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【特別レポート:その2】

任天堂のWiFi無線通信サービスに関して、
スクウェア・エニックス和田社長が強力なバックアップを宣言!!
「どんなコンテンツで応えていくかが、我々の勝負」

2005年3月期中間決算説明会で語るスクウェア・エニックス和田代表取締役社長
5月11日 発表



 5月9日、本誌独占レポートとして、任天堂株式会社のWiFiを利用した無線LANサービスに関する同社代表取締役社長・岩田 聡氏のコメント記事を掲載させていただいた。この中で、ニンテンドーDS(DS)、そして任天堂の次世代機となる「Revolution」につながる新たなサービスである「インターネットを利用したDS同士の接続」、「DSがシームレスで利用できる無線アクセスポイントの設置」、「ユーザーのAP(アクセスポイント)の利用可能」、「WiFiサービス対応自社ソフトの月額課金ゼロ」、「実世界の友人同士だけがつながる仕組みの提供」といったトピックが公開された。

 弊誌では、この新たなサービスに関して、オンラインソフトを多数提供してきた日本のトップコンテンツメーカーのひとつである、株式会社スクウェア・エニックスの代表取締役社長・和田洋一氏にもこのサービスについてお話を文書で伺う機会を得たので、その全文を公開させていただこう。

 結論から言えば、スクウェア・エニックスはWiFiサービスに対して、非常に前向きな姿勢を見せている。「Revolution」を含めたこのサービスは、まだまだ奥が深そうだ。


■ 任天堂のWiFiサービスはオンラインゲームパブリッシャーにどう映ったのか?

 今回、E3 2005直前のハードスケジュールをこなしているであろう和田氏に対して、数を絞った形で質問をぶつけてみた。

 任天堂のWiFiサービス展開は、従来のものとは異質であり、多数の可能性を秘めていることは記者も承知している。その認識がある上で、あえて、日本において従来のオンラインゲームのフラグシップ的タイトルである「FFXI」など提供している立場から、和田社長にいくつか質問を投げてみたくなったのだ。

 なぜなら、以前、和田社長は「アジア オンラインゲーム カンファレンス 2005(AOGC2005)」において、オンラインゲームの運営について、「オンラインゲームはサービス業。作り方も違うし、経営的に言えばリソースのもっていきかたが全然違う」と語り、「これまでパッケージソフトを作ってきたところほど、(制作するのは)ずっと難しいだろう」と言及していた。

 任天堂は、前回の記事でもお伝えしてきたとおり、ファミコン時代から数々のトライを経て、プレーヤー同士の「つながり」に関して独自のノウハウを蓄積してきた。しかし、見方を変えれば、まさに和田社長が述べている「パッケージソフト」を提供してきた側の代表的存在であることも確かだ。

 そんな任天堂の提案が、オンラインゲームの世界で1つの城を築き上げてきた和田社長の目にどう映ったのだろうか?


■ 「シームレス」は新たなユーザーをオンラインへいざなうキーワード

――国内オンラインゲームのトップパブリッシャーとして、任天堂・岩田社長のWiFiに関する取り組み、提案をどう受け止めていらっしゃいますか?

 岩田社長はゲームの新しい楽しさの可能性を提案なさっています。我々としては、「シームレス」というキーワードを2つのポイントで理解しました。

 オンラインゲームという言葉を非常に慎重に使われていますね。この点はわかるような気がします。ゲームというジャンルにおいては、そのゲーム性こそが重要であって、端末のありようやインフラがどうなっているかなど、本質的ではないと仰りたいのでしょうね。「据置型」vs.「携帯型」、「コンシューマーゲーム(お忘れでしょうがゲーム機で作動するゲームという意味です)」vs.「PCゲーム」など、今になってみるとこれらの区別を気にしなくなってきました。インターネットもWiFiもそうだと思います。インフラが何であるかを意識する事はゲームを楽しむ上ではあまり意味がありません。

 岩田社長の仰る「シームレス」というのは、こうした表面的な区別を意識せずにコミュニケーションが楽しめるという、心理的なシームレス、身構え、心構えの不要な世界という事なのでしょう。これが1つ。

 もう1つは、「実際に出会ったことのある友人同士だけがつながる仕組み」という件りです。現実世界がシームレスにヴァーチャルに広がっていくイメージですね。電話からインターネットになった時の重要な変化の1つは、相手が特定多数から不特定多数になった事です。従って、これはネットワーク文化からすると根本的に新しいご提案です。現状のネットワーク・コンテンツとの優劣の問題ではなく、新しい市場が広がる期待を持てるという点で重要だと思いました。コミュニティの作られ方が全く異なるでしょうし、サポート・サービスも変わってくるでしょう。

 これらポイントは今のユーザー様にとってはさらに楽しさが深まり、これまでさほど関心のなかった方にとっても楽しさが広がっていくという事だと思います。

――プレーヤー同士のコミュニケーションに関して、実際にオンラインゲームを運営されている側の立場から、今後の課題などはございますか?

