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株式会社ブロッコリー、ガンホーオンラインエンターテイメント株式会社、株式会社ヘッドロックは、本日都内で合同記者会見を開き、MMORPG「エミル・クロニクル・オンライン(ECO)」を正式発表した。提供プラットフォームはPCで、2005年夏にもβサービスを開始し、年度内にも正式サービスへ移行する見込み。本稿では取り急ぎ発表会の模様をお伝えする。ECOの内容については、別稿にてお伝えするつもりだ。
■ 3社協同で展開する純国産MMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」
発表会では、ECOの制作委員会である「トリオECO」を構成する3社トップが顔を揃え、ECOに関する事業戦略が発表された。3社の役割分担は、非常に明確になっていて、国内有数のオンラインゲーム運営の実績を持つガンホーが運営および海外展開。リアル店舗を持ち、キャラクタビジネスに強いブロッコリーが、マーケティングとマーチャンダイズを担当。そして国内最高クラスのオンラインゲーム開発実績を誇るヘッドロックが開発を担当する。ネームバリュー、実績ともに抜群のコラボレーションといえる。 ただ、今回の発表会は、ガンホーの上場後としては初の大規模な発表となっただけに、内容はどちらかというと投資家の向けの情報が中心となった。ECOの概要紹介については、今夏βテスト開始予定の割には、コンセプトレベルの発表に留まった。元「ラグナロクオンライン」のGMマネージャーで、今回ECO担当マネージャーを務める岩田氏も、概要説明の中で再三開発途上の段階である、日々更新状態であることを強調しており、エンドユーザー向けの情報公開は、もうしばらく待つ必要がありそうだ。
■ コンテンツとサービスを一体化したことによるさまざまなメリットとは?
しかしよくよく話を聞いてみると、カードゲームとオンラインゲームが、共にコミュニティベースであり、開発そのものよりむしろその後の運営、運用が重要と言ったビジネスモデルなどの類似性に気づき、同社がこれまで築き上げてきたカルチャーやコンセプトをそのまま活かせることから、積極的に展開していくことを決断したという。その後、木谷氏が、ガンホーの森下社長とヘッドロックの岡田社長の仲人役を演じ、今回の3社協業がスタートしたという。 ブロッコリーの役割については、店舗を駆使したイベントやアナログなマーケティングと、キャラクタビジネスのノウハウを活かした商品開発を担当するという。ここで木谷氏は、「オンラインゲームはメディアだと思っている」と独自のオンラインゲーム観を披露。「10万、20万のユーザーがいるオンラインゲームは、いってみれば0.2~0.3%の視聴率のアニメを24時間流し続けているようなものであり、会員が増えればそれだけメディアとしての力が強くなる」とコメント。 このECOという“メディア”の有効活用例として、BGMのCD化、ラジオ局の設置、キャラクタの商品化などを挙げた。このビジネスは「10万、20万人の会員が集まれば成立する」ということで、「ブロッコリーではそういう立場で今回の協業に参画している」と明言。木谷氏の発表内容は、MMO史上における大きなパラダイムシフトの提案であり、ゲーム関連ビジネスの新形態へのチャレンジという意味で大変興味深い。 続いて壇上に上がったガンホー代表取締役社長 森下一喜氏は、開口一番「ガンホーが目指してきた国産のオリジナルタイトルを計画通りに進めることができた」と報告。ECOのターゲットについては、オンラインゲームユーザー、家庭用ゲーム機ユーザー、ライトユーザーの3つの層を挙げ、「オンラインゲーム市場の更なる活性化を目指したい」と抱負を述べた。 新しい取り組みとしては、「コンテンツとサービスの一体化」を強調。具体的なアプローチとしては、クレームに対する迅速な対応、ユーザーとのよりよいコミュニケーションの形成、ゲームだけでなく音楽/映像配信、e-コマースまで網羅した“テーマパーク”の構築などを挙げた。これはいうまでもなく「ラグナロクオンライン」がコンテンツとサービスが分離されており、このため思うような運営ができていない反省をふまえてのコメントであり、ガンホーはECO運営で、真の意味でオンラインゲームパブリッシャーとしての評価がなされることになる。 森下氏はさらにガンホーの担当分野である海外展開にも言及。対象エリアについては、北米、欧州、アジア(台湾、中国、韓国)の3地域とし、具体的な展開方法については明かせないが、すでにいくつかのパブリッシャーと交渉も行なっているという。
■ コンシューマー層を取り込むためのプランの数々
