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CEDEC 2004 セッション講師インタビュー
サイバーコネクトツー、松山 洋氏

    松山 洋氏
      株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役社長

       '96年に勤務していたコンクリート会社を退社し、学生時代の友人を含む9名と共にサイバーコネクトを設立。その後、同社にて営業とグラフィックデザイナーとしての二足のわらじを履いて活躍。2001年に代表取締役社長に就任と共に社名をサイバーコネクトツーに変更。現在は制作プロデューサー兼ディレクターとして活躍中。


 9月6日から8日の3日間にわたって開催される「CEDEC 2004 (CESA デベロッパーズカンファレンス)」。このカンファレンスでは、ネットワーク環境の充実、グローバル化などによって大きな変化の時を迎えているゲーム業界において、技術的なトレンドやビジネス化に向けての情報発信などを目的として企画、開催される。

 今年6回目となる「CEDEC」では、レギュラーセッションだけでも40セッション以上が予定されているほか、マイクロソフトのDirectX関連セッションを集めた「Meltdown」、NVIDIAの「開発の鉄人」、その他「スポンサーシップセッション」、「ワークショップ」、「ラウンドテーブル」などの開催が予定されている。

 興味深いセッションが目白押しだが、今回はこのなかからいくつかのセッションを行なう講師の方たちにインタビューを行ない、セッションでどのようなことが話されるのか、その一端を探ってみた。なお、セッションの申込みは8月27日までとなっている。


Q:今回、CEDECで講演を行なうことになった経緯を教えていただけますか?

松山氏: CEDECは、ゲーム開発会社やデベロッパーを対象とした講義ですから、毎年、我々は受講する側だったんです。弊社は博多にあるのですが、CEDECの時期になると「企画」や「グラフィック」、「プログラム」、「サウンド」などのスタッフの希望を募って、受講内容に合わせて参加していたんですよ。

 今回の講師の件に関しては、普通にメールが来まして「今年もCEDECが開催されるのですが講師としていかがですか?」という話がきたんですよ。

Q:今回のテーマは「メディアミックスとゲーム制作の有効な関係」ですが、松山さんのほうから提案されたのですか?

 CEDECさんの方からは、「好きなことを話してもらって構いません」というお話しだったんですよ。博多にあるゲーム会社として、現在、元気のあるというか、勢いのあるという空気がありますけれど、日本にある数百のゲーム開発会社の1社にすぎないので、他の会社さんと同じ内容の公演をおこなうより、サイバーコネクトツーだからこそ話ができる内容が一番いいと思いまして、このようなテーマを選択しました。


Q:講義の中心は、タイトルにもある「.hack//」シリーズでの“メディアミックス”でしょうか?

「.hack//」
松山氏: はい、「.hack//」シリーズの例がほかの会社さんと違って、お話しやすいかなと思いますので、このシリーズの話題をお話ししようと思います。それに、聞く側も興味があるかなと思いますし。

 最近は、「ゲームが売れない」と言われているじゃないですか。ショックなんですよ、正直……我々開発者は。多分クリエイターの方ならだいたい想像がつくと思うのですが、ものすごい時間と人数とお金もかけて作られた大作のRPGが売れない。ほかにも、自分でプレイしてる作品があるんですが、よくできていて非常に面白いですよ。その作品の初週販売本数が21,000本……ショックですよ。それだけゲームが売れない時代になってきてますし、ランキングを見るとですね上位に入るのがパチスロのシミュレータって……悲しいですよ。それはゲームじゃないじゃないかと。

 ですが、多くのパブリッシャーさんやメーカーさんの気持ちもわかるんですよ。まったく新しい、新規性に溢れたオリジナルタイトルって、売れる根拠がそもそもないじゃないですか。ゲームの売れない原因のひとつは、娯楽が多様化している事だと思ってますが、これだけ物が売れない時代です。物を売り出していくメーカーサイドが、すごく保守的になってしまった。これは仕方ないと思うんですよ。

 そんな中で「.hack//」は、これだけ新しいことをやって、なおかつ販売本数を上げることができた。「その裏側には何があったのか?」というと、我々制作会社の知恵と情熱だったんですよ。

