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NCsoft CEO キム・テクジン氏特別インタビュー |
会場:国際会議場
韓国最大手のゲームメーカーNCsoftは、韓国のメーカーの中でももっとも早く世界展開の方針を明らかにし、実行に移してきたメーカーとして知られる。優秀なデベロッパーを買収し、各地に法人を設立、現地の文化に即したタイトルを提供するという明快な戦略で世界展開を推し進めている。
今年は、日本、北米、アジア地域に続いて、ヨーロッパへの進出も果たし、また旗艦タイトルである「リネージュ 2」の正式サービスもスタートするなど、いよいよ世界的な成功を確実にするべく本腰を入れてきたという印象を受ける。本稿では、NCsoftの世界戦略を引っ張ってきたCEOキム・テクジン氏に同社の世界展開について改めて話を伺った。
■ 3,000円は妥当、今後はゲーム、システムの両面の充実に力を注ぐ
インタビューに応じて頂いたNCsoft CEOキム・テクジン氏。落ち着いた物腰と静かな語り口、胸に秘める自信。明確にリーダーシップを感じさせる人だ |
キム・テクジン氏 オンラインゲームが主流という基本的な状況は変わっていない。ただし、新たな試みも見え始めていて、ゲームポータルビジネスが大いに流行している。
編 その中で、NCsoftはどのような展開を行なっているのでしょうか?
キム氏 我々はあくまでゲームメーカーなので、オンラインゲームに特化した展開を続けている。もちろん、新しいビジネスの開拓への努力は行なっていくつもりだが、いずれにしてもオンラインゲームを中心とした戦略に代わりはない。昨年我々は再び「リネージュ 2」の成功によって韓国ゲーム市場を席巻したし、今年の年末からは、これまで準備を進めてきた複数のMMOタイトルを世界にお披露目できると思う。
編 世界展開についてはいかがでしょう?
キム氏 今年は特に北米市場に力を入れており、「Guild War」を今年の年末に、北米と韓国でサービスを開始する。来年度以降もさらに2、3タイトルを追加投入する方針だ。日本については、現在は「リネージュ 2」を中心とした展開になっているが、時期については検討中だが新しいMMOを投入する計画も進めている。
編 今月頭に英国で開催されていたGame Stars LiveにNCsoftとして単独出展されていましたが、ヨーロッパ市場についてどのように考えておられますか?
キム氏 ヨーロッパでは今年末に「City of Heroes」と「リネージュ 2」のサービス開始を予定している。まずはこの2タイトルを起爆剤にヨーロッパ進出を進めていこうと考えている。ただし、ヨーロッパは英国だけではなく、さまざまな国が存在する。来年は徐々にヨーロッパの各地域のローカライズ版をリリースし、サービス圏を拡大していく方針だ。
編 NCsoftのヨーロッパ展開はまさに今年9月からスタートしたわけですが、実際にブースを出展してみてどのような感想を持たれましたか?
キム氏 これは嬉しい誤算だったが、思ったよりも多くの好評を頂くことができた。今回の出展では確実な手応えを感じ、ヨーロッパ進出への自信を深めることができた。また、もうひとつ収穫だったのは、オンラインゲームのマニア層というものが存在しているということが確認できたことだ。
編 それでは日本についてお伺いしますが、現在日本では「リネージュ」シリーズ2タイトルを展開していますが、今後はどのような展開が見られるのでしょうか?
キム氏 まず「リネージュ 2」については、本日発表したように“クロニクル2”を12月7日を実装する。来年も引き続き“クロニクル3”と“4”の実装も予定している。「リネージュ クロスランカー」についても、新しいエピソードの追加を今後も続けていきます。
これらの既存のサービスのシステム、ゲームの両面でのアップデートの継続が日本展開における基本的なスタンスになる。さらにこの2タイトルの運営ノウハウを生かして、来年新しいタイトルをリリースしていく考えだ。
編 「リネージュ 2」は、韓国ゲーム史上もっとも予算と人員を掛けて開発されたMMORPGですが、正式サービスから数カ月が経過した日本サービスについてどのような感触をもたれてますか?
キム氏 スタートはとても良かったと思う。現状はまだ成長途上と言わざるを得ないが、今後も前向きに取り組んでいくつもりだ。もちろん、現在発生している問題や今後の課題なども把握している。これらを少しずつ解決しつつ、じっくり成長させていきたいと考えている。
編 現在発生している問題、今後の課題とは具体的に何を差しているのでしょうか?
キム氏 ゲーム面では、日本のユーザーの好みにあったコンテンツを提供していくことが重要だと考えている。これはエピソード3、4で補完する予定だ。サービス面では、運営のクオリティを上げていきたい。もうひとつは、価格面がネックになっているようなので、手頃感のある料金体系を構築していくつもりだ。
編 最後に出た価格面についてですが、手頃感のある料金体系というと、現在3,000円の設定が下がるということですか?
