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ガマニアVice COO浅井 清氏特別インタビュー
SOEとの戦略提携と「EQ East」構想、「EQ」運営移管などについて聞く

8月6日収録

会場:ガマニア本社ビル

 7月23日にガマニア・デジタル・エンターテインメントから発表されたSony Online Entertainmentとの提携は、アジア全域のオンラインゲーム業界に大きな波紋を投げかけた。米国トップクラスのオンラインゲームデベロッパーであるSony Online Entertainmentと共に合弁会社を設立し、アジア市場へ本格的に進出するというのである。そして、その第一弾タイトルとして挙げられたのが、大幅なカルチャライズ要素を盛り込んだアジア限定仕様の「Everquest II」である「EQ East(仮題)」。今回はそのあたりの事情についてガマニアの日本子会社のVice COO浅井 清氏に話を聞いてみた。


■ 遊び手の反響がダイレクトに伝わる点に注目しオンラインゲーム業界へ

編集部 まず浅井氏のこれまでの経歴について教えてください

ガマニア浅井 ガマニアに入社したのは約2年半前です。当時は「エターナルカオス」を国内で運営しようとしており、同タイトルを総括するプロジェクトマネージャーとして入社しました。その後は「巨商伝」についても同様の業務を行ない、現在は日本支社のVice COOとして会社の運営面を中心に携わっています。

 ガマニアに入社する前は、主に'93年~2000年までSNKに在籍していました。外部企業とのディレクションや、アーケードゲームのロケテストで得た情報を開発側へフィードバックするなど、プランニング関連の幅広い業務を行なっていました。

 あの頃のSNKは、格闘ゲームに力を注いでいましたね。どのような考えがあって、オンラインゲーム業界へと転身したのでしょうか?

浅井 遊び手であるユーザーとの繋がりに興味があったからです。例えばコンソール向けタイトルは、パッケージが発売される頃には、既に次のタイトルの開発に着手しており、ユーザーとの接点が希薄なイメージがありました。ちょうどその頃に、ユーザーの反響がダイレクトに伝わるインターネット関連のビジネスを知り、これはと思いました。最終的に、オンラインゲームであれば自分の経験を生かせると考えたのが、弊社を選んだ理由です

 実際にオンラインゲームに携わるようになり、どのような印象を持ちましたか?

浅井 台湾本社等の状況と見比べると、特に日本のユーザーは、クオリティに関しての要求が非常に高い。これは恐らく、ユーザーがコンソールゲームに慣れて目が肥えているからでしょう。しかし、サービスを行なうと良い点悪い点を含めた反響が即座に返ってくるというのは、それだけでもやはり大きな手応えとやりがいを感じられますね。


■ SOEのゲームエンジンを使ったオリジナルタイトルを合弁会社で開発

意外なところから日本展開の可能性が出てきた「Star Wars Galaxies」。その道のりは長く険しそうだが、今後の展開には要注目だ
 本題へと移ります。7月23日に発表された、アジア地域においてSony Online Entertainment(以下、SOE)と業務提携を行なうというニュースは衝撃的でした。まず、合弁会社を設立するまでの経緯について教えてください

浅井 弊社はアジア全域をカバーするマーケティングのノウハウを持っていますが、現時点の業務としてはパブリッシャーとしての割合が大きく、魅力のあるコンテンツを渇望しています。一方、北米のデベロッパであるSOEは、アジア地域へ本格的に進出するための足がかりが欲しかった。そこでお互いの利害が一致したため、合弁会社を設立したという流れです。

 具体的なタイトルとしては、「Everquest II」(以下、EQ2)を、日本を除くアジア市場向けに大幅にカスタマイズした「EQ East(仮題)」を合弁会社にて開発します。これは、弊社がSOEからライセンスを購入して販売といったレベルではなく、合弁会社にて新作のタイトルを作るくらいの意気込みです。

 「EQ East」については後ほど詳しく聞かせてください。先日の発表で具体的に名前の挙がったタイトルは、「EQ East」のみでした。それ以外のSOEの他のタイトルに関してはどうなのでしょう。率直に言うと「Star Wars Galaxies」(以下、SWG)のローカライズは行ないますか?