 「.hack//」のクライアントはバンダイさんだったんですが、バンダイさんってどういうイメージの会社かというと、微妙じゃないですか。ここ最近は変わってきて、プレイステーション 2版「機動戦士ガンダム 連邦VS.ジオンDX」などよくできていて、大分変わってきたなと思いますし、「SDガンダム Gジェネレーション」ですとか「ギレンの野望」とか出来の良いタイトルが非常に増えてきたと思います。それと、キャラクタゲームに関しても、作り手側の顔が見える……「その原作のファンが喜ぶ作品というものはどういうモノなのか」と考えて作られた作品が増えてきたのは事実だと思います。例えば「DRAGONBALL Z」とか、我々が作ってます「「NARUTO-ナルト-ナルティメットヒーロー2」もそうですけども、非常に優良なタイトルが増えてきたと思います。

 でも、昔からバンダイさんって“キャラゲー”ってイメージがありますよね。原作が好きであればあるほど、それを目当てでゲームを買った子供達っていうのは、ゲームの出来が悪ければ裏切られますよね。私も現にそうだったんですよ。ちっちゃい時からもう漫画が大好き。それがTVアニメになって、ゲームが出る……「どこが作るんだ?」と聞いたとき「バンダイ」って聞いたら「ガクッー」ってきてたんですよ。それでもやっぱり買っちゃうんですよ。それで、「キン肉マン」をプレイして「アァァァ!」って思い、「聖闘士星矢 黄金伝説」をやって「アァァァ!!」って思いますし、そんな苦い思いを経験してきた子供だったんです。

 そんなバンダイさんで、オリジナルタイトルである「.hack//」を作るとなると、 (逆に) 情熱を持ち制作することができました。それにいま振り返ると、バンダイさんに本気になっていただけたというのは、我々の情熱の伝え方などのテクニック的な部分が大きかったのかなと思いますね。

 パブリッシャーさんというのは、制作会社にとってクライアントという立場なだけでなく、一緒に物を作っていくパートナーだと我々は考えてるんです。ですから、「最初に作りましょう」、「はい、お願いします」、「できました。よろしく売ってください」というだけではなく、“デベロッパー”と“パブリッシャー”といった立場は違えど、今回の「.hack//」に関しては、その関係が凄くうまくいったのではないかなと考えています。それはゲームから発生した他のメディアミックス……TVアニメシリーズですとか、コミックですとかそういったところにも結果として現われてるんだと思っています。

Q:「.hack//」はサイバーコネクトツーさんからバンダイに持ち込んだのですか?

松山氏: そうですね。今をさかのぼること、4年半ぐらい前ですね。プレイステーション 2が出る前ですよ。企画書とスケジュール表、見積書をバンダイさんのトップの方に持っていってお話しをさせていただいたんですよ。「.hack//」に携わる前にバンダイさんで過去「テイルコンチェルト」、「サイレントボマー」という2作品リリースさせてもらってまして、平たく言うと大ヒットというにはパワーが足りない作品でした。

 プレゼンテーションするにあたって企画書を提示して、「こういう作品を我々は作りたいんです。是非作らせてください」と言うだけではなく、その時にバンダイさんにお話ししましたのが、「正直、我々は背水の陣というかラストチャンスのつもりでいます。これでダメだったら切るなり焼くなり好きにしてください」とお話ししたんです。お金の部分に関しても非常に安い条件で契約をさせてもらったんですよ。

 その当時、バンダイさんでオリジナルを作ろうという方々が、周りからどんどん減っていて、気がつくと我々だけになってたんですよ。そういったこともあって、逆にバンダイさんからも「ほかの制作会社さんはキャラクタゲームの制作に戻っている。そんな中“オリジナル”を作りたいと言ってるのは、サイバーコネクトツーさんだけだけですよ」と言われたんです。また、一時期「“オリジナル”って意地張るのは辞めないか」とも言われました。「“オリジナル”で意地をはるのか、おとなしく版権ものをやるのか、どっちなんだ」と言う話をうけたんですが、「オリジナルをやらせてください」と答えたんです。つまり、それでも「.hack//」というオリジナルタイトルを作りたかったんですよ……それだけ勝算もあったのですが。

 過去2作品の反省からその時に考えたのが、「.hack//」の作り方として、「面白いものを作れば売れる!」というだけではなくて、根本的にイメージを変えなくてはいけないなと思ったんです。それはどういう意味かというと、バンダイさんは前述の通り微妙なメーカーというイメージがユーザーレベルでありますよね。つまり、バンダイから出る“オリジナルタイトル”というだけで“怪しい”じゃないですか。売れる気がしないですよ。

