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★PS2ゲームレビュー★

戦渦の北朝鮮で気ままな傭兵稼業
「マーセナリーズ」



■ これまた微妙な時期に……

題材はヘヴィだがゲーム自体は誰でも遊べる娯楽作品に仕上げられている
 PS2「マーセナリーズ」は、南北朝鮮の統一を阻む「チョイ・ソン」将軍率いる反乱軍と傭兵の戦いを描いたミリタリー・アクションゲーム。当然ながら、本作の設定は“完全なフィクション”だが、3Dグラフィックで表示される朝鮮半島の地形や市街地、兵器、ビークル(乗り物)などは大半が実在するものばかりで、思わず「コレ色々な意味で大丈夫か?」などといらぬ心配をしてしまう。

 ストーリーを簡単に説明すると、ゲームは西暦20xx年の北朝鮮が舞台。軍部の独裁を目論むチョイ・ソン将軍がクーデターを引き起こし、平和的解決を模索していた父「チョイ・キム総統」を殺害。チョイ・ソン将軍は、周辺国との国交断絶を宣言して鎖国体制を構築し密かに核開発を行なっていたが、オーストラリア海軍による臨検で北朝鮮籍の貨物船から核弾頭が発見され、計画が露見してしまう。こうした事態に、国連は急遽多国籍軍を編成して北朝鮮に侵攻を開始。査察により裏づけを得た国連は、チョイ・ソン将軍を含む反乱軍の幹部全52名を「Deck of 52(52枚のトランプカード)」と名づけ国際指名手配するとともに、一億ドルという多額の賞金を懸けた。

 傭兵派遣会社「エグゼクティブ・オペレーションズ」は、北朝鮮に選りすぐりの傭兵ひとりを密かに送り込むことを決定。プレーヤーはその傭兵となり、「Deck of 52」をすみやかに拘束し、反乱軍を鎮圧して多額の報酬獲得を目指す。このようにシチュエーションそのものは非常にヘヴィだが、そこはゲームだけに能天気なノリでプレイしても全然構わない。後ほど詳しく説明するが、モチーフの重さとは裏腹に、アクションシューティングが好きな人なら誰でも即座に楽しめる娯楽作品に仕上げられているのが印象的。まずは、ゲームの基本部分からご紹介していこう。

北朝鮮でクーデターが勃発。秘密裏に核開発を行なっていたことが明らかになり、国連は多国籍軍を派遣するとともに反乱軍の幹部52名を国際指名手配した(あくまでもフィクションです。念のため)



■ 使うボタンは多いが操作はカンタン ~あんじょうしいや~

ほぼすべてのボタンを使うが操作系が整理されているため混乱することはない
 ゲーム画面は、プレーヤーキャラクタを後方視点から操作するサードパーソンシューティングスタイルを採用。FPSが苦手な人でも“3D酔い”することはないだろう。ちなみに、筆者は一般的なFPSなら30秒もたないほど症状が酷いタイプだが、本作に関しては最後まで問題なくプレイできている。

 キャラクタの移動には左アナログスティックを使用。右アナログスティックが視点およびターゲットカーソルの移動、R1ボタンが射撃、R2ボタンが射撃武器の切り替え、L1ボタンがグレネード攻撃、L2ボタンがグレネードの切り替え、□ボタンが殴打、×ボタンが再装填、○ボタンがジャンプ、セレクトボタンがさまざまな情報が参照できる“PDA”にそれぞれ対応している。方向キーは、上下で間接射撃などのサポート選択、左で画面内に登場するキャラクタの所属表示、右がアイテム購入(マフィアショップ)となっている。

 一見すると使うボタンが多いためアクションゲームに不慣れな人は怖気づいてしまいそうだが、戦闘中に使うボタンは極めて少ないため、混乱することはほとんどないはず。自動小銃やRPGなどのハンディウェポンは2種類まで携帯でき、それぞれボタン一発で切り替え可能。キャラクタの移動、ボタンなどの操作レスポンスは良好。ボタン配置はエディットできないが、カーソルの垂直反転、視点感度などは随時変更できる。デフォルトではちょっと重い感じがするので、自分が一番扱いやすい感度に調整したほうがいいだろう。

 いろいろと行き詰まったのならば、マニュアルに目を通すのも良いだろう。ちょっと“字”が多いような気もするが、かなり詳しく書かれているマニュアルなので参考になる。車両や武器のリストも掲載されているので、チェックしておくと良い。

【爽快感あふれる戦闘アクション】
左アナログスティックでキャラクタまたは乗り物を操作し、右アナログスティックでカーソルを合わせてR1ボタンを押すだけ。要人暗殺任務でおなじみ(?)のスナイパーライフルも当然あり。爽快かつ多彩な戦闘アクションが堪能できる


 念のため注意してほしいのは、多くの国産タイトルと異なり(一部例外をのぞき)本作は×ボタンが決定、△ボタンがキャンセルになっていること。メニューやコマンドをキャンセルするつもりで、無意識のうちに×ボタンを連打することがないよう気をつけていただきたい。


