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任天堂、新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」実機を公開
宮本茂氏「楽しいおもちゃです!」

12月2日 発売

価格:15,000円

挨拶する岩田聡氏。「前提知識がなくてもプレイできる」点を強調した
 任天堂株式会社は、12月2日の発売を予定している新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」をプレス、関係者、流通向けに発表する「ニンテンドーDS プレビュー」を開催した。実機を触ることができたほか、開発中ソフトの試遊機も多数出展され、注目を集めた。

 これまでE3では公開されたものの、それ以外の場ではほとんど手にする機会がなかった「ニンテンドーDS」だが、ついにその秘密のヴェールを脱いだ。まず最初にステージに立った岩田聡代表取締役社長はニンテンドーDSを自信たっぷりに高々と持ち上げ、ニンテンドーDSがこれまでのゲーム機とは全く違う機械であることを強調。

 宇多田ヒカルさんの登場するCM撮影時のエピソードを引き合いに出し「宇多田さんは撮影当日、楽しそうにニンテンドーDSを遊んでくれた。前提知識がなくてもすぐに楽しんでもらえる。宇多田さんの様子を見て、我々の開発意図を実現できたと確信を持てた」とコメント。

 20年にもおよぶコンピュータゲームの進歩は同時に複雑さを生み、ゲームが難しくなり“ゲーム離れ”から市場が縮小している……といういつもの論旨を展開。しかし、ただシンプルな遊びを提案しても、ゲームの熟練者にとってはただの価値のない遊びでしかなく、「シンプルな遊びを提案するだけでは答えにならないという点が、この問題を解く難しさがあった」と続け、任天堂としての答えが「新しい構造の遊びを発明」することにあったという。

 ユーザーに珍しさを感じて、楽しんでもらうために任天堂が開発したのが、新しい構造のゲーム機「ニンテンドーDS」と言うわけだ。そして新しい機能を持つゲームを提示することで、すべてのユーザーに同じスタートラインに立って遊んでもらいたいとしている。岩田氏は「世界中の人達に、年齢、性別、そしてゲームに関する知識や経験を問わず同じスタートラインから新鮮な気持ちで楽しんでもらいたい」と語った。

 これを実現するひとつの重要な要素が、タッチスクリーンによる直感的な操作で、これまでのゲームのコントローラーの呪縛からの解放がある。同氏は「十字キーとボタンというファミコン誕生20年来の操作は、熟練者と未経験者の間に、大きなコントローラさばきの差が出てきた」と説明。そこで直感的なインターフェイスが必要だったことからタッチスクリーンを採用したという。

 このタッチスクリーンと2画面の相性の良さにも話が及び、「下画面をコントローラと見なすこともできる」と、大胆な発想を示した。このほかにも「丁寧なガイダンスを表示することもできるし、遊びやすい2次元画面の表示と演出重視の3D画面の表示を同時に行ない、ユーザーが見やすい方を自分たちで選ぶ」といったアイディアも披露した。

 ここで、ワイヤレス機能による遊びの構造を変えようとする点についても触れた。ただ単にゲームボーイアドバンスの通信機能をワイヤレスにしただけではなく、ワイヤレスでプログラムをダウンロードし、実行することができるという。このことにより、1本のカートリッジによってゲームシェアリングが可能となる。同氏によればゲームシェアリングを「積極的に進めていきたい」としている。

 このほかにも、店舗において展開している「月刊任天堂」においてゲームソフトのデモプログラムをダウンロードしてもらうことも計画しているという。ゲームはプレイしなければその面白さはわからない。このため、回数制限や期間限定のデモプログラムを店舗側で配信。「食わず嫌いを解消し、ゲームチャートに革新的なゲームが並ぶようにしたい」と抱負を語った。

 さらには来年公開される「ポケットモンスター」の映画では、映画が上映されている最中に手持ちのゲームボーイアドバンス用ソフトと連動し、ポケットモンスターのデータ配信を行なうという。これまでは映画とは独立し、店舗やイベントにおいてデータ配信を行なっていたが、映画のストーリーに同期し、感動的なポケモンとの出会いの場でポケモンを配信するという革新的な企画の実現となる。すべての上映館ではできないが、なるべく多くの劇場で行ないたいとしている。


 現在、日本における参入メーカーは46社で、124タイトルになったという。ちなみに同時発売となる任天堂のソフトは5本で、タイトルは「直感ヒトフデ」、「スーパーマリオ64DS」、「さわるメイドインワリオ」、「ポケモンダッシュ」、「大合奏!バンドブラザーズ」となる。このほかにもサードパーティから7タイトルの発売が予定されており、年末までには合計14タイトルが揃うという。価格は「直感ヒトフデ」を除く任天堂の4タイトルが4,800円、「直感ヒトフデ」は3,800円となる。

