【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PS2ゲームレビュー★

奥深い攻防が堪能できる2D対戦格闘
「ザ・ランブルフィッシュ」

  • ジャンル:2D対戦格闘
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(3月17日)



初代稼動当初は“ガーネット一色”だった気がしなくもない
 従来の2D対戦格闘ゲームとは異なるグラフィック表現「S.M.A.(スムースモデルアニメーション)システム」で注目を集めた「ザ・ランブルフィッシュ(TRF)」。アミューズメント施設における客の食いつきは正直今ひとつだったが、コアなファン層に支えられたこともあり、3月28日から続編となる「ザ・ランブルフィッシュ2(TRF2)」が稼動している。

 アミューズメント施設でやりこんでいた人は“いまさら感”があるかもしれないが、逆に「今までプレイしたことがないけど『TRF2』を含め興味がある」という人がいれば、PS2版「TRF」は十分オススメできる内容となっている。なぜなら、基本的なシステムは「TRF」と「TRF2」で共通する部分が多く、「TRF」未体験の人が「TRF2」でアミューズメントデビューする場合、PS2「TRF」であらかじめ立ち回りなどが練習できるからだ。

 PS2版「TRF」には、AC「TRF2」で初登場する新キャラクタ「SHERYL(シェリル)」が追加されている。“鋼糸(こうし)”を操るテクニカルなキャラクタにつき、自宅で練習できるメリットは大きい。これまで一度もプレイしたことがない人なら、全キャラクタの基本性能を確認するうえでも必ず役に立つはずだし、一緒に対戦してくれる友だちがいるのなら、もはや何もいうことはない。ソロプレイを前提とするなら少々微妙だが……何はともあれ、まずは基本的な仕様から解説していこう。

【オープニングムービー】
コンシューマ版オリジナル要素。見栄えのする主要キャラクタ以外はほとんど動かないという恐ろしくソリッドな内容。ボイド好きの筆者にはつらい仕打ち。っていうか酷すぎるよ!(泣)



■ ディープな駆け引きを支える多彩なシステム

 操作系は、方向キーまたは左アナログスティックがキャラクタの移動や必殺技のコマンド入力、□ボタンが弱パンチ(LP)、△ボタンが強パンチ、×ボタンが弱キック、○ボタンが強キック、R1ボタンが“ダッジ”、L2ボタンが挑発にそれぞれ対応。デフォルト設定では、弱パンチと弱キック同時押しの“アドバンスドアタック”がL1ボタンに、強パンチと強キック同時押しの“ジョルトアタック”がR2ボタンに、それぞれ割り当てられている。

 元々がアーケードゲームだけに、キャラクタの操作は方向キーと5つのボタンだけでほぼすべてまかなえる。ただし、コンシューマ版ならではの同時押し機能がデフォルトで用意されているため、自宅でしかプレイしない人はうまく活用するといい。逆にアミューズメント施設での対戦プレイを想定するなら、アーケードライクなコントローラーが必要不可欠。最近は完全アーケード仕様の高級品も発売されており、興味がある人はこの機会にチェックしておくといいだろう。

 敵キャラクタを攻撃するには、間合いを調節しつつ、弱強パンチまたはキックを特定の順番でタイミングよく押していく“ラッシュコンボ”を軸に、必殺技、投げをからめていくのが基本。防御に徹していると、ガードゲージがゼロになり一時的に防御不能(ガードクラッシュ)状態になるため、随所で“ダッジ(デフォルトはL2ボタン)”を活用したいところ。ダッジには、上半身が無敵になるグラウンドダッジ、方向キーを下にいれたままボタンを押す下半身無敵のエリアルダッジの2種類がある。それぞれダッジアクション直後に攻撃ボタンを押せば、回避行動からそのまま攻撃する“ダッジアタック”が繰り出せる。

【グラウンドダッジ】【エリアルダッジ】
上半身無敵。投げに対しては無力 下段攻撃を読んで使うと効果大


 こうした基本的なテクニックのほかに「TRF」には“オフェンシブゲージ”と“ディフェンシブゲージ”と呼ばれる各ゲージが画面下に存在し、そこから派生する攻防が対戦における勝敗に大きく影響してくる。各ゲージは、相手を攻撃したり、逆に防御したとき、さらには時間の経過で増加していく。

