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Sony Computer Entertainment Korea訪問レポート
PS2は250万台が目標、PSPでは韓国オリジナルタイトルを世界展開

11月収録

会場:SCEK本社ビル

 Sony Computer Entertainment(SCE)の韓国法人Sony Computer Entertainment Koreaは、今年の10月、韓国市場でプレイステーション 2の普及数が100万台を達成したことを記念し、初の「プレイステーション 2フェスティバル」をCOEXにて大々的に開催した。

SCEK本社ビル。SCEKはこのビルの2つのフロアを使用している
背の低いビルが建ち並ぶSCEK本社のある瑞草区
 2001年末の韓国市場参入当初は、巨大なオンラインゲーム市場を前に苦戦が伝えられたが、約3年を経た現在、100万台普及という大台をクリアし、今年11月11日には、日本市場からわずか一週間遅れで新型PS2を発売。新型PS2の発売に合わせて、人気俳優のソン・ガンホさんを起用したテレビCMの放映も開始した。いよいよ実りの時期到来、そんな印象を受ける。

 今年のKAMEXは、「プレイステーション 2フェスティバル」と時期が重なったことから出展を見合わせたということだが、100万台普及に導いた戦略、新型PS2の発売、PSPへの対応、そして今後の戦略と、気になる要素は山ほどある。そこで今回はKAMEX開催のさなか、SCEK本社と独自にアポイントを取り訪問。気になる内容に関して話を伺ってみた。

 SCEK本社は、IT関連企業がひしめく江南地区の西隣の瑞草区にある。政治の中心であるソウル中心部と、経済の中心部である江南区からいずれも遠すぎず近すぎずといった微妙な位置にあたる。日本で言うとさしずめ5年前の六本木といった感じだろうか。

 入居して2年というSCEK本社ビルは、周囲では唯一の高層ビルで、遠くからでも一発でわかるほど、そのビルだけひときわ異彩を放っている。街路にはどこか懐かしい雰囲気の飲食店が並び、地下鉄駅に至るまでのメインストリートには、厳密には違法である屋台が軒を連ねる。交差点の向かいではビルの建設が始まっており、近いうちに風景が一変することになるらしい。ひょっとすると、数年後にはここ瑞草区が「ゲームの中心地」になるのかもしれない。

 今回インタビューに応じて頂いたのは、韓国市場のソフトウェア戦略を担当するゼネラルマネージャーJin-Koo Kang氏と、マーケティングチームのPRマネージャーHee-Won Kang氏の2名。Jin-Koo Kang氏は、昨年までネクソンジャパンの代表取締役に就任していた知日家。現在、韓国オンラインゲームメーカーの日本法人のトップとして、日本市場でのビジネスを通じて培われたノウハウと人脈を活かし、韓国固有のコンテンツを世界展開するための秘策を練っているという。また、Kang氏は日本市場だけでなく、日本語にも精通しているため、インタビューは非常に濃密なものになった。


■ SCEKの設立から現在までの経緯について

インタビューに応じて頂いたHee-Won Kang氏、Young-Gyo Kim氏、Jin-Koo Kang氏
編集部: SCEKの設立してから今までの活動内容を教えてください。

Hee-Won Kang氏: 韓国では我々が参入するまで「ビデオゲーム市場」というものが存在せず、今まで市場そのものを作り上げることに注力してきました。ゲームの流通といえばPCゲームがメインで、コンシューマはほとんどなかったので、コンシューマ市場をいちから構築していったのです。オンラインショッピングモールや、ディスカウントストア、ハイパーマーケット(大型量販店)などに働きかけ、新しい市場を開拓していきました。

 テレビのCMも積極的に行なっています。今までビデオゲームというものふれたことがない人に向けて、「タッチ&トライ」というイベントをたくさん開催しました。

編集部: SCEKは、流通は自社で行なっているのでしょうか?

