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変わりつつある「SEGA AGES 2500シリーズ」
~奥成プロデューサーに直撃インタビュー~

10月27日 発売

価格:2,625円(税込)

奥成氏
 10月27日、セガ往年の名作をリメイクするシリーズ「SEGA AGES 2500シリーズ」から、「Vol.20 スペースハリアーII ~スペースハリアーコンプリートコレクション~」と「Vol.21 SDI & カルテット~SEGA SYSTEM 16 COLLECTION~」の2タイトルが発売された。

 ここで「……え、だから何?」などと思われる人も少なくなさそうなので念のため前フリしておくと、本シリーズは「Vol.18 ドラゴンフォース」からモチーフとなる作品の選定、フォーカスの当てかたなどの各要素が微妙に変化してきている。理由は10月21日にリニューアルされた「SEGA AGES 2500シリーズ 公式サイト」をチェックすれば一目瞭然なのだが、その影には“某プロデューサーの存在”がある。

 プロデューサーの名前は「奥成洋輔」氏。セガサターン立ち上げにも参加している奥成氏は、2005年度発売タイトルから「SEGA AGES 2500シリーズ」全作品のプロデュースを担当するようになったという。筆者の場合、知人の石井ぜんじ氏が「Vol.20」と「Vol.21」付属冊子の制作に協力していたことから「今度のは(さらに)凄いよ。超こだわってる」と吹き込まれていたためチェックは必然といった流れだったが、新作や大作に比べると露出が少ないシリーズだけに、世間的な注目度は決して高くないように感じられる。

 「莫大な宣伝費をかければ必ず売れる」というアプローチが必ずしも正解でないことは、恐らく本記事を読まれている読者の方々を含め、すべての人が骨身に染みて感じておられることだろう。ただ、だからといって「良作は放っておいても売れる」とは限らないし、むしろ埋もれてしまうことのほうが多い。義士をきどるわけではないが、まがりなりにも古参ゲーマーゆえ「こんなん出てますよー。発売されますよー」と声を大にして叫びたくなってしまうわけだ。

 最初は「製品レビューが無難かな」とも考えたが、シリーズそのものが変革しつつある状況を鑑みて、ここは奥成氏に全体を含めとことん語っていただくべきだろうとインタビューの機会を設けさせていただくこととなった。興味がある人はもちろん、知らなかった人はぜひともこの機会に「SEGA AGES 2500シリーズ」に改めて注目していただきたい。


―― 以前からの流れはあると思うんですけど、奥成さんがプロデュースを担当されるようになってから「SEGA AGES 2500シリーズ」がリニューアル(刷新)されつつあります。語弊があるかもしれないけど“仕切り直し”に近い状況になっているというのは、ユーザーさんにきちんと伝わっていないように思われます。

奥成洋輔氏(以下、奥成) そうですね。そもそも「SEGA AGES 2500シリーズ」が始まったのは一昨年の夏か秋くらい……けっこう長いシリーズなんですけど。当初はD3パブリッシャーさんとセガで合弁会社「3D AGES」を作りまして、こちらのほうでゲームの企画と開発をしていくと。それにセガが監修という形で参加して……作るものはセガのゲームなんですけど、あくまでも監修という形でシリーズを続けていたんですが、そのなかで色々と「こうしたほうがいいだろう」という話をしていくうちに、最終的に3D AGESを発展的に解消して、シリーズを改めてセガ単独で続けていこうということになったのが、今年の頭頃なんですね。

―― 発展的解消ということは、もう3D AGESは存在しない?

奥成 今はもうありません。セガが直接開発に携わることになりましたので、既存シリーズの反響を考えたうえで、また新しいシリーズをやっていこうと。それを今年からずっとやっているというところですね。正確には、4月に「ファイティングバイパーズ」、8月に「ドラゴンフォース」が出まして。こちらのほうは、かなりユーザーさんに好評だった部分がありました。僕が初めてエイジスに参加したこの2本が、プレ期間みたいな感じ。企画からすべてセガでやっていこうという形になったのが「スペースハリアーII」と「SDI&カルテット」になるんですね。ここから発売していくシリーズ作品は、企画・開発ともにセガが手がけています。

 タイトル選定にあたっては、これまでの反響をもとに、なるべくユーザーさんの声が反映されるようになっていけば、というかたちで。とはいえ、さまざまなアプローチがありますんで。夏頃にまとめてラインナップを発表したときは(その時点で)まったく着手していないタイトルも入っていたんですが(笑)。ユーザーさんには、今までの「SEGA AGES 2500シリーズ」っていうのは好評、不評、色々あったと思うんですけど、これからはこういうラインナップのものを作っていくので、もう一度「SEGA AGES 2500シリーズ」に注目してくださいというアピールを行ないまして。それからしばらく経って、やっと発売できるようになったのが、この2本ということですね。

―― 3D AGESから引き上げてきたデータやリソースはあるんでしょうか。あるとすれば、それが今回活かされている部分は?

奥成 3D AGES自体、D3パブリッシャーさんとセガの両社員が入っていく形で作られた会社でしたので……もちろん3D AGESの関係をしていた社員もおりますし、3D AGESで得たアンケートハガキなどは、こちらに全部あります。その内容も今回のものにも十分反映していますし、今後もそこを反映させていく可能性はあるだろうと思います。ただ、単純にソフトのアンケートだけではなく、僕がインターネットで見つけたファンサイトの反響とか、そういうところも拾ってたりしますね。セガのゲームでくくればひとつなんですけど、これが家庭用、アーケード、オールド、新作など、細かくカテゴライズしていくと色々ありますので、それらの人たちの意見から特にいいものを拾っていこうかなと思っていまして。

 今回特に発売したものは、まずは「SEGA AGES 2500シリーズ」というものに対して「セガサターンのときのSEGA AGES」のイメージ、アーケードのゲームを家庭でそのまま楽しみたいというお客さんが少なからずいて、この人たちが「そのままもやりたいんだよ。3DリメイクされたSEGA AGESそれはそれでいいけど、オリジナルのものが遊びたいんだよ」という声がありましたので、まぁこれはあえて「スペースハリアー」という既に出したタイトルをもう一度発売するという……内部的には英断だったんですけど(笑)、これを出すことによって、我々の気持ちをみなさんに理解していただければなぁ、というところはありますね。

―― アレンジを必ず含めるといった“しばり”みたいなものはない?