そのほかにもECOを特徴付ける要素として、柔らかい雰囲気のグラフィックス、わかりやすいインターフェイス、絵本のようなかわいらしい世界観、豊富な着せ替え要素などを紹介。岡田氏によれば、女性でもスムーズにコミュニティに参加できるような「優しいコミュニティの形成」を考えており、キャラクタが出血することもなく、モンスターも童話の世界に出てくるようなかわいらしいものが多くし、可能な限り“殺伐観”を払拭させているという。 ただ、上記のグラフィックス上の基本仕様は、「ラグナロクオンライン」でも同様に言い得る。唯一大きく異なるのは、「豊富な着せ替え要素」である。「ラグナロクオンライン」では、キャラクタのグラフィックスは、1枚のテクスチャで処理されている関係上、基本的にジョブ固有になっており、頭など一部の部位のみしか個性化を図ることができない。 岡田氏によれば、ECOでは、キャラクタの個性化を図るための着せ替え要素を充実させており、システム面でも新しい試みを導入しているという。具体的な例としては「ソックスにサンダル履き」を紹介。「素足の上にサンダルを履けば、サンダルの隙間から素足が見えますが、ソックスを履いてその上にサンダルを履けば、隙間からソックスが見えます」という。一見なにげないことのようだが、着せ替えイコール個性化のために、ここまでこだわったMMORPGも珍しい。システム的にはスロットを部位ごとに複数用意することで、指数関数的な着せ替えのバリエーションを提供するという。このシステムで果たして女性が集まるかどうかは未知数だが、歓迎するオンラインゲームファンは多いだろう。 2つ目のコンセプトが「いままでになかった新しいコミュニティ」。岡田氏はまず前提として、「RPGというジャンルは経験値やアイテムの取得が、ほぼプレイ時間に比例しており、プレイ時間の量によって、ユーザー間に格差が生まれる運命にある」とMMORPGの仕様上の限界を紹介。そしてこのユーザー間の能力格差が、モラルの低下、不正行為の助長、ログイン率の低下、新規ユーザーの減少といった、ビジネス的に無視できないコミュニティに起因するゆがみが発生していることを指摘した。 ゆがみの原因であるユーザー間の能力格差を是正するというのが2つ目のコンセプトの目指すところだが、肝心の具体的な内容については一切明らかにされなかった。岡田氏は、発表会後の質疑応答で、方向性の一端として、ECOのオリジナルシステムである「マリオネットシステム」を取り上げた。 詳しくは別稿にて紹介するが、ゲーム世界「アクロニア大陸」の先人達が作ったとされるキカイをベースに生み出されたペットロボットのような存在で、ユーザーはマリオネットに憑依することで特殊な能力を発揮できるだけでなく、マリオネットに指令を出すことでログアウト時にもゲーム世界での活動を継続することができる。つまり、マリオネットを使った不在マクロシステムが、能力格差を是正するアイデアのひとつということのようだ。 なお、βテストについては、今夏とのみ発表されており、βテストの形式もクローズドなのかオープンなのかは未定という。販売形態については、無料ダウンロードを基本とし、スターターキットのようなプレミアムパッケージの発売も検討するという。課金システムについても、月額課金、アイテム課金の両方を想定して検討を重ねていくという。想定ユーザー数については、森下氏のオープンβテストの努力目標として100万人という数字を挙げた。森下氏が、「ラグナロクオンライン」を上回る努力目標を設定したのはECOが初めてのケースで、大きな期待を寄せていることを伺わせる。
ECOの開発体制は、「ディプスファンタジア」等の開発経験を持った約30名をコアとして、その他外注スタッフも含め、40名以上の規模で開発が進められているという。発表会で明らかにされた2006年までのアップデート計画については、単純に「現在企画している仕様をすべて盛り込めるのが2006年になる」とのことで、すでに3つの大規模アップデートのプランも用意しているという。これが無料ダウンロードになるのか、「ディプスファンタジア」のように拡張ディスク形式になるかは未定で、「MMOビジネスは、運営側が定めるスタートラインと、開発側が定める合格点にはズレがあるため、先を見越して開発している」という。ゲームの全容が判明するのはもうしばらく先になりそうだが、今後の展開が非常に楽しみなビッグプロジェクトの誕生である。
(C) 2005 BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.
□ブロッコリーのホームページ (2005年4月21日) [Reported by 中村聖司]
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