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「Warcraft III」世界大会「ACON4」の日本地区予選を開催
奇抜な空中戦を得意とするkoouu選手が本戦へと進出

4月10日開催

会場:Necca秋葉原店

 台湾のハードメーカーAbit Computerは、「Warcraft III」の世界大会「ACON4」の日本地区予選を、4月10日、Necca秋葉原店にて開催した。大会は午前11時から午後4時半という長丁場だったが、会場に集まるギャラリーは次第に増え、決勝戦が行なわれる頃には大きな盛り上がりを見せた。

会場には一般客も多かったが、目的はそっちのけで大会に見入ってしまう人もいた
 「ACON4」は、台湾のハードメーカーAbit Computerが主催するPCゲームの世界大会。大会種目は「Warcraf III:The Frozen Throne」で、世界20カ国50都市の予選を勝ち抜いた猛者が、6月6日に上海で行なわれる決勝大会へと駒を進める。このようなPCゲームの世界大会が中国にて行なわれることは異例のこと。また「Warcraft III」の1タイトルに特化した大会ということで、上海の決勝大会も注目されるところだ。

 Necca秋葉原店での地区予選は、8名の参加者によるダブルイルミネーション形式(敗者復活戦あり)のトーナメント戦で行なわれた。参加者の種族比率は「Human:2/Orc:2/Undead:3/NightElf:0/Random:1」と、NightElfを除けばほぼ均等に分かれていた。そのためメインスクリーン上に映し出される試合画面と実況もめりはりが利いていて、観戦者も存分に楽しめたようだ。今回の参加者は主にUS-Westサーバーにて活動するユーザーが多かった模様で、普段から一緒にプレイしているためか、初顔合わせにもかかわらず談笑している姿が見受けられたのも印象的であった。

 なお余談になるが、実は筆者も本大会に選手として出場しており、上海へ行ったら何を食べようかなどと一人で勝手に夢想していた。しかし結果は、自分の不埒な考えと現実とのあまりにも大きなギャップを思い知らされたのであった。後でBattle.netのラダーwebsiteを調べると、他選手は1on1のレベル20以上がゴロゴロしていたので、よく考えたら当たり前といえば当たり前である。

本大会を主催したAbit Computerの広報三田氏。慣れないゲームイベントということでノウハウの取得に苦心していたようだ 大会種目の「Warcraft III」は、従来のRTSにまるでRPGのような成長要素を盛り込んだ画期的なタイトル。名実ともに現在世界最強のRTSである 試合中の選手はヘッドフォンを着けていたものの、メインスクリーンにて行なわれる実況解説が聞こえていた。競技性とイベントを両立させる解決方法を望みたい



■ まだBatte.netでも広く知れ渡っていない独創的な戦術で優勝を手に

何の変哲もないように見える本陣だが、奥へ入り込むのは至難。タワーの攻撃範囲外から攻撃を続けるtenti選手のユニットに、敵ヒーローの攻撃魔法が容赦なく降り注ぐ
tenti選手からの猛攻を凌ぎながらも、自陣の奥では着々と飛行ユニットを揃える。これは1~2体では役にたたないので、数が揃うまでは我慢だ
 ダブルイルミネーション形式で進行したトーナメントの決勝戦は、勝者側のtenti選手(Undead)と敗者復活側のODETON選手(Human)による、US-West勢同士の対決となった。tenti選手はヒーローとCrypt Fiend、それとObsidian Statueを中心に据えながら、状況に応じてサポート用ユニットを補充するという、現在のUndeadにおける定番スタイル。だが、対するODETON選手の得意とする戦術は、奇抜極まりないものであった。

 その戦術とは、資源の消費を極力抑えつつとにかく早い段階で自軍を進化させ、飛行ユニットの部隊でラッシュをかけるというもの。Humanの飛行ユニットは強力な反面、作成するために多大な時間と資源を必要とする。しかも資源を切りつめるため、序盤~中盤間の戦闘ユニットはなんとヒーロー1体のみ。初心者同士の対戦ならいざ知らず、大会決勝レベルでこんな戦術が通じるはずがない、飛行ユニットが揃う前に潰されるに決まってると普通は思うはずだ。

 しかし、ODETON選手は敵からの猛攻を凌ぎながら、飛行ユニットを揃えるところまで漕ぎ着けてしまうのだ。その最大の秘訣は、自陣の防衛方法にある。ODETON選手の自陣は、無防備な作業用ユニットを守るように建築物を建てている。そして建築物の内側にタワーとヒーローを配置して防衛するという寸法だ。ODETON選手は建築物を絶妙の間隔で配置し、傷ついた建築物はすかさず修復し、更にヒーローのアビリティを駆使してこれを可能としているのだ。

 tenti選手もODETON選手の狙いは百も承知しているため、何としても飛行ユニットを揃えさせるわけにはいかない。またtenti選手のユニット構成は中盤戦が得意なので、この時間帯に決着をつけたかったはず。中盤でのODETON陣における一進一退の攻防戦は、見ている方がハラハラドキドキの展開だった。筆者は本記事を執筆するにあたってODETON選手の全リプレイを観戦したのだが、この巧みな防衛テクニックは、簡単そうに見えても自分で再現するのは非常に難しいと思った。

