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【Electronic Entertainment Expo 2004現地レポート】THQブース特別レポート |
会場:Los Angeles Convention Center
今回、PCゲーム関連のメインホールであるSouthホールの中心部にブースを構えたTHQ。その数ある出品作の中でも、特に人気が高かった「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」と「Full Spectrum Warrior」の2本に関してレポートをお送りしよう。
THQブースの中でもひときわ大きく、シアター形式でのデモンストレーションを行なっていたのが「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」だ。本作は、あの原子力発電所の爆発事故によって閉鎖区域となったチェルノブイリを舞台としたFPS。開発は「Codename: Outbreak」などによって、屋外におけるFPS開発には定評のあるロシアの「GSC Game World」の手で行なわれている。発売は2004年秋の予定。
開発チームの本作における思い入れは尋常ではなく、現在も一部が閉鎖地域とされているチェルノブイリに入り、ゲームのための風景撮影や調査などを行なっている。
スタッフから提供されたチェルノブイリ市街地の写真と、これを参考にしたゲーム内風景の比較写真。2度目の爆発事故によって放棄された都市の寂しさや薄気味悪さがうかがえる |
その後、ZONE周辺ではSTALKERと呼ばれる類の人々が見かけられるようになった。彼らは何が存在するかわからないZONEに、防護服とガイガーカウンター(放射線検出器)を持って入り込み、従来の生態系からはずれた生物の調査や“Artifact”と呼ばれるZONE内で発見される遺物の回収を金で請け負う人々だ。プレーヤーは新人STALKERとなり、ZONEの謎や軍隊による陰謀などを暴いていくことになる。
左の写真は初期のプレーヤーの姿。この状態では防護服やガイガーカウンターを持っていないので、ZONEの外周部までしか入ることができない。しかし、簡単な依頼からこなして資金を稼ぎ、右の写真のように装備が整ってくると、ZONE全域を探検できるようになる |
そのため、プレーヤーはZONE内の食料調達や、他のSTALKER達と共同戦線をはって安全を確保する必要が出てくる。ゲームを進めるためには、ZONE内で生計を建て、生き残らなければならない。だが“life simulation”AIシステムにより常に周囲の状況が変化しており、ZONEにはミュータントや他STALKERが徘徊するなど、生存をさらに難しくしている。本作がサバイバルFPSと呼ばれる理由はそこにあるのだ。
シアター内で行なわれたデモンストレーションでは、そのあたりの部分が一部公開されており、プレーヤーが他STALKERと物品を交換して銃の弾薬を手に入れる様子などが公開されていた。
ZONE内を徘徊するミュータントを倒して肉を手に入れる必要もある。だが突然変異したミュータントの肉はあまり食べたいものではない…… |
飲み水の確保も立派なサバイバルの一種。池や井戸などがゲーム内には存在しているので、そこから水を入手することになるのだろう。しかし、放射能汚染地域の水をどうやって安全な状態にして飲むのだろうか | 時には他のSTALKERと戦闘になることも。ゲームの中では軍隊の他にいくつかのSTALKERグループが存在しており、敵対グループと出会って戦闘になることもしばしばあるそうだ |
キャンプの場所を確保するのにも頭を使いそうだ。基本的には廃棄された建物の一角を拠点として確保し、そこから周囲の探索を進めていくことになりそう |
DirectX 9世代の技術を盛り込んだサンプルスクリーンショット。後ろから差し込む光によってのびる影や、銃の下に取り付けられたライトの光などの輪郭がぼやけているところ、構えた銃の影がセルフシャドウとして体に映り込んでいるところなどが注目ポイント。秋の発売までには、すべてのグラフィックをこのレベルに持っていくという |
夜におそってくるブラッドサッカー。日中のシーンでは、姿を消しておそってくるのだが、姿を消した場合その部分の風景がゆがむことはなく、足下の土煙のみで位置を判断するしかないのは参った。デモの中では、演出ではあるが、プレーヤーが焦ってそこら中に弾をばらまくシーンもあった |
戦闘はリアリスティックな戦闘モデルが前提となっているため、基本的には建物や草木の影からねらうという形になる。しかし、射線がオレンジの色で描写され、かなりはっきりと見える形になっているため、その場にずっといるだけではすぐに見つかって倒されてしまうことが多かった。とにかく「自分が実際に戦闘したら」ということを意識し、隠れるところや警戒位置などをいちいち意識して歩くことになるのが特徴的だった。
