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★PCゲームレビュー★

濃厚な世界観で繰り広げられる極上のクエスト
世界最強のMMORPGを今すぐ楽しむべし!!

World of Warcraft

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発/発売元:Blizzard Entertainment
  • 価格:8,800円程度(輸入版のみ)
  • プラットフォーム:Windows 2000/XP
  • 発売日:3月28日(英語版)


 「World of Warcraft」(以下、「WoW」)は、現在もっともワールドワイドで支持されているMMORPGである。なにより、その売り上げからして桁違いだ。Blizzard Entertainmentが今年の3月に発表したデータによれば、売り上げは全世界で150万本以上。北米を皮切りに、ヨーロッパ、韓国で正式サービスを開始し、いずれも空前の大ヒットとなった。同時接続プレーヤーは少なくとも50万人を突破しているという。他のMMORPGが完全にかすんでしまう圧倒的な「強さ」を見せつけている。

筆者のアカウント情報画面。「Country」の項目が「Japan」になっている点に注目して欲しい。かつてはJapanにできなかった
 BlizzardというPCゲーム界に燦然と輝くブランドが、「Warcraft」という金看板を背負ってMMORPGの世界に乗り込んできたのである。世界のゲームファンの期待が高まらないほうがおかしい。そして「WoW」は、その極限まで高まりきった期待を裏切らない、見事な完成度のゲームとして登場したのだ。この記録的なヒットは当然の結果と言える。

 あまりの加熱ぶりに正式サービス開始直後は、サーバー障害が多発した。Blizzard Entertainmentもファンの熱気に応えるべく、高負荷に耐えられるサーバーを用意したというが、予想をはるかに上回る「成功」となってしまったのだ。Blizzard Entertainmentが出した「想定していた成功が1年後ではなく、6週間で訪れてしまったからだ」というコメントは、筆者には言い訳でもジョークでもなく、本音のように聞こえる。

 方や日本のオンラインゲームファンたちは、この「祭り」に完全に乗り遅れてしまっている。これは日本語版の発売が見送られたことも大きいが、なにより日本地域がサービス対象エリアからはじかれていたことが最大の要因だ。しかし、今年に入って日本からユーザー登録が可能になり、日本のクレジットカードも対応するなど、規制緩和が行なわれた。日本語版の話はいまだ音沙汰無しだが、日本のファンにとって大きな前進であることは間違いない。

 もうすでに、新しいもの好きの面白いもの好きを自認する日本人プレーヤーたちは、「WoW」の世界に潜入を果たしている。さあ、今からでも遅くはない。

作成したキャラクタの選択画面。PVPサーバーでは、AllianceとHordeのキャラクタを同時に持つことはできない この画面のどこを見ても手抜かりのない細部への作り込みが「WoW」クオリティを形成している
キャラクタ作成画面。これは「Warcraft」の世界でもおなじみのオーク。AllianceとHorde、合計8つの種族から選ぶことになる キャラクタを作る前に選ぶRealm(サーバー)リスト。Normal、PVP(Alliance対Horde戦争)、RP(Role Playing)の3種類がある


■ 「Warcraft」という世界観

「Warcraft」らしいディフォルメの利いたキャラクタのアクションが「WoW」でも見事に再現されている
 「Warcraft」とは、いわずと知れたRTSの代表的シリーズ作である。第1作が登場したのが'94年というから、タイトルだけで年輪を感じさせる稀有なシリーズといえるだろう。磨きぬかれた絶妙のゲームバランスと、手軽に参加できるネット対戦の熱さで、他の追随を許さない。現在でもその人気は衰えず、ヒューマン、ナイトエルフ、オーク、アンデッドが入り乱れての戦いが、日夜繰り広げられている。

 「Warcraft」の魅力はゲームそのものの面白さだけでない。各種族が織り成すファンタジーの世界を下敷きにしたストーリーは、シリーズを通して見事な一大叙事詩となっている。特に2002年に発売された「Warcraft III」は、RTSでありながら各種族の英雄を主人公にしたストーリー展開をふんだんに盛り込んだ革新的な作品だった。この「Warcraft III」の登場により、「Warcraft」の世界観はさらに深みを増し、ファンの心をわしづかみにしたのだ。

 こうしてシリーズを通して醸成されてきた「Warcraft」の世界を、プレーヤーが1人のキャラクタとして冒険するゲームが、「World of Warcraft」なのである。もちろん、「Warcraft」の世界観を知らなくても十二分に面白いMMORPGであるが、積み重ねられてきたこの世界の歴史を知れば、その味わいは倍付けになることを保障する。そういう意味では「Warcraft III」は「WoW」へ繋がる重要な伏線と捕らえることもできる。