Hee-Won Kang氏: そうです。SCEKが正式に設立されたのは、2001年の12月です。PS2などを発売開始したのが2002年の2月になります。SCEJIからこちらの発売の2、3年前から韓国の調査を始めています。SCEK独自で流通の確保と市場の調査を始めたのは、設立半年前からですね。

編集部: 設立から現在までの手応えを教えてください。

Hee-Won Kang氏: 予想したものよりだいぶいいと思っています。これまで10年以上、韓国にキチンとしたビデオゲーム市場はなかった。あったとしても、それは正式なチャンネルを通したものではなく、輸入品とコピーによる「グレーマーケット」というべきものでした。PCゲームとオンラインゲームが幅を利かせている韓国の市場で、100万台を突破できるほどの成功をおさめられたのは、快挙だととらえています。

 韓国では、これまで「テレビを使ってゲームをする」ということに関して、お父さんやお母さんがとても否定的でした。テレビは居間にあり、子供部屋にあるものではない。PCの様に個人の所有物ではなく、家族みんなのものなのです。そのために、子供がPS2をテレビにつないでゲームを楽しんでいると、「勉強しなさい」とか、「ゲームをやめなさい」といわれてしまう。PCは「勉強道具」として親が子供に与えるものです。ゲームしかできない機械であるPS2に対する固定観念を払拭するのに苦労しました。


■ 韓国展開するパブリッシャーはおよそ20社

Maketing Dvision Manager/PR、Hee-Won Kang氏
Software Strategy Office General Manager、Jin-Koo Kang氏
Marketing Division CordinatorのYoung-Gyo Kimさん。今回は通訳をしていただいた

編集部: これまでの成功というのは、ハードのみを差すのでしょうか、それともソフトを含めた結果ですか?

Hee-Won Kang氏: 両方の力があってこそのこれまでの成功だったと思っています。ただし、残念だったのは、これまでは韓国オリジナルのソフトで成功を収めたものがまだないということです。今回、韓国のSoftmaxが作った「マグナカルタ」が日本で大きな売り上げを記録したことに手応えを感じています。韓国での発売はこれからですが、予約の時点でかなりの人気を集め、日韓両方で大きな話題になってくれると期待しています。原画集などをセットした限定パックを700本、オンラインで予約受付したのですが、1分で完売してしまいました。通常版の予約も非常に多いです。

編集部: 今年の10月にハードの普及台数が100万台を突破したとのことですが、ソフトのセールス状況はいかがでしょうか。

Hee-Won Kang氏: 「グランツーリスモConcept 2001 Tokyo」や「鉄拳 4」は10万本を越えるヒットを記録しました。それ以降にも、5万本を越えたタイトルがいくつかあります。しかし、最近は不景気なことと中古問題があり、ヒットで3万本でという感じになっています。このソフトの売り上げは予想より少ないですね。過去、一番売れたタイトルは「鉄拳 4」が12万本、「鉄拳タッグトーナメント」、「グランツーリスモConcept 2001 Tokyo」が10万本ですね。他には「メタルギアソリッド 2」や、「ウイニングイレブン」、「真・三国無双」などが続きます。

編集部: 韓国で展開しているPS2パブリッシャーは、SCEKとEAコリアといった大手のほか、何社くらいあるのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: 韓国は総代理店に卸すといった独特の販売システムなどもありますが、現在は多くのメーカーが直接販売を行なっています。パブリッシングを行なっているのはおよそ20社、そのうち大手が10社ですね。コナミがコナミアジア、カプコンがココ・カプコン、バンダイコリア、コーエーコリア、他にもTHQといったメーカーがあります。ナムコのソフトはSCEKがファーストパーティーとしてパブリッシングをしています。

 スタートした直後はもっと多かったのですが、ソフトを1本販売してみたが苦杯をなめた、というところもありまして、現在はだいぶ整理されているという側面もあります。これから市場が充実してくるに従い、また増えてくると思っています。

 韓国独自のパブリッシャーもあります。YBMという会社が大手で、セガのタイトルを発売していたのですが、現在は見直しをしているとのことです。開発会社としては、「マグナカルタ」のソフトマックスを初めとして、数社があります。(下表参照)。