ソフトのパッケージは、プレイステーション用のパッケージに近い大きさ。ニンテンドーDS用のソフトはSDカード並みで、小さくて薄い。子供が誤って割ってしまいはしないか不安になるほど。ゲームボーイアドバンス用ソフトと並べてみてもその小ささがわかるだろう 「直感ヒトフデ」、「スーパーマリオ64DS」、「さわるメイドインワリオ」、「ポケモンダッシュ」、「大合奏!バンドブラザーズ」のパッケージが展示された



■ 宮本茂氏……ニンテンドーDSでイヌの調教を始める!!
「新しいソフトを考えるのは楽しい」

 続いて登場したのは任天堂株式会社の専務取締役、宮本茂氏。そこでいきなりデモンストレーションを始めたのが子犬と遊ぶ「Nintendogs (仮称)」。ニンテンドーDSの中で子犬を飼う感覚のソフトで、フリスビーで遊んであげたり、高度なワザとしては子犬に縄跳びをするようにしつけることも可能なようだ。もちろんタッチペンで撫でてかわいがることもできる。

 宮本氏は「私がいま調教中の子犬を持ってきました」と切り出し画面に表示して見せ、マイク入力を使って直接、子犬に語りかけた。

 「ムサシ、おいで! よしよし、オスワリ、よしよし、ごろ~ん、よしよし」

 「緊張しているのと、雑音でうまくいくかどうか……」と始めたが、どうしてどうして子犬がまるで生きているように動き回った。記者席からは笑い声と拍手が飛び交ったのが印象的。宮本氏は「春までには調教して市場に出しますので」と春発売を目標として開発中であることを明らかにした。

 宮本氏は「このゲームを作っていると、いままでのゲームを作っていたように、攻略はどうかとか何ステージ必要だとか、そういうことは要らなくて、作っている側も非常に新鮮。ユーザーもゲームと身構えることなく、新しいおもちゃとして接してもらえる」とコメント。

 一方で、「攻略タイプのゲームも用意している」として「スーパーマリオ64DS」を紹介。ひとり用のステージ以外にも4人で遊べるミニゲームを用意しているという。これは30本くらいゲーム内で集めることになるのだという。ミニゲームの中には、マリオらしい高い場所にジャンプするタイプのものから“花占い”まで様々なタイプのミニゲームが用意されている。このほかにも前述のワイヤレスでプログラムをダウンロードして1カートリッジで、多人数によるマルチプレイが可能なゲームも収録されている。

“新しいソフト”を作り出すことが楽しくてしょうがない様子の専務取締役の宮本茂氏。ステージではいきなり新作「Nintendogs (仮称)」の紹介からスタート 今回ステージに登壇したクリエイターの皆さんが一堂に会しての写真撮影。向かって左から宮本茂氏、中 裕司氏、河津秋敏氏、石原恒和氏

【Nintendogs (仮称)】
イヌを調教する……というか、かわいがるソフト「Nintendogs (仮称)」。ステージで行なわれたデモンストレーションでは、宮本氏のかけ声にマイクによる音声入力に見事に応えていた



■ 3名のクリエイターが登壇し、コメント

 ここで宮本氏は、現在ゲームの開発を行なっているクリエイターをひとりずつ順に招き入れた。まず最初に登場したのは、「きみのためなら死ねる」を開発中のセガの中 裕司氏。宮本氏にいきなり「ロサンゼルスで最初見せていただいたのはソニックでしたよね?」と話をふられ、「ソニックももちろんちゃんと作っていますので、楽しみにしていて下さい」と答えたところからスタート。

 タイトルについては「やはり新しい発想で、新しいプレーヤーをつくろうというソフトなので、いままでと違ったゲームの名前が欲しいなぁという点があったのと、このゲームのストーリーみたいなものを感じていただきたくて、ドラマ性のある名前を付けたかったですね」とコメント。

 宮本氏からは「音楽もカッコイイですね」とのコメントについては「ゲーム音楽がこれほどまでにインターネットなどで話題になるのも珍しい。僕らも正直驚いている」と返した。

