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アジアオンラインゲームカンファレンス2005レポート

2日目に行なわれた中から2講演をピックアップ
オンラインゲームの市場統計、ナムコのRTS「Newspace Order」

2月28日~3月1日 開催

会場:工学院大学

 2月28日と3月1日の2日間にわたって工学院大学にて開催された、「アジアオンラインゲームカンファレンス2005(AOGC2005)」。AOGCを主催する「学術団体ブロードバンド推進協議会(BBA)」は、昨年6月から定期的に特別講演会を行なっており、今振り返ってもその集大成と呼ぶに相応しい充実した内容であった。本稿では2日目に行なわれたカンファレンスの中から、2講演をまとめてお伝えしていこう。



■ 国内で唯一の客観的データとなりうる「市場統計調査」の動向は要チェック!

司会進行役を勤めた経済産業省関東経済産業局の幸物正晃氏
左からゲームオンの金鍾信氏、ゲームポットの植田修平氏、ガマニアの淺井清氏
 徐々に盛り上がりをみせつつも、正確なデータが見えてこないことによる不透明さが目立つ国内オンラインゲーム市場。このような問題等に対し本格的に取り組んでいる「オンラインゲーム研究会」が、現在の中間集計データを元に国内市場の実態を語った。ちなみに本研究会について補足すると、オンラインゲームの認知向上を目的として、2003年からオフラインミーティングを初めとした様々な活動を行なっている組織である。

 本講演の司会進行役を担当したのは、経済産業省関東経済産業局の幸物正晃氏。そしてコメンテーターとして株式会社ゲームオン代表取締役社長の金鍾信氏、株式会社ゲームポット代表取締役社長の植田修平氏、そして株式会社ガマニアデジタルエンターテインメント執行役員の淺井清氏の3名を迎え、現場に直接携わる人達ならではの意見が飛び交う有意義な講演となった。

 本題となる市場統計調査は、今年の1~3月末まで国内パブリッシャー73社、223タイトルを元に行なわれている。具体的な調査項目は、メーカーの所在地や販売プラットフォーム、βテスト中か製品版かといったサービス状況を初めとした基本的なものから、かなり興味深い内容も多く、それらに対しコメンテーターの3人がそれぞれの立場から考察を交えるといった流れで進行した。

 調査報告の中から気になる項目をピックアップしてゆくと、まず目を引いたのが課金関連のビジネスモデル種別で、「完全無料」が40%、「アバター・アイテムによる課金」が7%という事実。これに対してコメンテーターの3人は、定額課金に比べてユーザーは大きな安心感を得られると口を揃えて言う。淺井氏は更に具体例を挙げて、かつてオープンβから有料製品版への移行時に、ユーザー数が以前の10%にまで激減したことがあるとのこと。せっかくβ時に育成されたコミュニティも製品移行時に崩壊してしまうため、この敷居をなくすためには至極当然な流れといえよう。淺井氏は、アイテム課金形式は今後更に増えてゆくのではとの見解を示した。

 関連したトピックとして、パッケージ料金とサービス料金の有無も興味深い報告を得られた。先の流れでは無料の方がいいと想像してしまうが、金氏は「MU - 奇蹟の大地」において45,000本のパッケージ販売実績を挙げた上で、一概にそうとも言い切れないと指摘。パッケージ版を流通・販売ラインに載せることで、露出・プロモーション効果が得られ、市場に認知させるメリットがあるというのだ。植田氏もこれについては同感で、既に「パンヤ」の課金契約を行なっているプレーヤーにとっても、ちゃんとした「形」として手元に置いておきたいというニーズは確かに存在するという。こういったニーズに限定版のノベルティを加えることで、パッケージ版の販売は一定ラインを期待できるらしい。

 そして本講演中もっとも大きな注目を集めたのが、ユーザー一人あたりの平均売上高の項目である。定額課金のタイトルは平均1,033円/月と予測範囲内だが、これがアイテム課金の場合は、なんと5,880円/月にまで跳ね上がっているのだ。この数字に対して淺井氏は驚きを見せつつも、現在は2~3のタイトルが全体の50%以上の利益を確保して寡占に近い状態にあるという。儲かるタイトルはごく一部という一方で、勝ち組のタイトルは凄まじい客単価を上げていることになる。植田氏もこれについては同様の見解で、「是非とも『パンヤ』も勝ち組にあやかりたい」とのこと(笑)。

 ただしアイテム課金、言い換えるとメーカー主導型のRMT形式にはまだまだ問題があるのも事実。これについて金氏は、かつて「天上碑」のユーザーが、たったひとりで月に100万もの金額をアイテムに注ぎ込んだという例を挙げた。また若年層が両親のカードを用いている場合等、安易な使いすぎも問題となってくる。こうした背景により、現在は例えば月額購入金額に制限を設けるといった動きがあるという。金氏は「ビジネス面だけにとらわれることなく社会的責任も果たねばならない」と力を込めて言い、そのためのルール作りに積極的な姿勢が好印象であった。

 本稿で採りあげたのは市場統計調査のごく一部で、しかもAOGC用に急遽作成した中間発表にしか過ぎない。その他をも含めた研究会の正式発表は、4月上旬を予定しているとのことだ。冒頭部で触れたオンラインゲームの正確なデータが見えないという指摘は、AOGCの他講演からも多数発せられており、それに対する現在もっとも説得力のある回答が、本研究会の市場統計調査である。研究会の今後の活動が大いに期待できる講演内容であった。

