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リチャード・ギャリオット氏が創造する
独自の哲学と歴史、文字を持った新世界
「Tabula Rasa」プレビュー&インタビュー

会期:5月12日~14日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

  「ウルティマ オンライン(以下、UO)」を生み、MMORPGを“創造した”リチャード・ギャリオット氏が、新たなゲーム「Tabula Rasa」を制作している。3年前に明らかにされたこの情報は、それからはほとんど、数点のスクリーンショットとギャリオット氏の話以外、まったく情報がなかった。

 「より革新的なゲームを作りたい」、「ソロプレイとマルチプレイの利点を融合して作るようにデザインをしたい」、「プレーヤーごとの家がある」等々、ギャリオット氏はさまざまな言葉で「Tabula Rasa」の将来像を語ったが、具体的なものはほとんど見えてこない。彼がこだわる、独自の歴史や哲学をもった「世界観」とは何なのか、それはずっと霧の中であった。今回、ギャリオット氏が語ったように、この3年間は「沈黙」の期間と言っていい。

 2004年のE3、このイベントではじめてプレイアブルな形で「Tabula Rasa」が人々の前にあらわれた。独自の世界観をもった、SFとファンタジーが融合したような世界観。ボイスチャットや仲間の召還機能など、プレイをしていく上での“ストレスとの向き合い方”など、ギャリオット氏がインタビューで応えていたポイントに対して、具体的な回答がついに見え始めてきたのである。

 今回は制作者の解説付きのデモプレイに続き、ギャリオット氏のインタビューをお聞きすることができた。3年という“沈黙”の中から、どんなゲームが生まれてきたかをお伝えしたい。



■「新しいMMORPGを!」デモプレイから見える革新性


 まず、キャラクタが自身の「家」を訪れるところからデモプレイは始まった。空中に浮かぶ巨大な岩の上に立てられた幻想的な建物。この中には机やイス、ベッドなどさまざまな物が並んでいて、ブラインドまでおろすことができる。UOでの住居を思わせる、きちんと「生活感」を持たせることができそうな空間だ。

 部屋はすべてのプレーヤーが持つことができ、NPCのベンダーや、他のプレーヤーから購入したもので、さまざまなデザインが可能だという。

 家から出て、冒険の場所へと進むキャラクタ。本作が目指しているゲームデザインは、「誰でも初めてから30分で冒険に出発できる」ということだという。プレーヤーがキャラクタを作り、最初に決めるのは名前と性別だけ、どんなキャラクタに育て上げるのかは、プレーヤーが模索していくことになりそうだ。種族や職業など、プレイの前に知識を必要とする要素は、排除しているとのことだ。キャラクタの個性化は、プレイスタイルで行なわれる、初期のUOのようなキャラクタの育成法になるのだろうか?

 キャラクタは「転送装置(ウェイポイント)」を通じて他の場所に。各世界はこのポイントを通じてつながっており、家などのプライベートポイントから、他のプレーヤーが闊歩するソーシャルポイントへ、さらには冒険の舞台へと転移していくこととなる。

 転送装置を使わなくても、移動は可能だ。フレンドリストに他のキャラクタを登録しておけば、それを呼び出すだけで、いつでも合流できる。友人のところに飛ぶことも、反対に友人を招き寄せることも可能だ。仲間との合流に時間がかかる、というMMORPGに見られる問題点を、こういった方法で解決しようという試みだ。

 仲間とパーティーを組むと自動的に使えるようになるボイスチャットシステム。これは、両手を戦闘への操作に集中させるためだそうだ。デモプレーヤーはいよいよ仲間と冒険の舞台に。

 激しく戦うパーティー。画面の右側にあるゲージはスペシャルアタックを行なうためのもので、左はロックしたターゲットと自分の強さをゲージで表示。ボイスチャットのシステムも、アクション性の高い戦いを実現させるためとのこと。攻撃はただ対象をクリックするだけよりも、手持ちの武器を切り替えたり、スキルを組み合わせたりすることで、さらに効率よく戦うことができる。

 通常の視点の他に、アクティブカメラという視点も用意されている。これはかなり引いた視点でパーティーを俯瞰的に見る機能で、パーティーメンバーが知らずに散ってしまった場合、再結集を容易にするための仕掛けだ。

 ゲームにはさまざまなミッションがあり、これをこなすことでゲームを進めていく。ミッションには仲間達だけでプライベートでこなしていくもの、ソロ専用のもの、さらにオープンフィールドのものがあるという。PVPのエリアも作っていく予定もあるとのこと。アクション性を多分に持たせた作品だけに、対人戦もテクニカルになりそうだ。ミッションは難易度もまた多彩で、数時間かかるものから、デモプレイにぴったりな、数十分で終わるものもある。

 スタッフは今回の公開で、ユーザーから「今までのMMORPGと少し違ったゲームのようだ」という感想を多くよせられ、うれしかったという。紹介する姿からも、新しいものを生み出しつつあるという自負が伺えた。

