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THE BLACK MAGES、2ndライブ“above the sky”を開催
「ロマサガ」のイトケン、テクノポップユニットmuZikなど隠し球続々

1月22日開催

会場:CLUB CITTA

 作曲家植松伸夫氏がプロデュースするロックバンド「THE BLACK MAGES」は、2ndアルバム「THE BLACK MAGES II ~The Skys Above~」の発売を記念したライブイベント「THE BLACK MAGES LIVE“above the sky”」を、1月22日より開幕した。ライブは川崎のCLUB CITTAと大阪で開催される。



■ 「サガ2」メドレーで存在感を見せつけたイトケンのオープニング

初のソロライブとは思えないほど高い完成度と存在感を見せつけてくれた伊藤賢治氏
15年前に入社した際は、当時上司の植松氏にはトレードマークのヒゲがなかったなど、ユニークなエピソードも紹介した
ライブ後のインタビューでは、柔らかい物腰で質問に応じた。今回のライブでは、演奏曲目が異なるという
 THE BLACK MAGESのライブイベントは、昨年の4月に渋谷に続いて今回で2度目。いずれもアルバムの発売を記念した特別ライブとなっているが、すっかりスクウェア・エニックスが誇るアーティストに成長した感がある。もっとも、昨年フリーになった植松氏を除き、メンバーは全員スクウェア・エニックスの社員で、植松氏曰く「平均30うん歳のおっさんバンド」がハードロックライブを展開するというところにおもしろみがある。

 また、THE BLACK MAGESのライブが人気を集める理由のひとつとして、“ライブ以外のお楽しみ”が挙げられる。その最たるものが、関係者を冷や冷やさせるような植松氏のざっくばらんなおしゃべりであることは間違いないが、それ以外にもファンを楽しませる趣向が盛りだくさんだ。

 前回のライブでは、「植松ラヂヲ」の公開録音や、ささきいさお氏による「半熟英雄対3D」主題歌演奏(登場は「宇宙戦艦ヤマト」のテーマ)などが行なわれた。今回も、伊藤賢治氏、謎のユニットmuZik、ウダツ田中氏といったスペシャルゲストが続々登場。毎度毎度、ゲームファンを喜ばせる趣向が盛りだくさんのライブとなっている。それでは以下、初日の模様をダイジェストでお伝えしていこう。

 今回のライブのオープニングを務めたのは、植松伸夫氏の一番弟子(新卒社員第一号)であり、代表作「ロマンシング サガ」シリーズのコンポーザーとして、“イトケン”の愛称でゲームミュージックファンから圧倒的な人気を誇る伊藤賢治氏。伊藤氏は「ロマンシング サガ」シリーズ最新作「ロマンシングサガ ミンストレルソング」(今春発売予定)の作曲を担当しており、今回のゲスト出演はそのプロモーションも含んでのことだが、その気になれば1人でライブ会場を満席にしうる名声と実績を持つ、あのイトケンを自前のライブに呼べる植松氏は、今更ながらに凄いコンポーザーだと思わざるを得ない。

 さて、伊藤氏のオープニングライブは、4歳より始め、作曲を始めるきっかけとなったピアノを使った独演となった。「ロマンシング サガ ミンストレルソング」の「オーバーチュア & オープニングタイトル」で幕を開け、続けて「ロマンシング サガ 3」より「ポドールイ」を演奏。

 「ミンストレルソング」は、すでに発表されているように、初代「ロマンシング サガ」のオマージュ的新作で、世界観や主要登場人物のみならず、音楽も当時の伊藤賢治氏のサウンドをベースにしている。言い換えれば、伊藤賢治氏自身による「ロマンシング サガ」の名曲群の現代アレンジが収録されているのが「ミンストレルソング」ということになる。

 さて、3曲演奏後、盛大な拍手を受けてマイクを握ったMCタイムでは、スクウェア社員時代のエピソード、「ミンストレルソング」の作曲を担当することになったいきさつなどを紹介。「ミンストレルソング」では、曲数が元の30曲から70曲程度に増えたということで、ファンの期待に応えるかのように「バトルサウンドが多いんですけどね」とコメントするやいなや、場内から大きな拍手が巻き起こった。ゲームファンのイトケン節に対する期待度の高さを再確認させるエピソードだ。