奥成 そういうものは特にないですね。基本的なコンセプトとしては、「セガがこれまでにリリースした名作の数々を現代に甦らせよう、そういうコンセプトのもとで作りましょう」と。そこで、現代に甦らせるという言葉をどう解釈するかで、色々な方向性があったんですね。最初に出てきたタイトルっていうのは、現代に甦らせる=PS2の機能を使ったリメイクだろうということで「ファンタジーゾーン」を3Dにしてみたり、「ファンタシースター」のグラフィックをパワーアップさせてみたり、「スペースハリアー」みたいにシステム自体を延長線上で進化させていくという方向性であったりとか。そういうことをやりつつ、でも見た目は残そうという「バーチャレーシング」があったりとか。

 「ゲイングランド」とかは、見た目は全然違うんだけど、やってるときのテイストをできるだけ近づけようとか。そういうなかで、ひとつの転機になったのが「バーチャファイター2」ですね。「バーチャファイター2」に関しては「そのまま出してみよう」とやってみたところ、かなりユーザーさんの反響を頂戴して「じゃぁこの方向性というのは今後もアリじゃないか」みたいなところがあって、その後も続けていくことになったというところですね。

―― 今回の2本については「バーチャファイター2」同様にそのまま?

奥成 そうですね。当時のものを完全なかたちで残すというコンセプトで作った2本。これらは、アーケード版から違っている要素を可能な限りなくす、と。バグも含めてそのまま移植するというこだわりにすべてを注いだタイトルになります。ただ、これはこの2本に関してであって、今後出すタイトルがすべてこのコンセプトで作られていくわけではありません。そこは誤解されやすいところなんですけど。次に出す「アドバンスド大戦略」は、当時のものをそのまま残すというコンセプトのなかに、今時のグラフィック解釈などを加えることによって、また新しい要素を見せていきたいと思っています。ただし同じメガドライブ移植でも、「ガンスターヒーローズ」は、まるっきりそのままをもってこようということであったりとか。そこは色々ですね。

―― ソフトごとにコンセプトを与える際、基準になる決定的な要素はなんですか?

奥成 タイトルごとに「お客さんがどういう形を望んでいるか」というのがあると思うんですよ。今回の2本になると、もう20年くらい前のタイトルになってしまうので、ゲームとして原始的な部分もあると思うんですが、ここまできてしまうと「思い入れの要素」がとても強いので……自分の思い出を忠実に味あわせてあげるべきだろうと思っていたんですね。特に「スペースハリアー」は、すでにリメイクが出ているので「そのままが遊びたい」というお客さんのためのソフトとして作りましたから、「スペースハリアー」に関しては、そのコンセプトしかないわけですね。ただ、その当時の「元の『スペースアリアー』がやりたいんだ」といった人が、どの「スペースハリアー」が元なのかと考えたとき、必ずしもアーケード版を指していないことがあるわけですね。当時たとえば小学生くらいの子だったりすると、アーケードで「スペースハリアー」をやっていない可能性がある。

―― 原体験が一緒とは限らない、と。

奥成 そうですね。その場合は友だちの家でMk-III版を遊んでいたかもしれないし、メガドライブのときに買った「スペースハリアーII」かもしれない。でも、そういう人たちはみんな、たぶんひとつの「スペースハリアー」という言葉で語っているだろうと。それなら、セガとして可能な限り「スペースハリアー」を集めてしまおうということで「コンプリートコレクション」というサブタイトルをつけました。

―― 色々入れつつ、基本的にはきちんと再現されている?

奥成 はい。「SDI&カルテット」も、たとえばグラフィック的にリメイクするなら想像は容易です。ただ、これに関しても「SDI」というち密な部分のゲーム性については「“そのものであるべき”である」という部分があって。当時「SDI」が好きだった人は、何が好きだったかっていうと、完全なパターンを学んでやっていくところですよね。だから、そこが完全に再現されていない、できないのであれば「SDI」は作るべきではないし、それなら「SDI」も忠実に移植するべきだろうっていうことになっていくわけですね。

 ただ「SDI」だけではちょっと弱いんで(笑)「カルテット」も加えてみました。そういう部分も含めて、当時のアーケードが、テーブル+レバーとボタンでプレイしていた時代から、少しずつ色々なものを加えて進化していったなかでも、特殊なゲームだった2本をカップリングすることで……(パッケージを指差して)ここに“操縦(コントロール)のきかない面白さ”という自虐的なコピーを入れてあるんですけど(笑)、今のユーザーさんたちが、こういうゲームをどう解釈するのか。昔遊んでいた人も、今やってみて改めて「こういったゲームは他にないな」って思えるような面白さを、ここで味わってもらいたい。

