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Electronic Entertainment Expo 2004現地レポート

Eidosブースレポート
「Thief」、「Shell Shock」などユニークなアクションゲームが目白押し

会期:5月12日~14日(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 今年のEidosのテーマはずばりバイオレンス。E3は新作のトレードショウであるため、出展タイトルのほとんどのレーティングはペンディングになっているが、今回はことごとくがMature指定(18歳以上)になりそうな勢いだ。

 これは、現在制作が進められている「Tomb Raider 7(仮称)」の出展が見送られ、全年齢対象型のFPS「Time Splitters」のパブリッシャーから外れ、さらに北米では人気があまり無い「Championship Manager」の出展が見送られていたことが大きく影響しているが、一番の原因は、Eidosそのものが北米市場に対して大きく迎合する戦略にシフトしていることだ。

 日本ではバイオレンス表現に対して規制が厳しいため、ほとんどそのままでは発売できないタイトルばかりだが、ゲーム内容はバリエーション豊かで、来場者の反応も良かった。


■ 今年イチオシはION Stormの新作「Thief: Deadly Shadows」

素晴らしき光と闇の競演。「Thief: Deadly Shadows」は、中世の「Splinter Cell」と言い換えてもいいかもしれない
後ろから忍び寄りブラックジャックで昏倒させようとする主人公。昏倒させた敵の体は、一度抱えて闇の奥に放り込んでおけば見つからない
 カリスマクリエイター ウォーレン・スペクター率いるION Stormの新作スニークアクション「Thief: Deadly Shadows」がようやく完成し、欧米でまもなく発売となる。今やFPS界で無くてはならないゲームジャンルのひとつとなったスニークアクション界の本家本元であり、シリーズ3作目に相当する「Thief: Deadly Shadows」は、ゲームエンジンに「Deus Ex 2」のエンジンを採用。Eidosタイトルの中では、唯一真っ正面から全世界で戦える世界トップレベルのアクションゲームだ。

 「Thief: Deadly Shadows」は、過去のシリーズと同様、剣と魔法の中世ファンタジー世界を題材に、富める人物の居城から、さまざまな難関を突破しながらお宝をちょうだいしていくスニークアクション。E3への出展は今年で3回目ということだけあって、概要等はすでに毎年紹介してきているのだが、今年もまた発売直前になって、ゲームデザインが一新している。

 もっとも大きな変更点は、3人称視点がメインになったところ。「Thief」シリーズは、これまで一貫して1人称視点によるアクションが中心だったが、今回は主人公ギャレットの格好いいスニークアクションを目の当たりにしながら、状況に応じて1人称視点に切り替えながら、各種のアクションを行なっていくことになる。

 「Deus Ex 2」エンジン採用により、同シリーズでもっとも重要な要素である光と闇の表現に関してもすべてリアルタイム処理になった。施設内のロウソクやたいまつの光りは、水の矢を打ち込むことで消すことができ、樽や木箱といったオブジェクトを使うことで、自ら新たな闇を作ることができる。画面下には、主人公が現在どれだけ闇にとけ込んでいるかを示すカラーパレットが表示されており、常に自らの置かれている状況が正確に把握できるようになっている。

 そしてもうひとつの重要な要素が音。ゲーム内のほとんどのオブジェクトは持ち上げたり、武器として使用したり、動かしたりすることが可能になっているが、アクセスするとすべて大小のノイズが発生するようになっている。これが敵に察知されると大捜索の末、袋だたきの目に遭ったりする。音が発生しやすい硬質の地面にコケをはやして無音で突破したり、いわゆる鏑矢を使って音の発生した方向に敵を引きつけ、その間に移動するといった戦術も可能になっている。

 デモプレイ中、注意して進んでいたつもりが、大きな燭台を押し倒して、大勢の敵に囲まれたり、闇の中で壁をよじ登っている間、うっかり雷光に照らされて敵に発見されたりなど、目に見えないトラップが数多く仕掛けられているところが、プレイしていて楽しかった。

