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★ピックアップ アーケード★
ロケテスト開始から数カ月。「正式稼動はいつ?」とファンをやきもきさせていた「ワールドクラブ チャンピオンフットボール セリエA 2002-2003 Ver.2.0(WCCF 2002-2003 Ver.2)」が、6月17日から全国のアミューズメントセンターにて稼動を開始した。 世間的には「新レアカード」に高い関心が寄せられているが、筆者個人としては“AIの再調整”のほうが気になっていた。「WCCF 2001-2002」に比べると振幅の激しい調整が施された「WCCF 2002-2003」のあとだけに、新バージョンの方向性については、正直「不安」のほうが大きかったからだ。正式稼動から約2週間。自分なりにプレイしてみた結果、現段階における個人的見解としては、期待と不安、それぞれ50%ずつ的中したといった格好だ。 近郊のアミューズメントセンターを見て回ると、案の定“レアカード純度99.99%”という有様。それでも「……0.01%でも“安易に勝つことだけを考えず、前向きに遊ぼう、楽しもう”という人がいる以上、そういった人たちを、ほんのちょっぴりでもフォローできたらいいかなぁ」と考え、僭越ながら短期連載を再開させていただくこととなった。 ただし、そうはいっても商業媒体における連載。以前は編集という立場を利用して個人的趣味を全面に押し立てて記事を書いていたが、ライターとして活動する現在、客観的に考えると、やはり「強くなりたい。勝ちたい!」と願うマジョリティを完全に無視するのも、良くないんじゃないか。そう考えた筆者は、同じWCCFフリークであり、昔からのサッカーファンでもある「石井ぜんじ」氏に、改めて助力をお願いすることにした。 石井氏と筆者はWCCFに対する考え方が対極的で、WCCFをプレイしながら「絶対違うって! ありえねーって! 論理的に説明しろって!」と罵り合う……じゃなくて、色々とインスパイアしあう機会が多かった。両者とも頑固なオッサンにつきプレイスタイルに影響が出ることは微塵もなかったが、あくまでも“プレイ”に主題を置くという共通点があったため、罵り……ではなく日々ディスカッションは実に有益だった。 100人いれば100通りがWCCFスタイル。「いや、ほとんど一緒じゃん」と突っ込みたくなる人も多数おられるかと思うが、WCCFが「100%完璧な攻略法がないゲーム」を目指して作られている以上、連載も複数のスタイルを持つことが自然……とりあえず、そういうことにしておいていただきたい。 主な内容については、筆者が【SIDE-A(趣味)】、石井氏が【SIDE-B(ストロングスタイル)】という形で、それぞれ週代わりで記事を掲載することとした。ネタが重複しないよう話はつけてあるが、基本的な考え方や志向が大きく異なるため「両方の記事で言ってることが違う。何考えてんだオマエラ」というケースが、まぁないとも限らない(むしろ多いかもしれないし、違っているほうが健全ではなかろうか)。そんなとき、どちらを参考にするかは……読者個々の見識で判断していただければ幸いだ。 ※注 …… 本記事の内容は、あくまでも筆者自身がプレイして感じたことに基づいて記述しているものです。状況やカードなどさまざまな要因により、記事どおりにすべてが機能するわけではないことを、あらかじめお断りしておきます。
■ 「WCCF 2002-2003 Ver.2」の新要素
新レアカテゴリ「ATLE」は、かつてセリエAのチームに在籍した経験があり、現在は現役を引退している往年の名プレーヤーをカード化したもの。現在オフィシャルサイトなどで10人が公開されているが、残りの選手については順次その存在が明らかにされていくようだ。