―― ゲームの概念が、今と昔ではだいぶ違ってきています。ある意味、代用がきく、比較できるゲームがない。

奥成 たぶん、最初にやると「なんじゃこりゃ」って思うんでしょうけどね。当時17~8年前にやった僕らも、最初やったときは「なんじゃこりゃ」だったんですけどね(笑)。でも、何度もプレイしていくなかで、もしくは上手い人のプレイを見ることで「あぁ、このゲームはこうやって遊ぶものなのか」って理解して楽しんでいけるっていう、最近はあまりないスタイルの、ちょっと強引なゲームではあるんですけど。そういったところを楽しんでもらうには、なかなか面白いんじゃないかと。そういう意味で、名作を甦らせるという部分に関して完全復刻していくのが「SDI」にとって最もいい方法なんではないか、という判断ではあるんですね。

―― 完全移植にこだわった、と。

奥成 「完全移植」にこだわったからには、ソフトそのものにも、記録、ミュージアムとしての価値を持たせたいという部分がありまして、できるだけそういった要素を詰め込んでいこうと作ったものが、この2本の内容であったり、コンセプトであったり。そのあたりで、マニュアルに石井ぜんじさんのご協力をいただいたわけなんですが。

―― 当時やっていたゲームと同じようなものを楽しみたいというときに、ポンッとソフトがあるだけでいいかっていうと、やっぱり当時は色々な部分があったわけで。ソフトだけじゃない、なにかパッケージされたものが必要になってくると思うんですよ。たとえば、今だったら「SDI」で人の攻略パターンを見て進歩していくって部分は、単にディスクが1枚あるだけでは再現できない。すべてを詰め込むのは不可能なんだけど、それに近いところまで……たとえば、この2本にリプレイが入ってるっていうのは、そういう意味ですね。

奥成 「スペースハリアー」に関していえば、当時を知っている人が購入するのは容易に想像がつく。じゃぁ「スペースハリアー」ってどんなゲームだっただろうかっていうことを何となく覚えている人に、買ってみてまず最初に……説明書の最初、操作説明する前にプロローグを入れて「『スペースハリアー』とはこういうゲームだったよね」っていうのを再認識してもらうと。で、「スペースハリアー」前後のゲームセンターの事情であったり、そこで「スペースハリアー」がいかに鮮烈だったかっていうことを知ってもらったうえで、ゲームをプレイしていただくと。ゲームを知らない人には収録されているリプレイをみていただいて「こういうふうにプレイするんだな」と理解してもらうこともできる。

―― メジャーとはいえ、古い作品だけに知らない人がいてもおかしくないですし。

奥成 あと「スペースハリアー」といえば筐体。本当は筐体まで移植できたらいいんですけど(笑) そこで筐体の話とか、当時のスタッフに「『「スペースハリアー』とはどんな状況で作られたものであるのか」とか「ハイスコアとか、こういう楽しみ方をしていたよね」などの思い出を説明書のなかで語ってもらうことで、このゲームにまつわる記憶をどんどん思い出してくれるだろうと。あとは、ソフトのなかにあるギャラリーモードで、当時のチラシや取り扱い説明書であるとか……もう捨てちゃったけどしばらく持ってたとか、これはお店で見た覚えがあるなとか、そこから発展して「俺の友だちに当時こんなバカなやつがいてさぁ」みたいなところまで思い出せたりするかもしれないし、「スペースハリアー」の横で一緒にやってた別のゲームのことも思い出すかもしれない。

 ただ、「スペースハリアー」みたいなゲームなら、きっと“ゲームの楽しい記憶”を思い出せるはずなんですね。そこから「そうだよ、俺はゲーム好きだったんだよ」って、「スペースハリアー」の頃に一番ゲームをやっていて、たぶん今はあまりゲームをやってない人たちが、当時のゲームに対する熱い想いを甦らせるためのサポートができるようなところまで作ってあげたかったというのがあって、そこをサポートするのが今回の説明書だったり、ソフトに入れたギャラリーモードなわけです。

 さらに、「スペースハリアー」を最初に買っていただいた人が、ゲームそのものを遊ぶだけでなく「あぁ、こういうこともしてるんだ」っていうことで「じゃぁ『SDI』も買ってみよう」と思ったとする。このゲームはやったことがなかったけど、マニュアルを読んで「なるほど、こういうゲームなのか」と理解して楽しんでいただけたら面白いなぁ、と思っています。当時配布されていた小冊子を復刻したりとか。ぜひとも懐かしさを味わって欲しいなぁと。なんかその、きいてやるよりもマニュアルとかで見て、実際に触って楽しさに気が付く部分が大きいと思うので。


―― この時点で、過去のシリーズ作品とは随分力の入りようが違う気がします。別に3D AGESさんを悪くいうわけではないんですが……。

奥成 セガでやる限りは、どこまでできるだろうっていうところの「限界までやりましょう」、っていうのが、今回の2本ですね。過去のシリーズにも、いいところはたくさんあったと思うんです。まず、昔のゲームをもう一度やっていこう、できるだけ安く手にとりやすい価格で売っていこうという姿勢であったりとか。そういうところに関しては、3D AGESという会社を立ち上げた意義は非常に大きかったと思っています。ただ、100%のユーザーが満足していたわけではない。ではこれまでの結果に不満を抱いていたユーザーさんにも満足してもらおうと考えたときに、ここまで極端なものを作ってしまったという。

 ただし過去のタイトルを全否定するつもりはなくて、実際(過去のシリーズ作品が)面白いってお客さんも少なからずいて、今回と以前でどっちのソフトが売れるかはまだわからないわけですからね。ただし、完全移植を望んでいる声があるんだったら、まずそういう声にも応えていきましょう、と。これがそういったお客さんの数多くの支持を得られたならば、今後もこれを続けていくという方向性でもっと他のソフトもやりましょう、たとえば「ファンタジーゾーン」などを、再度こういう形で作っていくのもアリではないか、ということもあるんですけど、まずは「こういう商品を欲しいですか?」という意味での市場の結果次第ですね。

―― 市場調査的なニュアンスも含まれている?