 そこから変えていかないとダメだと思ったんです。我々が作るべきところは何かと言うと、プログラムを書いて、グラフィックデータを作って、ゲームシナリオを作って……ということだけではなくて、バンダイというパブリッシャーと付き合うことの意味をユーザーに伝えるところまでデザインしなければダメだと思ったんです。

 バンダイさんというメーカーが持っている、他のゲームメーカーとは違う旨みや強みは何かと言うと、元々はオモチャ屋さんじゃないですか。横の展開は絶対早いんですよ。ですから、メディアミックスに関する企画をお話しさせてもらったんですよ。

Q:バンダイであればメディアミックスには強いだろうということですね。

「.hack//侵食汚染 Vol.3」より
松山氏: これは正直、我々の知恵だけではなくて、バンダイさんと一緒に考えたんです。基本的に、パブリッシャーとデベロッパーという形でのゲームの作り方って、最初に企画書持ち込み、パブリッシャーの了解を取り付けた後は、デベロッパーがひたすら作って、納品したら、「こういう売り方をしましょう」という話になると思うのですが、「.hack//」のプロジェクトではそうではなく、初めからどのように展開していくかという話をしたんです。

 例えば、バンダイグループにおいてアニメを作っているバンダイビジュアルのプロデューサーさんとお話しをしたり、バンダイさん経由で角川書店とコミックスの話をしたり、アニメ制作会社のプロダクションI.G.さんのところに相談に行ったり……、本来ゲーム会社の一デベロッパーの人間がやるようなことじゃないようなことまで、我々やらしてもらったんですよ。

 総合的な地ならしじゃないですけど、「.hack//」のスタジオを作って、メディアミックスのシステム自体を作り上げていったんです。メディアミックスと言うと、単純にヒットして繋がっていくというイメージがユーザーレベルでもあるじゃないですか。そうではなくて、一から作っていったということですね。

 バンダイさんとやるのであれば、 (オリジナルという観点から言えば) 元々マイナスのイメージから始まりますし、オリジナルに関しては後発なんですよね。他のゲーム会社さんって逆にオリジナルばっかりじゃないですか。「.hack//」の新規性をユーザーに伝えなければ、正直もう商品価値がないと思うんです。そこで、メディアミックスの新しい形というのを提案させてもらったんです。

 では、何が新しいのか? これまでのメディアミックスでは……いわゆる人気漫画があって、人気があるからコミックが売れ、コミックが売れて売り上げがあるからTVアニメで賭けましょうといった具合に繋がりますよね。さらにTVアニメにすると視聴率がとれ、非常に人気が出て、関連グッズも売れてきた。それでは、2次商品としてゲームを作りましょう……そういう流れだと思います。

 これは、いわゆる版権ビジネスというやつで、原作がどこかにあって、のちのち、どんどん乗っかっていこうということですよね。今までのメディアミックスというのは、コミックスなど原作がありますよね。でも、ゲームの制作は1年から2年と、非常に時間がかかるじゃないですか。現在連載してる原作のストーリーなどを取り込みながらゲームを作り始めると、2年後にゲームが完成してリリースされるときは、アニメでもとっくに放送された後だったりするんです。

Q: 映画の公開が終わって1~2年経ってからゲームが出るみたいな感じですよね。

松山氏: それでは、まったくもって意味がないんですよ。ですから、クライアントメーカーさんや版元さんが考えるのは、なんとかアニメを放送している期間中に販売してくれと言うことになる。そうなると1~2年かけて作っていくべきゲームソフトというのが、放送に間に合わせなければならないから、制作期間がどんどん短くなり、「8カ月で作りましょう」とか「6カ月で作りましょう」ということになる。作らないと正直商売にならないから。

 それはわかるんですが、それではまともな物は作れっこないんですよ。結局、それが悪循環になってしまうんです。それではクソゲーしかできない作り方になってしまうんですよ。

 それじゃ、逆の発想ならどうなのか。まず、1番時間のかかるゲームを作るんです。そのゲームを原作にして、コミックス展開、アニメ展開をやるんですね。「.hack//」は、結果として全てが同時にリリースされたんですよ。コミックス、アニメ、ゲームって順に出ましたけど、ほぼ同時。しかも、それが全て連携がとれている状態なんです。コミックスを読んで気になるところや、謎については、アニメを見ればわかるんですよ。アニメを見て気になるところは、どこに答えが隠されているのかといえば、原作は全てゲームですから、結局はゲームに帰ってきちゃうんです。