浅井 アジア市場で受け入れられそうなSOEタイトルのローカライズは前向きに考えていますが、現時点ではまだ具体的には決まっていません。SWGに関しては、私個人としては非常に興味を持っていますが、会社のビジネスとして考えると別の話になります。SWGクラスのビッグタイトルともなると、現在の弊社でユーザーが納得できるだけのコンテンツとサービスを提供できるのかどうかという不安もあります。

 またSWGに関しては、Lucas Artsとの絡みもあって、日本では弊社以外のメーカーが展開する可能性も十分にありますので、現時点では何とも言えないというのが正直なところです。

 7月23日の発表の中で、「技術提携」という言葉が気になりました。これは例えば、御社がEQ2のゲームエンジンを用いて3D MMORPGを開発するといった展開もあるのでしょうか?

浅井 はい。可能性は十分にあると思います。技術提携によるアドバンテージは、実はもっとも期待している部分です。アジア圏においては弊社のラインナップとして既に「Lineage 2」や、今後はEQ2といった強力なタイトルが控えています。そういった状況の中、弊社がデベロッパとして新規参入となると、中途半端なタイトルを作るわけにはいかない。SOEと技術提携することによって、アジアでのトップシェアを狙えるタイトルを現在制作中です。既にAlbert Liu(ガマニアCEO)自身が指揮を執り、新作タイトルの開発に着手しています。

 新作タイトルの内容については、「アジアンテイスト+欧米ファンタジー要素の融合」がキーワードになると思います。現時点ではあまり詳しくはお伝えできないのですが、台湾本社としては中華圏だけでなく、日本市場も強く意識しています。言い換えると、もし日本と台湾のユーザーに受け入れられるのであれば、アジア全域でも同様の結果を出せると判断しています。

 ガマニアは現状パブリッシャーとしてのイメージが強いですが、デベロッパ的な観点から見ると、SOEとの技術提携は非常に大きな力となりそうです。それだけに、日本市場の運営権をスクウェア・エニックスに取られてしまったのは日本法人としてはつらいところではないのですか?

浅井 正直な所、EQ2の運営ライセンス権は弊社にとって安い買い物ではありません。小所帯の日本法人として、EQ2がそれに見合うだけのビジネスとして成立するかどうか、またEQと同時並行してサービスを展開できるだけの余力があるかどうかといった理由から、あまり積極的にはなれませんでした。

 スクウェア・エニックスさんなら体力的にも運営ノウハウ的にも十分ですから、スクウェア・エニックスさんがしっかりとしたサービスを展開してくれることは我々ガマニアグループとしてはむしろ歓迎しています。それより日本法人としては、EQ2の1タイトルに留まらない長期的な技術提携によるメリットを重視しています。

 「EQ East」が日本において展開されない以上、今回の発表は日本支社側としてはしばらく静観といった状態です。SOEとの合弁会社設立の影響が日本市場に波及してくるのはまだしばらく先になるでしょう。


■ アジアンテイストを積極的に盛り込む独自仕様の「EQ East(仮題)」とは!?

 では、次に合弁会社が開発するEQ Eastについてです。発表では、文字の翻訳(ローカライズ)だけに留まらず、対象地域のユーザーの趣向に合うよう仕様変更も絡めた「カルチャライズ」ということですね。カルチャライズそのものについては、スクウェア・エニックスが展開を予定するEQ2日本語版も同様で、なるほどと思いました。

 ですが、「EQ East」のカルチャライズ範囲は「キャラクタモジュールの変更」、「NPCの台詞を吹替え」等にまで踏み込んでおり、日本語版EQ2とは大分違った印象を受けます。「EQ East」のカルチャライズ内容について、もう少し詳しく教えてください。

浅井 EQ2は北米産のタイトルであるため、弊社の得意とするアジアンテイストを盛り込むことで、より受け入れられやすくなると期待しています。キャラクタのテクスチャ変更やNPCの音声、他にもマップの追加等、手を入れられる所は全部変えてしまいたい位の気持ちですね。

 現在はどのレベルまでカルチャライズを行なうのかは、実はまだ完全には決まっておらず、企画中の段階です。ただ、もし合弁会社がキャラクタモジュール等の変更を行なおうと考えたとき、それを実現できる環境があることは確かです。

 そこまで独自要素を盛り込むということは、EQ East用のアカウントで北米版や日本語版のEQ2サーバーへログイン、またはその逆といったことは不可能なのですね?