■ 半島を侵食する4大勢力の影 ~傭兵は世渡り上手が一番でっせ~

初心者にはジャコブズがオススメ。腕に自信のある人はムイで挑戦!
 ゲーム開始直後、プレーヤーは3人の傭兵「クリス・ジャコブズ」、「ジェニファー・ムイ」、「マティス・ニルソン」から使用するキャラクタを選択。ジャコブはタフで死ににくい、ムイは敵に発見されづらい、ニルソンは俊敏かつ身体能力が高いといった特徴を持つが、初めてプレイする人あるいはアクションゲームに不慣れな人は、少々の被弾をものともしないジャコブズを選んだほうがいいだろう。このあたり、身体能力に特化したニルソンは初~中級者、打たれ弱いムイは上級者向けといった印象だ。

 キャラクタ選択後は、輸送機で軍事境界線から進入して国連軍司令部に直行。この後、「国連軍」、「韓国軍」、「ロシアンマフィア」、「中国軍」と立て続けに“顔みせ”的なミッションを引き受けることになるが、その後はプレーヤーが好きなように行動できるようになる。各司令部から提示されるミッションをクリアし、その見返りとして反乱軍幹部「Deck of 52」の所在に関する情報を獲得していく必要はあるが、一部必須のものを除き、引き受ける頻度や順番などは大筋でプレーヤーに一任されている。ミッションを引き受けたりクリアしない限り時計の針が進むことはないので、気が済むまで反乱軍兵士をしばき倒し続けることも可能。

 ただし、唯一気をつけたいのが、プレーヤーと各勢力のあいだに設定されている“友好度”と呼ばれるパラメータの存在。友好度は、ミッションを成功させたりその勢力と敵対する存在に攻撃を加えることで上昇するが、所属兵士を殺すと下がってしまう。友好度が高ければ各勢力の支配地域を何事もなく通過できるが、低いと容赦なく銃弾が浴びせられる。各司令部を直接訪問して賠償金や賄賂を支払えば最低ラインまで回復させられるが、所持金に余裕があるゲームではないため、無意味な殺生は避けたほうが無難だ。

北朝鮮で4大勢力それぞれの思惑が交錯する 依頼は各勢力の司令部で直接受けることになる ミッションや共闘で友好度を上げていくべし


 唯一の民間勢力(?)ともいうべきロシアンマフィアに関しては、友好度が上がると同勢力が運営する闇サイト「マーチャント・オブ・メナス」から兵器や物資が購入できるようになる。購入可能な兵器は、クルマや戦車などの乗り物、武器、回復アイテムや弾薬などの補給物資、あげくの果ては空爆や砲撃まで要請できるといった無法っぷりで、しかも宅配ピザよろしくPDAからのアクセス一発で現地に届けてくれる。

 敵対する中国軍から“火事場泥棒”よばわりされるロシアンマフィアだが、一介の傭兵たるプレーヤーには何の関係もない。これはロシアンマフィアだけの話ではないが、特に思惑がない限りは“余計な恨みを買わないよう”上手く立ち回り、敵対レベルまで下がったときは早めにケアしておいたほうがいいだろう。


■ 傭兵はゼニを稼ぐのが仕事 ~好きにやらせてもらいますわ~

ゲームの目的はスペードのエースことチョイ・ソン将軍を倒すこと。でも、そこに辿り着くまでの過程が面白いのだ
 本作の最終目的は「Deck of 52」全員を拘束することだが、その過程における“ミッションの内容”と“成功報酬の獲得”が、これまた非常に熱い。ミッションには各勢力の思惑とイデオロギーが入り混じっているため、どれも一筋縄ではいかないものばかり。軍司令部のなかということもあってか、ミッションを説明する現地最高責任者の口からは歯に絹を着せぬダイレクトかつ刺激的なコメントが放たれる。

 これは、戦う相手が「反乱軍だけとは限らない」ことを意味する。反乱軍の鎮圧はもちろんだが、各勢力は“その後”を視野に入れつつ行動している。指揮系統がアタマデッカチな国連軍の動きは鈍く、韓国と中国は互いに足を引っ張り合い、ロシアンマフィアに至っては、ほぼ「金品」の一点のみ。こうした思惑の違いを噛み締めながらプレイすると、本作がより味わい深く楽しめる。

 ミッションの内容は、敵の殲滅、重要人物の暗殺、拠点や危険物の破壊、味方の安全確保、物資の鹵獲など多岐にわたる。なかでも筆者がスリリングだと感じたのは、敵勢力に身元が割れないよう立ち回る必要があるミッション。単純に敵が多いミッションも刺激的で面白いが、ステルスアクション的な要素が加味されたものは、一工夫すると任務遂行がとても楽になったりする。内容にもよるが、同じミッションでもアプローチを変えることで何度でも楽しめるフレキシブルな作りは「最高!」のひとこと。

