【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

Game Developers Conference 2005現地レポート

カプコンの平林良章氏が「バイオハザード4」について講演
リアルタイム3Dムービー採用の狙いとテクニック

3月7日~11日(現地時間) 開催

会場:Moscone West Convention Center

 サンフランシスコで開催された「Game Developers Conference(GDC) 2005」にて、株式会社カプコンの平林良章氏による「バイオハザード4(北米では“Resident Evil 4”)」のリアルタイム3Dムービーに関する講演が行なわれた。

 平林氏は、カプコン第1開発部に所属するデザイナー。これまでに、ニンテンドーゲームキューブ用「バイオハザード」、「バイオハザード0」、「P.N.03」などの制作に携わっている。全編でリアルタイム処理による3Dムービーを採用した「バイオハザード4」では、そのリアルタイム3Dムービーを統轄した。

 なお、この講演はかなり技術的な解説も多く含まれているので、このレポートでは「なぜリアルタイム3Dムービーを採用したか」などの基本思想を中心に紹介していく。



■ プレーヤーの注意をそらさない仕組みを導入

ゲームとムービーがサンドイッチ状に並んでいるが、ムービーに「アクションボタン」を導入してインタラクティブなものにした
 これまで「バイオハザード」シリーズでは、決まったイベントシーンではプリレンダーのムービーが使われてきた。プリレンダームービーは専用のグラフィックツールで作成されたもので、ゲーム機でリアルタイムに処理するムービーよりも表現力の幅が広く、端的に言えば美しいムービーができあがる。しかし、「バイオハザード4」では、プリレンダーのムービーを使わず、リアルタイム処理でムービーを生成している。

 プリレンダーのムービーというのは、文字通り、予めレンダリングされたムービーであるため、その映像を動的に変化させることはできない。つまりプレーヤーが何らかの操作をしてムービーに干渉するという余地はない。このため、ムービーが始まると、プレーヤーはそれまで動かしていたコントローラの操作をやめざるをえない。場合によっては、トイレや食事などの休憩時間として使われることさえある。

 平林氏はこの点について、「以前のゲームは、ムービーがあってゲームがあって、という具合にサンドイッチ状になっている。ゲーム中にずっと緊張状態が続くとプレーヤーが疲れてしまうから、休憩時間が必要だということは開発者も考える。このやり方では、ムービー部分が息抜きになるが、ムービー部分が必ずしも開発者の求める休憩時間であるとは限らない」という。ムービーだから気を抜いてほしいというわけでもないし、ムービー以外の場所に休憩できるタイミングを設けたい場合もある、ということだろう。

 そこで「バイオハザード4」では、「ムービー中にプレイアブルなものを導入してはどうか」という発想が生まれる。これにより「アクションボタン」という新要素が追加され、ムービー中にボタンを押すという操作が必要になった。プレーヤーからは賛否両論のあるこの「アクションボタン」だが、「ムービーだからボーっと見れいればいい」という既成概念を破る、面白い試みだといえるだろう。そしてこれを実現するには、作り置きされたプリレンダームービーではなく、ゲームと同様にリアルタイム処理されるムービーが必要だった、というわけだ。



■ 作業を効率化し、プリレンダーよりリアルなリアルタイムムービーを作る

 リアルタイム3Dムービーはプリレンダームービーに美しさで劣ると冒頭で書いたが、「バイオハザード4」では、その概念を打ち破る新たな試みがなされている。

 プリレンダームービーは、3Dモデルをレンダリングする際に、ある程度の時間が必要になる。処理の複雑さやコンピュータの性能にも左右されるため一概には言えないが、モデルの動きを設定すれば、すぐさま完成品が見られるというものではない。だがゲーム機でリアルタイムに処理するムービーであれば、文字通りリアルタイムに見ることができる。レンダリング時間が不要という点は、作業効率上、大きなアドバンテージとなる。

 「バイオハザード4」の制作では、さらにWEBサーバーを活用した新たな管理システムを導入し、作業の大幅な効率化を図っている。ムービーを作成する場合、映像の微調整にかかる作業で、プログラマーに依存する部分がある。ここでどうしても時間的にロスが発生する。しかしこの新システムを導入したことで、プログラマーを介すことなく、デザイナーが直接微調整を行なえるようになり、作業時間が大幅に短縮された。そして結果的に、微調整にかけられる時間や労力が大幅に増え、これまでは作業量が膨大すぎてできなかった作業が可能になったという。

プログラマーの負担が下がり、デザイナーが迅速に仕事ができるようになった。作業の効率化で、微調整にかけた作業割合も大幅に増加している



 平林氏は講演の中で繰り返し「説得力のある絵作り」という言葉を使ったが、これは単純にリアルなものを作るのではなく、ユーザーにリアルだと感じさせるものを作ることを指している。プリレンダームービーの高い表現力は使えないが、代わりに微調整にとことん労力を費やし、動きの自然さや演出効果の向上など、プリレンダームービーとは方向の異なるリアルさを追求したというわけだ。それがさらに「アクションボタン」でインタラクティブなものになっているということは、ゲームでしか成し得ない新たなエンターテイメントを生む可能性を示したとも言える。

 講演の後半には、それらの具体的な作業の紹介として、多彩な顔のアニメーションや場面に応じたテクスチャの切り替え、プロジェクションライトの採用など、さまざまな技術的アプローチも解説された。ひとつひとつが極めて斬新なものとは言わないが、それら全てを実際にGCで実現していると聞けば、驚くことは間違いない。今のところは次回の講演予定はないそうだが、CEDECなどでの講演もぜひ期待したいところだ。

顔のモーションを「Standard」と「Select」の2つに分けてパッケージ ポリゴン数とテクスチャの質をシーンごとに調整し、多数のキャラクタを最適な状態で登場させている 肌の色などと違和感が出ないよう、シーンごとに目のテクスチャを切り替える
背景やテクスチャの質などを調整し、処理の重いプロジェクションライトをリアルタイムに使用 2つのモニタが登場するシーンの描画には、3つのカメラデータを用意することで対応している


(C)CAPCOM Co., LTD 2005. ALL RIGHTS RESERVED.

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「バイオハザード4」のページ
http://www.capcom.co.jp/bio4/

(2005年3月14日)

[Reported by 石田賀津男]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.