奥成 「SEGA AGES 2500シリーズ」という中での忠実移植での究極までやったと思うので。その究極のものが、お客様に喜んでもらえるか。やってみたとき「あぁ、やっぱりリメイクのほうがいいや」買ってくれないお客様が多かったりすれば失敗ですよね。そもそも「忠実移植はいりません」という声が大きかったら、この方向は間違っているということになっちゃうんですよね。

 ただ、僕らも商品として出す限りは、これにはこういうお客さんが少なからずいるんじゃないかと思っているから出すわけです。常にゲームを細かくチェックしているお客さんだけじゃなくて、ゲームショップにたまに立ち寄ったお客様が「懐かしい!」と思って手にとってくれるんじゃないか、という期待もしています。なので個人的には、できるだけ長い目で見られればいいなとは思っているんです。特に業界的に。過去を振り返るというか、過去の名作を本当にきちんと残していくというのは、なかなかされていないので、そういうことができる「SEGA AGES 2500シリーズ」でありたいな、という願いでもあります。

―― 僕らの年代は忠実に残して欲しいという思いが強いわけですけど、作り手側には若い人もいるし、違う意見もあると思います。そのあたり、社内的なコンセンサスなどは取れているんでしょうか?

奥成 もちろん、それはそうです。まず基本的なものを考えたのが、私と、1作目からずっとシリーズをみている下村ですが、今回のラインナップを考えていくなかでは、色々な社内の意見もきいてます。上からの意見もありますし、「面白そうなことやってるんで、僕にもぜひ一言いわせてください」という人もいますし。作っている最中にも「『SDI』作ってるらしいときいたんですけど、僕POPもってるんで、良かったら貸しますよ」とか(笑) そういう人が色々出てきてくれたりするので。そういう部分での社内の協力ってのも、かなりあります。

―― そういう人が現場に残ってるのがセガらしいというか(笑)

奥成 どこの会社でもあると思いますけど違うんですか? 当時からゲームを作っている人の声と、当時ファンだった人の声とか、色々あって助かります。

 たとえば、サターンの頃の営業現場にいた経験を持っている人だと、「『SDI』は、ちょっとマイナーじゃない? 『ダークエッジ』のほうがいいんじゃない?」って(笑)。当時ユーザーにさんざん『ダークエッジ』出してくれっていわれた声をきっと覚えてたりするんですよね(笑)。ただし、上から順に選んでいったわけではないです。色々な方向性を検討するなかで、現実的に出せるもの、あとは期間内に開発できるものを選んでいったということはあります。

―― 先ほど有志の協力というのがありましたが、現在プロジェクトの規模はどの程度なんでしょうか? 各タイトルごとに個別編成?

奥成 “移植”という意味でいうなら多いと思います。これはゲーム内でスタッフロールをすぐに見られるので(メニューから選択可能)を実際に見ていただければわかると思うんですが(ここでソフトを操作して実演)最近の通常のプロジェクトからいえば決して多くはないですけど、忠実移植という意味でいえば、ひとつひとつに専門的なメンバーを加えているので……。

―― 普通のリメイクではありえないくらいの工数がかかってる?

奥成 そうですね。そこは、セガの社内外含めて限りなくボランティアで進んでいるようなところがありますね(一同笑)。「スペースハリアー」自体、いってしまうと外部の開発会社であるエムツーで制作してるんですけど、向こうもたぶん予算以上のスタッフを組んでいるなんじゃないかと心配になります。(画面を見ながら)プログラマーの人数が……6人いますよね。デザイナーがいないのはわかりやすいと思いますけど(笑)、こう見ると、やっぱり2,500円でベタ移植をするプロジェクトとしては、プログラマーの人数が多すぎるとは思いますよね。あとはスタッフロールでは、スペシャルサンクスがとても多いですね。一番上の人は何やら見覚えがある……(笑)。

―― クレジットをメニューから即参照できるソフトはありますけど、これスタッフロールのスクロールを途中で止められるんですね。普通やらないよなぁ……。

奥成 これは作ったスタッフが見たいということなんでしょうけど(笑)。あとはギャラリーも楽しんでください。社内に残っていた資料やイラストをあちこちから集めてきたり、僕の私物もたくさん使ってます。

―― 閲覧はもちろん、かなり細部まで拡大できるのが凄いですね。時勢がら、複製とか盗用を恐れてやらないメーカーさんが非常に多くて。ここまでするのは、かなりの英断だったのでは?

奥成 このソフト1本もってて、これ1個あればいいという図鑑になるものを考えていたのでそういう発想はありませんでしたね。取説に載っている一部のキャラクタ紹介なんかも消す、消さないという話もありましたけど。あるもの全部入れました。


―― ここまで徹底していると、そもそもシリーズ全体を仕切り直すといった意見が出たのではありませんか? たとえば「NEW AGES」みたいな。

奥成 そういう意見もありました。ただ元から基本的なコンセプトが同じですから、そこは変えずにいこうと。「SEGA AGES 2500シリーズ」というブランドはこれからも続けていきたいと思っていますし、既存のラインナップも同じように売っていく。今まで出してきたソフト自体、実は今も売れ続けていたりするわけなんです。それは、そういったものを喜んでくれるお客さんが少なからずいらっしゃるということなんで。色々なコンセプトがあるけども、そのほうがお客さんに手にとってもらいやすいわけです。まぁ困ったのは予算の問題くらいで(笑)。

―― 生々しい話のついでというか、凄く聞きづらい質問なんですけど……いわゆる“想定されている成功ライン”があると思うんですが、現状はいかがでしょうか?

