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会場:ディファ有明
昨年行なわれた「ラグナロクオンライン」の世界大会「Ragnarok World Championship(以下、RWC)」との違いは、2-2次職と呼ばれる職業、クルセイダー、ローグ、セージ、バード、ダンサー、モンク、アルケミストの7つが選択できるようになっているところだろう。これらの職業はより対人戦を意識した職業であり、現在行なわれている攻城戦でも重要な役割を担うことが多く、PvPでは欠くことのできない存在である。 さらに“転生”を行なうことで誕生する上位2次職のキャラクタによって戦略は大きく広がる。どういったメンバーで構成し、どう戦うか、どんな装備をチョイスするか、選択肢は多彩だ。RWCでは世界中のプレーヤーが戦うために、あえて古いバージョンでのルールで戦われていたが、今回の対戦は日本のプレーヤーが慣れ親しむ“現在”のルールでの戦いである。日本プレーヤーの待ち望んでいた戦いが実現したのである。 オンライン予選を経た結果、PvPにもひとつのセオリーのようなものが生まれた。具体的には、ウィザードが敵を凍結させる「ストームガスト」を連発し相手にダメージと共に凍結を狙う。バードは「ブラギの詩」を奏でパーティーのスキルの効率を上昇させる。クルセイダーは「ディボーション」で仲間のダメージを肩代わりし、セージは「ランドプロテクター」で相手の攻撃の無効化、モンクは一撃必殺の「阿修羅覇凰拳」を狙うといった具合である。 ほとんどのチームがこれらのキャラクタ、そして技を選択していた。ここにちょっとしたアレンジを加えそのチームなりの個性を出している、というのがこの大会に勝ち進んできたギルドの構成だった。RJCでは1回戦からこの作戦が明確に出る結果となった。果敢に攻めるグループ、一定の場所に待ち受けるグループ、そのスタート戦略はそれぞれだが、絶妙に相手との距離を取り、ストームガストを撃ち合う。ランドプロテクターの範囲から出ないようにパーティー達は慎重に動く。予選通りの基本戦術が展開された。 こうした戦いでギャラリーをもっともわかせていたのが、モンクの阿修羅覇凰拳である。画面に大きくその“漢字”が出現するわかりやすいエフェクトに加え、成功すれば高確率でキャラクタが倒れるというまさに「必殺」の威力が、試合にメリハリをもたらしていた。逆に他の技は防御系と攻撃系が乱れ飛び、画面そのものが激しく光るわりにははっきりした効果が見えず、かなり詳しい人でないと駆け引きがよくわからないという部分もあった。 ギャラリーは阿修羅覇凰拳のエフェクトに歓声を上げ、キャラクタが倒れるメッセージに反応し、もしその技を敵キャラクタが耐えきることがあれば拍手を送っていた。RWCにはなかった非常にわかりやすい駆け引きは、より多くのギャラリーに観戦の楽しみを与えているようだった。 1回戦の勝利の鍵は、フィールドの位置取りだった。多くの試合が、片方のチームが中央を取り、もう片方が周囲を回りながら攻撃するという展開になった。決して中央を取ったからといって有利なわけではなく、相手をうまく誘い出すことで焦ったメンバーがパーティーの集団からはずれたところを狙うという、お互いの隙をつこうとする攻防は迫力があった。 とはいえ、1回戦では16チームで戦う予定だったのだが、2チームが棄権、さらに7人のメンバーがそろわず、5人で参加するという人数の足りないチームもあったため、各チームが実力を100パーセント活かした、とはいえない試合もあった。オンラインゲームの全国大会の決勝戦を東京の会場で開催するという時点で、どうしても参加できないメンバーなどが出てきてしまったようだ。 オンラインで大会を完結するならばこの問題は解消するかもしれないが、多くのファンが会場に集まり、生の戦いを観戦する、チーム達が一堂に会し、メンバーが声を掛け合いながら戦うという、会場ならではの熱気というのは非常に魅力的なものがある。運営側の今後の課題であるだろう。 2回戦では、すべてフルメンバーとなり、さらに白熱した戦いが繰り広げられた。この戦いにユニークな味を加えていたのは、1回戦とはまったく違う森の中で戦うステージであった。所々に障害物があり、1回戦のオープンなフィールドとはまったく違う戦術が必要とされたのだ。中央を取るより、うまく細い道になる部分に相手を誘い込み倒すか、もしくはパーティーメンバーの視点が道に集中してしまっていることを利用し、死角からモンクが一気に切り込むなど、トリッキーな展開も見られた。 2回戦で筆者が特に注目したのは「Penrir」と「ミルク210z」の試合である。ミルク210zはモンクの代わりにナイトを投入しているチームで、ペコペコに乗ったこのナイトが非常に機敏に動き回り、敵チームの詠唱をひたすら妨害するという他のチームとは違う戦術ををとっていた。モンクの攻撃力がない代わりに、攻撃の要はハンターが遠距離攻撃をするという作戦だった。