ちなみに、今回のマルチプレイデモンストレーションのグラフィックは、DirectX 8世代の技術をベースとしたものだそうだが、高いfpsをたたき出しているようで、なめらかな描写が印象的だった。曲がり角から伸びる敵の影によって敵を発見するといったことはできなかったが、製品版のマルチプレイの快適さを感じさせる展示だった。
マルチプレイでの戦闘風景を撮影したもの。高い位置を取った方が有利という実際の戦闘での原則論はゲームの中でも変わっていないようだ。ゲーム中では複数の銃を使うことができたが、AK47やMP44といった反動の大きい銃を使った場合、反動が大きくてなかなか1発では倒せなかった |
本作では天気や時間経過の概念があるが、今回のマルチプレイデモンストレーションでは、昼から夜、夜から昼と頻繁に時間を経過させていた。夕方から夜になってくると、プレーヤーの姿は闇にとけ込んでいく。むやみに発砲すると自分の位置を敵に悟られてしまうので、ナイトビジョンなどを使って慎重に行動することが重要だ |
今回Xboxの新ラインナップのなかで、特に筆者の興味を引いたのが「Full Spectrum Warrior」だ。本作は、米国陸軍より「新人歩兵を訓練するためのシミュレータ」として開発を委託されたプログラムをベースとして開発されたリアルタイムストラテジー。プレーヤーはNATO軍の兵士としてアルファとブラボーの2チーム、8名を率いて戦うことになる。敵となるのは、クーデターによって政権を握り、アメリカへの対抗心をあおることで民族浄化を進めようとしている中東某国の兵士達。基本的には市街戦がゲームの舞台になる。ステージ数は全部で5ステージ、11チャプターに分かれている。発売は2004年秋、XboxとPCで発売される予定。
本作でもっとも特徴的なのは、プレーヤーの指示で動く8人の隊員達だ。彼らはアメリカ陸軍の陸上戦、とくに市街地戦闘の戦闘教本をたたき込まれたAIを搭載しており、状況に合わせて的確な行動や位置取りを行なう。
これまで、ミリタリー色の強いゲームはFPSに多かったが、この場合プレイする全員が場面場面にあった訓練教本を頭にたたき込んでいないと、ここまで連携のとれた動きを味わうことが難しかった。また、RTSの場合だと動きはできていても画面に表示される兵士達が小さく、自分がその世界にいるという没入感に乏しいという、FPSとRTS双方ともに本格派のミリタリーマニアには不満が溜まることが多かった。
しかし本作は違う。説明員が見せてくれたデモンストレーションでは、両脇にビルが建ち、奥に敵がいると予想されるテラスのある建物があり、途中に曲がり道がある細い路地を進むという場面。この場合、まずブラボーチームが路地手前の建物の影からテラスに向かっての牽制射撃と両脇の建物の警戒を行ない、その隙にアルファチームが曲がり角の手前まで進んで曲がり角の安全を確認。テラスと曲がり角の奥への警戒を行なう。そしてブラボーチームは路地を一気に進んで奥の建物の入り口へと進むわけだ。また、途中で味方が傷つけば、チームのうちの1人が負傷者を抱え、残りの2人が180度ずつ周囲を警戒して進んでいく。このキャラクタの動きは、陸上での歩兵戦をあつかったゲームでもピカイチの「らしさ」を持っていると感じた。
説明担当者の弁によると、このあたりの「らしさ」というのは、ストラテジーというよりシミュレータといった方が近いとのこと。武器に関しても実物をもとに作り込んであり、命中率ひとつを取ってもその武器を使った統計に基づいて命中率が決められているそうだ。
またプレーヤーの視点となるカメラの位置は、隊員達と同じか少し後ろのTPS(サードパーソンビュー)で構成されている。このカメラにも仕掛けがある。たとえば、アルファチームに視点を移していて、アルファチームが移動する場合、このカメラは戦場カメラマンが抱えているカメラのように、ドタドタと揺れて移動する。この演出によって、プレーヤーの戦場への没入感はさらに強まっている。
マルチプレイに関してはXbox版のコメントしか聞けなかったが、各プレーヤーがそれぞれ1チームをコントロールし、マイクによって連絡を取り合いながら、Cooprative(協力)プレイができるという。これまでのミリタリーFPSやRTSにいまいち不満を持っていた方には是非とも遊んでいただきたい1本だ。
装備品も資料に基づいて忠実に再現されている。サバイバルゲームなどで装備品に詳しい人なら、この再現度の高さがおわかりいただけるだろう |
(2004年5月15日)
[Reported by tyokuta]
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