 入り口はマルチですけど、最終的にはゲームに辿りつく。だってゲームが原作ですから。……という作り方を初めてしたんです。いままでのメディアミックスは、ゲームの中に答えなんかありっこないんですよ。答えは何処にあるのかと言うと一番最初の原作なんですから。だから、コミックを読んでればそれでいい。ゲームはあくまでも後追いでしかなかったんですけど、「.hack//」シリーズでは逆引きとなった。そこはユーザーさんからも支持を多く得られたところだと思います。

Q: なるほど。講演のタイトルを聞いていると「メディアミックス」におけるゲームの制作というように感じましたが、逆に「メディアミックスをどのように作っていくか?」と言うことなんですね。

松山氏: ゲームソフトのパッケージ内にテレビで放送してたアニメソフトを入れて、「もう1枚ディスクが入ってて豪華パックみたいになってますよ」といったゲームソフトも出ていますが、それはTVアニメ放送したものをお得感を出す為だけに入れているという非常に乱暴なものの考え方でしかないんです。「.hack//」がやったメディアミックス方式とは全く違うんですよ。

 ただ「.hack//」みたいなやり方をどこでもかしこでもできるかというと、非常にお金もかかりますし、体力も使いますから、そうそうできないというのはわかってはいるんですけどね。

 それと、貞本義行氏、伊藤和典氏、真下耕一氏といった豪華な制作陣が、どういう風に決まったんだろうと、不思議に思われると思います。たぶん多くのデベロッパーさんは、「そりゃウチだってやれるならやりたいよ。考えてるアイデアだっていっぱいあるし。でも、そんなのバンダイさんの力があってこそじゃない。そんなの無理ですよ」と思われると思いますけど、実は口説いたのは我々なんですよ。

 当然、バンダイさんの力もありましたよ。ありましたけども、最初は怒られましたからね。デザイナーはウチでやりたいと話をしたんですが、冷静に考えてみたんです。バンダイから初めて発売されるオリジナルタイトルで、「えっ、このグラフィックは誰?」とか「えっ、この絵は誰なの?」と言われ、「サイバーコネクトツーという会社のデザイナーが描いている」……それじゃダメなんですよ。「.hack//」としては意味がないんですよ。「えっ、あのクリエイターも参加しているほど力が入ったタイトルなの?」というのが必要だったんです。

 バンダイさんとも話をして、デザインはやってもいいけど、クリンナップはやっぱりほかでやろうと。その代わり、好きなデザイナーをリクエストしていいからとなったんです。そこで我々の内部でも相談をして「.hack//」として成功させるため、そして我々がキャラクタを任せられる方って言うのであれば貞本義行氏がいいですとバンダイさんにお話ししたんです。すると「馬鹿言ってんじゃねー。貞本義行氏は、ゲームの仕事なんかやったことないだろう」と言われたんです。色々とごねたんですけど、「わかった。とりあえず言うだけ言ってみろ。ガイナックスさんのお偉いさんを紹介だけはするから、自分達で口説いてこい」と言われて……本当にそれだけですよ。我々が企画書とROMを持ってガイナックスさんに行って、その方にご挨拶をして貞本義行さんに初めてお会いして2時間プレゼンテーションさせていただいて、最後に「お断りします」と言われて我々は帰って来たんですよ。

Q: 逆に不可能と思われてたりとか、例えば1回断られても何度もアタックしていったというのは、それだけ「.hack//」にかける意気込みというか、覚悟があったと言うことですね。

松山氏: 貞本義行さんによれば、「バンダイさんからゲームの話しが来ると聞いて、悪いけど最初から断るつもりでいた」らしいんです。理由が「ゲームの仕事をやったことがないし、よくわからないから」ということだったらしいんです。それで我々はプレゼンテーション資料を持ち帰って、1週間で書類を作り直して、再度持っていったんです。貞本さんにもわかる書類を作ったりしたんです。

 貞本さんにしてみれば、「なんなんだコイツら。言ったことを一週間で直すにしたってこれだけの物量とクオリティーのものを持ってくるなんて、並大抵の努力じゃ無理だ」と思ったそうなんです。それで、「サイバーコネクトツーが、こうやって不可能を可能に変えるだけのバイタリティーを持っている会社であれば、たとえ離れていても、僕がゲームのことをよくわからなくても、きっと彼等だったら一緒にやってくれそうな気がする」と、半年はかかりましたけど、思ってもらえたんですよ。

