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★PS2ゲームレビュー★
サッカー育成シミュレーションゲームとしては、国内ナンバーワンの人気と知名度を誇るといっても過言ではないメジャータイトル、通称“サカつく”シリーズ最新作「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう! '04(サカつく'04)」が、ついに発売された。セガサターンで発売されたシリーズ初代作品「サカつく」が'96年に産声をあげて以来、約8年が経過したことになるが、根強い人気に支えられ、プラットフォームの変遷とともに堅実に進化を遂げながら現在に至っている。 「サカつく'04」は、前作「サカつく'03」に比べると極端に変化した部分は少ないが、ロード時間やインターフェイスなど、前作で感じられた不満点が解消されているのが特徴。届いたメールがR1ボタンで即確認できたり、各種施設への移動アイコンがメインメニューに表示されるようになったりと、さまざまな改良が施されている。登場選手は、シリーズ最多の1万人以上。外国籍選手は、イタリア、イングランド、オランダ、スペイン、ドイツ、フランスのほか、新たにブラジル、ポルトガルの各リーグに所属するトップクラスの選手が実名で登場する。Jリーグは、J1、J2のほか、往年の名選手約30人が、これまた実名で登場する。 システム面では、個々の選手に“ストライカー”、“ポストプレイ”、“ボランチ”などのさまざまなスタイルが設定できる「プレイスタイル取得システム」が導入された。スタイルは最初から持っている選手もいるが、もし持っていなくても、一定の条件を満たすことで“監督”から継承することが可能。複数のスタイルを取得している選手は、試合ごとにプレイスタイルを切り替えられる。作戦や戦術が細かく指定できるようになり、前作以上に采配の幅が広がっている。練習メニューも、個別、全体といった指示や使い分けが明瞭になり、メニューの使い勝手が向上している点も見逃せない。 試合中のゲーム画面は、ゴールやポイントとなるシーンだけを抜粋したダイジェスト形式で展開。ゲームプランなどの指示は、条件や時間の経過ごとにプレーヤーがこと細かに設定することも可能。前後半を通して監督に一任する「監督におまかせ」という新機能も追加されている。
こうした新機能の追加、プレイアビリティの向上、多様化、パラメータの充実は“シミュレーションゲーム(SLG)”としては歓迎すべき要素だが、SLG初心者などの不慣れな人にすれば「うわ、なんだか難しそうだなぁ。ブ厚いマニュアルなんて読む気がしないし……」と尻込みしてしまうかもしれない。だが、「サカつく」は、ちょっとした“コツ”さえつかんでしまえば、それほど難しいゲームではない。メニューやコマンドでわからないことがあっても“セレクトボタン”を押せばヘルプが表示されるなど、SLG初心者にも十分配慮されている。 ましてや、このゲームをプレイする人はほぼ例外なく“サッカーが好き”なわけで、その気持ちがあれば、たとえSLGが苦手でも問題なく楽しめる内容に仕上がっている。まずは、ゲームの基本的な流れから説明していこう。
■ クラブのすべてをコントロールする“クラブ代表”としてプレイ
サポート役の秘書、代表(プレーヤー)の名前、ホームタウン、クラブ名、ユニフォーム、ロゴ、エンブレム、チームフラッグ、監督、コーチ、スカウトを決定したら、まずは国内最上位リーグである“Jリーグ ディビジョン1(J1)”への昇格を目指すのが、ゲーム内における第一目標。
チームの運営は、練習メニューと内容、キャンプ、試合中の作戦や戦術、選手の起用やスタッフの獲得、スポンサード、グッズ販売にいたるまで、ほぼすべての要素がプレーヤーの裁量に任されているといっていい。一応“監督”は存在するものの、フォーメーションからスターティングメンバーに至るまでプレーヤーが自由に決められることから、実質的には単なるお飾りに過ぎない。監督の指導力から“美味しいところだけを抽出”して、あとはクラブ代表が好き勝手に振舞えるという、実にドラスティックなクラブ運営が楽しめる。 ただし、いくら好き勝手にできるといっても、以下の条件に抵触するとゲームオーバーになる。