 前述の「Deck of 52」についても、一応は「拘束するように」と指示が出されているものの、面倒なら殺してしまっても構わない。賞金は半額になってしまうが、「ダーティハリー」気質な人は“あえて生かさず”というプレイもあり。ちなみに「Deck of 52」のうち、必ず拘束もしくは抹殺しなければならないのは各マークのうち「ジャック」、「クイーン」、「キング」、「エース」の4人(クーデター首謀者のチョイ・ソン将軍はスペードのエース)。反乱軍幹部のなかでも重要度が低い人物は、ゲームのクリアに直接関係しない。

【キズつけんほうが高く売れますやんか】
最初に受けるミッションから、いきなり暴走できてしまうのが「マーセナリーズ」の凄さ。通常、反乱軍幹部を発見したら拘束して呼び出したヘリに押し込むのがセオリーだが……
【しんどいなぁ。殺ってまおか】
「あたしチョー身体弱いしー。面倒だしー」とクルマで突撃。拘束しようにも2度と動くことはないので写真を撮って終了。賞金が半分になってしまうのが痛い。ちなみに、直後の砲撃陣地を潰す任務もピンポイント・ボムではなくRPGで代用可能


 なお、いくら好き勝手にやれるといっても、ほぼ問答無用でやってはいけないのが当然の事ながら「民間人」の殺害。市街地などで道路わきをノコノコと歩いているため、気を抜いているとつい(?)ビークルで轢き殺してしまうことがある。兵士なら所属する勢力の友好度が下がるだけで済むが、相手が民間人ともなれば多額の罰金と全勢力の友好度がまとめて下がるという強烈なペナルティが待っている。

 お金がなくて困ったときは、反乱軍の前線基地や兵士を襲って“現地調達”で済ませるという手もある。乗り物も、ガンナーシートの敵を先に処理すればハイジャックし放題。空を飛んでいるヘリだって、一定の高さまで降りてくれば地上からハイジャックできてしまう。奪った戦車で敵地に乗り込み、叩き潰した挙句にヘリを奪って颯爽と帰還するといったランボーやコマンドー顔負けのド派手なアクションも自由自在。

 このように、ゲームの進めかたはもちろん、純粋な戦闘パートの行動においても“高い自由度”が盛り込まれているあたりが「マーセナリーズ」の素晴らしいところだ。

闇サイトを利用するのもいいが、個人的には現地調達プレイがとても楽しい。ヘリのハイジャックには少しコツがいるものの、慣れれば案外カンタン



■ ミリタリーに特化した「GTA」 ~ドカンと一発、気持ちよぉやれまっせ!~

 本作をプレイしたとき、恐らく誰もが「これ『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズに似てるなぁ」と感じるのではないだろうか。戦場という限定されたシチュエーションではあるが、画面および箱庭タイプのフィールド構成、プレーヤーに与えられた自由度、複数勢力のせめぎ合いなど、共通する部分は多い。

 だが、本作と「GTA」シリーズが決定的に違うのは、プレーヤーの行動が「軍隊における戦闘行動」にほぼ特化しているということだ。ゲームの流れそのものを単純比較すると「GTA」のほうがプレーヤーに与えられた選択肢は豊富なのだが、“ミリタリー”というカテゴリに限定したとき、「マーセナリーズ」の完成度は「GTA」のそれを上回る。似たようなシステムながら、テーマをしぼったことでゲーム全体に適度な明瞭さと奥行きが生まれ、その隅々に手が届くかのごとき印象を受ける。

 ミリタリーに特化した作りだから、プレイする側にも迷いが生じない。ミッションコンプリートはもちろん、ゲームを進めていくうちに増えていく闇サイトの商品、フィールドのあちこちに隠されたシークレット・アイテムなど、やり込み要素も十分。“打てば響く”ならぬ“撃てば壊れる”オブジェクト群も、本作のダイナミックな一面を見事に象徴する作りとなっている。アクションシューティングとしての充実度はバッチリで、ミリタリーファンはもとよりライトなアクションゲーマーにもおすすめしたい1本だ。


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□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□製品情報
http://www.japan.ea.com/mercenaries/main.html
□関連情報
【4月13日】EA、PS2「マーセナリーズ」
戦車から攻撃ヘリまで、乗り物と支援兵器の情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050413/mer.htm
【4月11】EA、ミリタリーイベント「トイガンバザール2005 東京激震祭」に
PS2「マーセナリーズ」を出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050411/merc.htm
【4月6日】EA、PS2「マーセナリーズ」
自由度の高いゲームシステムの詳細などを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050406/mer.htm
【3月30日】EA、PS2「マーセナリーズ」
主要登場人物と勢力関係図を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050330/mer.htm
【3月23日】EA、自由度の高いミリタリー・アクション
PS2「マーセナリーズ」を4月28日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050323/mer.htm
【1月17日】EA、近未来の朝鮮半島を舞台にしたミリタリーアクション
PS2「マーセナリーズ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050117/ea.htm

(2005年4月27日)

[Reported by 豊臣和孝]


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