Q: そこまでの覚悟がないといけないと言うことですね。

松山氏: あと、もう1点お話ししたいなと思ってるのが、特許もそうなんですけど、ウチはバンダイさんとお仕事をしてますので、版権ビジネスの裏側もお話ししようかなと思ってます。

 みなさんが勘違いされがちなのがですね、版権物のソフトってそれほど成功している作品はないんです。オリジナルを作られている昔からのメーカーさんなどが、シミュレーションゲームやフライトシミュレーターだけでは売れないし、そろそろバンダイさんとかコナミさんとお付き合いして、簡単に版権の力で売上を立てよう……ぐらいの感覚を持っておられる方々って多いんです。「ウチもそろそろ版権やるしかないかなぁ~」とか言う方がいらっしゃるんですけが、儲からないですから、版権ビジネスって。下手すると版権と共に倒れてしまい、2度と版元さんやパブリッシャーさんとお仕事できないというリスクまで背負ってますから。

 逆にここまでの覚悟がないと成功しないということなんです。


Q: なるほど。このほかにも取り上げたい話題はございますか?

「NARUTO -ナルト- ナルティメットヒーロー2」より
 福岡の優位性ですね。ゲーム産業の中心は東京、その次は大阪というイメージじゃないですか? 北海道にはあそこがあって、岐阜にはあそこがあって、博多には……って、それくらいのレベルだと思うんですよ。レベルファイブさんの「ドラゴンクエスト」や、我々の「.hack//」などの実績があってこそ、ここ最近、福岡はちょっと元気かなと思うんですが。

 都会との違いで言えば、例えばサイバーコネクトツーでは、朝9時から夕方6時までが勤務時間で、泊まりこみは原則禁止なんです。まず福岡は、東京のような交通渋滞ですとか、朝の通勤ラッシュというのがないんですよ。で、スタッフがどこに住んでいるのかといいますと、ここから自転車で5分のところに住んでいるんですよ。これは、物価が非常に安いということなんです。水がうまくて、空気もうまくて、飯も美味い。物を作る上でクリエイターにとって一番必要なのは“環境”じゃないですか。

 昔に比べて、東京にいなければ情報が入らないから、東京にいなければ話にならないということがなくなってきてます。情報は、いまならどこでも入手できますし。よくいうんですけど、福岡ってそこそこ都会で、そこそこ田舎で、手に入らないものは正直ないんですよ。なんだって欲しいものは手に入りますし、時間的なタイムラグはもうないに等しいんですよ。

 ですから、メリットこそあれデメリットって非常に少ないんですよ。私ももともと博多の人間ですけど、子供の時からファミコンを「面白いなぁ」と思いながら遊んでいて、さて、「このゲームは誰が作っているんだろう」と考えた時にどこか遠くのほう……きっと東京なんだろうな、東京にいる一部の天才達が集まってこういうのを作っているんだろうなぁ……というイメージだったんですよ。

 今、福岡でゲームスクールの学生さん達とお話しをすると、今も変わらずそのイメージなんですよ、地方ってのは。ですから自分がゲームが好きで、アニメが好きで、漫画が好きで、こういう業界に入りたいけど、どうすればいいかわからないから、とりあえず東京へ行こう……そんな学生さんばかりなんですよ。

 で、蓋を開けてみると全然そんなことはなくって、場所はどこででもモノは作れますし、どちらかというと環境がいいに越したことはないんですよ。せっかく優秀なクリエイターの卵たちがいても、活躍できる場所が福岡にもあるのに、わけもわからず東京にみんな出ちゃうという現実があるんです。ですから、それを知ってもらうために我々は、イベントとかもやっていますし、博多でこうやってヒットできる作品を作り続けることによって、少しでも九州圏の人に知ってもらい、逆に関東、関西にいるクリエイターさんやクリエイターを目指している学生さん達にも福岡を目指して欲しいなと考えているんです。

ありがとうございました。

(C)Project .hack (C)BANDAI 2003

□CEDECのホームページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□受講申込みページ
http://cedec.cesa.or.jp/regist/
□サイバーコネクトツーのホームページ
http://www.cyberconnect2.jp/
□関連情報
【7月15日】サイバーコネクトツー、単独会社説明会を東京渋谷で9月25日に実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040715/cc2.htm

(2004年8月12日)

[Reported by 船津稔]


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