編集部: オンラインゲームが1タイトルだけというのは、少ない印象がありますね

Jin-Koo Kang氏: 韓国=オンラインゲームというイメージは確固たるものになりましたが、PS2ではまだ現状その表のタイトルしかありません。しかし、オンラインの強みを活かした作品は今後出てきますし、PS2だけではなく、PSP向けのタイトルも制作を始めています。これからはもっともっと、韓国のメーカーがその力を発揮できるようになると思います。

 なぜならば、韓国市場はPS2が出て2年目にスタートした。日本のメーカーと比べ、それだけ制作に関する技術の蓄積が少なく、経験による技術の差を埋めることが難しかった。現在オリジナルタイトルを開発できる環境が整った韓国のメーカーにとっては快挙なのです。そして、PSP、また今後発売されるであろう次世代機では、日本や欧米のメーカーと同じスタートラインにたてる。ここでは韓国が得意なオンラインの技術を活かしたタイトルを制作できると思っています。そのための呼びかけなども、積極的に行なっています。

今後発売される韓国メーカーによるPS2タイトル(11月23日現在)
ゲーム名 ジャンル 発売日 開発会社
Pump it up The Excead Action 2004,11,25 ANDAMIRO
MAGNACARTA:
Crimzon Stigmata
RPG 2004,12,1 Softmax
Comon Boy 1&2 3D Comic Sports 2004下半期 Expotato
PSYVARIA2 Shooting 2004下半期 Skonec
entertainment
Mystic Nights 3D Action Adventure
(国産初のネットワーク対応作品)
2005上半期 N-Logsoft


■ コンソールでのオンラインゲームの展開は?

SCEKの入り口。カジュアルな雰囲気
PS2のソフトやグッズを詰め込んだミーティングスペース
編集部: 単純な疑問として、現在数多く存在する韓国のMMORPGがPS2に移植されないのはなぜなのでしょうか?


Jin-Koo Kang氏: 私は以前PCゲームの開発に携わっていましたが、PCゲームとPS2ゲームは、開発する上でかなり手法が異なります。特にコンソールゲームは、パッチによる修正を行なうことができないという点が大きいです。韓国のメーカーはパッチによる修正を含めた制作姿勢をとっているところがほとんどだからです。

 加えて韓国のPS2はハードディスクを取り付けられるタイプは販売していません。必ずしもオンラインゲームをプレイするのにハードディスクが必要というわけではありませんが、この面でも他の市場とは大きく異なります。

Hee-Won Kang氏: 以前、世論調査を行なったときに、PS2のユーザーからオンラインゲームの移植に関してはあまり要望がこなかったのです。韓国のPCゲームメーカーが、日本から2年出遅れてスタートしたという視点からも積極的に動かなかったのではないかと見ています。

Jin-Koo Kang氏: 先ほど少し触れましたが、PS2は居間にあるテレビに接続して遊ぶものです。MMORPGはいままで、部屋にあるPCで長時間没頭してプレイをするスタイルが主流です。居間にあるテレビで同じようなプレイをすれば、家族は注意をするし、何よりも他の家族がテレビを見られなくなってしまう。家族がテレビ番組が見たいと言われた場合は、プレーヤーの子供達は即座にゲームをやめなくてはいけない。このプレイスタイルの違いが、今に至るまでPS2でMMORPGが開発されていない理由のひとつかもしれませんね。

編集部: 日本ではゲーム用に小さなテレビを子供に買い与えたりしますよね。まだ韓国では、そうした動きというのは少ないのでしょうか?


Hee-Won Kang氏: ゲームしかできないPS2というハードウェアは、学業にも利用できるPCに比べてマイナスイメージがありました。これまでの活動で私たちがこのイメージを解消するために努力してきました。私たちはPS2を買うことができる所得の世帯数を500万と予想していますが、そのうちの20パーセントを達成できたのは、「PS2はコアユーザのためだけのものではない」という認識を消費者に持ってもらえたと思っています。家族と一緒にも楽しめるゲーム機というイメージを強調してきましたつもりですが、じゃあテレビももう1台とまではいかないようです。

編集部: 韓国ではハードディスクのないネットワークアダプタのみのPS2でどんなゲームを楽しんでいますか?