背番号の変更は、コミュニケーションメニューで呼び出した選手に、1~99までの好きな背番号が与えられるというもの。選手ごとに好きな背番号が違い、結果によりモチベーションが変化する。いく通りか試してみたが、その選手が過去にインタビューなどで「○×番には特別な想いがある」とコメントしたなどの有名な逸話があれば、おおむね反映されているようだ。 ただし、ケースによっては「アレ!? 専門誌で『○番が好き』っていってたのに、モチベーションが下がった……」ということもあり、絶対にそうであるとは限らない。なお、「キライな番号だとモチベーションが下がったまま」ということはないため「この選手は、絶対にこの番号じゃないとヤダ!」という強い思い入れがある人は、その番号で起用するのが筋というものだろう。 チーム連携の確認は、前バージョンだと練習メニューでふたりを呼び出さないと確認できなかったものが「データ確認メニュー」から参照できるようになった、というもの。オフサイドリプレイは、実際のサッカー中継のようにオフサイドリプレイが見られるというもの。「デジタルで判定しているんだから、リプレイする必要はないんじゃないか」という気がするし、何よりもゲームのテンポが阻害されるため、個人的には微妙な変更点のひとつ。
「WCCF 2001-2002」の頃から「今のオフサイド、絶対ウソだよ。判定が狂ってる」という声がよくきかれたため、それに対する開発者側の反論なのかもしれないが、もしそうだとしたら、1プレイあたり10分弱のゲームにわざわざリプレイを実装しなくても、と思うのだが……。実際、「WCCF 2002-2003 Ver.2」の稼動直後に「今、絶対オフサイドだったのに無視された!」と叫んでいるプレーヤーを何人か見かけた。次のバージョンが出るとして、外しても特に問題ないのではないか? と個人的には感じている。
■ AIの再調整(その1) ~テクニックが底上げされた印象~
「WCCF 2002-2003 Ver.2」をプレイして最初に思ったのは「パワー万能ではなくなったが、その反動として選手のテクニック面が強調されるようになったかな」ということ。前バージョンのシステムは“パワー系の選手に有利”で、テクニックが武器の選手は立つ瀬が無いといった感があった。100%スポイルされているわけではなかったが、それ以上にパワー系の選手が攻守の両面で大活躍してしまうため、自然淘汰された格好。中盤に関しても、純粋なMFを起用するよりはパワーのあるDFを選んだほうが有利で、突き詰めていけばMFだけではなくFWでも非常に有効という酷い有様だった。 正式稼動から間もないため、検証できたケースが少なく断言するには至らないのだが、選手の“テクニック”というパラメータが、システム全体でみると底上げされているように強く感じられる。たとえば、以前ならパワーで弾き飛ばされてボールキープさえままならない優等生的な平均パラメータを持つMFが、「WCCF 2002-2003 Ver.2」ではキープ力が向上。好調時は、パワー20の選手に寄せられてもギリギリで耐えるケースさえ見受けられた。 ルイ・コスタやピルロなど、突出したテクニックを持つタイプの選手が、以前にも増してクリティカルなパスを出すようになったのも大きな変化のひとつだ。あまりにもフィジカル面が弱い選手は、さすがに寄せられると厳しいものがあるが、フィジカルを併せ持つ選手は強烈なキープ力とボールさばきで相手チームを翻弄する。ただし、パワー(フィジカル)とテクニック、同じ値としてどちらが有利に働くかといえば、「WCCF 2002-2003 Ver.2」においても、やはり“パワー”であるように感じられる。 漠然とした表現で申し訳ないのだが、全体の印象をまとめるならば「パワーが若干スポイルされたが、それ以上にテクニックが底上げされた。ただし、パワーを凌駕するほどではない」といった感じになるだろうか。選手の能力自体は、そのぶんインフレ傾向にあると考えられる。筆者の仮説に基づけば“インフレの恩恵”を最も受けたのは、恐らくパワーとテクニックを併せ持った選手たち。実際、能力値こそ高いものの、前作で「使いにくい」と(筆者的には到底受け入れられない、アンビリーバブルな)謗りを受けていた一部レアカード選手たちが、「WCCF 2002-2003 Ver.2」では汚名を返上する驚天動地のパフォーマンスを発揮していることからも、なんとなく推察がつく。 そして……さらに仮説に基づくならば、インフレの恩恵を受けられなかった(正しくは少ししか恩恵にあずかれなかった)のは、それほど能力値が高くないレギュラーカードの選手たちではないか、と考えられる。これは筆者が日々体感していることだが、前バージョンにも増して「超人パワー」で押し切られる、対処しようのない失点パターンが確実に増えている。