奥成 厳しいですね(あまりにも明るくいうので一同笑)! 僕のやってるなかでいくと「ドラゴンフォース」とかは、かなり頑張れたかな、というのはありますけど、この2本についてはまだ発売してないのでわかりませんが……。

―― 問屋の段階では?

奥成 苦戦してます。「『SDI』というゲームを知りません」という人にも理解していただくのがとても難しい。セガとしては、もうとにかく「お店に置いてくれれば売れますから、1本でも置いてください」と、信じてもらうしかない。

―― お客さんの反応から入れないから、辛いですね。

奥成 そうですね。あとはお店の目利きとお客様のニーズにどれだけ落差があるかどうかは、蓋をあけてみなければわからないので。この記事を読んだ方はどんどん買ってください(笑)。

―― この2本は、エミュレーターもイチから作り直しているんですよね?

奥成 そうです。「スペースハリアー」には、アーケード、Mk-III、メガドライブ、あと隠しでゲームギアといった各エミュレーターが入っています。「SDI&カルテット」だと、システム16AとB。大別はできるけど、同じ部分もあれば違う部分もある。これについては開発元のエムツーさんでも相当苦労してましたね。Mk-IIIエミュレーターとかも、ほぼまともに動いていたものを、一度まるっきり作り直してます。

―― Mk-IIIエミュレーターの作り直しだけでも、相当な工数になるわけですが……。

奥成 それはやっぱり再現度に満足がいかない部分であったりとか。特に今回こだわった部分でいくと“当時のプレイ感覚を大事にする”っていう部分でやった“入力遅延を無くす”というところですね。「SDI」とか「スペースハリアー」みたいなアナログ操作のゲームで特に影響が大きい。そういった部分を、当時のままで遊んでいただきたいなぁというのがありまして。

―― 入力遅延は、これまであまり指摘されてこなかった部分ですよね。

奥成 ボタンを押した命令が一瞬遅れるというのは昔のゲームほど致命的になります。サターンのころとは違って、最近こういうものがエミュレーションという方式で移植できるようになったけど、普通に作ると必ず発生する、移植ゲームの新たな、かつ最大の問題ですが、見た目の問題ではないのでそこを知らない人が多い。だから、「俺、このゲーム下手になったなぁ」とか「このゲーム、いまいち面白くない。すぐ死んじゃう」っていうのは、微妙なボタン操作がダイレクトに反映しない入力遅延により起きている問題なのかもしれないんですよね。もちろん、シビアなゲームじゃなければ(遅延の解消は)無くてもいいものかもしれない。でも、当時のプレイ感覚をそのまま生かすためには遅延はまずいわけです。そういう意味では「SDI」を移植すると決めちゃったからには、それ(入力遅延)があるとまずいんですね。

―― もう、それだけ手間がかかることを完璧にやるしかなかった?

奥成 今回、特にスーパーリプレイを入れるからには、当時のテクニックが通用しなきゃいけないので、リプレイを収録できるまで完成度を上げるのに、非常に時間がかかりましたね。入力遅延を無くすにはどうするかっていうと、単純にプログラムを高速化しなきゃいけない。高速で回すためにはプログラムがどんどん早く、単純に考えたら倍早ければいいってことになる。それができるだけの技術力とこだわりを持てるスタッフが揃ってて、作れているのがソフトのクオリティにつながっている。それは自負できる部分であると思います。

―― 逆にいえば、この先シリーズを続けていくにあたり、特定のタイトルにきちんとモチベーションを維持できるスタッフが必須ということになるんでしょうか。

奥成 そこは多分、大丈夫です。そもそも誰も作りたがらないゲームは作らない(笑)。「SEGA AGES 2500シリーズ」のなかでいえば、特にこれらのタイトルは「やりたいよね」っていうなかで作れた2本ではありますけど、今後のタイトルであっても「そもそも作った人にやってもらえばいいじゃん」っていう発想で開発しているプロジェクトがあります。たとえば「パンツァードラグーン」、「ダイナマイト刑事」、「アドバンスド大戦略」は、オリジナルを作ったディレクターに「もう一度作ってください」とお願いしているので、コンセプトがずれることはないんですよね。リメイクするとき、移植するときに「どこを重要視するか」をわからないで作ってると大変なことになったりするじゃないですか。


―― 現状、手がけたなかで一番難産だったタイトルは?

奥成 どれも難産ですけど……一番難産しそうなのは「ギャラクシーフォース」ですかねぇ。

―― した、じゃなくて“しそう”ですか!(笑)

奥成 Model2よりもエミュレーションが難しいゲームになりそうなんで。とにかくアーケードゲームはゲームごとに異なるチップや違うプロテクトをかけていたりするので、それを全部解析していくというのが、とても骨の折れる作業なんですね。もちろんスルッといけるものもあれば、そうでないものもあるんですけど。

―― プロテクトなどは、技術力が逆にアダになるケースですよね。

奥成 「カルテット2」はスムーズにできたのに「カルテット1」でどうしても上手くいかないとか。全然違わないのに! っていう(笑)。そういうことがファイナルの直前まであって、困ったりしました。それから、どんなにゲームが好きでも、完全に知っているわけではないので「これで正しいんだろうか」とだんだん不安になってくる。バージョンの違いとかもあったりするじゃないですか。本当にこれで正しいのだろうかと不安になってきたりとか。違いが明確ならば逆に複数入れてしまったり。今回、「SDI」だと3バージョン入れたりしていますが、実はロムは厳密には9種類あったんです。その中の大別して3種類を入れました。

―― 検証の手間も、そのぶん増えてしまうわけでは?