キム氏 まず、3,000円という料金設定については、今後も変えるつもりはないし、適性だと考えている。高いと思われる意見が多いのであれば、ゲーム面での充実を図り、価格に見合うようにしていくつもりだ。それよりも現在、支払い方法が2種類しかないので、支払い方法の充実が急務だと考えている。
編 今回インタビューするにあたって、「リネージュ 2」を熱心にプレイしているコアユーザー数人に話を聞きました。3,000円という価格設定の妥当性に言及する人は意外に少なく、それよりもラグがひどいことや、街ではバザーを行なう人によってラグが発生しているだけでなく、道を塞いで通れないという意見が目立ったように思います。これはらは、価格うんぬん、ゲーム面での充実うんぬん以前の問題ではないかと思うのですが?
「リネージュ 2」企画チーム長パク・ヒョンギュ氏 ラグについては私がお答えします。まずラグには2種類あって、マシンスペックが足りない事によるラグと、サーバー側の問題によって発生するラグです。これらの問題は“クロニクル3”で大幅に改善されます。日本の“クロニクル2”にもラグ解消部分の内容を盛り込もうと現在開発を進めている段階です。ですから日本でもラグの問題の解決は時間の問題だと考えております。
編 会長からは何かありませんか?
キム氏 技術的な問題の解決については、いまパクから話があったように、継続して続けていくつもりだ。“クロニクル2”がゲーム要素の充実だとすれば、“クロニクル3”はシステム面の充実になる。現在、その内容を“クロニクル2”に盛り込むという努力を行なっている。
ラグについては、韓国と日本ではインターネット環境が異なるということも理由のひとつだと考えている。ISPや回線のクオリティなどがそうだが、このためどうしても韓国で想定していたことと違う結果がでてしまう。今後はISPと共同してラグの問題に取り組むなどして、快適にプレイできるようにする努力を続けていくつもりだ。
■ 良質のゲームを提供し続けることがNCsoftのビジネス
編 “クロニクル2”でいい結果が出ることを楽しみにしています。それでは来年度以降のNCsoftの戦略について教えてください。
キム氏 まずはプロダクトをどんどん増やしていくこと。これは個々に独立して楽しんでもらうのではなく、TVのチャンネルを変えるようにさまざまなプロダクトを、NCsoftの中で楽しんで貰えるようにしたい。これによってゲームメーカーとしてのポートフォリオを完成させたい。
編 MMORPGというのは、コミュニティの問題や時間的な制約から、同時にあれもこれもプレイするのが難しいゲームジャンルだと思います。TVのチャンネルを変えるようにというのは、3つも4つもという意味だと思いますが、この実現のために何か特別なアイディアはあるのでしょうか?
キム氏 ひとつはカジュアルなスタイルのゲームもこれから取り入れていくことになるだろう。それだけでなくさまざまなスタイルのオンラインゲームを提供していきたいと考えている。
編 それはゲームポータルビジネスも含まれるわけでしょうか?
キム氏 現在のゲームポータルビジネスは、単純にたくさんのタイトルの寄せ集めに過ぎない。そういうものは私のビジネスモデルとはかけ離れている。
編 とはいっても、自社タイトルが増えてくれば、ユーザーへの見せ方に工夫が必要になりますし、横の繋がりを作る上でコミュニティ機能の充実も欠かせないのではないかと思います。NCsoftの見せ方はどういうものになるのでしょう?
キム氏 その部分については現時点では社内で検討を重ねている段階だ。
編 先ほどプロダクトの充実に力を入れるということでしたが、それ以外のビジネス展開は考えていないのでしょうか?
キム氏 我々はゲームメーカーであり、ゲームメーカーというのはいいゲームを作るのに始まり、いいゲームを作るのに終わる。我々の戦略というのは、オンラインゲームを軸としたビジネス展開であり、たとえば世界展開であったり、まったく新しいタイプのMMORPGの開発であるとか、はたまたオンラインゲーム市場のステップを上げる努力であるとか、我々が目指しているのはそういうビジネスだ。
編 なるほど。オンラインゲームにこだわりがあるというのはよくわかりました。ちなみに現在気になっているもしくは好きなオンラインゲームは何でしょうか? これはCEOとしてだと差し障りがあるかもしれませんので、個人としての発言で結構です。
キム氏 よかった(笑) これはNCのCEOとしてではなく、個人としてのコメントですが、「リネージュ 2」が大好きです。
編 本当ですか?(笑) どのあたりが好きなんでしょうか
キム氏 本当です。ひとつは「リネージュ 2」は完全にオリジナルの世界だということです。人間の想像によってゲーム世界がどんどん広がっていく。もうひとつは、開発者によってそういう頭の中にある構想を聞く機会が多いので、それによって強い興味を覚えたということも言えます。
編 NCsoftは、世界進出を果たし、成功を収めたオンラインゲームメーカーの1社ですが、同社が世界の中で占めるポジションはどのあたりだと考えてますか?
キム氏 高望みは考えてません。NCsoftはいいオンラインゲームを提供してくれるメーカーだと認識して貰えるようになることです。いいゲームを作って提供する、それが我々のビジネスです。
編 ありがとうございました。
□NCsoftのホームページ
http://www.ncsoft.com/
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ
http://www.ncjapan.co.jp/
(2004年9月26日)
[Reported by 中村聖司]
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