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会場:Los Angeles Convention Center
Xbox 360は、ハードウェアスペックとしてもユニークで面白いが、それよりもどういうサービスを提供していくのか……という視点の話が非常に興味深かったので、本稿ではそちらの話を中心に見ていくことにする。 ■ Xbox 360の下位互換は限定条件付き
「我々はXbox1を0ユーザーからスタートして今や2,000万のユーザーがいる。昨年末、Xbox専用のゲームタイルである「Halo2」はゲーム業界を超えたエンターテインメント史に残る一晩で1億2500万ドルの売り上げを記録した。そして2004年のクリスマス、北米で最も売れた家庭用ゲーム機はXboxだった。そして来月6月、Xbox用オンラインサービスXbox Liveへの加入者は200万人を超える見通しだ」……と切り出し、北米ではなかなかの好調ぶりを見せるXboxプラットフォームの追い風気味の明るい未来について語った。 そして、続いて、今回のカンファレンスでもっともトピックといえる互換性にまつわる発言を行なう。
「Xbox1用のゲームは来年も100は出る見通しだ。それで気になるのが『Xbox 360でXbox1のタイトルがプレイできるのか』という質問なわけだが、これについては、こう宣言したい。トップセールスを記録したタイトルは動作できるようにする、と」
結論から言えば、Xbox 360のXbox1互換性維持はエミュレーションによって行なう。プレイステーション系が、過去のプレイステーションシリーズのコアをシュリンクし、丸ごと搭載してハードウェア的に動かすのとは大部異なる思想になる。 Xbox 360のCPUはPowerPC系で、Xbox1のCPUはインテルのPentium III系だ。命令セットが全く異なるのはもちろん、数値表現のエンディアンの上下が逆転しているため、バイナリ次元での互換は皆無と言っていい。しかし、Xbox 360のCPUはパフォーマンス的には10数倍以上に高められているのでエミュレーションしても十分おつりは来る性能が得られるだろう。 グラフィックスはNVIDIAからATIになったことにより、Xbox1のGPUの特徴的な機能だったハードウェアシャドウマッピング(俗に言うNVIDIA SHADOW)等の機能が使えない。これも、NVIDIAが持つ特許関連の問題をクリアした上でXbox 360のATI-GPUでプログラマブルシェーダを活用してエミュレーションすることになるのだろう。 互換性維持はPSに比べて難易度はそれなりに高いはずだが、Microsoftは「これに備えた技術」を獲得しており、さらに「逃げ講釈」も用意している。 その「技術」とは、2003年2月にConnectixを買収したときに獲得した「VirtualPC」技術だ。VirtualPCはPowerPCベースのMacintosh上にインテルベースの仮想PCを作りだし、そこでWindowsXPなどを動作させてしまう技術。PowerPCベースであるXbox 360に、インテルベースのPCそのままの形であるXbox1のエミュレーションを行なうには、この技術はまさにおあつらえ向きなはずなのだ ただし、Xbox1のアーキテクチャは、実はUMA周りの機能性で少々PCとは根幹で異なる部分があり、Xbox1ネイティブな特性を活用した……たとえばプッシュバッファ機能等を積極的に活用したXbox1ソフトなどはその動作には個別対応のエミュレーションを行なわなければならないケースも出てくることだろう。100%の下位互換を取るのは結構難しいと思われる。 これに対する「口実」として、「トップセールスを記録したタイトルとの互換性を取る」という条件設定を今回公言したのだ。「Halo」シリーズなどは確実に互換性が確保されるだろうが、「マジデスファイト」のような売り上げ本数が少なかったマイナータイトルの互換性検証はかなり後回しにされる可能性がある。 いずれにせよ、このあたりの互換性維持のためのエミュレータ修正は、得意のXbox Live経由で随時手持ちのXbox 360にオンラインアップデートが適用されて成熟していくことだろう。
Xbox 360の発売時期は2005年末。発売地域は、現時点では北米地域、ヨーロッパ、日本という区分が予定されている。価格については未定だ。 ■ Xbox 360では基本サービスとなる「Xbox Live Silver」が無料提供される 続いて壇上に現れて語り出したのはMicrosoft、コーポレートバイスプレジデント兼XNAチーフアーキテクトのJ.Allard氏だ。彼はXbox 360の一貫したコンセプトキーワードである「HD-ERA(ハイビジョン時代)」についてこう説明する。
「約30年前に登場したコンピュータゲームは2Dだった。'90年代後半に3Dが台頭した。2005年より先はHD(High Definition)が台頭する。その先陣を切るのがXbox 360だ。そしてこのHDは10億人のユーザーに浸透する」。
Allard氏によれば、Xbox 360の「360」とは、ユーザーが常にステージの中心にいられるということを意味しているという。そしてXbox 360は、全てのプレーヤーが自分の好きなホームエンターテインメントを好きなように楽しむという、ごく基本的なことを実現させるための機械なのだと強調する。その根幹となっているが、Xbox1から引き続き提供される「Xbox Live」と呼ばれるサービスだ。 現行Xbox1では、主にゲームタイトルごとに管理されているXbox Liveのゲーマータグコミュニティを、Xbox 360では、もう少しグローバルな視点のコミュニティに引き上げるのだという。