【デモプレイの模様】
巨石の上に立てられた、優美なラインを持った家。スタート地点から独自の世界が展開する 細かく作り込まれた家の中。友人を招いたりもできるのだろうか? オブジェクトひとつひとつに、異世界への深い考察が感じられる
あっという間に集合するパーティ。さまざまなストレスを解消するために考えられたシステムだ 独特のポーズを取り、激しい攻撃を行なうキャラクタ。アメコミのヒーローや、中国拳法の演舞など、さまざまな要素が感じられるシーンである。どこか「優美さ」も感じられるのが魅力的だ



■世界展開を視野に入れた開発姿勢と、普遍性を持った世界観の創造
すべての世界から等間隔の距離を持った「Tabula Rasa」という異世界


リチャード・ギャリオット氏。昨年の皮鎧を思わせる装飾的な衣装ではなく、NC Softのスタッフのユニフォームで登場
編:最初に、E3出展までの本作の経緯を教えてください。

ギャリオット氏:「Tabula Rasa」はここ3年、あえて沈黙を守ってきた。ユーザーに具体的なものを見せられるようになるまでは、公開をしないということを決めていたんだ。E3はその沈黙を破る、良い機会となった。現在のバージョンはまだ開発中のもので、正式サービスにはあと6~9カ月かかると考えている。

 ゲームの“機能”は現在ですべて実装されているが、ミッションなどをもっともっとユーザーが楽しんでもらえるようになるために、バランスなどを考えて開発している。

 一般的なMMORPGと違い、シングルプレイにも重点を置いている。どちらも楽しめるようにしていくつもりだ。「Tabula Rasa」はシングルプレイと、マルチプレイの両方の最高の楽しさを融合させることを目指して制作している。

編:シングルプレイの楽しさも追求なさるということですが、ボイスチャットをはじめとした、パーティーの協力プレイをバックアップしてくれる機能が充実していますね。ここにはどういった意図をお持ちなのでしょうか。

ギャリオット氏:ボイスチャットは、「自然な」コミュニティーシステムだ。戦闘時、キャラクタを操作しながら意志の疎通を図るには、このシステムが適していると考えている。従来のMMORPGでは、逆にチャットをさせるために、オートアタック機能を使わせたりして、戦闘の機能を簡略化してしまう場合もあった。私たちが目指す戦闘、そしてコミュニケーションは、そこから対局に位置すると考えている。

 「Tabula Rasa」はアクティブな戦闘を要求している。コミュニケーションをしながら、両手は戦闘に集中してほしい。ボイスチャットは、そのために採用した手法だ。パーティーに関してのさまざまな機能なども、より楽しく戦闘や、冒険を体験してもらいたいと考えて設計している。

編:ゲームの内でオンラインイベントなどは企画されていますか?

ギャリオット氏:もちろん。本作はプライベートエリアでも、多くのプレーヤーが集まるソーシャルエリアでも、さまざまなイベントを企画していこうと思っている。

編:日本ではいつ頃からプレイできるでしょうか?

ギャリオット氏:UOが示してくれたように、私たちにとって、日本はアメリカと同じように魅力のあるマーケットだ。言語の問題を巧くクリアできれば、ほぼ同時に展開することすら可能だろう。市場調査の関係もあって、韓国向けにコンバートするのは少し難しそうだが、日本に向けては問題がない。韓国よりは早くサービスを実施したいね。

 翻訳作業などは、米国でのサービス前に実施する計画で進行している。ほぼ完成が見込めるようになったら、そこから翻訳を進めていきたい。今冬には作業を始めたい。本作は、翻訳という作業を常に視野に入れて制作している。コンバートにはそれほど時間はかからないだろう。

来場者に配られていた素材集。周囲の文字は、「Tabula Rasa」の世界の中の文字である
編:UOをプレイしていたユーザーに対して、ギャリオット氏が本作をアピールするポイントはどこでしょうか?

ギャリオット氏:「Tabula Rasa」はロード・ブリティッシュである私が、充分な時間と、想いを込めて作っていった作品であり、仮想世界だ。この世界には独自の歴史や、文化、哲学が息づいている。

 例えば、これは会場で配布していた素材集だが、このサークルの周囲に書かれている文字を見てほしい。これは、米国人も、日本人も、韓国人も、この文字を使えばすべて意味が分かるように考案された文字なんだ。例えば(砂時計をかたどった文字を差し)これは、「時間」。そして(線の下に□がある文字)下には何かあるぞ、という意味。漢字のような、表意文字だね。ゲーム内ではこの文字を使うことで、言語の壁を越えてコミュニケーションをとることができるだろう。

 こういった世界観を体験していく感覚は、他のMMORPGプレーヤーにも楽しんでもらえる要素だと思っているよ。

編:最後に、本作にはロードブリティッシュは登場しますか?

ギャリオット氏:それはまだ決めかねているね。今まで私は、ロードブリティッシュの衣装、言動などを設定してきたが、それとは別の姿で登場するかもしれないし、ゲーム内のキャラクタとして登場しないかもしれない。

編:ありがとうございました。

【スクリーンショット】
   
   
モンスターやキャラクタの衣装、建物のラインにまで、独特のセンスがうかがえる

□NC Softのホームページ
http://www.ncsoft.net/

(2004年5月13日)

[Reported by 勝田哲也]


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