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Electronic Entertainment Expo 2004現地レポート「Tom Clancy's Splinter Cell 3」プレビュー |
会場:Los Angeles Convention Center
いきなり余談だが、E3ではここ数年、録画したリアルタイム映像を流しながら、解説を交えつつ見せていく、いわゆるシアター形式のデモンストレーションが増えてきている。特に昨年、数時間待ちの人気となった「Half-Life 2」シアターの公開により、この手法が一気に普及化した印象がある。
シアター形式のデモは、プレスか否かに関わらず、長時間待たされるのが玉に瑕だが、クリエイターが伝えたいメッセージを最適な形で確認することができるため、メーカー、メディア双方にとってメリットが大きく、今後もシアター形式のデモは増えていくものと見られる。
さて、今回、Ubisoftブースで、シアター形式で見せていたのが「Tom Clancy's Splinter Cell 3」だ。第1弾でいきなりスニークアクション界の頂点を奪取し、その続編「Pandora Tomorrow」では、ステルスアクションの醍醐味を活かしたマルチプレイを実現。そしてシリーズ第3弾「Splinter Cell 3」で、新世代のゲームエンジンを搭載し、他のスニークアクションを完全に引き離しに掛かる算段だ。
この記事を書くためにシアターを2回チェックし、同作プロデューサー マシュー・フローラン氏へのインタビューも行なった。シアターの撮影は厳禁ということだったが、同社の厚意によりスチル撮影のみ許可された。今回、掲載する素材は、この直取りショットのみということになるが、本文で出来るだけ内容の捕捉に務めたので、参考程度に参照頂ければ幸いである。それではさっそくその脅威のゲームプレイをたっぷり紹介していきたい。
■ シェーダー2.0対応の「Splinter Cell 3」エンジンを搭載
「Splinter Cell 3」シアター。Ubisoftでもっとも人を集めていたコーナーだ |
今回取材に応じていただいた「Splinter Cell 3」プロデューサー マシュー・フローラン氏 |
物語は北朝鮮の脅威に憤る日本の北海道で、暗躍を開始したテロリストが当面のターゲットとなる。北朝鮮政府そのものがターゲットではないところがポイントで、サム・フィッシャーは、日本、南北コリアを皮切りに、パナマ、ペルー、ニューヨークなどで転戦を続けていく。今回の首謀者は一体誰なのか。今回もテクノスリラー作家Tom Clancy直伝のハイテクを駆使したサスペンスストーリーが展開されていく模様だ。
開発元は初代「Splinter Cell」を手がけたUbisoft Montreal。Ubisoft Shanghaiで続編「Pandora Tomorrow」が開発されているさなかに、「Splinter Cell」開発終了直後から開発を進めていたという。ゲームエンジンは、「Unreal」エンジンベースの「Splinter Cell」エンジンに独自拡張を施したものを採用。プログラマブルシェーダー2.0に完全対応し、場合によっては、今後3.0への対応も検討しているという。
発売プラットフォームはPCのみで、他プラットフォームに関してはまったくの未定だという。発売時期は2005年初頭ということで、予定通りに開発が進めば、2005年の2月か3月には発売されることになりそうだ。
■ ライティング&シャドウ表現が大幅強化、屈折効果を取り入れた環境バンプマップにも注目
スタート直後の外灯を消すシーン。メリハリの効いたライティング&シャドウ表現に注目 |
竿を伝うサム・フィッシャー。明かりの減衰シミュレーションが行なわれているところに注目 |