具体的には全てのデータ管理単位を各プレーヤー単位に引き上げ、自分がどんなゲームをどんなふうに楽しんでいるのかを公開できるようにし、各プレーヤーは相互にシームレスに、遊びたいゲームを遊びたい相手とすぐにプレイできるようになる。
Xbox 360では、ゲームが真ん中にあるのではなく、真ん中にあるのは人間(自分)で、別の人間とプレイしたりコミュニケーションするためにゲームを活用する……というわけだ。
Xbox Live Silverで提供されるサービスは、現時点では。
(1) ゲーム成果やプロファイルの公開
といったものが列挙された。
有料コンテンツはたとえば拡張シナリオから、あるいは完全な新作ゲームなどまで様々。Allard氏はXbox 360世代におけるゲーム提供メディアは光メディア以上にネットワークというインフラを活用すると強調していることから、Xbox 360におけるMarketplaceは実質的なゲーム媒体に相当するといってもいいかもしれない。 無料コンテンツはたとえば新作ゲームの体験版、ユーザーが作成した武器やマップなどが想定されている。
(4)は、トランプやチェスなどのテーブルゲームなどをオンライン上の別のプレーヤーと楽しめるコーナーだ。ビデオチャットなどを楽しみながらでき、ネットワーク上の社交場的な活用を想定したものと思われる。 ■ Xbox 360のユーザーを10億人にするためのシナリオ~賞金100万ドルのオンラインゲーム大会をXbox Liveで開催する
1つはハードコアゲーマーのためのサービス。
ハイレベルなテクニックを持つ自分に見合う腕前の人間とプレイできることを保証する。そして、他人同士のプレイを観戦できる「観戦(SPECTATOR)モード」により、他人のプレイを研究して攻略に役立てるようにする。まぁ、これは、Xbox1のXbox Liveでやってきた内容の延長戦にあるものと考えればいいだろう。
これは具体的にいってしまえば前述したXbox Live Silverの(2)や(4)のこと。無料コンテンツをつまみ食いしたり、ゲームを楽しみながらチャットを楽しめることをウリにしてコミュニケーションツールとしてXbox 360を訴求していくというシナリオだ。
Xbox 360はXbox1に引き続き音楽をリッピングすることができ、ジュークボックス的な活用ができる。また、Windows Media CenterベースのPCとの連携が取れるため(Media Center Extender)、ホームAVサーバー的な運用をしているPCから任意の映像コンテンツをXbox 360にて楽しむことができる。そのコンテンツはもちろんHD(ハイビジョン)という想定だ。
それは、Xbox Liveを使ったレーシングチャンピオンシップのキャンペーン構想だ。 たとえば、自動車メーカー主催のレーシングゲームチャンピオンシップをXbox Live上のオンラインで開催することもできるかも……というのだ。「仮に……の話だが、25万人の参加者が一人あたり10ドルの参加費用を払って30戦に及ぶレーシングキャンペーンを戦い抜いていき、最後の決戦では、厳しい戦いを戦い抜いた16人の決勝進出者達の間で100万ドルをかけてのレースを行なうことになったら?」と、ピーター・ムーア氏。 当然、このレースの模様はXbox Liveで25万人の登録者に配信され、そのレースの模様を、現実世界のような「観客席」という制限を飛びだし、自分のXbox 360上で自由な視点で楽しむことができるだろう。 期間中は25万人のユーザーが、常にスポンサーのロゴや商品宣伝が行なえるために、興行的にも十分あり得る話だとムーア氏は力説する。 ユーザーが10億人になってから成り立つ話なのか、それとも10億人にするためのキャンペーンとしての一計画なのかはわからないが、E-SPORTSと呼ばれるコンピュータゲームのプロ興業にも結びつきそうな、さらにいえばコンピュータゲームの楽しみ方に革命をもたらしそうな壮大な話ではある。
こうしたMicrosoftのシナリオで10億人ユーザー獲得へ導けるかどうかはよくわからないが、Xbox 360が、そのハードスペックやそのソフトラインナップだけでなく、「Xbox Liveという魅惑なサービスが利用できる機械」として強く訴求していきたいという姿勢だけはよくわかったと思う。 ■ Xbox 360というハードウェア
(1) 720p(1280x720ドットのプログレッシブ解像度) もちろん、従来のTVで表示したり、スピーカーシステムでも再生することはできるが、Xbox 360の最大の特徴を楽しむことができない。
さて、カンファレンス終了後には発表を記念したパーティが開催され、そこにはモックアップではない、Xbox 360の試作機の実機が展示されていた。これにはいくつか面白い点が見つかったので報告しておく。まず、電源はACアダプタからDC供給される方式を採用したようだ。
そして、無線LAN(IEEE802.11a/b/g)は現時点ではUSB接続の外付けブロックとして提供されている。これは将来的に取り外して換装可能とするためにそうしたのかは不明。もしかすると最終製品ではさりげなく内蔵されてしまっているかもしれない。
□Xboxのホームページ http://www.xbox.com/ja-jp/ □「Xbox 360」のページ http://www.xbox360.com/ (2005年5月18日) [Reported by トライゼット西川善司]
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