 先ほども申し上げましたが、岩田社長のご提案によって想定されるコミュニケーションと、現在我々が提供しているオンラインゲーム内におけるコミュニティとでは、互いに性格が異なるのだと思います。

 我々の主力タイトルである「ファイナルファンタジーXI」については、広大なヴァナディール(FFXI内の仮想世界)における人間社会そのものをサポートしているわけです。変化に富んだところがユーザーの皆様にとっては尽きることのない楽しさであり、一方、我々にとっては、楽しくも難しくも、といったところでしょうか。まさに人間社会そのものですから、課題は刻々と生まれ、我々は刻々とそれを解決していくという事になります。課題も楽しさも無限です。そこがオンラインゲームの素晴らしいところです。

――任天堂さんのご提案に関して、スクウェア・エニックスさんから具体的な対応プランなどがございましたら教えていただきたいのですが?

 コミュニケーションを梃子(てこ)として、今後飛躍的にゲーム(あえて言い換えれば、インタラクティブ・エンタテインメントでしょうか)が拡がっていく。我々の中でもこの確信が深まった素晴らしい提案だと思いました。

 我々としてさらに興味をひかれたのは、次のステップを既に「Revolution」で準備なさっているという件ですね。これは、携帯だけでなく、据置だけでもない、全く新しい「プラットフォーム」が生まれるという事で、我々が望んでいたことです。これから、任天堂さんの提案に対して、どんなコンテンツで応えていくかが、我々の勝負ですし、強力にバックアップしていきたいと思います。


■ 全く新しい「プラットフォーム」=「Revolution」を含め、どんなコンテンツで応えていくかが勝負

 スクウェア・エニックスにとって、パッケージ型のゲームを提供してきた任天堂が作り出そうとしている新たなサービスは、ダウンロードや拡張ディスクでの拡張を続けてきた「FFXI」をはじめとする従来型のネットワークゲームとは違うと、はっきり認識していることが伺える。

 また、「端末のありようやインフラがどうなっているかなど、本質的ではない」というくだりは、「AOGC2005」において、同氏がオンラインゲームにおいて、マルチプラットフォーム、クロスプラットフォームは「サービスの本質」であり、ユーザーにとって大事なことは、「究極を言えばコンテンツが大切なのではなく、コミュニティが大切なのではないか」と語っていたことに通じる。

 さらに「今のユーザー様にとってはさらに楽しさが深まり、これまでさほど関心のなかった方にとっても楽しさが広がっていくという事だと思います」と、任天堂の提案に対し、ユーザー層の新たな掘り起こしの可能性に注目していることが伺える。オンラインゲームの今後10年について、「いまMMORPGをプレイしている人がどれくらい引っ張ってくれるかによって、一般市場にブレイクするかが決まる(『AOGC2005』の発言より)」と、従来のユーザーによる牽引に期待する発言を行なっていた和田氏は、今回の任天堂のWiFiサービスの可能性への確信を深めている。

 任天堂同様、スクウェア・エニックスとしても、やはり具体的なことはE3 2005以降に明らかになるのは間違いない。だが、「どんなコンテンツで応えていくかが、我々の勝負」と、「Revolution」を視野に入れた次のステップにも前向きな姿勢がはっきりとうかがえたことは、任天堂にとっても大きな援護射撃になっただろう。

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.co.jp/
□関連情報
【5月9日】無線LANスポット開設、ユーザーのAPも使用可能!!
任天堂、岩田社長よりWiFiを利用した
無線通信サービスに関するコメントを独占掲載!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050509/ninten.htm
【2月28日】ブロードバンド推進協議会、「AOGC2005」開催
和田洋一スクウェア・エニックス社長が語る「ネットワークゲームビジネス」とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050228/bba.htm
【3月11日】Game Developers Conference 2005現地レポート
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E3に先駆けて次世代機“Revolution”の基本仕様を公開!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050311/gdc_iwa.htm

(2005年5月11日)

[Reported by 佐伯憲司]


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