デモはまず外部からスタート。大きな岩が幾重も露出した岩陰から、まずは外灯を撃ち抜くサム・フィッシャー。闇の中を進んでいくが、すぐに異変を嗅ぎ付けた見張り兵が、たいまつであたりを照らしながら侵入者を探し始める。同シリーズお得意のリアルタイムライティング&シャドウ表現のパワーアップぶりを見せつけてくれる。暗がりで見えないと判断した見張り兵は、暗がりにたいまつを投げ込む。今回のAIは、光と闇を動的に判断するようになっている模様だ。
すんでの所で敵を回避したサム・フィッシャーは、暗がりの中でナイトビジョンを用いて建物の入り口の構造を確認し、障子を引き開けて内部へと侵入していく。中には見張りが1人いたが、素早く竿にぶら下がり、敵を回避。真下に来たところでロープで首を絞めて静かに殺害を完了する。部屋の奥の障子を開けてさらに奥へ。
そこにも見張りがいたが、すかさず背後から首を締めて殺害。すると、ふすまをすかして影が見えていた奥の部屋の兵士が、異変に気づいてこちらに向かって来ようとする。急いでロウソクの火を吹き消すサム・フィッシャー。兵士は明かりが消えたことを不審に思い、ロウソクに近づきライターで火を付けようとするが、そこをサム・フィッシャーが首に手を回して殺害する。ここにもAIの進化が見て取れる。
サム・フィッシャーは、さらに囲炉裏や灯籠の置かれた和室の奥へ進んでいく。そこには複数の武装したテロリストがいて、匍匐姿勢で侵入し、彼らの話をしばし盗み聞く。さらに奥に進むと、障子張りふすまに敵の影が映っている。こっそり敵の真後ろに近づき、ふすまをぶち抜いて敵を絞め殺す。彼のアクションはまた一段とクールさに磨きが掛かった印象だ。
その後、最終目的地までもうすぐというところで人質が殺害されてしまい、急遽作戦を強行突破に切り替える。ピストルを取り出し、敵を一掃していくサム・フィッシャー。敵もマシンガン等で応戦してくるが、グレネード等の兵器を駆使したサム・フィッシャーは敵の一掃に成功。ミッションは一応の成功を収める。と、ここまでが前半の映像となる。
ロウソクを吹き消して闇を作り出し、敵をおびき寄せて殺害する。最新グラフィックステクノロジーと進化したAIによる新しいゲーム性の提案だ |
手刀でふすまをぶち破り、首を絞める。技術的にはたいしたことはないが、見た目が非常にクール。このクールさは、同シリーズにおいて最重要項目といっていい |
ガラスの屈折を見事に再現した環境バンプマッピング表現は「3」で新しく取り入れられた新しいビジュアルエフェクトのひとつ |
初代「Splinter Cell」から取り入れられているクロスシミュレーションと、光源との距離に応じて影の輪郭を動的に変えるソフトシャドウ表現 |
■ 既存のテクノロジーをうまく使った、美麗ビジュアルエフェクトのオンパレード
Ubiのスタッフが掲げているのが投票機。デモにインタラクティブ要素を取り入れた珍しいケースだ |
ナイフアクションは、サム・フィッシャーが新しい殺傷テクを身につけたというわけではなくて、布や障子など柔らかい障害物をナイフで切り裂き、奥に進むことができるという新要素の紹介。ここにもクロスシミュレーションが活用されており、一見袋小路の状況でもこの新アクションを駆使することにより、奥に進めるといったこともあるそうだ。
「Room Clearing」は、ドアを挟んで奥の部屋にいる敵2人を一掃するための新アクションの紹介。サム・フィッシャーは、サーモセンサー、オプティカルモニタを駆使して、敵の位置を正確に把握。手前の敵はドアの側にいることから、奥の敵に銃口をあわせ、新アクション「Bash Door」を使用。ドアを勢いよく蹴開ける新アクションで、手前の敵を昏倒させ、あらかじめ照準を合わせておいた奥の敵を銃撃、わずか数秒でふたりの敵を倒してしまう。同シリーズならではのクールな掃討テクニックだ。
そして最後にクリエイターお気に入りのシーンとして見せたのが、サム・フィッシャーの新アクション、名付けて「頭をつかんで引きずりおろす」シーン。豪雨の灯台を舞台に、灯台の縁を横移動して、見張り兵の直下から一気に躍り上がり、敵の体を掴んで真下にたたき付ける、という内容で、これまたクールさを全面に押し出した新アクションだ。
