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アジアオンラインゲームカンファレンス2005レポート

エンターブレイン浜村弘一氏、現在のゲーム市場について
豊富なマーケティングデータを用いた解説を行なう

2月28日~3月1日 開催

会場:工学院大学

 2日目の朝9時半から始まった基調講演を担当したのは、株式会社エンターブレイン代表取締役社長の浜村弘一氏。2004年度の豊富なマーケティングデータを元に、メディアとしての立場から近年のゲーム市場の動向を解説し、今後を予測するといった内容だ。マーケティングデータの範囲は幅広く、ハード・ソフトを含む全ゲームジャンルを対象としていたが、本稿ではオンラインに関連する部分を中心に紹介してゆく。

 近年のコンソール系タイトルは、プレイステーション 2用「ドラゴンクエストV」を初めとするリメイク物ばかりが目立ち、新作の入り込む余地がないのではないか、という風潮に対し、氏は疑問を感じるという。その根拠として、オンライン系のタイトルでは新たなチャレンジが次々と行なわれている現状を説明した。オンラインゲームに関心が少ないと言われている任天堂でさえ、ニンテンドーゲームキューブの「ファンタシースターオンライン(セガ)」は、累計で38万本の販売実績があるという。

 このような誤解が浸透してしまう理由の1つに、現行モデルの薄型PS2にはハードディスクが搭載できないという仕様が関係していると指摘。しかしこれにも理由があり、薄型PS2は元々は北米市場向けに開発されたハードであることを強調。北米でヒットしているネットワークゲームは、例えばスポーツゲームのようなカジュアル系が多く、ハードディスクの必要性が日本に比べてかなり低いとのことだ。つまり薄型PS2でも、北米のプレーヤーは特に問題を感じずにオンラインゲームを遊べるのである。

 任天堂に関しても、決してネットワークゲームを無視しているわけではなく、未だ市場の機が熟してないから本格参入しない、というだけである。またGCを初めとする任天堂のハードは、いつ時代の流れが変わりネットワーク機能が必要となっても、直ちに対応できるだけの保険(=機能実装)も打っているのだ。任天堂は「どうぶつの森」等、オンラインゲーム版が大いに期待できるタイトル資産を膨大に抱えている。PS2、Xbox、そしてGCのそれぞれの次世代ハードも、当然ネットワーク機能を重視しており、それらの全貌があらわになる今年のE3以降の展開が楽しみだと述べた。

 続いては、現在のコンソール系ネットワークゲームビジネスの指針として、「ファイナルファンタジー XI(FF XI)」の実績を取り上げた。拡張データディスク「プロマシアの呪縛」の推定累計販売数が199,817本という数字を挙げ、現在の国内アクティブユーザー数は約20万人ではないかと推測(PS2/Windows版の合計)。これに北米版のパッケージ販売数25万、さらに欧州版をも加えると、現在のアクティブユーザー数は全世界の合計で約55万人になるとの考えだ。英語圏プレーヤーの多さは「FF XI」経験者ならば実感しているはずだが、日本人の割合が既に半数を大きく割っているという数字を見せられると、なかなか説得力がある。

 ただし本講演では、北米・欧米における販売数から、いったいどのようにしてアクティブユーザー数を算出したかの根拠が明確に示されていなかった。また「プロマシアの呪縛」を購入したプレーヤーの総てが、現在も課金を続けているわけではなく、逆に拡張データディスクを未購入で「FF XI」を遊んでいる人もいるだろう。したがって、アクティブユーザー数がトータルで55万という数字も少々怪しいと筆者は感じた。とはいっても浜村氏を責めているのではなく、常に変動するオンラインゲームのユーザー数を第三者が把握するのは、それだけ難しいということだ。

 次にスクウェア・エニックスのオンラインゲーム部門の利益面についてデータを示した。2002年度は4億、2003年度は35億、そして2004年度に至っては60億という凄まじい利益の伸び率のようだ。しかし「FF XI」の発売時である2001年度は大幅な赤字であり、当時の新聞報道で「60億を使った無駄遣いの極み」等厳しく叩かれていたのを覚えている読者もいるだろう。これには、集計方法自体に大きな落とし穴があるという。

 単体売りのパッケージゲームと、毎月の課金によって定期的に収益が発生するオンラインゲームとを、同じ利益計算方法で語ることが間違っている。氏はここで、オンラインゲームのビジネススタイルについて、「ディズニーランド」を例に挙げて説明。定期的に訪問してくれる顧客を増やすとともに、「ディズニーシー」のようなアトラクション(拡張パック)も随時導入するスタイルだという。その結果、製品稼働から3年前後でトントン、それ以降は黒字という計画で最初から動いていたのだ。よって、2001年度の赤字や2004年度の黒字だけを抜き出して、全体的な収益面を語るのは非常に危険である。

 この見解自体は特に目新しいものではないが、マーケティングデータを管理するトップの人間が「古い集計方法でオンラインゲームを語ってはならない」と発言したことに大きな意味がある。契約者数等の実績把握は、メーカー側からの一方的な公表に頼らざるを得ないといった現実をどうやって解決するのかは、今後の大きな課題点といえるだろう。

 そして「FF XI」の今後については、少なくともPS2のハード世代だけでさらに2本の拡張データディスクを発売し、今後60億を越える利益を生み出すと氏は予測している。また、そこから先は更なる言語圏バージョンへの展開が必要ではないかとコメント。講演内容からは少々逸れるが、スクウェア・エニックスは2月28日に中国子会社の設立を発表しており、もしかすると氏はこの辺りとの関連性を示唆していたのかもしれない。

 続いては、その他のコンソール系オンラインゲームの主立った実績面に移った。会社側からの発表であると念押しした上で、現在のアクティブユーザー数は「モンスターハンター」が10万人(コンソール)、「信長の野望 Online」が12万人(コンソール&PC合計)、「リネージュ II」が10~13万(PCのみ)とのことだ。別格の「FF XI」はさておき、現在の日本市場では10万人がアクティブユーザー数の1つの区切りと見ている。そしてこれらの数字だけを見れば、日本はオンラインゲーム分野では後進であると述べた。

 しかし講演内容を振り返るまでもなく、今後のオンラインゲームの展望は明るいと氏は言う。携帯用・コンソールに関係なく、総てのゲームはネットワークの方向に向かっている。その一例として、「ドラゴンクエスト」のオンライン版に対し、堀井氏個人が非常に前向きな見解を持っているとの話を採りあげた。メーカーとしての正式発表ではないので、これが直ちに製品版に直結するとは考えにくいものの、300~400万本クラスの潜在力を持つタイトルがオンラインゲームとして登場する可能性も、今後大いに期待できるのだ。

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
□「AOGC 2005」のページ
http://www.bbassociation.org/AOGC2005/
□関連情報
アジア オンラインゲームカンファレンス2005 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050301/aogclink.htm

(2005年3月2日)

[Reported by 川崎政一郎]


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