【アドバンスドアタック】
オフェンスゲージを半分消費。素早く突進して連続攻撃を叩き込む。通常技をキャンセルして繰り出すことが可能。そこから必殺技につなげば一気に大ダメージを与えられる
【ジョルトアタック】
オフェンスゲージをすべて消費するが、そのぶん威力は絶大。ガード不能攻撃がヒットすると、相手は一定時間行動不能に陥るのだ
【インパクトブレイク/ダブルインパクトブレイク】
成否に関わらずディフェンスゲージを半分消費。相手の攻撃をガードした瞬間、方向キーを上段または中段ならガード側真横、下段なら斜め下に入れてダッジボタンを入力。成功するとキャラクタが白く輝き、相手が一瞬硬直する
【オフェンシブアーツ】
オフェンスゲージをすべて消費。発動に必要なコマンド入力やボタンはキャラクタごとに異なる。大半は大ダメージを与える攻撃だが、なかには攻撃力がないかわりに特殊効果を発動するキャラクタも存在する
【ディフェンシブアーツ】
ディフェンスゲージをすべて消費。オフェンシブアーツ同様、入力するコマンドやボタンはキャラクタごとに異なるが、なかにはダメージを受けているときやガード中じゃないとアーツが発動しないキャラクタがいる。オフェンシブアーツに比べると相手に与えるダメージは小さいが、そのぶん無敵時間が長く防御に使いやすい
【クリティカルアーツ】
オフェンシブゲージ、ディフェンシブゲージが両方ともMAXになった状態のみ発動可能。発動には両ゲージをすべて消費するが、そのぶん威力は絶大


 ゲージを利用した攻防は、多用できないぶんタイミングよく使えたときの効果は絶大。ゲージを溜めるには攻撃を積極的に仕掛けるのが一番いいが、単調だとインパクトブレイクからのカウンター攻撃で体力ゲージをざっくり奪われてしまう。さりとて、手堅いガード主体でてをこまねいていると、ガードブレイクから墓穴を掘りかねない。このあたりの“不安定さ”が「TRF」における魅力のひとつだと、筆者は考えている。

 “矛盾”という故事があるが、それにならえば“究極の矛”となるジョルトアタックやオフェンシブアーツ、“究極の盾”として君臨するインパクトブレイクとディフェンシブアーツ、さらには諸々のシステムが「TRF」という名前の“天秤”にぶらさがっているような印象。プレーヤーは、天秤の両側に立って、諸条件を駆使しながら一生懸命コントローラーを操作していることになる。

 多用なシステムが用意されているぶん、何も知らずに“天秤の片側”に立ってしまうと、それこそアッという間に転がされてしまう。レバガチャでストレスが解消できるようなアバウトさ、暴れたもん勝ちといった“バクチ要素”が希薄で、やりこんだぶんだけプレーヤーにバックがあるのが「TRF」の良さだと思う。

 「初心者が寄り付かないゲーム」という烙印を押されそうだが、ちょっと触った程度で初心者と上級者が互角に戦えるようなゲームは、それこそ問題があるように思われる。その点、「TRF」のシステムは“無意味に複雑”というわけではない。攻撃、防御の各システムにはそれぞれ使いどころがあり、キャラクタによってバリエーションがさらに広がるという奥深さを兼ね備えている。

 最初のうちはラッシュコンボからのキャンセル必殺技、3種類のアーツ合戦になってしまうかもしれないが、ダッジ、インバクトブレイクあたりの使い方を覚えるにつれて、定番コンボをのぞけば“パターン化した立ち回り”は影をひそめていくはず。語弊を恐れずにいえば、「TRF」は“結果”ではなく“過程”を重視する人向けのゲームではないだろうか。少なくとも、筆者にはそう感じられる。


■ 特徴的なキャラクタ・手堅くまとめられたゲームモード

 正式稼動当初は「なんかFlash動画みたい」と揶揄されたグラフィックだが、ハイレゾということもあり、自宅のTVでプレイすると「そんな悪しざまに言われるほどのシロモノでもないわなぁ」と感じられる。