浅井 はい。アカウントは「EQ East」のみで有効です。課金システムも、弊社の他コンテンツと同様GASHを用いることになります。繰り返しになりますが、日本では「EverQuest II」の運営権はスクウェア・エニックスさんが持っているので、我々日本法人が「EQ East」のサービスを展開するということはありません。

アジアンテイストとEQ2の世界観の両立は果たして可能なのかどうか。日本市場には直接影響は与えないが、「EQ East」のカルチャライズ範囲は非常に興味深い


■ 運営移管後の「エバークエスト日本語版」は新規ユーザー獲得に積極的に乗り出す

 では次に、9月1日よりSo-netから運営移管が行なわれる「エバークエスト日本語版」(以下、EQJ1)についてです。移管後のEQJ1における運営方針について教えて下さい。

浅井 EQはオリジナルの発売から5年が経過しているものの、ゲームとしての完成度はいまだ他MMORPGタイトルと肩を並べるほど高い。しかし、日本では敷居が高いという印象が強いためか、いまひとつユーザー数に結びついていない印象があります。EQのネームバリューは「ファイナルファンタジー XI」や「Lineage 2」と同程度でも、実際に触れている日本人の数はそれこそ1/10程度ではないでしょうか。そこで、EQの敷居を下げることによって、より多くの人達に遊んでもらいたいと思ったのが運営に踏み切ったきっかけです。

 EQの敷居を下げるための具体的な仕掛けとしてはどのようなアイデアがあるのでしょうか?

浅井 弊社としては、どんなに素晴らしいコンテンツでも、いきなり課金させることは無理があると考えています。具体的な仕掛けとしては2つ用意しています。1つ目は、拡張パック「ザ・シャドウ・オブ・ラクリン」までの全クライアントを、無料でダウンロードできるようにします。

 さらに新規アカウント作成時に10~14日程度の無料期間を設ける予定です。またそれとは別に、So-netからキャラクタデータを移行した人は、30日間の無料期間があります。つまり、9月中は無料サービス中のような雰囲気になるでしょう。この期間中に新規参入者を数多く引き入れる考えです。

 破格のアイデアですね。「ザ・シャドウ・オブ・ラクリン」までの拡張パックを総てとなると、CD数枚程度の容量をダウンロードすることになります。その辺りは問題ないのでしょうか?

浅井 新規で始めるプレーヤーにとって、総ての拡張パックをいきなり必要とはしません。また、エリアデータを大陸単位でファイル分割することも検討中です。例えば、「フェイドワー大陸」のエリアデータをダウンロードしていないプレーヤーは、ハイエルフ等のキャラクタを作ることはできません。ですが、他のプレーヤーが作ったハイエルフのキャラクタとは一緒にプレイできます。

 現在発売中の「トリロジー」(EQ本編と拡張パック「The Ruins of Kunark」、「The Scars of Velious」までを含む)より、細かい単位でダウンロードが可能ということですね。ちなみに、無料期間後の月額料金は決まっていますか?

浅井 現段階では税込で月額1,500円、クレジットカードの場合は1,350円を予定しています。So-netさんの価格(1,600/1,554円)よりも勉強させて頂きました。

 完全無料期間を設けた場合、9月1日の運営移管直後は一気に人が集まる可能性があります。EQの1サーバー当たりの最大同時接続者数は5,000人前後と聞いていますが、サーバーの設置数はどれくらいで考えていますか?