奥成 今回、エフェクトを修正したものも含めたんで、作っているスタッフのなかでは、アーケード版「SDI」が3種類+1本、Mk-IIIが国内版と海外版、「カルテット」がI、II、ダブルターゲットが国内版と海外版があるので、実は10本ぶんのゲームを収録してるのと変わらないんですよね(笑)。

―― でも2,500円と。

奥成 もちろん「SDI」のMk-III海外版違いとかは比較的スムーズに動きますけど、大変は大変ですね。単純に画面表示を切り替えてるんじゃなくて、別のROMイメージが入ってるわけなんで。それは別の動作検証をしなきゃいけない。

―― 難産じゃないものがない、という状況ですね。

奥成 特にこの2本に関しては最初ということもあったので……みんなどこかで「たぶん何とかなるだろう」と思っていたら、あちこちで大変なことになった(笑)。「スペースハリアー」に関してもやっぱり同じようなところがありますね。あとは再現度の見極め。細かいところでいくと、アーケードを忠実移植するのがいいのか、バグは直すのがいいのか、色々悩んだりして。結局、アーケード版「スペースハリアー」は可能な限りアーケード版を再現するという方向にもっていった。処理落ちとかSEが一瞬鳴りっぱなしになるとか、そういうところも再現したんですね。

 当時アーケードでやってた人もしくは基板を持っている人なら当然なんですけど、「スペースハリアー」の場合、アーケード版をやった人よりもサターン版、32X版、PCエンジン版などをやってる人のほうが多かったりするので、処理落ちをすると違和感を与えるんじゃないかとか、SEが鳴りつづけると「何だこれ」と思われるんではないかと。残すか否かはスタッフ間でも色々あったんですけど、今回はオリジナルを尊重してすべて残すことにしました。だから、サターン版をずーっとやりこんでいた人には、若干の違和感があるかもしれないですね。

―― 違和感でいえば、アナログの分解能やレスポンスの面でデュアルショック 2で十分対応できると判断されたのでしょうか?

奥成 それが実現できたとしても、もの凄くシビアなことをいってしまうと、トラックボールがない。マウスもUSBを介してしまう限り遅延があるんですね。デュアルショック 2でプレイしている限り遅延がなかったとしてもマウスはある。それでも「USBぶんの遅延しかない」から、今回のリプレイが収録できたっていうところはあるんですね。本当はオリジナルのコンパネと同じものがあればいいんですけど。うちの子会社のセガ・ロジスティクス・サービスにコンパネを持って行って「これ作ってくれ!」といったんです。真面目に分析してくれて「だいたい3割くらいのお客さんが買うとして……10万本売れればなんとかトントンかと思います」といわれて(一同笑)、それはちょっと難しいかなぁってあきらめたところはありますね(笑)。

―― コンパネでやりたいって人は必ずいるでしょうからねぇ。

奥成 自分のソフトを否定してるみたいですけど、「SDI」が上手い人は(手元を)見ないじゃないですか。ひねった手首の角度であってるから、トラックボールだったらいいわけじゃないんですよね。あの大きさのアレじゃなければダメなはずなので、そのトラックボールが再現できていない時点で「SDI」は再現できていないということになる。「スペースハリアー」も実はそうで、レバーの重さと角度の部分っていうのが再現できないんで、HORIさんのフライトスティックをもってきてやっても、アーケードとまったく同じにはならない。開き直って今回「スペースハリアー」のリプレイは、デジタルパッドでプレイしているものを入れたりしてるんですけど……その分、ちょっと面白くとれたからそれで良いかと。

―― アナログ入力で80分程度リプレイが収録できるっていうのは、データ量的にも多いですし、処理的にもきついんじゃないかなと思ったのですが。

奥成 そうですね。全部の入力を見てますから。2プレーヤーでも撮れるようになってますし。僕は正直、リプレイはバグの温床でもあるので厳しいんじゃないかと言っていたんですが、スタッフが「でも、絶対にユーザーに撮らせたい」って部分があったので、じゃぁ頑張ろうってやったところ、無事に実現できたので良かったかなと思います。検証しなければ全部のソフトがセーブできても良かったんですけど、さすがに心配だったし、そこまでできなかったっていうのはありますね。ただ、「カルテット」はエンディングがない無限ループですし、第一ひとりで黙々とやってる「カルテット」の上手なリプレイを見てて楽しいかどうか(笑)。やっぱり、見てて楽しくなきゃダメだなというのがありましたので断念しました。

―― 「スペースハリアー」は、クレジットをガンガン入れれば誰でもエンディングが見られますからね。

奥成 「スペースハリアー」は、デジタル操作を入れるかどうかもポイントだったんです。さっき言ったように、アーケード版よりも家庭用をやっていたユーザーのほうが、もはや多いんではないかという部分があったんで。そうすると、ハリアーが中央に自動的に戻るということ自体に違和感を覚えるお客さんが多いんではないかと。そういうところがあって、無理やり入れました。

―― 中央に戻ることよりもアナログスティックの軽さに違和感を覚えましたが、これはオプションで調整できますね。

奥成 そこは手抜きかもしれないけど、オリジナルと違うコントローラである限りは絶対にベストはないので、後は自由に調整してくださいということです。PS2はUSBで汎用性があるから、もしかしたら他にも色々と動くかもしれない。マウスとかは特にそうですね。MACはわからないけど、Windows用ならほぼ動くと思います。

―― 「スペースハリアー」ですが、アニメーションパターンの処理落ち部分に、他の移植作にはないこだわりを強く感じました。

奥成 そこはもう僕の手を離れて、プログラマー、作り手のこだわり部分ですね。処理落ちを無くすのは簡単だけど、再現するにはそのぶんウェイトをかけなきゃなりませんから。