Hee-Won Kang氏: 最初に発売されたのがオンライン対応のFPSの「SOCOM」、他に「FIFA」などのスポーツゲームなど、対戦型のゲームが中心になっています。

編集部: なるほど。現在、韓国でのPS2のメインターゲットはどのあたりでしょうか?

Hee-Won Kang氏: 発売当初は20代の男性をメインターゲットにしましたが、しかし、現在は小学生のいる家庭をターゲットにしています。子供自身と、その両親が対象です。PCタイトルを楽しんでいる層とかぶる部分もありますが、SCEKは「PCゲームをやめてコンシューマーをプレイしよう」というのではなく、「両方楽しんでほしい」という主張ですね。

Jin-Koo Kang氏: オンラインゲームとコンソールゲームはそれぞれ違った楽しさがあると捉えています。韓国のゲームユーザーのほとんどはまだコンソールゲームのおもしろさを知っていない。この楽しさを伝えていきたいですね。日本でもオンラインゲームとコンソールゲームは決して対立するものではありません、ゲームが好きな人たちは両方とも楽しんでいます。僕らはコンソールゲームは家族みんなで楽しめるゲームだと言うことをもっと強くアピールしていきたいですね。

Hee-Won Kang氏: 現在SCEKでは有名な俳優である「ソン・ガンホ」さんを起用してTVCMを流しているのですが、そのCMのテーマは「家族から友達へ」です。お父さんがゲームを通じて友達になってくれる。そんなイメージで制作しています。

編集部: 韓国には、NcsoftやGravityなどMMORPGを得意とする大手メーカーが数多く存在します。SCEKはこれらのメーカーにコンソールタイトルを出すように働きかけはしていないのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: SCEKは、単純に世界のタイトルを韓国に紹介するだけではなく、オンラインタイトルをアジアや世界に向けて、韓国のメーカーと協力をして制作していくことを使命だと捉えています。働きかけは活発に行なっています。現在はまだお話しはできませんが、着実に準備は進めています。

編集部: それでは今後、例えば来年にも、日本における「ファイナルファンタジーXI」や「信長の野望 Online」のような国産MMOタイトルがSCEKからリリースされる可能性もあるのですか?

Jin-Koo Kang氏: ゲームのプラットフォームはPS2に限りません。PSPかもしれないし、次世代機かもしれない。新ハードに合わせるという動きもあるでしょう。大規模なMMORPGなのか、そうでないのかも今後見極めが必要です。参入してくるメーカーにとってコンシューマは未知の部分が多いジャンルです。最初から大作のゲームが制作できるかについても今後の展開次第ですね。現状、ひとつだけ言えることは、そのための準備を確実にしていると言うことですね。

編集部: 今回、韓国でも発売された新型PS2は、ハードディスクが搭載できない仕様になっています。これは言い方を変えれば、SCEJ自体が、ソフトウェア戦略として、ハードディスクにインストールするタイプのMMORPGを今後のメインストリームとして選ばなかったと思うのですが、この点についてSCEKではどう捉えていますか?

Hee-Won Kang氏: ハードディスクがないとMMORPGができないかというと、必ずしもそう言うわけではありません。実際、「モンスターハンター」など、ハードディスクを必要としないタイプのオンラインRPGも生まれています。SCE全体としても、ハードディスクに依存しない部分に新しい可能性を見いだそうとしています。

 PSPや次世代機など大きな記憶媒体を取り入れたハードも視野に入れた、長いスパンでの計画も立てていますので、今回の新型機がハードディスクの搭載を選ばなかったことだけで、インストールタイプのオンラインゲームは外したというわけではありませんし、私たちSCEKがオンラインゲームを作れないということにはなりません。

編集部: SCEKではハードディスクの有無に関わらず、オンラインゲーム開発への意欲を持っているというわけですね。

Jin-Koo Kang氏: そうです。ハードディスクではなくて、他の記憶媒体を使う、という選択肢もあると思います。


■ 競合ハードウェアXboxに対する意識と取り組み方の違い

編集部: 販売するソフトウェアに関して、ローカライズは必ず行われているのでしょうか? 英語のまま、日本語のままといったソフトは流通していますか?