ドワーフ族の首都、Ironforge。ドワーフを選んだ初心者プレーヤーが初めて到達する大都市である 大きなダムを発見。このダムの向こうにまた新たな冒険が待ち構えていると思うと、否応なく想像力が刺激される
Allianceに属するドワーフ族の首都・Ironforgeの入り口。この都市にはドワーフ族とAllianceの歴史が詰まっている ヒューマンの都・Stormwindの大聖堂。暮らしている種族によって街の景観はまったく趣きが異なる。旅の醍醐味である


■ 見事に再現される「Warcraft」ワールドのグラフィックス

ドワーフのクエストで乗れるグリフォン。選んだ種族によってワイバーンだったり巨大なコウモリだったりする
 「WoW」というゲームそのものをレビューしようとしても、その世界は広大で、その楽しみは無数にある。また、すでに多くのレビューがあふれかえってという事情もある。そこで、このレビューのために「WoW」の世界に飛び込んだ、筆者のファーストインプレッションとして、いくつかの項目をレポートしたいと思う。

 まず最初に驚くのは、今までに体験したどのMMORPGとも違う、新しいレベルのグラフィックだろう。「Warcraft」ファンに言わせれば、これが「Warcraft」のグラフィックだと胸を張るに違いないデフォルメの利いたキャラクタたちが、生き生きと動き回る。建物やモンスターたちも、細かいところまで「Warcraft」クオリティの世界観に、手抜きなしで統一されている。その世界が、ごくごく一部のゾーンを除けば、完全にシームレスに繋がっているのだ。

 かといって、ブンブンと排気ファンを回すような最新テクノロジーの馬力に頼ったグラフィックではない。PCに要求するスペックはごく標準的なものといえるだろう。さらにMac System OS Xにも対応してる。この要求スペックであれだけの世界を表現してしまうBlizzard Entertainmentの職人芸には、脱帽せざるを得ない。

 初心者プレーヤーは、クエストを進めていくといずれたどり着くであろう「グリフォン飛行」に驚くに違いない。今まで何十分も何時間もひーこらと歩いてきた道を、ものの数分で戻ってしまうのだから。しかも、地上を歩いているプレーヤーや、空を飛んでいるグリフォンが見えるというこだわりよう。これだけは何をおいても体験して欲しい。

Ironforgeに程近い、露天掘りの鉱山。Rockjawたちの根城となっていて、境界線ではドワーフとの激しい戦闘が行なわれている グリフォンは近くの名所を巡りながら目的地へ飛んでいく。さながら、観光ジェットコースターといった風情だ


■ 極限まで磨きぬかれたインターフェイス

戦闘時は画面下部の「Action Bar」を使って魔法や技を繰り出す。アイコン上にある数字がキーボードに対応している
 もうひとつ、「WoW」をはじめて遊んでみてひたすら感心したのは、完成度の高いインターフェイスである。MMORPGはプレーヤーのやるべきことが多く、その結果、インターフェイスは複雑化の一途を辿る、というケースが多い。どの表示が何を意味しているのか? 必要な行動をとるためにはどうすればいいのか? このインターフェイスをうまく飲み込めないために、MMORPGに挫折する初心者プレーヤーは多い。

 「WoW」のインターフェイスは、そうした点をよほど熟慮して作られたと見える。移動はカーソルキー、もしくは「A・W・D・S」キーを使ったFPSゲームでおなじみの操作。買い物や武器修理などで必要なNPCとの会話は右クリックでウィンドウが開き、メニューのボタンをクリックしていく。必要なアイコンは点滅し、紛らわしいウィンドウは一切開かない。

 新しい操作方法が必要になったところ出てくる「Tipsアイコン」の按配も見事だ。もちろん、説明文は英語なのだが、必要な状況になったところで「Tipsアイコン」が飛び出してくるので、知ってる単語をつなぎ合わせれば十分類推できる。どの操作も無駄がなく、間違いが起こりにくく、「こうなるのでは?」という想像がつくのだ。

 「WoW」をプレイしている間は、当たり前のようにこのインターフェイスの恩恵を受けている。しかしちょっと想像してみればわかる。誰もが間違わず、迷いが生まれず、想像がつく、というインターフェイスを作るのはとても難しいことなのだ。ここまでのインターフェイスにたどり着くまでには、テスト段階で相当ブラッシュアップが繰り返されたに違いない。なにせ、英語の詳しいニュアンスはわからなくても操作できてしまうのだから。こんな神業的なインターフェイスを作り上げた「WoW」を、筆者は高く評価したい。

街で目的のNPCがなかなか見つからなければガードに聞いてみるといい。ミニマップに矢印が出て目的地まで案内してくれる 中には制限時間付きのクエストもある。そういうときは残り時間がカウントダウンされるウィンドウが出る