 ソロライブ後半では、「サ・ガ 2 秘宝伝説」メドレーと「ロマンシング サガ 3」より「ウィンディ・テイル」を熱演。今回はピアノの独演であるため、バトルサウンドを得意中の得意とする氏のいわゆる“イトケン節”は聞けないだろうと思っていたところ、「サ・ガ 2 秘宝伝説」メドレーの中に「必殺の一撃」(通常バトル)と「死闘の果てに」(ボス戦)をバラード調アレンジでさりげなく挿入。しっかり存在感を見せつけてくれた。

 ちなみにメドレーの曲目は、「伝説は始まる」、「安らぎの大地」、「必殺の一撃」、「死闘の果てに」、「涙を拭いて」、「エンディングテーマ」の全6曲(公式未発表、筆者調べ)。いずれもゲームボーイミュージック屈指の名曲揃いで、今更ながらにイトケンワールドの奥深さを実感させられた。ぜひとも単独ライブを開催して頂きたいところだ。



■ テクノポップアレンジでFFサウンドの新境地を覗かせたmuZik、そして真打ち“TBM”の登場

FFサウンドのテクノアレンジという新境地を見せたmuZik。スクリーンに映っているのはFF6のワンシーンだ
正真正銘スクエニ社員だというウダツ田中氏。「なんで芸人がおるねん」とツッコミたくなるほど絶妙なトークだった
The Rocking Groundsでスタートしたライブ。メンバーたちによれば「反省することばかり」と謙遜するが、プロのライブとして通用する完成度
 15分の休憩を挟んで行なわれた後半では、すべてが謎というテクノポップアレンジユニットのmuZik(ムジーク)のライブと、ウダツ田中氏のトークイベントが行なわれた。

 muZikは、ファミコンライクなチープな電子音を基調に、テクノポップアレンジを加えた曲を揃えたユニークなユニットで、今回は「ファイナルファンタジー」シリーズの曲、全7曲が演奏された。ノスタルジー路線全開か思えばそうでもなく、たとえば「FF11」の「Ronfaure」は、サンドリア国民が聞けば怒り出しそうな(もしくは吹き出してしまう)ほど予想外のチープアレンジだったし、その一方でFF1の「Matoya's Cave」は、マトーヤの婆さんもびっくりするほどポップかつキャッチーなテクノサウンドにリバースさせるなど、なかなか聴き応えがあった。言うまでもなく、場内の反応は大好評。植松氏によれば、「ウケるようなら、CDにしちゃうかも」ということなので、製品化に大いに期待したいところだ。

 続いて、植松氏作曲の「ウダツの上がらないブルース」を歌いながら派手に登場したウダツ田中氏は、スクウェア・エニックスの社員とは思えないほど、場慣れた雰囲気で軽快なトークを展開。中でも盛り上がったのが質問コーナーで、「今日は東京から来たが、実家はクソ田舎だという人?」、「大きな声ではいえないが、小学生の頃、FFをファイファンと呼んでいた人?」、「(ドラクエ8の)ゼシカのレベルを上げるより、装備を変えるのに夢中だった人?」などなど、質問の内容からしてネタの純度が高く、場内はたびたび大爆笑に包まれた。

 ウダツ氏のメンバー紹介の後、本日の真打ちであるTHE BLACK MAGESの演奏がスタート。ここまでで開幕から1時間半が経過しており、前回にも増して内容が濃くなっている。1曲目は、聞けば聞くほど味が出てくる2ndアルバム屈指の名(迷?)アレンジThe Rocking Grounds。初日演奏された曲目は以下のとおり。

01 : The Rocking Grounds 【FF3 Battle1】
02 : Zeromus 【FF4 Final Battle】
03 : Hunter's Chance 【FF9】
04 : Battle Theme 【FF6・戦闘】
05 : Battle with the Four Fiends 【FF4】
06 : Vamo' Alla Flamenco 【FF9】
07 : Maybe I'm a Lion 【FF8】
08 : Those Who Fight Further【FF7・更に闘う者達】
09 : The Man with the Machine Gun 【FF8】
10 : Clash on the Big Bridge 【FF5・ビッグブリッジの死闘】
11 : Otherworld 【FF10】
12 : The Skies Above 【FF10 Zanarkand】