限られた予算を最大限有効に使う。口でいうだけなら、こんなに簡単なことはないのだが、プレーヤーはその難題を克服しなければならない。チーム立ち上げ当初にボーナスキャラ的な“補強選手”をひとりだけ加入させられるが、それ以外の初期選手といえば、思わず頭を抱えたくなる能力の持ち主ばかり。能力の高い即戦力をスカウトしようにも、高額な移籍金と年俸がネック。さりとて節制ばかり心がけても、2年目以降のゲームオーバー条件を考えたら悠長なことはいっていられない。 こうしたジレンマは育成SLGにおける楽しみのひとつでもあるのだが、不慣れな人が失敗ばかり繰り返していると、さすがに「こりゃダメだ」と挫けてしまうかもしれない。もし本記事に目を通していて「俺が今まさにそう! そういう状態なんだよ!!」という人がいたら、ぜひとも以下の方法を試してみてほしい。シリーズ伝統のクラブ補強手段だが、発想の転換ができる人なら、初プレイですぐに気づいた人も少なくないだろう。 ここで重要なのは、2年目以降を踏まえて“1年目”の成績を完全に捨ててしまうこと。最初にひとりだけ選べる補強選手は、現状のチームで一番足りていないポジションを獲得。1年目を捨てたとはいえ、勝てば勝利ボーナス(賞金)が手に入るため、穴はなるべく小さいほうがいいからだ。スカウトに対する指示は、新人探索のみ。他のクラブに所属している選手を獲得しようとすると高額な移籍金が発生するため、ここは狙いを新人1本に絞りたい。施設などの設備投資は、維持費がかさむため必要最低限にとどめる。とにかく1年目は“節約”を徹底的に心がけるのが基本。ただし、サポーターの獲得につながる投資イベント(表敬訪問、ボランティア活動など)は、最低限やっておいたほうがいい。 こうして溜め込んだ資金は、2年目の新人獲得に投資する。リストアップされた新人の多くは、立ち上げ当初のレギュラーよりも有能な選手ばかり。しかも彼らは新人なので、年俸が最低ランクの500万円スタート。クラブのランニングコストを踏まえながら、有能で将来性のある選手を優先して初期選手とリプレースしていくのがセオリーだ。
「苦楽を共にしてJ2に昇格した選手を、アッサリと放逐するなんて……この鬼畜! 人でなし! そんな非道な真似ができるかぁっ!!」と怒り心頭の人もいるかもしれないが、人情で勝てるくらいなら、誰も初期選手を解雇したりしない。ちょっと考えて欲しい。運営さえままならないクラブにコストや能力面でつりあいが取れない選手をしばりつけるのは、選手、クラブの双方にとって不幸な関係といえなくはないだろうか? 最強クラブを目指すかどうかはさておき、仮にも“プロ”を名乗るなら、最低限の戦力は備えておくべき。プレイするうち特定の選手に気持ちが入ってしまうケースも少なくないが、状況を冷静に判断して、きたるべき時がきたら“英断を下す”決断力こそ、クラブ代表に必要とされる資質。まぁ、ぶっちゃけてしまうと「初期選手は能力が低いから、2年目以降の飛躍を踏まえて有能な新人と取り替えちゃいましょうね♪」というだけの話なのだが……。
なお、期待の新機能「期限付移籍」だが、筆者はあまり必要性を感じなかった。移籍金不要というメリットは大きいが、選手間の連携による効果が前作よりも顕著に感じられるだけに、たとえ有能な選手でも“1年でサヨウナラ”では、ちょっと使いにくいなぁというのが本音。チームにフィットしたら、そのまま完全移籍……というシステムやイベントがあれば話は別だが、今のところそういうイベントは発生していない。刹那的に使う機能ならば、それ相応に“もっと気軽に”利用できないものか。次回作があるとすれば、ぜひとも改善していただきたいポイントのひとつだ。
■ 耐え難きを耐え、忍び難きを忍び……そしてクラブは花開く
こうして戦力を整えたら、本格的な練習メニューを組み立てていく。年2回のキャンプ地は、資金が乏しいうちは無理をせず「国内キャンプ」を選択すべき。「海外キャンプ」や「留学」は、勝ち星が増えて資金に余裕が出てきてからでも遅くはない。なお、海外キャンプ地や留学先は、選んだスポンサーや獲得した外国籍選手、本拠地のレベル、海外遠征などの諸条件を満たすことで少しずつ増えていく。キャンプ地ごとに効果が異なるので、効果についてはこまめにメモしておくといい。 さて。ここから、ゲームを進めていくうえで「サカつく」初心者が陥りがちな“もうひとつの罠”が待ち構えている。それは、練習や試合における“疲労の蓄積が前作以上に激しくなっている”点だ。前作も選手の体調維持には苦労させられたが、「サカつく'04」の場合、ゲーム序盤で特に顕著になっているように思われる。「休養設定」メニュー内に「自動休養設定」という項目があるが、ロクな設備がない序盤は、これをONにして「疲れたらすぐ休む」を選択しても、選手がすぐ疲労状態に陥ってしまう。