 10体弱の飛行ユニットとヒーローを組み合わせた部隊は、極端に苦手とする敵がおらず、圧倒的な機動力を利用したヒット&アウェイ戦法も得意である。今度は逆に、tenti選手の自陣がODETON選手の飛行ユニットによって蹂躙される形となり、健闘するも及ばず勝敗が決まった。敗者復活側のODETON選手はプレイオフの2戦目も同様の戦術で勝利。見事に賞金10万円と上海で行なわれる決勝大会への切符を手にした。

 試合後にtenti選手に感想を聞いてみたところ、「(ODETON選手の)飛行ユニット特化の戦術は、来るとわかっていても防ぐことは難しい」とのこと。しかし、誰でもこの戦術を用いれば安易に勝利できるものではなく、ODETON選手だからこそ可能なのは言うまでもない。それにトーナメント表を見ればわかるが、実際にtenti選手は一度はODETON選手を破っているのである。

 決勝で戦った2人を客観的に見ると、一度敗北を喫した相手に敗者復活トーナメントから這い上がっての2連勝という、ダブルイルミネーション形式ならではの劇的な展開であった。しかも、おおむねこういった大規模な大会では、勝利を追求するためにガチガチの定番戦術を選ぶのが常である。そんな中でユニークな戦術が勝利を掴んだこともあり、これ以上は考えられない程素晴らしい大会内容だった。

飛行ユニットを揃えたODETON選手は、あらゆる方向から攻めに攻める。tenti選手は対飛行ユニット用のアビリティを使って応戦するも、同数同志の戦いではいかんせん分が悪い ODETON選手は大量の飛行ユニットを失いつつも、tenti選手の金鉱を破壊。この直後にTown Portalで脱出というぎりぎりの戦いに会場内は大いに沸いた ゲーム終盤でtenti選手のヒーロー2体が倒され、ODETON選手の攻撃に晒される無防備な金鉱。ACON4日本地区予選の優勝者が決まった瞬間だ



■ イベントとしては満点の出来。あとは「Warcraft III」の国内プレーヤー人口の増加が課題か

皮肉にもtenti選手は、一度は勝った相手に決勝戦で破れてしまった。しかし彼等の3戦はどれも、最後まで勝敗の行方がわからない熱い試合であった
 実はODETON選手は、その奇抜な戦術を対戦相手に悟られないようにするため、本大会は偽名で参加していた。彼のメインアカウント名はUS-Westサーバーの「koouu」。原稿執筆時点での1on1戦績は、レベル28のランキング50位。これは筆者の知る限り、「Warcraft III」始まって以来の全日本人の歴代最高位である。

 ODETON選手は決勝大会でもこの戦術で行くことを宣言しており、世界を相手にどこまで通用するか楽しみにしているとのこと。しかし、上海での決勝大会を楽しみにしているのは彼本人だけではない。我々も今から、どうしようもなくわくわくしているのだ。

 今回の大会を終えて強く感じたのは、「Warcraft III」のRTSとしての完成度の高さである。βテスト期間も含めると、「Warcraft III」は丸2年以上プレイされ続けている。もちろんパッチによるバランス調整や、拡張パックの導入は行なわれているが、にもかかわらずいまだに新たな戦術が登場し、しかもそれが誰でも安易に勝てる方法でないというのは凄い。ゲームバランスが常に新鮮な状態を維持できるのは、対戦ゲームとして究極の状態にあるのではないだろうか。

 本大会における筆者のプレーヤーとしての実力は、試合に勝つどころかその舞台にすら立っていないようなものだったが、そんなことは次第にどうでもいいように思えてきた。「Warcraft III」の完成度の高さを改めて痛感し、そしてこの素晴らしいゲームを国内に広めるため自分にいったい何ができるのか、などといったことを考えながら大会会場を後にした。


 最後に、本大会を陰で支えたAkisaya氏について触れておきたい。元々ハードメーカーであるAbit Computerは、PCゲームの大会運営が初ということもあり、その不備を懸念する声が挙がっていた。そこでAkisaya氏がプレーヤー仲間と共に改善要望をまとめてAbitへ伝え、数度のやりとりを経て運営手際が格段に進歩したのだ。

 その経緯でAkisaya氏は本大会の解説者に抜擢されたのだが、これが大当たり。選手の建築オーダーや、何気ないヒーローの一挙動から狙いを見抜きわかりやすく説明してくれるため、実に見応えのある解説であった。その旨を当人に伝えると、できれば今回はプレーヤーとして参加したかったとのこと(笑)。しかし、イベントしての本大会が成功した背景には、彼の存在がひときわ大きかったのは間違いない。

優勝したODETONことkoouu選手。彼は大阪在住で、友人が電車賃をカンパしてくれるならということで参加に至ったということだ 本大会の影の功労者であるAkisaya氏。彼が主催するClan「Millennium Kingdom」は、定期的に1on1大会を催すなど活発な活動を行なっている


(c) 2004 Blizzard Entertainment. All rights reserved.

□Abit Computerのホームページ
http://www.abit.com.tw/
□「ACON4」のページ
http://www.abitgamer.com/
□Warcraft3 Clan「Millennium Kingdom」のホームページ
http://clanmkd.net/
□関連情報
【3月16日】Abit、「Warcraft III」の世界大会「ACON4」を6月に上海で開催
4月10日に日本代表を決める予選大会を実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040316/acon4.htm

(2004年4月12日)

[Reported by 川崎政一郎]


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