 ニンテンドーDS用のゲームを開発しての印象については「入力装置がふたつあるのは大きい。でも、僕が作っていて思ったのは、最初から最後まで片手でゲームプレイできるのはいいなぁという点。ゲームするのが難しいなぁと思っている人でもすごく入りやすくなったのではないでしょうか」と答えると、宮本氏も「本当にこれで良いのかと思いながら、けっこう興奮している自分がいる」と応じた。

 「きみのためなら死ねる」で面白いのは、ロウソクを吹き消すシーンで、下の画面に息を吹きかけるとロウソクが消えるという。これなどは各機能の高度な応用方法で、我々が考えている以上のことができそうな予感だ。

 「きみのためなら死ねる」以外にも「ぷよぷよフィーバー」が制作中であることも明らかになっているが、こちらについては「8人対戦が可能で、みんなでワイワイやっていると騒がしくて、色々とネットワークゲームも作ってきたけど、それが新鮮。『ぷよぷよフィーバー』では各キャラクタの声が聞こえるんですが、声が聞こえてくるたびに騒がしくなる」とその楽しさを説明した。

宮本氏曰く、「セガらしいソフト」と言わしめた同時発売ソフトとなるセガの「きみのためなら死ねる」を説明した中 裕司氏


 次に、「ファイナルファンタジー」の聞き慣れたメロディにのってスクリーンに映し出されたのがクリスタル。そして「FINAL FANTASY III」のロゴが映し出された。登場したのはスクウェア・エニックスの第2開発事業部の取締役 開発担当執行役員、河津秋敏氏。「FF III」は、初めての移植になるという。「インターフェイスが変わりますから、古いゲームがどのように新しく生まれ変わるのか、楽しみにして欲しい」とコメント。

 このほかにも「クリスタルクロニクル」についての発言があった。河津氏は「ゲームキューブとゲームボーイアドバンスで接続してと言うゲームだったが、そういったギミックはなくて、ニンテンドーDS本体だけでより手軽に、まぁ16人でできるかはわからないですが、なんとかしたい」と語った。これに宮本氏は「我々も『ゼルダの伝説 神々のトライフォース&4つの剣』をニンテンドーDSでやろうと思っているんです。競争しましょう」と返した。

 ここで宮本氏が「スクウェア・エニックスさんといえば、インターネットですよね。僕らもニンテンドーDSをインターネットにつないで何かしようと計画しているんですが、スクウェア・エニックスさんとしてはいかがですか」と質問。河津氏は「いま、展開中のものがそのままのるかどうかは難しいところですが、モバイルで展開しているものもありますし、ネットワークが敷居が高くてという人もいますので、それをニンテンドーDSで下げていただけると、みんなで楽しめると思います」とコメントするに留まった。

いきなりあの有名なテーマが流れはじめ、クリスタルが上映され始めた。そして「FINAL FANTASY III」のロゴが映し出された スクウェア・エニックス、第2開発事業部の取締役 開発担当執行役員、河津秋敏氏が登壇 宮本氏は「スクウェア・エニックスさんはネットワークゲームを展開されている」とコメント。スクウェア・エニックスにはネットワークゲームを期待しているかの口振りだった


 最後に登壇したのが、株式会社ポケモンの石原恒和氏。石原氏はニンテンドーDSの「ポケモンダッシュ」と「ポケットモンスター エメラルド」のカートリッジを両方差すことで、新たな追加コースが登場するデモを行なった。

 これまでに集めたポケットモンスターが収録されているゲームボーイアドバンス用のカートリッジを「ポケモンダッシュ」と同時にセットすれば、そのポケモンのグラフィックが、そのままコースになるというもの。これまでのゲームとのリンクも色々と取ることが可能になるようだ。

 これからの「ポケットモンスター」のシリーズ展開については、ゲームキューブ、ゲームボーイアドバンスでもたくさん開発中だという。ニンテンドーDSではこれまでのシリーズの集大成にするべく開発中という「ダイヤモンド」と「パール」を開発に着手しているという。

最後に登場したのは株式会社ポケモンの石原恒和氏。ニンテンドーDSの新作「ポケモンダッシュ」を手に登場
ステージ上で、「ポケモンダッシュ」と「ポケットモンスター エメラルド」を同時に差して、「ポケモンダッシュ」のコースが増えるというデモンストレーションを行なってみせた



■ 閉じると「バイバイ!」、細かいギミックも搭載

 ハードの細かい仕様については、ディスプレイが上下画面共に3インチ半透過反射型TFTカラー液晶でバックライトつき。解像度は256×192ピクセルで26万色表示となる。タッチパネル機能が付いているのは下画面だけ。実機の映像を見たところ、ゲームボーイアドバンスと同じく、若干暗い印象を受ける。