 各パーツが個別に動く、独特の“なめらかな動き”は好き嫌いが大きくわかれるところだが、パーツが独立していることで“ダメージで服が破ける”などの変化がつけやすく、なおかつわかりやすくなっているなど、演出面で多大な貢献を果たしている。もはや「TRF」シリーズの代名詞となったグラフィック表現だけに、変にまどわされず今後もこのスタイルを貫いていただきたいところだ。

 ゲームモードは、登場するCPUキャラクタを順番に倒していく「Arcade」、Arcadeに新キャラクタなどを追加した「Story」、プレーヤー同士で対戦する「Vs」、基本操作やコンボなどが練習できる「Training」、体力ゲージがゼロになるまで戦い続ける「Survival」、クリアしたキャラクタの設定資料やイラストが閲覧できる「Gallery」などが用意されている。

 奇をてらったモードがない反面、それ以外は全体に“やや淡白な作り”といった印象。特にコンシューマオリジナルの「Story」は、1枚絵のイラストとテキストが追加された点以外は、実質「Arcade」と同じ。せっかく発売と同時期に「TRF2」が稼動するのだから、シェリル以外の「TRF2」につながるプラスアルファなど、オリジナル要素がもっとたくさんあっても良かったような気がする。

 新キャラクタがシェリルと隠しキャラひとりだけというのも、アーケードをやり込んだユーザーにとっては厳しい。きょうび、ベタ移植に近い内容に新作1本ぶんのお金を払うユーザーなど皆無に等しいわけで、もし次回作のコンシューマ移植が予定されているのなら、もう少しサービス精神を発揮していただけないものだろうか。ユーザーの裾野を広げるという点でも、決して無意味な行為ではないはずだ。

「Story」はアーケード版にはなかった要素。だが、1枚絵だけではちょっと寂しい クリアしたキャラクタのイラストや設定資料が閲覧できる「Gallery」 「TRF2」の新キャラクタが使えるのはいいが、もう少しプラスアルファが欲しいところ



■ とことん対戦を楽しみたい人に!

 いまさら説明するまでもないカプコンの大ヒット作「ストリートファイターII」から、かれこれ10年以上の歳月が経過。その間、数多くの対戦格闘ゲームが雨後のたけのこのように輩出されてきた。

 だが、たとえば音楽シーンがそうであるように、選択肢が増えるからジャンル全体のボリュームが増すのではない。風雪に耐え生き残ってきたものは、すべからく個体としての“オリジナリティ”、“魅力”、“意志の強さ”といったものを内包しているのが常。ふと振り返れば、短い人生にも関わらず我々は、細分化され、希薄になり消えていったムーブメントを、いくつ目の当たりにしてきたのだろう。

 とはいえ、そんななかでも、一過性の流行として完全消滅するものがあれば、根強く支持され続けるものも存在する。

 攻防の両面で多彩なアプローチが可能なぶん「TRF」シリーズは“初心者おことわり”といった雰囲気が濃厚。だが、対戦格闘ゲームというジャンル自体が細分化され、必然的に全体のパワーが落ち込んでいる昨今、こうした“実質マニア向けタイトル”の存在意義は、決して小さくない。一見マニア向けでも、内容がしっかりしていれば、初心者だって十分ついていける。マニアを自称する人はもちろん、そうでなくても興味がある人は、この機会に一度プレイしてみていはいかがだろうか?

 また、「移植」作品という観点に立ってみれば、ほとんどの格闘ゲームは「完全移植+α」という恵まれた時代になっている。その意味でも上達する過程が楽しめる「TRF」がPS2で遊べる、という意義は充分ある。もし、このレビューを読んで気になる人は、アーケードで「2」をお試し、という手もあるわけで、家庭においても充分対戦が堪能できる今だからこそ、このタイトルを遊んでみる価値はあるだろう。




(C)Sammy / (C)Dimps 2004
Published by SEGA

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□サミーのホームページ
http://www.sammy.co.jp/
□ディンプス(開発元)のホームページ
http://www.dimps.co.jp/
□製品情報
http://www.dimps.co.jp/rumblefish_ps2/
□関連情報
【2月18日】「AOU2005 アミューズメント・エキスポ」ブースレポート ~サミー編~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050218/aou_sm.htm

(2005年4月5日)

[Reported by 豊臣和孝]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.