開始いきなり、ミルク210zがPenrirのウィザードを倒し、優勢かと思われたのだが、Penrirがミルク210zのセージを撃破したことによって戦局が大きく変わった。セージによる魔法妨害を受けなくなったPenrirは、プリーストの「ニューマ」でハンターの攻撃を無力化してしまったのである。決定力を失ったミルク210zはそのまま次々と倒されていってしまった。他のチームに比べユニークな構成をしていたミルク210zだが、残念ながら2回戦での敗退になってしまった。
■ 基本を抑えながらも独自の味を活かす、各チームの個性が大きく光った準決勝 準決勝には「Cafe」、「Recurring Nightmare」、「Penrir」、「Millky Cat's」の4チームが駒を進めた。それぞれのチームに話を聞いてみたのだが、どのチームも基本的な戦術にひと味独自戦略を加えていた。戦いそのものもそのチームの個性が強く出た結果となった。 LOKIサーバーの「Cafe」は優勝候補に挙げられているチームで、安定した強さが特徴のチームである。ストームガストと阿修羅覇凰拳が勝利の鍵であり、この基本戦術を高いレベルで効率的に実行させる事が目標だという。今回の大会の王道ともいえる戦術を一番突き詰めている、と感じさせるチームだった。上位2次職メンバーはプロフェッサーのみ。登録でミスをしてしまい、2つ許可されている上位職を1つしか利用できなかったという。 TYRサーバーの「Recurring Nightmare」は、昨年の日本代表「321Colors」を破ってこの大会に出場してきた優勝候補の「ぷちまめ」を2回戦で破ったチーム。なんと回復の要であるプリーストをあえて切り、攻撃力を強めたメンバーで戦う。ギルドマスターは、「Cafeはいつも戦い方を参考にしていたチームで、今回は胸を借りるつもりで戦う」という熱くコメントしてくれた。投入した上位2次職はプロフェッサーとアサシンクロス。
FENRIRサーバーの「Penrir」は上位2次職メンバーに本当はパラディンを入れたかったのだがこちらもミスでプロフェッサーのみ。他のチームの多くがバードを入れているのに対して、ダンサーを入れているのが特徴だ。バードとダンサーは共にアーチャーから転職する職業で、女性だとダンサーとなる。バードとはスキル構成がまったく違う職業である。Penrirは「とにかく守って勝ちます」というコメント。他のチームが自信をみなぎらせた意見が多かったのに対し、ちょっと気弱なコメントが多かったのが印象的だった。 独自の作戦を持ち、それに自信をみなぎらせていたのはIDUNサーバーの「Millky Cat's」。その得意の戦術とは、「スフィアーマイン」を使った戦法。アルケミストが自爆モンスター「マリンスフィアー」を召還し、相手にぶつける呪文である。「Millky Cat's」は予選からこの戦法で戦い抜いてきたという。2回戦でもこの戦法が非常にうまくいき、相手をいきなり倒していた。Millky Cat'sのメンバーが使う上位2次職はプロフェッサーとアサシンクロスだ。
全チームがプロフェッサーを使っているのには理由がある。今大会の鍵であるモンクの阿修羅覇凰拳は全SPを消費して敵に大ダメージを与えるスキル。しかもモンクはこの技を使うと5分間SPの自然回復ができなくなってしまう。そこでプロフェッサーが「生命力変換」でHPをSPに変換し、「ソウルチェンジ」でモンクと自分のSPを交換することで、阿修羅覇凰拳を連続して使うことが可能になる。さらにプロフェッサーは、前職セージの多数の魔法防御能力を併せ持つ。PvPで特に効果を発揮するスキルを多数持っているのである。 Cafe vs Recurring Nightmareは中央付近での壮絶な攻撃合戦で幕を開けた。一進一退の攻防でありながら次第にCafeが押し気味に。その激戦の中Recurring Nightmareのモンクがするすると前に進み阿修羅覇凰拳を発動させるもCafeのメンバーはこれに耐え、その攻撃に重ねるようにCafeの阿修羅覇凰拳が発動、Recurring Nightmareのモンクが倒れる。 Recurring Nightmareはメンバーをひとり失ったことで逆に踏ん切りがついたか積極的な攻勢に出る。その動きにカウンターを合わせるように敵パーティーに切り込んだCafeのモンクが阿修羅覇凰拳を放つと、他のメンバーのダメージを肩代わりしていたRecurring Nightmareのクルセイダーがモンクと相打ちになってしまった。その後はRecurring Nightmareが次々とメンバーを倒され、Cafeの勝利となった。