 ワイヤレス通信機能については、IEEE 802.11に対応した任天堂独自のプロトコルとなっている。電波到達距離については10m~30m。ボイスチャットも可能となる。

 このほか、ステレオスピーカー、ステレオヘッドフォンジャックを内蔵し、ソフトウェアでバーチャルサラウンドを実現する。重さは内蔵充電池、タッチペンを含み約275gで、実際に持った感触としては軽く感じるだろう。電池の充電は、フル充電まで4時間かかり、使用するソフトによって異なるが、6時間から10時間の使用が可能。

 すでに発表されているチャットソフト「ピクトチャット」がすでに内蔵されており、初めから楽しむことができる仕組みとなっている点も大きい。

 タッチペンは背面に収納することができるのだが、もし無くしてしまってもストラップに“タッチストラップ”という指輪のようなものが備え付けられている。これを指にはめて下スクリーンをグリグリするとアナログスティックのような感触で操作が可能で、タッチペンの替わりにもなるという。

 このほかにも面白い機能としてはレジューム機能がある。スリープモードなどの電源管理により省電力を実現するが、ゲーム中に扉を閉じると「バイバイ」という音声が流れスリープモードに突入するようだ。再度、画面を開けると復帰する。この機能を実際に宮本氏は行ないながら「携帯にはこんなことはできないでしょ」といたずらっぽく笑っていた。

 宮本氏は囲み取材において「ニンテンドーDSで楽しいことがイッパイできる。犬がどんな動きをすると良いのか、クリエイターが考える。これまでそんなこと考えたことなかった。そういったことを考えるのがうれしい」と開発を楽しんでいる様子。ハードの価格については「いろんな要素を詰め込んでいるので、それを15,000円に収めるのは非常に苦しい。でも、子供が買うのはソフトだから、なるべく安価にしたかった」と語った。

 対象年齢は「5才から95才で、面白いことが好きな人はすべて」としている。宮本氏は「むかしはゲームをプレイして驚いてくれたけど、最近はゲームを作ってもビックリしてくれない。でも今日も見ていると、犬を動かすだけでまだまだ驚いてくれる。ゲームの技術を使ってまだまだ驚かすことができる」と心の内を明かした。

 ソニー・コンピュータエンタテインメントが発売を予定しているPSPとの比較については「ニンテンドーDSは新しい機械。ユーザーは迷うのではなく、この“遊び”を気にいるかどうかにかがポイント」と、土俵が違う点を強調しながらも、最後に「でもお客さんのお財布はひとつ。そういった意味では競合しているかも」と漏らしていた。宮本氏は最後に「楽しいおもちゃです」と語り、ニンテンドーDSを色々な意味で (開発者としても、ユーザーとしても) 楽しんでいるようだった。

一度デザイン的に変更のあった「ニンテンドーDS」だが、開いたところは、それほど変更されているという印象はない。これまでの任天堂のデザイン傾向とは少し違うイメージだ。画面左下にあるのがマイク、右下にあるふたつのものがインジケータ 背面。左右にL/Rボタンが見え、中央にはニンテンドーDSのカートリッジ差し込み口、AC電源、などが見える。カートリッジ差し込み口の写真向かって左側にあるのがラスターペンを入れておくところ。縦に差し込むようになっている 下腹部。ゲームボーイアドバンス用ゲームカートリッジの差し込み口が中央に見える。向かって左が音声のボリューム。右側がヘッドセットの差し込み口。ここだけで、ステレオヘッドフォン/マイク接続端子を兼ねることになる
参考までにゲームボーイアドバンスと並べたところ。横幅的にはほぼ同じ。画面は少し小さい印象だ こちらはゲームボーイアドバンスSPと並べたところ。開いた大きさはまり変わらないが、ニンテンドーDSの方が薄い印象 パッケージも公開された。非常にシンプルな雰囲気だ


(C)2004 Nintendo

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□「ニンテンドーDS」のページ
http://touch-ds.jp/
□関連情報
【9月21日】任天堂、新型携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」12月2日に15,000円で発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040921/nds.htm
【9月10日】任天堂、ニンテンドーDSをプレイできる
「NINTENDO WORLD Touch! DS」を国内5都市で開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040910/ninten.htm
【8月2日】任天堂、「ニンテンドーDS」タイトルリストを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040802/nds.htm
【7月28日】任天堂、正式名称「ニンテンドーDS」に決定
本体はより鋭角的なデザインに変更
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040728/nds.htm

(2004年10月7日)

[Reported by 船津稔]


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