毎度お馴染みのノビヨトークをたびたび繰り広げた植松伸夫氏。ノビヨトークはいまや植松氏のライブには欠かせない存在だ
そしてフィナーレ。中央のひとまわり体が大きな人物が伊藤賢治氏。左側の男女は、ヴォーカルを担当したmr.goo氏とKAZUKOさん
 2ndアルバムの発売記念ライブのため、基本的に2ndアルバムの曲がメインとなっているが、1stアルバムの内容も加わっているところがポイント。この中では4、8、10曲目が1stアルバム収録曲だが、人気の高かった曲ばかりがピックアップされている。また、2ndアルバムからは、実験的に歌も挿入されており、さらにライブとしての充実度が増した印象である。

 2ndアルバムの傾向としては、新たにギターの岡宮道生氏と関戸剛氏の両名が曲のアレンジに参画したこともあり、全体としてよりギター中心のハードロックサウンドに仕上がっている。率直に言って、1stアルバムに比べると、ゲームファンとしては飲み込みの難しい“高級な”ロックアレンジになっているわけだが、実際にライブを聴いてみて、非常にライブ映えのするアレンジであるということがよくわかった。

 たとえば、「Vamo' Alla Flamenco」などは、正直に言ってアルバムでは特筆するほどのアレンジだとは感じなかったが、ライブでは屈指の名アレンジになっていた。やはり、バスの重低音が尻にガンガン突き上げられ、キーボードの高音がザクザク脳天を突き刺さるようなライブ演奏ではじめて感じ取れるというものがあり、その意味では、今回の2ndアルバムは、ライブ向けロックアレンジという表現が一番適当なのかもしれない。今回初めて導入されたラスト2曲のボーカルアレンジも、ライブでまさに大爆発した。こうしたあたりにTHE BLACK MAGESの将来の方向性の一端が伺えるような気がする。

 最後に、たびたびメンバーの休憩を目的としたMCタイムで公開された植松氏のこぼれ話を紹介しておきたい。まずアルバムについては前回まではドラムなど一部打ち込みデータも含んでいたが、今回は会社のスタジオを利用してすべて生演奏で収録したという。植松氏自身「アナログの空気感が感じられるようになっている」と自信を覗かせた。

 気になる3rdアルバムについては、「すでに構想はある」とコメント。むしろ植松氏よりもメンバーのほうが乗り気で、2枚目が終わる前から3枚目を作りたがっているという。植松氏は「オーケストラとロックバンドの経験を生かして、次回はオケとロックを一緒にしたらおもしろいかもね」と次回への抱負を述べた。まだまだゲームファンを楽しませてくれそうである。

ライブ後、合同記者インタビューに応じたTHE BLACK MAGESのメンバーたち。記者からは、海外展開や練習時間に対する質問が集中したが、植松氏は「オリジナルは考えていない。そんな新人のような難しいことはしない。FFというトランポリンを使って楽にたのしく活動したい」とコメント。ビッグになっても、気取りのない飾らないところが、好感を持たれる理由のひとつだろう

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.co.jp/
□「植松伸夫です。」のページ
http://www.square-enix.co.jp/music/uematsu/
□「THE BLACK MAGES II ~The Skies Above~」のページ
http://www.square-enix.co.jp/music/uematsu/tbm2/
□「THE BLACK MAGES LIVE“above the sky”」のページ
http://www.square-enix.co.jp/music/uematsu/tbm2/live.html
□「ロマンシングサガ ミンストレルソング」の公式ページ
http://www.square-enix.co.jp/games/ps2/romasaga/
□関連情報
【2004年10月15日】植松伸夫プロデュース、あの名作が帰ってくる
アルバム「THE BLACK MAGES II ~The Skies Above~」CD発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041015/bm.htm
【2003年4月27日】「THE BLACK MAGES」発売記念ライブが渋谷で開催
CD未収録曲「マトーヤの洞窟」を含む全11曲を熱演
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030427/black.htm

(2005年1月24日)

[Reported by 中村聖司]


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