メリハリが強調された色彩感覚のなかで、淡い中間色的な立場の選手カードは、このまま消えていくしかないのだろうか……。 ■ AIの再調整(その2) ~“かしこくなった”選手たちの状況判断~
DFを例にあげるとすれば、ボールを自陣側に向かって追いかける場合はさすがに前バージョン同様のミスをするが、正面からきちんとケアできるボールに対しては、素早くタッチライン側にクリアするなど、安全第一で状況を判断するようにAIが変更されている。以前なら、目の前に相手FWがいるのにボールを持ってドリブルをはじめることさえ珍しくなかったが、クロスに対する反応なども良くなり、かなり信頼できるものになった。GKにしても、相手FWにボールをフィードする自殺行為が激減している。 攻撃面でも、選手たちの状況判断は適確さを増している。選手のタイプにもよるが、普通にプレイしていれば、ディフェンダーの背後を突くパスや動作が増えているのが確実に実感できるはず。また、タッチライン際などで近くに味方選手がいれば、戦術ボタンで強引に指示しなくともワンツーで相手を抜き去ったり、あるいはフリーのFWが相手DFの背後に突然飛び出すといった絶妙なコンビネーションを見せることもある。 戦術ボタンに対する選手たちのレスポンスが良くなったこともあり、前バージョンでは「3トップ安定」といわれていた攻撃も、2トップで十分崩すことが可能になった。これは、3トップで強引にフリーのFWを作らなくても、AIが有効なポジショニングを取るようになったことが大きい。前バージョンなら、いまひとつ芯のない動きをする選手たちに「コラ、そっちに行かなきゃダメだって!」という感じで戦術ボタンで指示を出していたものが、「WCCF 2002-2003 Ver.2」では「もうわかってるよね? そうそう。Good Job!」といった感じになる。 た・だ・し。 “かしこくなった”とはいえ、平均的な能力以下の選手カードでチームを編成する場合、監督たる「プレーヤー」自身が、きちんと“お膳立て”をしてあげる必要がある。引率者の指導が間違っていたら、フォーメーションも指示ボタンも何ら役に立ってはくれないのだ。能力値が高い選手カードやレアカードのように、賢くなったAIとの相乗効果で勝手にボールや点を取りまくってくれる「ボタンを押すだけが監督の役目」といったチームと異なり、その行く先は決して平坦な道のりではない。ましてや、自分なりの遊び方、チームのスタイル、アイデンティティみたいなものを模索するとなれば、連敗街道を突っ走るかもしれない。 さらに、た・だ・し。 あくまでも“サッカーゲーム”としてWCCFをプレイすることに楽しさを感じている、安易な方法でショボイ優越感を満たしてくれる対戦ツールとして遊んでいるわけじゃない、という人であれば……決して平坦ではないが、その先にある“ゴールではない到達点”は、確実に素晴らしいものになると、あえて断言したい。某ロックバンドの有名曲に出てくる歌詞ではないが「たった一度笑えるなら、何度でも泣いたっていいや」という心意気が理解できるなら、チャレンジする価値は十分にあるはずだ。そして、記事と自分自身の情報を照らし合わせて「自分だけの財宝」を見つけてくれたのなら、これ以上嬉しいことはない。
「たかがゲームひとつで、何を大げさな」と思う人もいそうだが、「たかがゲームひとつで、冒険すらできない」人が大半だという悲しい現実があるのも、また事実。次回の【SIDE-A】は、そんな冒険で道に迷った人たちの役に立つといいなぁ、というフォーメーションや、その考え方などをご紹介する予定だ。
(C)SEGA,2002,2004
□セガのホームページ (2004年7月2日) [Reported by 北村孝和]
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