体調の維持にあたっては「無理な練習スケジュールを組まないこと」が第一だが、戦力を強化するなら、ある程度まで負荷をかける必要がある。だが、ここでスパルタなメニューを組んでしまうと、半月も経たずに選手の大半が「中度~重度の疲労」になってしまう。疲労すると練習の効率が悪くなり、試合中のパフォーマンスも低下。当然、捻挫、打撲、肉離れ、骨折などの怪我も増えてくる。さらに悪いことに、軽い疲労ならともかく、中度~重度の疲労ともなれば“単に休んだだけではなかなか抜けてくれない”のだ。
スタメンならばこそ厳しい練習で能力をビシビシUPさせたいところだが、試合の合間にそんなメニューを組んだら、勝てる試合も勝てなくなる。疲労回復の効果を高めるべくクラブハウスに「サウナ」を設置するのもいいが、J1昇格を目指す時期に1億円(レベル1の場合)の捻出は、かなり厳しい。月額161万円の維持費も、年間で計算すると実に微妙な金額だ。こんなときは、多少面倒でもフィジカルコーチのコーチ練習メニュー「レクリエーション」や「重疲労の回復」をこまめに活用したい。フィジカルコーチは最大3人まで同時に練習メニューを与えられるので、1週間ごとに選手の状態をチェックしてローテーションで回復させれば、少なくとも重度の疲労に陥ることはなくなる。 ここで「えー、それイチイチやるワケー? 超めんどうなんだけどー?」などといっているようでは、弱小クラブを一流クラブに押し上げることは不可能。そんな怠慢な言動は、一流クラブとなって御殿と見紛うばかりの超豪華クラブハウスを建てて、はじめて許されるというものだ。
「サカつく」シリーズは、地道な経営と練習を積み重ねていけば、かならずクラブを大成させられるゲームだ。多少の浮き沈みは体験するものの、それでも超常現象的な不運の連続にでも見舞われない限りは、自分が理想とするクラブ作りに着手できるようになる。選手の世代交代でつまづく人がいるかもしれないが、それも新機能の「選手検索機能」で必要な選手をリストアップしたり、新人やユースであらかじめバックアッパーを確保しておけば、特定のポジションに穴があくということはなくなるはずだ。
■ ファンなら即買い。初体験でも最新版「サカつく'04」をチョイスすべき
だが、時代の流れとともにJリーグやサッカーをとりまく環境は常に変化しており、よほどの懐古主義者でもない限りは“時代の空気”を取り入れた最新作を遊ぶのが、一番楽しい遊び方だと思う。 シリーズをやりこんだ人はもちろん、初心者への配慮も抜かりが無い本作は、サッカーゲームファンにとって長く遊べる“愛すべき”1本といえる。サッカー育成SLGはセガの専売特許というわけではなく、近年では他メーカーからもいくつかタイトルがリリースされているが、そこは老舗の味わいというか、やはり「“サカつく”ならでは」という練りこまれた独特のテイストがゲーム中のあちこちに散りばめられ、そして息づいている。
他のゲームにそれぞれいいところがあるように、「サカつく」には「“サカつく”にしかない」プレイ感覚が存在する。サッカーファンなら、誰しも理想とするクラブやチームの形があるはずで、その妄想や願望をさまざまな形で満たしてくれるのが「サカつく」シリーズなのだ。万が一サッカーゲームファンで未体験の人がいるならば、この機会にぜひとも1度チェックしていただきたい。そのときは、もちろん“最新のサッカー事情を詰め込んだ”シリーズ最新作を手に取ることを、お忘れなく。 Original Game(C)SEGA (C)Smilebit/SEGA,2004
□セガのホームページ (2004年7月2日) [Reported by 豊臣和孝]
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