Hee-Won Kang氏: 基本的には必ずローカライズを行なっています。スポーツゲームの一部などローカライズがなくても楽しめるものはそのまま出す場合もあります。今まで韓国では320以上のPS2タイトルが販売されていますが、その中の240タイトルがローカライズを行なっています。

 この姿勢がXbox陣営との一番の大きな違いといえるでしょう。韓国でXboxは今まで100タイトルが販売されていますが、ローカライズされているのは10本以下です。コンソールゲームをプレイするユーザー達に、SCEKのローカライズに積極的な姿勢は高く評価されていますね。

編集部: SCEKとしてXboxを意識する部分はありますか?

Hee-Won Kang氏: あまりないですね。マイクロソフトは韓国でのXboxの販売数を公表していないので実際のところはわからないですが

 また、韓国ではXboxを違法改造して、標準で同梱されているハードディスクにデータをそのままコピーする問題が発生しています。このために、あるソフトは数百枚しか正規版が売れず、コピー版ばかりが出回ってしまったこともあります。Xbox側はサードパーティーの協力が少ないのも苦戦の原因のひとつでしょうね。

Jin-Koo Kang氏: ハードディスクを改造して、ゲームを入れてしまうのです。正規のソフトをどんどんコピーしてしまう。そのためXboxではソフトが売れず、サードパーティーの収益が上がらないという悪循環に陥っています。ユーザーのイリーガルなマナーが広まってしまっているのはとても残念ですね。

 PS2側でも一時似たような動きはありましたが、SCEKとして厳しく取り締まり、現在はほぼなくなった状態にあります。Xbox陣営は競争相手ではなく、共にコンソールゲームを広めていこうと思っている存在です。彼等が苦戦している現状は非常に残念な部分があります。


■不正行為に対するSCEKを初めとした韓国ゲーム業界の対応

編集部: 先ほど出たユーザーの不正行為に関する取り組みについてですが、具体的にどのような対処を行なってきたのでしょうか?

Hee-Won Kang氏  SCEKは不正コピーを申告するセンターがあり、オンラインで申告することができます。また、オンラインを通じてゲームソフトをやりとりしているような不正なサイトを監視し、積極的に警告状を郵送するなど積極的に働きかけています。持続的に不正行為を行なっているところには、法律的に対処する場合もあります。

 オンラインでの犯罪行為に関しては、専門の監視員により厳しくチェックをしています。コピーソフトを販売しているようなサイトは閉鎖をしてもらうように働きかけています。

Jin-Koo Kang氏: 不正行為のひとつとして、ピア・トゥ・ピアでデータをやりとりするものが存在しますが、入手したデータをPS2で使用するためには、PS2に不正な改造を施さなくてはならない。そこで私たちはまず、その改造業者を取締り、さらにソフトを流通させようとしているサイトも取り締まっています。ねばり強い活動で、不正行為は激減しました。

 ソフトコピー問題は、SCEKだけでなく、ソフトウェア会社にとっても死活問題ですので、アタリコリアなど韓国のパブリッシャーが“G11”という組織を作り、不正行為を取り締まろうという動きもあります。SCEKやマイクロソフトがこれをバックアップしています。コンソールの不正行為は全体としてもずいぶん減ってきました。現在、私たちの頭を悩ませているのは、「中古問題」ですね。


■ 韓国コンソールゲーム市場を大きく圧迫する中古問題とは!?

編集部: 韓国では中古ソフトに関してどのような問題があるのでしょうか?

Hee-Won Kang氏: 韓国では中古製品の売買に関して取引申告をまったく行なわずに行なっているため、きわめて安価で購入することができます。これでは新品が売れませんので、現在、関連機関に現状を訴え、対策を行おうとしています。

編集部: 基本的なことですが、韓国では中古販売は違法行為になるのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: 日本では違法でないと判決が出ましたが、韓国では判決が出ておりません。法律の問題よりも、ユーザーの認識に働きかけているのですが、韓国では正規の取扱品でも大規模に中古を行なっている。陳列ケースの中に、少数の新品と大量の中古品が混ざって展示されているという状態なのです。