―― きっちりとした解像度や周波数の微妙な違いはあると思いますが、それ以外の部分はほぼ完璧に近いと思います。

奥成 そうですね。ディスプレイもスタッフが「こだわらせてくれ」っていうんで(モードが)無駄に一杯あったり(笑)、プログレッシブ対応も、彼らのこだわりのたまものです。画面解像度も448×224ドットだけじゃなく、こっちでは640×448ではなく512×448にできたりとかって部分は「テレビで映っているのにできるだけ近づけたい」っていう。「やっぱりMk-IIIのゲームって、ちょっと横に伸びてたよな」って。本物の画面と見比べてチェックしたり。最初、下のオビとかもなかったんですけど、前述したようにエミュレーターを作り直したときに増えました。デバッガから「ある日から、画面の下のほうがチラチラするんですけど」っていわれて「このほうが忠実再現なんで仕様です(一同笑)」と。

―― Mk-III版を、RFではなくビデオできちんと接続して、ここまで見られた人は当時あまりいなかったと思うんですよね。だから、下がチラつくなんて気づく人もそうないなかったのでは?

奥成 それはそうかも。プログレッシブだと、特にそうですよね。

―― 話はかわりますが、裏技でゲームギア版が入っているとは……。

奥成 ゲームギア版を隠しで収録したのは……黒歴史だからいいだろう、とか(一同笑)。

―― これ、持ってたファンはうれしいでしょうね。

奥成 東京ゲームショウのセガブースで、携帯電話のサービスとして出展全タイトルの壁紙を配信したんですね。「スペースハリアー」の壁紙も配信したんですけど、そのときユーザーが感想を記入するご意見欄のなかに、ふたりくらいから「ゲームギア版が入っていないのに“コンプリート”とは片腹痛い」みたいなことが書いてあって。だから、ちゃんと買ってね? って(笑)。

―― 隠しに気づかなかったり?

奥成 ゲームギア版が入ってないことにツッコミを入れる方は、たぶん裏技でもあとでその情報は知ってくれるだろう、と(笑)。正直、発表したときはもっとつっこまれるかと思ったけど、誰もつっこまなかったですね。

―― 自分から言うしかない? もしくは居ない子になっちゃってる?

奥成 みんなゲームギア版は記憶から消してるんだなぁと思っていたんですけど。そうしたら、東京ゲームショウにはふたりくらいいたんだなぁ、と。

―― そのふたりのために入れたんじゃないですよね?(笑)

奥成 いやいやいや、そのときから入ってましたから(笑)、東京ゲームショウの時点で入ってなければ売れませんから。

―― 入ってるといえば、ソフト連射が……。

奥成 全部のソフトに入ってますよ。「SDI」のMk-III版にも入ってて「意味ないじゃん」とか言ってて(一同笑)、連射は一応フォローしてあげようと。「スペースハリアー」に連射を入れてくれってディレクターに頼み込んで、入ったら全部のソフトに入って大変なことになった。

―― ソフト連射が入ることで難易度は下がると思いますが、そのぶんパワープレイが有効になってしまい「どうなんだろうなぁ」と思う部分もありますね。

奥成 お客さんがどういう環境でプレイしていたかわからないので、あるものは全部入れておこう、と。コンティニューで最後までいけちゃうゲームですから、そこは自分でしばりを入れてくれればいい。元々入ってなくてもクリアできるバランスになってますから。でも「僕は連射パッドでプレイしていたのに」という人もいると思うので、そこはガッカリするだろうなぁということで入れておきました。

―― たぶん……思い出的な部分でいうと、あの当時いわゆる中高生以下くらい、アーケードで1プレイ200円を払うのがきつかった人たちがMk-IIIなりメガドライブ版を買ってたとすると、今は20代後半~30歳を超えてると思うんですよね。そういう人だと、このソフトを遊んで、難易度的にきつかったりするんじゃないかと。クリアどころかHAYA-OHを見るのも大変だぁ、みたいな。

奥成 そこに関しては、当時の隠しコマンドが全部使えるようになってます。ただ、あえて心残りなのは、「スペースハリアー3D」のコンティニュー制限が外せないかなっていうところ。結構頑張ったんですけど、あと半月くらい開発期間が延ばせれば、あるいはってとこだったんですけど……(笑)。そこはゴメンナサイっていう。かなりのツワモノじゃないとクリアできないですよね。


―― サウンド関連ですが、アーケード版は当然アーケード筐体向けにチューニングされていると思うんですが、その関係で一般のTVやオーディオできくと当然“つぶれている音”になって、音屋(サウンドクリエイター)さんからすればとても耐えられない音があるんじゃないかという気がします。残りはコンシューマだから大丈夫だと思うんですが、聴いている限り、アーケード筐体をターゲットにして作られている音そのままに感じられました。

奥成 そこはサウンドエミュレーター開発者のセンスによるところが大きいんですが、実はこの音楽に関してもいったん完成したあとでさらに直しましたね(笑)。

―― では、いくつかバージョンが作られている?

奥成 最終的に何回くらい出したかな? もちろんソニーさんに出してからは手を加えてませんが、社内では最後の最後までやったんで。かなり違和感のない音を鳴らせたかなぁと思っているんですけど。ここにも色々なスタッフの知恵が詰め込まれています。

―― あと気になるのは、先ほど奥成さんがおっしゃられたとおり、「スペースハリアー」はユーザーの原体験が違ってくるほど過去にたくさん移植され、数が出ている。「コレクション」と銘打たれていても、インパクトという意味ではSDI&カルテットほど希少性がないというか、正直「またハリアーか!」という人もいると思うんです。そこで、過去の移植作品と今回で一番違う、差別化されている点はなんでしょうか?