浅井 とりあえずスタート時では、So-netさんの現サービスと同様の2基を予定しています。しばらくの間は米国SOE側にサーバーを設置し、反響が強かった場合は、直ちに増設作業を行なえるよう万全の体制を整えます。その後に折を見て、弊社サーバーにデータを移し替える段取りです。このデータ差し替えの作業はシームレスに行なわれるため、ユーザー側が特に意識する事はないでしょう。できれば、サーバーがパンクする位に人が来て欲しいですね(笑)。

 SOEとの関係は先述した合弁会社だけでなく、弊社のグループ全体が技術的なバックアップを密に受けられる体制を築いています。今回のEQJについても、新たにSOEと共同運営という方がイメージとしては近いでしょう。

 今後の拡張パックの導入スケジュールは、どのようになっていますか?

浅井 弊社へ移管後の最初の拡張パックとなる「Gates of Discord」は、まずユービーアイさんがパッケージ販売を行なう予定です。ローカライズの作業も既に進行中です。リリース時期については10月から11月中を予定していますが、もしかすると販売スケジュールによって変わる可能性があります。

 GoD以降の拡張パックは、ガマニアのほうでローカライズ作業を進める方向で検討中です。またGoDを含む、「ザ・プレインズ・オブ・パワー」以降の拡張パックについても、将来的にダウンロード販売やフリーダウンロードに移行する可能性もあります。当面はパッケージに無料接続チケット等の特典を設けることによって、SOLまでのフリーダウンロードと両立さえていきたいと考えております。

 また、拡張パックとは別になりますが、DirectX 9.0に対応した新しいゲームエンジンを、10月中の導入を目標に準備を進めています。このアップデートではチュートリアル機能も一緒に導入されるのですが、日本での運営開始のタイミングでは間に合わないのが残念です。

 ローカライズの品質面に関して、特に注意している点はありますか?

浅井 たとえばNPCとの会話によって発生するクエストは、キーワードが変わると受けられなくなってしまう。この辺りの、既存EQJのローカライズ用データベースは総てSo-netから引き継ぎます。基本的には現行のEQJと同じテイストでローカライズを行なっていくつもりです。

 それを聞いて安心するEQプレーヤーは多いでしょう。それともうひとつ、「EQ East」のような大規模なカルチャライズ作業を、EQに対して行なう可能性はありますか?

浅井 今あるEQを変化させることは重要視していません。EQに関しては、ゲーム内容は極力手を加えずに、GMやWebでのサポート面で弊社ならではの要素を盛り込んでいきたいと考えてます。現行のEQJのプレーヤーが、移管後に違和感を感じることのないよう、細心の注意を払っています。

 その他に、EQJ1に関する意気込みがあれば教えてください

浅井 世間の眼がEQ2に向かっているのは否めません。しかし、だからといってEQの需要が完全に無くなるとは思えないのです。実在する例として、台湾では「Lineage 2」が軌道に乗った現在においても、「Lineage」はそれなりに支持され続けています。今でもEQのオンラインゲームとしてのクオリティは1級であり、これを1人でも多くの人にプレイしてもらいたいと考えております。EQ2とEQの両立を念頭に置きつつ運営を行なっていきますので、今後も注目して下さい

 今日はありがとうございました。

運営移管後のEQ日本語版が無料期間内にどれだけの新規ユーザーを獲得できるか、これから大いに注目していきたい


「Star Wars Galaxies」
Star Wars Galaxies and An Empire Divided are registered trademarks of Lucasfilm Entertainment Company Ltd. c 2003, 2004 Lucasfilm Entertainment Company Ltd. or Lucasfilm Ltd. & R or TM as indicated. All rights reserved.
「EverQuest II」
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「EverQuest」
EverQuest is a registered trademark of Sony Computer Entertainment America Inc. in the United States and/or other countries. c 1999-2004 Sony Computer Entertainment America Inc. Uses Miles Sound System. c 1991-2000 by RAD Game Tools, Inc. Portions of this software are Copyright 1998-2001 Criterion Software Ltd. and its licensors. All Rights Reserved. All other trademarks or trade names are propert

□ガマニア・デジタル・エンターテインメントのホームページ
http://www.gamania.co.jp/

(2004年8月11日)

[Reported by 川崎政一郎]


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