Penrir vs Millky Cat'sはかなり意外な結果となった。Millky Cat'sのアサシンクロスがいきなり倒されると、バード、クルセダーと次々とメンバーが倒され、ワンサイドゲームともいうべき結果になってしまったのだ。これにはPenrirのダンサーのスキル「スクリーム」に秘密があった。Millky Cat'sがもっとも得意としているマリンスフィアが、スクリームによって麻痺されまったく機能しなくなってしまったのだ。今大会でこれほどまでにチームの「相性」が勝敗の結果につながったことはない、といえる結果だった
■ Cafe vs Penrir、一戦ごとにお互いに成長していった決勝戦 Cafe vs Penrirとなった決勝戦。この戦いのみ3回戦で行なわれた。マップはRWCでも使用された天空に浮かぶ闘技場で、ここも障害物に阻まれた細い通路が鍵となる。
第2試合では後のないCafeが思い切った行動に出た。なんと全力で敵陣地につっこんでいったのである。Penrirは前回同様の中央あたりのにらみ合いを予想し、探りながら前に出ていたからたまらない。Penrirのアルケミスト、ついでダンサーがつぶされた。 Cafeは奇襲の後モンクを失うが、敵のモンクを警戒して絶妙に距離を取りながら防戦。2名を失ったPenrirでは勝ち目がなく、次々とメンバーが倒され、最後に残ったプレーヤーは少しやけになったのか画面端で座ってくつろいでいた。そののんきぶりにギャラリーからは笑いが漏れたが、Cafeのチームにすぐ見つかり、全滅させられてしまった。 第3試合では中央でがっぷり4つに組み合うような形になった。どちらも相手のモンクを警戒し、魔法を撃ち合いながら、隙をうかがう展開となった。お互いの手の内を知り尽くした両チームが、その対応をきちんと考えた戦いとなった。Cafe側では、相手のダンサーに麻痺させられたウィザードをすぐにプリーストが回復させるという、その素早さに解説の廣瀬氏も感心していた。 わずかにCafe側が押し気味の展開でしばらく膠着状態が続いたあと、パーティーから少し離れたPenrirのプロフェッサーを阿修羅覇凰拳で撃破、これで焦りが生まれたのか、ウィザード、モンクも倒され戦局は決定的に。Cafeの勝利が決定した。 優勝者のインタビューとしてマイクを向けられたCafeのギルドマスターは、実は大会では控えの選手だった。「僕が出なくても勝てるチームだと信じていたので、優勝できて感無量です」と語った。 表彰式の後、さらにこの決勝に残った二つのチームに話を聞いてみた。Penrirは、「僕たちはこのRJCに参加するために結成された寄せ集めのギルドなんです。練度の上ではちょっと不安があって、ここまで戦えるとは思っていなくて自分たちでも驚きました」と語った。ダンサーの動きがよかったという意見には、「実はダンサーをいつも使っているメンバーがこれなくなって、ハンターを使っているメンバーが急遽ダンサー使いとして出場したんです」という驚きの意見が。それ以外のメンバーは普段使っている職業と同じキャラクタを使い、各メンバーができることをきちんとやれた、というのがここまで勝ち残れた理由だという。 Cafeチームはサーバー内でPvPのより強いチームにするために、その研究をするために結成されたギルドであり、普段からどのように戦い、どういった作戦、キャラクタセッティングをするかを日々議論しているチームとのこと。本戦に出るためのチームの構成と、想定される敵の攻勢を考え、紅白戦を行ない、どう動けば勝てるかをきちんと研究し続けたそうだ。その紅白戦は他のギルドの協力を頼み、各職業のエキスパートを募って行なわれたもので、「ひょっとしたら決勝戦よりも激しかったかもしれない」とのこと。優勝は「練習したことをきちんと出し切れた結果」と語った。PvPに対して真摯な態度で取り組むその姿勢は非常に印象的だった。 来年も開催されると発表されたRJCにまた参加したいか、という質問にメンバーは大きくうなずいたのだが、ギルドマスターは「できれば参加したいんですけど、メンバーのみんなは北海道や岡山、九州といったものすごく遠いところから来てくれたんです。これが結構な負担になってしまっています。できることなら立派な会場や賞品とかがなくても良いから、オンラインで完結する大会をたくさん開いてくれればとてもうれしいと思います」と発言した。
これはPvPを極めよう、サーバーの垣根を超えての戦いをもっと楽しみたいというプレーヤーの正直な意見だろう。オフラインでの大会はお祭りとして非常に魅力的ではあるが、ひょっとしたら今回会場に来れなかったギルドや参加者がもし大会に参加できれば、また違った結果になったのかもしれない。ギルド達の戦術の進化が気になると共に、この優勝者の意見にガンホーがどう応えていくかも興味のあるところである。
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□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年8月22日) [Reported by 勝田哲也]
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