奥成 何度もいってることかもしれないですけど「全部入ってる」というところです。記憶も資料も含め、入れられるだけのものをなかに入れました、と。「スペースハリアー」と名前がついているセガのソフトは全部入れましたというところで、まず資料的な価値を高めたいということですね。今後、PS2が3、4、5になったとして、もしPS2互換で動けば、スペースハリアーはこれ1本あれば大丈夫。PS3版のスペースハリアーがなくても、これがあればいいよねって言えるんじゃないかと。そういう意味もあって、こだわってみたんですけど。

―― 最近は、こうした副読本というか、きちんとした資料を添付する復刻タイトルが増えてきました。

奥成 業界的にも、なるべく頑張ろうかというところはあると思います。単に攻略本を復刻するだけでなく新規パートを入れたり、スタッフのコメントをきっちり押さえたり。みんなやってるぶん、売りとしては弱くなったかもしれないけど……うちも頑張ってよかったなぁと思いましたね。

―― SEGA AGESについては、全部のパッケージに資料が添付されているのが素晴らしいと思います。素晴らしいというか、実は全部についているのが当たり前だとさえ思うんですが……欲しい人は、本来そういうものを込みで考えるわけですよね。ソフトのなかに入っていればいいけど、下手すればアウトソーシングされて、なおかつ初回版でしかもらえない。それは不親切なんじゃないのかあぁと。

奥成 それだけどこも「初回版を買ってください」という心の叫びなのかもしれませんけどねぇ。

―― 初動とか中古対策、色々問題はあると思うんですが、こうした副読本などはなかに入っていたほうが安心できる。本来は永続的に売れてしかるべきタイトルだと思うので、逆になぜ……という気がしていたんです。メガドライブ、セガサターンと、本体が光学系になるほど年数経過で動かなくなる確率が高くなる。そうなったとき、ソフトがあれば何とかなるなら、メインストリームを形成しているプラットフォームに移殖作を出す意義はかなり大きいと思います。

奥成 僕もサターンくらいだったらまだ動いてるかな? くらいの楽観的な気持ちがあったんですけど「ドラゴンフォース」の反響をみたときに「結構壊れてるんだなぁ」と(笑)。もちろん押し入れにしまっちゃいましたという人もいると思うんですけど。

―― 発売日に買ったうちの初代サターンは現役ですが(笑)。それはさておき、保存を前提にハードを何度も買う人は少ないですからね。そういう意味で、こういうものがきちんとリリースされるのは心強い。

奥成 「ガンスターヒーローズ」を発表したとき、同時収録予定の「『エイリアンソルジャー』が高くて買えなかったのでうれしい」という反響をきくと(一同笑)、なるほど、家庭用でも移殖する意義はあるんだな、と。

―― セガ社内で資料がほとんど残っておらず、移殖が難しいタイトルなどはありますか?

奥成 正直ありますね。たとえば……次の「メモリアルセレクション」の移殖にあたっては、社内には資料が何も残ってなかったですからね。大阪の基板屋さんに基板をお借りして、とか。そういう世界ですね。'70~'80年代前半のものは、保存それ自体大変だったりしますし。

―― それでも、セガには資料が残っているほうだと思いますが……。

奥成 紙資料は'60年代のジュークボックスのパンフレットまで残ってて充実してるんですけど、石(IC)が……。そこは必ずしも会社に残っているものだけではなくて、人脈で引っ張ってくるものとか、お店にご協力いただくものとか。それでなんとかなってるってものはあります。今後もまだ予断を許さない(笑)。あと、サターン以降のタイトルになってしまうと、ソースデータがないと難しいんですが、ソースデータはすでに無かったりするということもありますんで。そこは今後の課題なんだろうなぁ、というところはありますね。実際、ソースデータが見つからなくて移殖を断念したタイトルもありますし。これはPS3まで待とう、みたいな(笑)。

―― そういう意味では「スペースハリアー」と「SDI&カルテット」は相当頑張れた?

奥成 相当頑張れた、といえるところまでやりました! もちろん心残りがないといえば嘘になるんですけど……これで2,500円は安いぞ? と思っていただけたらいいなぁ、と。この値段で販売する限りは普段ゲームを買わなくなったお客様にも手に取っていただいて、ゲームが好きだったことを思い出して欲しいなぁと思いますね。

―― 本日はどうもありがとうございました。


 当時プレイしていた人はもちろん、興味がある人、当時を追体験したい人にとって「SEGA AGES 2500シリーズ」はマストアイテムといっても過言ではない宝石箱のような存在。「SDI」は、モチーフになった「SDI構想」自体、教科書でチラっと見たことがあるという人さえ少なくないと思うが、開発スタッフが魂を込めて再現した“唯一無二のゲーム性”を、ぜひとも身体に刻み込んで欲しい。

 ちなみに「カルテット」シリーズだが、かつて仲間内で“地獄のマリちゃん”の異名をとった筆者としては、4人同時プレイを強烈にプッシュしておきたい。ひとりで遊ぶと地味なアクションシューティングだが、鍵を巡るアイテム全開のガチンコバトルは、トップでゴールした隣のプレーヤーを脊髄反射で張り倒したくなるほど熱くなれる(って実際にやらないように)。虚飾抜きで「決定版」ともいうべき「スペースハリアー」ともども、この機会にぜひともチェックしていただきたい。


(C)SEGA Corporation,1986,2005
(C)SEGA Corporation,1986,2005

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□SEGA AGES 2500シリーズ 公式サイト
http://ages.sega.jp/
□関連情報
【9月9日】セガ、「コンシューマ事業戦略発表会2005」開催
「PSU」Windows版発売決定など新情報続々
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050909/sega_1.htm

(2005年10月31日)

[Reported by 豊臣和孝/石井ぜんじ/佐伯憲司]



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