 そのほか、死体から流れた血を水の矢で消したり、オイルで敵の足を滑らせて昏倒させたり、周囲を見渡しながらドアや宝箱のロックピックにチャレンジしたりなど、さすがと思わせる演出が盛りだくさんだ。複数のエリアにまたがる広大なステージの奥底に眠る大きな壁画や財宝のルートに成功したときの感動はひとしおで、古典的だが手堅いカタルシスの味わえる佳作に仕上がっている。発売プラットフォームは、PCおよびXbox。日本での展開にも期待したいところだ。

【Thief: Deadly Shadows】
たいまつを持って巡回している衛兵がもっともやっかいな存在。このような場合は、画面のように水の矢を打ち込みたいまつを消してしまう。敵にこちらの存在が察知されてしまうが、闇になれば逃げるのはお手の物だ


■ 残虐描写がウリのベトナム戦争FPS「Shell Shock Nam'67」

大々的に出展していた「Shell Shock Nan'67」。即製の塹壕の奥には悲惨な戦争体験が待ち受けている
常に有利な状況で攻撃してくるベトコン兵。うかうか草原を歩くと、たちまち射殺される
 今回、Eidosは新シリーズの出展が相次いだが、中でももっとも派手に出展していたのが、オランダのゲームデベロッパーGUERRILLAが現在開発しているアクションシューティング「Shell Shock Nam'67」だ。PCのほか、PS2とXbox向けに開発が進められており、ベトナム戦争をモチーフにしたFPSとしてはコンソール初となる。

 ベトナム戦争をテーマにしたFPSは、特にPC向けで数多く登場しつつあるが、「Shell Shock Nam'67」が目指しているのは、戦争の暗黒面の描写に着眼が置かれているところだ。銃器による敵兵士の殺傷は当然のこととして、バラバラになった死体、捕虜の虐待、見せしめの処刑、そして麻薬、娼婦の存在。

 戦争をテーマにしたゲームの一般的な表現様式である一兵士のヒロイックな描写ではなく、その裏で行なわれている軍隊の恥部を余すところなく描写し、戦争の悲惨さを表裏の両面から描いていく。正直な感想として、ゲームの内容云々以前に、「このコンセプトで発売が可能なのか」という気がする。いずれにしても前人未踏の領域に踏み込んだアクションゲームといえそうだ。

 ゲームデザインは、比較的オーソドックスで、ルーキーとしてベトナム戦争に着任し、史実に基づいたミッションに挑戦していくことになる。戦功を挙げることで昇進し、最終的には特殊部隊に所属することも可能になるようだ。

 ミッションでは、AI操作の味方達と共に、ベトコン兵が潜むジャングルを手持ちの戦力のみで突破していくことになる。ベトコン兵は神出鬼没で、常に地の利だけでなく、戦力的な優位を確立した状態で包囲戦を展開してくる。この緊張感は個人的に「Operation Flashpoint」以来で、突如敵が目の前に現れてライフルで撃たれたり、マシンガンで掃射されたりなど、志半ばにして無様な死を遂げることも多い。1ステージプレイするだけで精神的にかなり疲れる印象だ。

 今回プレイしたのはXbox版だったが、グラフィックスはそれほどインパクトはないが、鳥やイノシシといった生物が突如横切ったり、もやが出て視界が狭められたり、わざわざ沼を通過させて行軍速度を鈍らせたりなど、緊張感を持続させる演出がうまい。また、爆撃ではげ上がった森林地帯や墜落したヘリ、ベトコン兵たちが構築した簡素な塹壕など、戦場を彩るオブジェクトの表現も凝っている。

 銃を片手にぐんぐん進む「Call of Duty」スタイルのFPSが全盛をしめる中、ただひたすら緊張を強いられ、戦争の暗部を正視させられるユニークなゲームデザインがどこまでユーザーに受け入れられるのかは未知数だが、Eidosの新たなチャレンジとして注目したいところだ。

【Shell Shock Nam'67】
初公開で、レーティングもペンディング状態ということもあって、現時点では残酷描写を含んだスクリーンショットは含まれていない。欧米での発売時期は今夏が予定されている


