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「PlayStationと科学」展、日本科学未来館で開幕 |
入場料:大人500円、小人(18歳以下)200円、6歳以下は引率1名ごとにふたりまで無料
開幕するにあたり、久夛良木健氏と毛利衛日本科学未来館館長のテープカットセレモニーが行なわれた |
開催初日となった29日のオープンに合わせ、会場ではSCEJの代表取締役社長兼グループCEOである久夛良木健氏と、日本科学未来館の館長である毛利衛氏によるセレモニーが開催された。毛利氏は「最新の科学を取り扱うときも、とにかく“人”が大事。いくら新しいものを見せても、それらはすぐに古くなる。プレイステーションは発売以来すごく進歩してきた。これからもどれほど進歩するかわからない。そういった意味では、日本科学未来館のテーマにピッタリ。これからも文化に影響を与えていくだろう」と挨拶した。
毛利氏に続いて登壇した久夛良木氏は、「プレイステーションを発売し10年経って、世界でプレイステーション、プレイステーション 2をあわせて1億7千万台を出荷した。それだけ最新のテクノロジ上で動くエンターテインメントを楽しんでもらっている。昔3Dグラフィックスは夢だったが、なんとかそれを家庭で楽しんでもらえるようにと、世界中の技術者とともに作り上げたプラットフォームが、エンターテインメントを牽引するリーディングパワーとなっている。科学が牽引するエンターテインメントの世界。未来のエンターテインメントを夢見てもらえればと思う」と語り、毛利氏と握手を交わした。
セレモニーで握手を交わした久夛良木氏と毛利氏 | 久夛良木氏は「世界中の技術者と作ったプレイステーションというプラットフォームがエンターテインメントを牽引するリーディングパワーとなっている」と挨拶 | 毛利氏は「プレイステーションはすごい進歩を遂げ、これからもどれだけ進歩するかわからない」とコメント |
会場入ってすぐに飾られている、久夛良木氏のソニー入社当時の写真と「プレイステーションの理念」 |
その後、2Dグラフィックスと3Dグラフィックスの違いをジオラマなどを用いてわかりやすく解説。当時プレイステーションが実現した3Dグラフィックスが、ワークステーションクラスの映像を家庭で楽しめるようにというところからスタートし、どうやって実現していったのかを展示物から知ることができる。3Dグラフィックスの描画の原理を数学と絡めて説明する小さなコーナーもある。さすがに解説員の説明に子供連れのお父さんもついていけない感じだったが……。
ここまでの「“プレイステーション”誕生」コーナーは、プレイステーションによって家庭用ゲームに持ち込まれた革命“3Dグラフィックス”とは……といった解説を中心とした展示だが、「“プレイステーション”の進化論」に入るとガラリとかわる。
なんと言っても注目なのは、後藤禎祐氏によるプレイステーションコントローラのデザインモックアップの公開だ。今のデザインにまとまるまでの変遷が見て取れて大変興味深い。ボタンが今のものより多く“+”、“-”ボタンが付いているものがあったり、人の体を模したボタン配置のデザインも展示されている。現在のプレイステーションプラットフォームロゴとは違うロゴが貼られている展示物もあり、かなり貴重だ。
また、真っ白なモックアップがひとつだけ置かれている。これは、「これ以上デザインを続けると生産が追いつかなくなり発売できない!」というデッドラインの時に久夛良木氏が決定稿の意味合いでサインした貴重なもの。ぜひとも一度見ておきたい展示物だろう。
そしてもうひとつ面白いのが、中央で開催されている「“プレイステーション”ワークショップ」。ここではプレイステーション 2の分解実演が1日に何回か行なわれている。実演では取扱説明書を取り出し「分解しちゃ絶対にダメですからね!」と念を押した上でスタートする。もちろん分解してしまったら保証も受けられなくなってしまう。
実演では初期型のプレイステーション 2を分解。所要時間はほぼ15分程度。かなりテキパキと分解されていく。合間には「プレイステーション 2はデザインにこだわっている。制作中に外側に傷が付かないように、3ピース構造にデザインし、真ん中のピースにすべての部品をくっつけて、最後にカバーを付けるような製作工程となっている」といった話や、「ファンの回転は左回りとなっている。PCは右回転なので、プレイステーション 2で使われているのは特注。なぜ左回りなのかというと、熱を持つ電源の位置が左側なので」などなど、興味深い話を聞くことができて、なかなか楽しい。
最後には最新のプレイステーション 2のスケルトンモデル (研究用の非売品) と比べて見せ、内部構造がスッキリとしたデザインに変化していくかを説明してくれる。
このほかにも、シリコンインゴッドからシリコンウェハーを生産する行程を段階を追って説明されていたり、プレイステーション 2というハードウェアがどのように作られるかを知ることができる。さらに、基板の集積度の変化が一目でわかる基板の変遷、ゲームの進行に合わせて、今どこのチップが働いているかを体感できるコーナーなど、色々と興味深いコーナーが用意されている。
一番最後にはソフトウェアの制作過程の説明や、新たな方向性としての「GTシミュレータ」の体験コーナー、そして、「EyeToy:Play」によるリアルタイム画像処理技術の研究用プログラムなどが公開されている。このプログラムがなかなか面白い。動いている物体をカメラで感知し、リアルタイムに画像をモーフィングさせたり色を抜いて見せたりするだけなのだが、今の「EyeToy:Play」のゲームをもう一歩進めたゲームの登場を感じさせるものだ。
普段、遊ぶだけの“ゲーム機”だが、その最先端の内部構造と、知られざる裏側を垣間見ることができる展示会としておすすめのイベントだ。本日はオープン当日だからかもしれないが、解説員の方々も多く配置されており、わからないところがあれば、すぐに聞くことができる点も好印象だ。ゲームファンはぜひ一度のぞいて見て欲しい。
(2004年4月29日)
[Reported by 船津稔]
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