになった。維持費用は都市の数に応じて急激に高騰していく。このため、無闇やたらな都市建設は、文明の財政を致命的な赤字に追い込む。このため、「Civ III」以前で常套手段であった「無限都市建設戦略」は、もはや通用しない。巨大帝国の経営は以前にも増して難しくなり、小国が大国を打ち負かすチャンスが増えた、といえるかもしれない。

 汚染の概念は無くなり、より包括的な「衛生」の概念に置き換わった。衛生は基本的に都市に生存できる人口上限を決める要因のひとつで、水道や穀物庫といった施設は都市の衛生を改善する。人口が衛生限界を超えると、超過した分の余剰食糧が「腐食」して、人口増加を鈍らせたり、止めてしまったりする。

 汚染がなくなったことで、「Civ III」では日常茶飯事であった、公害による汚染をひとつひとつ除去したりといった面倒な作業が、完全にいらなくなったのがうれしい。「Civ III」では度々、こういった細かい部分の管理(極小管理)の煩雑さが問題となってきたのだが、本作はいくつかの面でこの種の問題が解決され、プレイしやすさと迅速性が向上している。

 また、労働者ユニットによる地形改善もかなり変更された。村落は金銭収入を生み、時間と共に成長してより大きな富を生むようになる。風車や製材所や工房は工業生産を向上する新たな手段となった。全体として地形改善は選択肢が豊富になり複雑になったが、都市をそれぞれの特色に応じて特化することが可能で、かつ重要な概念になった。とりあえず「鉱山」、「灌漑」を作っていればよかった旧作に比べて、ずっと頭を使わせることは確かだ。

 なお、鉄道は前作のように無限移動ではなく、移動力消費を1/9に減らす機能を持つようになった(道路は移動力消費を1/3にする。この点は従来と同じ)。これにより広大な領土をまんべんなく防衛することがわりと難しくなった。とはいえ、鉄道で都市間を結んでおくことが重要なことには変わりない。

時代が進み、騎兵隊や戦車などの高度軍事技術が利用できるようになると戦争の世紀となることが多い。こうした攻撃側有利となる時代の節目では、軍事力を蓄えた文明が一気に決着をつけようとする。この影響はじつに破壊的で、ゲームの趨勢を一気に変えてしまう。これもまた醍醐味のひとつである


■ これだけの変更が加えられてもなお、本質を失わない面白さ

 変更点の解説をするだけでも膨大な字数となり、きりがないのでひとまずこれくらいにしておきたい。他のゲームであればこういった変更点はたいてい「他のもっと本質的な変更に埋没」することが多いので、ずっと短い説明で切り上げてしまうのだが、本作の場合は、それぞれの変更点をうまく一般化し、全体を単純な説明に置き換えることが難しかった。

 いずれもゲーム性を語る上で重要なポイントだし、ひとつひとつが独立した要素であるにもかかわらず、他の要素と深く関係しているので、完全なる分離は難しい。これも、本作がひとつのゲームルール体系として過不足なくまとまっていることがその要因といえるかもしれない。

 変更点が多いとはいっても、実際に本作をプレイする感覚は、やはり伝統的「Civilization」シリーズそのものである。

 紀元前4000年の素朴な時代に始まり、時代を経るにつれて次第に複雑化・大型化していくゲームプレイ内容。初めは暗く未知の空間だった世界がだんだんと見えてきて、手の届く範囲になっていく醍醐味。これらが絡み合って「あと1ターンだけ!」の魔力を生む原動力となっている。初代「Civilizaton」以来続くその本質は、やはり健在だった。

 さらに言えば、グラフィックが3D化され、ユーザーインターフェイスが抜本的に改善されて、メインスクリーンだけであらゆる操作が可能になったことで快適さも向上した本作は、前作「Civilization III」に増してさらに危険な存在といえるだろう。一旦ハマってしまえば毎晩の寝不足が本気で心配され、そういう意味で一定の覚悟を要求するゲームというのも、そうそうあるものではあるまい。

 もちろん本作も完璧ではなく、現時点では起動時のデータファイル(XML)を処理するときに日本語環境ではエラーが出てしまうことや、ズームアウト時(地球儀ビュー)にグラフィック処理が異常に重たくなること、あるいは複数ユニットの選択操作が煩雑なところなど、インターフェイス部分の完成度についてはいろいろと不満が残る。ちなみにデータファイル処理はOSのロケールを一時的に英語(U.S)に変更すれば回避でき、その他の問題もそれほど致命的ではないので、実際それほど気にならないことではある。

 さて、本稿では「Civilization IV」の基本を紹介した。続くレビュー後編では、実際のプレイ模様からゲームの魅力をたっぷり伝えていきたい。シングルプレイ、マルチプレイ両方での感触をお伝えする予定である。

ゲームの統計情報は都市、生産力、文化、軍事などいろいろな側面で確認でき、これを眺めるのもゲームの大きな楽しみのうちの一つ。統計好きにはたまらない。ゲームが終了すると歴史がプレイバックされ、最後にプレーヤーに称号が与えられる。「Augustus Caesar」の称号をもらうには、どれだけがんばればよいのだろう……。

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【Civilization IV】
  • CPU:Pentium 4 1.2GHz以上(Pentium 4 1.8GHz以上を推奨)
  • メモリ:256MB以上(512GB以上推奨)
  • HDD:1.7GB以上
  • ビデオメモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)


□「Civilization IV」のページ
http://www.2kgames.com/civ4/home.htm

(2005年12月15日)

[Reported by KAF]



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