「ナイフアクション」のデモ。ナイフで布を引き裂き、奥にいる敵に背後から襲いかかる。「Splinter Cell」シリーズにおける新しい常套テクニックのひとつになりそうだ |
「Room Clearing」のデモ。オプティカルモニタとサーモセンサーで敵の位置を把握。その後「Bash Door」で突入。蹴開けると同時に手前の敵が倒れ、奥の敵を銃撃。これまたクールなシーンだ |
クリエイターズチョイスのデモその1。豪雨の海岸線を歩くサム・フィッシャー。豪雨による水たまりを表現した環境バンプマッピングと、降り注ぐ雨の波紋のアニメーション。ライティングによるスペキュラー効果とも相まって、非常にフォトリアルなシーンだった |
クリエイターズチョイスのデモその2。闇夜のシーンなのでブレブレになっているが、灯台の縁を横移動するカットと、一気に躍り上がって敵を掴んで下にたたき付けるカット。雨の滴る感じを見事に表現した環境バンプマッピングが印象的だ |
■ マルチプレイモードは、ストーリーとも関連した2人協力プレイを実現
そして今回、もっとも衝撃的だったのが、映像の最後で紹介された新しいマルチプレイモード。「Splinter Cell 3」では、「Pandora Tomorrow」で実装された2対2の対戦モードに加えて、2人で力を合わせてミッションを遂行する協力プレイモードが盛り込まれる。
このモードのユニークなところは「Splinter Cell 3」のストーリーと密接に絡み合っているところで、2人はサードエシュロンに所属する新米工作員で、極秘任務に携わるサム・フィッシャーを影からバックアップするという設定になっている。つまり、協力プレイモードで、キャンペーンのサイドストーリーを描いているわけだ。さすがにキャンペーンシナリオと同等のボリュームというわけではないようだが、複数のステージを準備するということだ。
デモでは、とあるビルの奥にある端末へアクセスするまでの過程が紹介された。ビルの外からスタートし、まず片方が踏み台になり、塀をよじ登らせる。よじ登った工作員は、配水管を伝ってビルの屋上へと到達し、続いてビルの側面にロープを垂らし、下の工作員を引き上げる。ビルには人が働いており、ボイスチャットを通じてロープを左右に動かしながら少しずつ上に登っていく。
屋上にあるドアの奥に目的の端末があるのだが、その手前に人がいる。このミッションでは第三者に発見されると失敗となるようで、進入路をエアダクトに切り替える。そこで再び片方が踏み台となり、片方を壁の縁に手をかけさせる。続いて、上の工作員は壁の縁に手をかけたまま状態を維持し、下の工作員がそれをはしご代わりにして上に登る。シアターの席からは思わず苦笑が漏れる。
エアダクトにたどり着いたふたりは、部屋の様子をチェックするがそのまま降りては内部の関係者に見つかってしまう。そこで片方の足首をロープでしばり、ひとりがロープを垂らしてひとりを逆さまの状態でおろすことに。かくして、誰にも見つからずに端末へのアクセスに成功し、席からは大きな拍手が巻き起こった。2人アクションがどれぐらい用意されるのかは不明だが、非常に楽しみな新モードだ。
工作員を踏み台にして塀をよじ登るシーン。ボイスチャットで情報を交換しながらロープを動かすシーンも印象的 |
工作員をはしご代わりにするシーン。比較的高低差のないところで活用できそうなテクニックだ |
工作員をくくりつけたロープを垂らして、端末にアクセスしているシーン。まるでマンガの世界だが、「Splinter Cell」なら許されるシーンだろう。キーボードと体の向きが逆なのはご愛敬 |
□Ubi Softのホームページ
http://www.ubi.com/
(2004年5月16日)
[Reported by 中村聖司]
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