■ ナポレオン戦争を原寸大で描いたRTS「Imperial Glory」

巨大な宮殿の各所に配置された兵士たちに注目。「Imperial Glory」は建物にこもっての防衛戦がひとつのテーマになっている
 「Commandos」シリーズの開発元として知られるスペインのデベロッパーPyro Studiosの新作「Imperial Glory」は、19世紀のナポレオン戦争を原寸大で描いたリアルタイムストラテジー。画面を見ればピンと来る人もいるかもしれないが、同社が一昨年リリースしたローマ帝国の興亡をテーマにしたRTS「Praetorians」のゲームエンジンを使った別テーマの作品となる。

 発売時期は2005年とまだ先ということもあり、まだコンセプトレベルを抜け出ていないが、「Praetorians」に比べ、マップの広さやユニット数などゲームの規模が底上げされており、「Praetorians」のような抽象的な戦闘ではなく、出来るだけ実際の雰囲気に近い形で戦闘が行なえるようになっている。

 また、キャンペーンシナリオも格段にパワーアップしている。全欧を網羅したボードゲームスタイルのキャンペーンマップが追加され、ターンベースで各国が戦闘や外交、生産、技術開発などを行なっていくことができる。プレーヤーは軍隊のコマを動かして、随時新しい技術や兵器を導入しながら他の列強に先駆けて全欧制覇を狙っていく。

 プレーヤーが選択できる国家は、オーストリア、ロシア、プロシア、フランス、イギリスの5カ国。イギリスは海軍が強いなどの特性があり、外交を駆使しつつ、まずは非選択国家への侵攻から行なっていく。ゲーム全体の登場国家は北欧から北アフリカ、中東の一部まで含め、20カ国を超える。

 他国のコマが同一エリアで重なると戦闘が発生する仕組みで、地域別のマップで戦闘が行なわれる。戦闘開始後は、生産要素は一切無く、手持ちの戦力のみで戦うことになる。ただし、援軍を送らせることも可能なので、単にぶつかって勝敗が決する訳ではなく、城や建物にこもっての持久戦も必要不可欠な戦術のひとつとなる。

 今回見たデモでおもしろかったのは、部隊を建物に入れると、各員が遮蔽物を利用して防衛体制を取り、その上で敵の到来を待ち受けるところ。城や宮殿など巨大な建物だと、1階、2階、3階、屋上といった具合にバラバラに散開し、最適な防衛体制を整える。砲撃により建物の一部が破壊されると、その都度、移動し直して、再度守りに就くなど、人間味のある行動を採る。現時点ではまだマルチプレイについては調整中ということだったが、RTSファンには要注目のタイトルといえそうだ。

【Imperial Glory】
戦闘は火砲が中心となるが、騎馬隊が活躍した最後の時代でもある。ヨーロッパの各地方を描いたフィールドにも注目。エリア数は50にも及ぶというから楽しみだ。発売プラットフォームはPCのみで、発売時期は2005年初頭が予定されている

【Backyard Wrestling 2】
北米で絶大な支持を集めた「Backyard Wrestling」の続編。グラフィックスエンジンを一新し、キャラクタサイズをひとまわり大きくし、環境エフェクトも強化している。機能的な新要素としてはオンライン対戦に対応。発売プラットフォームはPS2およびXbox。発売時期は今秋を予定

【25 to LIFE】
「25 to LIFE」は、ストリートギャングとポリスの銃撃戦を描いたアクションシューティング。タイトルの意味は「懲役25年から無期」。発売プラットフォームはPS2およびXboxで、最大16人の同時対戦に対応。片やストリートファッションに身を包んだやりたい放題のギャングと、それを民間人の安全を守りつつ射殺するポリス。ある意味、「Postal」シリーズのお株を奪うバイオレンスアクションだ。発売時期は2005年

□Eidosのホームページ
http://www.eidos.co.uk/
□「Thief: Deadly Shadows」のホームページ
http://www.eidos.co.uk/games/embed.html?gmid=148
□「Shell Shock Nam'67」のホームページ
http://www.eidos.co.uk/gss/shellshock/
□「Imperial Glory」のホームページ
http://www.eidos.co.uk/games/embed.html?gmid=156
□「Backyard Wrestling 2」のホームページ
http://www.eidos.co.uk/games/embed.html?gmid=161
□「25 to LIFE」のホームページ
http://www.eidos.co.uk/games/embed.html?gmid=161

(2004年5月14日)

[Reported by 中村聖司]


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