Hee-Won Kang氏: こちらで問題にしているのは、買い取りを視野に入れ、正規の商品をとても値段を下げて売ってしまう業者の存在です。中古製品は申告をせず全部が儲けになる。こういった業者の存在が、きちんとした値段で売っている正規代理店を圧迫してしまっているところです。新品がすぐに中古市場に流れてしまうので、新品そのものも売り上げに影響が出始めています。なんとしてもこれを取り締まっていこうと思っていますね。

 SCEKでは今後、中古を扱わないディスカウントストアや、デパートや特約代理店などに注力していこうという動きがあります。デパートなどにいった子供は、「お父さん中古品を買って!」とは言わないからです。いずれにしても中古問題は目下の大きな課題ですね。

編集部: 韓国の電気街として名高い龍山では、昔は不正コピーの山でしたが、最近は中古品が多いのですか?

Jin-Koo Kang氏: そうですね。不正コピーは少なくなりましたが、中古品が非常に多いです。

Hee-Won Kang氏: 日本では中古に売ったお金で買うゲームはどちらかというと新品が多いですよね。韓国の多くのユーザーは、そのお金で中古品を買ってしまうのです。中古を売って、中古を買う。中古業者のみでお金が回ってしまい、新品が売れなくなっていると言うのが韓国市場の問題点です。


■ PSPでは韓国オリジナルタイトルが続々登場!!

編集部: 日本だけでなく世界的に大きな話題のひとつであるPSPに関してお伺いさせてください。ずばりSCEKは参入はするのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: もちろん参入します。販売しますし、オリジナルソフトも出します。正式発表も近日行なう予定ですが、韓国での販売は、2005年の春になる予定です。欧米の発売に合わせる予定ですね。

編集部: 本体と同時発売のタイトルは日本や欧米のものが中心ですか? 国産タイトルはあるのでしょうか?

Hee-Won Kang氏: まだ社名は出せませんが、韓国オリジナルタイトルをPSPと同時発売します。PS2の時にはまだ技術の蓄積やメーカーへの働きかけが不十分でオリジナルタイトルを出すのに時間がかかりましたが、PSPに関しては同時発売に向けて積極的に働きかけてきました。

 その後も、韓国メーカーによるオリジナルタイトルを続々発売できるように活動をしています。PSPに関するライセンスを結んでいる韓国の会社は30社、そのうち現在具体的にソフトを制作している会社は10社ほどです。そのうちの2、3タイトルは同時発売できれば、と思っています。

編集部: PS2の時よりも韓国メーカーは非常に積極的ですね。

Hee-Won Kang氏: PS2があることで、いままでPCしか見ていなかった韓国のメーカーがコンソール市場へ目を向けてくるようになった。加えて、PSPは日本や欧米の業者と同じスタートラインで行ける。我々としてはそこに大きな期待を寄せています。UMDというメディアがコピーが難しいということも韓国メーカーを積極的にさせる理由のひとつです。

 PSPは「居間でゲームをやる」タイプの機器でないという部分も大きい。ポータブルなので子供が部屋でプレイできる。このポイントもメーカーに評価されています。SCEKとしてもオリジナルタイトルを出せるように動いています。韓国のオリジナルタイトルの「お披露目」もそろそろ考えていますが、日本のユーザーにもアピールできればと思っています。

Jin-Koo Kang氏:  特に韓国のメーカーは、日本で発表されたPSPの販売価格を聞いて、「この価格ならば韓国市場でも受け入られるかも」と期待しているようです。ハイスペックのマシンが低価格で提供されるということに魅力感じ、参入への動きが活性化した部分はあります。

編集部: 韓国のメーカーが日本市場に向けたソフトを制作する予定はありますか?