同研究会は少しづつ規模を拡大している。幸物氏は、他の大手ゲームメーカーも参入して欲しいと切実にアピールしていたのが印象的 このような形で集計データを元に講演は進められた。信頼のおけるデータがあるだけに、全体的に強い説得力のある内容であった 中間報告だけを見ても、刮目すべき内容が実に多かった。4月上旬の正式結果発表が楽しみでならない




■ 国内におけるRTS市場の活性化に結びつくか? 「Newspace Order」の可能性

株式会社ナムコCTカンパニー・CTクリエイター・Gディレクターの高橋徹氏
 AOGC最後の講演は、株式会社ナムコCTカンパニー・CTクリエイター・Gディレクターの高橋徹氏によるものであった。同社はネットカフェ利用に特化したFPS「Counter-Strike NEO」といった、ユニークなオンラインゲーム展開を行なっており、「開発中タイトルを具体例にした市場考察 今と未来のネットゲーム文化」というタイトルから、どのような講演になるのかに注目が寄せられていた。

 いざ蓋を開けてみると、現在同社が開発しているRTS「Newspace Order(以下、NSO)」の紹介を軸に、開発者の立場から今後のオンラインゲームのありかたを講演するというものであった。したがってこの箇所だけ、どちらかというと講演レポートよりも、ゲームプレビュー寄りの記事内容となっている点はご了承願いたい。

実際のプレイを交えながらのゲーム解説がメインで、AOGCの中では異例ともいえる講演であった
 「NSO」は、SFの世界観を題材としたRTSだ。プレーヤーは民主連邦、中国古代王朝、第二次世界大戦時、クリーチャーのそれぞれをモチーフにした4つの国家から選び、内政と戦闘を同時にこなしながら覇権を掛けてリアルタイムで戦うのが主なゲーム内容である。イメージとしては「Starcraft」や「Homeworld」、そして「Conquest: Frontier Wars」に比較的近い雰囲気といえるだろう。

 本作の最大の特徴は、生産資源を生み出すための「星」がマップ中に多数配置されており、数多く支配下に置くことで様々な効率がアップすることである。これは「スターラインシステム」と呼ばれており、支配下に置かれた星同士の繋がりが、目に見える形で示されているのがユニークだ。つまり陣取りゲームに近い雰囲気で、同社のタイトルでいえば、懐かしの「リブルラブル」を彷彿とさせるシステムである。ユニットを駆使しながら惑星を勢力下に置く一方で、いかにして敵のスターラインを切るかが重要となってきそうだ。

 とはいえ現在の国内市場においては、RTSというジャンルは認知度が低く、したがって開発そのものがチャレンジである。高橋氏はこの点を十分承知した上で、幾つかの対策を施しているという。具体的には、敷居を低くするためにアニメ調のオープニングムービーを導入、新規参入向けとして1時間のチュートリアル機能を搭載、低スペックのPCでもプレイ可能、30時間前後を要するシングルシナリオの重視、そしてリプレイ機能の強化といったところである。とはいっても、これらの大半は、「Warcraft3」で3年も前から実装されており、世界的に見ればもはや常識といえるレベルだ。言い換えると、現在の国内RTS市場はこの常識レベルから話を進めねばならないということだ。

 それと、従来のRTSではゲーム中盤以降において勝敗がはっきりとして、だらけてしまう点は問題だと高橋氏は指摘。そのために一発逆転も狙えるゲームシステムにしたいとも考えているようだ。しかしプレーヤー間で実力差が付くのは絶対に避けられなく、これに対してシステム側から必要以上の調整を行なうのは、ゲーム性を失うことにも結びつきかねない。「Warcraft3」の“Upkeepシステム”程度の調整ならまだしも、これを突き詰めるとジャンケンと同じで、誰がやっても勝率は一緒になってしまう。そもそも対戦ゲームの醍醐味とは、自分の努力によって勝率をいかに高めるか、という部分に集約されているはずだ。

 そして実力差が生じることを前提とした上で、腕に見合った対戦相手を各々が見つけるために生まれたのが、現在主流のマッチメイキングシステムと呼ばれるものである。対戦ゲームのコミュニティ面を重視すると言いながらも、最大のポイントというべきこの方向性を、「NSO」が完全に無視していることに筆者は強い危機感を感じる。

 現在「NSO」は、ネットカフェ「知・好・楽」の新横浜店・高田馬場店にてにてクローズドβテストが行なわれている最中だ。今後はネットカフェ以外でもプレイ可能なオープンβテストも予定されているが、今のところ発売時期は未定となっている。日本のRTS市場は現在、世界中から取り残されているのが実状だが、それを打ち破る可能性を持ったタイトルとして今後の展開に注目していきたい。

「NSO」が目指す所を論理的に説明。やはり鍵となってくるのはスターラインシステムの活用だろう ナムコの歴代タイトルに登場したキャラクタも積極的に盛り込みたいとのこと。右下のマップは「パックマン」をイメージしたもの 深いゲームシステム面まで紹介できなかったのは心残り。近い内に「NSO」のβテストレポートをお届けできればと考えている


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□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
□「AOGC 2005」のページ
http://www.bbassociation.org/AOGC2005/
□「オンラインゲームフォーラム」のページ
http://www.onlinegameforum.org/
□「Newspace Order」のページ
http://www.newspaceorder.com/
□関連情報
アジア オンラインゲームカンファレンス2005 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050301/aogclink.htm

(2005年3月2日)

[Reported by 川崎政一郎]


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