■ 巧妙にプレーヤーを導く極上のクエスト群

頭の上に黄色い「?」が出ているNPCは、クエスト完了の報告を待っている状態。忘れずに話しかけよう
 インターフェイスが「WoW」の遊びやすさをリードしてくれるものだとすれば、無数に散りばめられたクエストは、「WoW」の世界観へプレーヤーを見事に引き込む役割を果たしてくれる。特筆すべきは、プレーヤーが最初に挑戦することになるクエスト群だ。お約束通り、動物退治やら、届け物を頼まれるわけだが、キャラクタの語り口が実によくできている。NPCたちの頼みごとを聞いているうちに、自分が選んだ種族の歴史や習性がわかってきて、グイグイと「WoW」の世界に引き込まれていくのだ。

 難易度のバランスも絶妙だ。クエストをこなしていくうち、徐々に行動範囲が広がり、装備が揃い始め、レベルも上がっていく。うまくすれば、同じクエストに挑むプレーヤー同士の仲間もできるだろう。新しいエリアへ足を踏み入れるごとに書き込まれていく「World Map」とともに、プレーヤーの「WoW」への順応は進んでいく。スターティングマップを残らず探索し尽くしたあたりで、いよいよ本格的な冒険の始まりとなる寸法だ。

 例えば「EQ2」などで導入されているチュートリアルクエストは、文字通り「チュートリアルを目的としたクエスト」だが、こうした初期クエストをただのチュートリアルにしないところが「WoW」の素晴らしいところだ。丁寧に丁寧にストーリーを織り込んでいく「WoW」のクエストは、いわゆる「お使いクエスト」とは一線を画している。さまざまな楽しみ方はあるが、このクエスト群は間違いなく「WoW」のメインディッシュといえるだろう。

 英語のクエストなんて意味がわかるのだろうか、などと心配する人もいるかもしれない。しかし、「Quest Log」ウィンドウがとてもよく出来ていて、今、いくつクエストを受けているのか、何をしなければならないのか、どこまで進んでいるのか、褒賞は何か、がわかりやすく表示される。必要とあらば「Quest Log」を開いて、辞書を引くなりWebで調べるなりすれば、すぐにクエストの解法は見つかるだろう。ぜひ、この珠玉のクエスト群を体験して欲しい。

「Quest Log」では、成功すれば何がもらえるも表示される。クエストを受けれる数は最大20個まで クエストを進めていくうちに広がっていくプレーヤーの「World Map」。まだ白紙のところに新しい冒険がある


■ 日本人プレーヤーたちよ、参戦せよ!

ノームたちが発明した奇怪な形の地下鉄。Horde側ではこれまた奇怪な飛行船が交通手段として存在する
 筆者は「WoW」が面白いとは聞いていたが、これほどまでによく出来たMMORPGだとは正直思っていなかった。MMORPGというジャンルの成熟を1段階進めた傑作だと言っていいはずだ。と、思わず熱く語ってしまうほど、他のMMORPGとはレベルの違う完成度なのだ。さすがに、米国・欧州・アジアで同時に大ヒットを記録した唯一無二のMMORPGだけのことはある。

 ゲームの出来栄えは確かだし、日本から問題なくプレイできることもわかった。問題点といえば英語くらいのものだが、筆者のような片言レベルの英語力でも、クエストや外国人のプレーヤーのコミュニケーションは通用した。よほどの英語アレルギーでもない限り、プレイに支障はないだろう。むしろ、そうした非日常空間で遊ぶこと自体が、実に楽しい体験であることを知って欲しい。

 もし、今のMMORPGに飽き足らなく感じているようなら、気分転換に「WoW」をプレイすることをおすすめしておきたい。筆者自身、まだ「WoW」の世界のほんの序盤を散歩したに過ぎない。PvPに、オークションシステムに、生産スキルに、インスタンス・ゾーン、それにレイドと、まだまだ楽しみは尽きない。コース料理に例えれば、食前酒を飲んで前菜を一つまみしたくらいのトコロだろう。お楽しみはこれからだ。

Tailoring(裁縫)スキルを使用してシャツを作ってみる。こうした生産スキルも資金繰りを助けてくれるプレーヤーの味方だ そのうちレベルの近いもの同士、グループを組むことが増えてくるだろう。ご陽気な外国人プレーヤーと組むと狩りはとても楽しい

(C)2005 Blizzard Entertainment. All rights reserved.


【World of Warcraft(カッコはMac版の必要スペック)】
  • CPU:Pentium III 800MHz以上(G4 G5 933MHz以上)
  • メインメモリ:256MB以上(512MB以上)
  • HDD:4GB以上(4GB以上)
  • ビデオメモリ:32MB以上(32MB以上)


□「World of Warcraft」の公式ページ(英文)
http://www.worldofwarcraft.com/

(2005年5月16日)

[Reported by 下野 宏]


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