Jin-Koo Kang氏: 規模的にも欧米や日本の方が市場が大きいため、当然意識はしています。ピンポイントに日本に向けて、ということになると今のところありませんが、意識はしています。

編集部: ちなみに韓国の携帯ゲーム市場は現在どんなものなのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: 携帯電話が主流ですが、人気は低いです。サムソンが「ゲームフォン」というゲームのできる携帯電話を発売予定ですが、800,000ウォン(8万円)という価格なため、ゲームメーカーの協力があまり得られないのが現状です。

 これはSCEKというわけではなく、一般的な意見ですが、韓国では大元C.I という会社がGBAを取り扱っていますが、ローカライズを行わず、パブリッシャーも積極的でないため、人気は高くありません。

Hee-Won Kang氏: 韓国ゲームメディア間の話では、NDSに参入している韓国メーカーもないということです。PSPは成功すれば参入している韓国メーカーにも利益があるが、NDSでは韓国業界にあまり関係がないようだ、と言うのがゲームメディアの意見のようです。

編集部: そうなるとPSPは、韓国市場で最も有力な携帯ゲーム機、ということになるのでしょうか?

Hee-Won Kang氏: そういう位置づけになるよう努力します(笑)

Jin-Koo Kang氏: そうなるようにがんばりたいですね(笑)。あのスペックであの画面、そして価格帯は他社では真似できないと思っています。そして、ネットワーク機能。このハードで韓国のデベロッパーはいよいよ頭角を表していくことになると思います。

編集部: 今後、世界的にSCEKイコールPSPといったイメージが確立してくるのでしょうか?

Jin-Koo Kang氏: いえいえそこまで極端なことにはなりません。PS2も200万台を目指してがんばっていきますし、PS2、PSP、PSというPSファミリーを韓国で育てていくという基本路線は変わりません。


■ 韓国でのPSPの価格設定、販売戦略について

編集部: 気になるのが韓国でのPSP価格ですね。新型PS2だと日本に比べて50,000ウォン(約5,000円)高くなっていますが、日本と比べて若干高価になってしまうのでしょうか?

Hee-Won Kang氏: 現在の価格はまだ未定です。関税などの問題で初期出荷時点ではどうしても高くなってしまう可能性が高いです。できるだけ押さえるつもりではありますが。

Jin-Koo Kang氏: 日本との価格差についてはあまり強く意識していません。仮に韓国で日本より1~2万ウォン価格を抑えられたとして、それが購買意欲に大きく影響するかという問題もあると思います。そのマーケティング的駆け引きを行なって無理に価格を下げるより、パブリッシャーやディーラー、そしてなによりユーザーに利益を還元するためには何が必要かを考えていきたいと思っています。

 そしてまた、わずかな価格の安さをアピールするより、この機械で何が楽しめるのか、この機械を得ることでどんな世界が拡がるかをアピールしていきたいと思っています。価値を高めることに注力をしていきたいと思っています。

Hee-Won Kang氏: PSPは女性に対しては、「スタイリッシュな機械」として、ゲーマー達には「多くのゲームが遊べる」、一般の方に対しては「さまざまな利用ができるエンターテイメント機器だ」というイメージで販売していこうと思っています。

編集部: PS2は100万台を突破したわけですが、PSPはどのくらいの販売台数を見越していますか?

Jin-Koo Kang氏: 1年で50万台は行きたいと思っています。

Hee-Won Kang氏: 韓国は携帯機器の流行に敏感な部分があります。イメージ戦略をしっかりすれば50万という数字は難しいハードルではないと考えています。

編集部: PS2の目標についてはいかがでしょう?

Hee-Won Kang氏: 新型PS2の販売によって、月の販売数が一気に20%増大しました。12月はクリスマスシーズンでもありますし、今後ともがんばっていきたいですね。次の目標としては、250万台に設定しています。

編集部: 最後に、日本の読者へのメッセージをお願いします。

Hee-Won Kang氏: 現在ドラマなどで韓国が大きく認知され、韓国産のソフトも受け入られるようになってきました。今後もPS2、PSPの両方で韓国だけでなく、世界で話題を集めるゲームを提供していくつもりです。韓国ならではのオンラインのタイトルや、次世代機のタイトルなどを制作していきますので、どうぞご期待ください。

編集部: ありがとうございました。

PS2のグッズをまとめて展示 通路にはソフトのポスターが 産業への貢献など、新聞社から表彰されたトロフィー

□Sony Computer Entertainment Koreaのページ
http://www.scek.co.kr/

[Reported by 中村聖司/勝田哲也]


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