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★PS2ゲームレビュー★
2006年ワールドカップのアジア予選の開始、欧州リーグに目を向ければ後半戦のラストスパートと、サッカーファンのボルテージはいやが上にも高まる今日この頃。スタジアムやテレビでそれらの試合を観戦したあと、「自分だったらあそこはこうする」、「あの連係は良かった。自分もやってみたい」といった具合に、ついついお気に入りのサッカーゲームに興じるサッカーゲーマーも多いことだろう。そんなタイミングを狙ったかのように登場したのが、「FIFA トータルフットボール」だ。
欧州リーグと主要なA代表強豪国を中心に網羅された選手データは、世界17カ国のリーグ、400以上のクラブチームや38カ国のナショナルチームを収録。新鮮かつ膨大なデータをこよなく愛するマニアックなプレーヤーはもちろんのこと、「オフ・ザ・ボール コントロール」システムの搭載で、ゲームとしての完成度を求めるプレーヤーをも唸らせるタイトルだ。
■ FIFAの名を冠するだけのことはある、めまいがするほどのデータ量
膨大なチームの中から気心の知れたいつものチームを見つけだしたら、やはり気心の知れた相手チームを選び、それでは試合前に選手データのチェックを……ということになる。ここではチーム数ほどは圧倒されなかったが、選手の能力に直結するデータの項目数が30項目を超えることを確認して、まず安心感、そして「うむうむ」と納得。能力値の大きさに応じて数字が色分けされていないのは気になるが、単色で小さな数字が並んでいるぶんハッタリが効いている印象だ。その中から「RDM(右寄りポジションの守備的ミッドフィルダー)」や「RS(右寄りポジションのストライカー)」という表示を見つけ、そのあたりのこだわりに小さな感動も覚える。
ひとしきりデータに感動したあと、いよいよアーセナルとボローニャのエキシビジョンマッチをキックオフさせる。いきなりアンリとベルカンプが似ていて笑えるが、ピッチを見回せば、アップで表示されなくても肩幅だけでそれとわかるビエイラや、髪の色と形で「あれは中田だな」とわかることに感心させられる。オープニングムービーに登場するアンリのモデリングに力が入っているのは当然なのだが、ビエイラは嬉しい不意討ちだった。中田の背筋を伸ばしたドリブルまでは再現されていればなおよかったのだが。
ともあれ、チーム数、能力データの項目数、外見に関しては、「FIFA」の名に恥じない充実ぶりとインパクトと言えるだろう。個人的にはゾラとヨルゲンセンさえ似ていればご機嫌だし、実際に似ていた上に能力も高かったので、手放しで喝采したい気分だ。ただ、この冬の移籍市場については、ボローニャの中田は反映されていたのだが、反映されていない選手もおり、そのあたりも反映されていればよかったのではと思う。OPTIONのPLAYER SWAPSによって選手を自由に移籍させることができるので、その点はあまり大した問題ではなさそうだ。
■ 「ここでアイツが飛び出せばなあ……」が実現できる「オフ・ザ・ボール コマンド」
「オフ・ザ・ボール コマンド」とは、タッチラインに沿ってダッシュを開始するなどといった動き(コマンド)を特定の選手に設定しておき、それらの動きを右スティックに割り当てて、試合中に任意のタイミングで発動させることができるというもの。右スティックの上下左右で別々のコマンドを設定できるため、各選手に特定の動きを設定できるわけだ。 というわけで、両サイドバックにタッチライン沿いにダッシュする動きを設定し、2トップの片方には中盤まで下がってボールを受ける動き、中盤の選手には前線に飛び出す動きを設定して再戦。中盤のサイドでパスを受け、さっそくサイドバックを走らせてみると……おお! まったくフリーな状態でサイドバックがスルスルとタッチライン際をオーバーラップしてくる! ということは、ここでボールをキープして、サイドバックに追い越されたあたりでパスを出すと……おお! 気持ちいいぐらい簡単にパスが通る! アイコンタクトやオートマティズムという言葉があるが、プレーヤーの任意の選手が任意のタイミングで動き出す「オフ・ザ・ボール コマンド」は、それらの究極である。想像してみてほしい。「ここで後ろからのフォローがあれば」、「このセンタリングに合わせてアイツが飛び出せば」というタイミングで、それらの選手がまさに思い通りのアクションを起こすのだ。それは、実際の試合を観戦しているときや、サッカーゲームをプレイしているとき、幾度も心に思ってきたあのジレンマが、きれいさっぱり解消されることを意味する。オーバーラップしてきたサイドバックにボールを渡し、サイドバックが上げたクロスに合わせてストライカーを飛び込ませる。同時にこぼれ球を狙ってボランチも飛び込ませて……これらがすべてプレーヤーの任意で行なえるとなれば、感動しないわけがない。
もちろん、これほど便利なコマンドを駆使できる以上、もはや誰に対しても試合に負けたことへの言い訳ができないわけだが……(セットプレイから失点してボローニャとの2戦目も負けました)。
■ 「もっとちゃんと合わせろよ」などと言えなくなる「オフ・ザ・ボール セットプレイ」 さてさて、我がアーセナルがセットプレイからの失点でボローニャに2連敗目を喫したのは、「オフ・ザ・ボール セットプレイ」を理解していなかったからに他ならない。言い訳ができないと書いておきながら大した言い訳だが、かのトルシエ御大の「現代サッカーではセットプレイからの得点が6割を占める」というお言葉を思えば、これは立派に言い訳が成り立つと言えよう。そしてそう力説したくなるほどに、本作の「オフ・ザ・ボール セットプレイ」は得失点を左右する重要なシステムになっている。
「オフ・ザ・ボール セットプレイ」とは、間接フリーキックやコーナキック時に「どんなボールをどこに」蹴って、そのボールに「誰が合わせる」のかをプレーヤーが任意に操作できるシステムである。どこにボールを入れるかについては、4つのコースを一覧メニューから選択するだけで、精度に関してはキッカーの能力に委ねられる。問題は「誰が合わせるか」の部分で、これはゴール前に位置する3人の選手からプレーヤーが任意で1人を選び、相手のマーカーを振り切るように操作しつつボールの落下点に走り込み、シュートを決めなければならない。また、相手マーカーに密着されている状態では、左スティックと右スティックを駆使して相手マーカーを突き飛ばし、ひるんだ隙にシュートに持ち込むという技術も必要。
「アイツがちゃんと合わせてくれればなあ……」という愚痴は通用しない。プレーヤーがこれらのアクションをうまくこなせるようにならない限り、セットプレイから得点できる可能性はないも同然で、逆に失点する可能性ばかりが跳ね上がるのだ。
ちなみに、攻撃時のノウハウはPRACTICE MODEでの反復練習によって身につけることができるが、守備時のトレーニングは用意されていない。エキシビジョンマッチなどで悔しい失点を重ねていくなかで、ゴール前での守備能力を養えということなのだろうが、これはちょっと不親切な点である。
■ 中央を崩しにくいのは当然。サイドアタックに弱すぎるのは? 「オフ・ザ・ボール コマンド」の効果的な使い方を見出し、「オフ・ザ・ボール セットプレイ」の精度を高めたところで、使用チームをアーセナルからイタリア01リーグのウディネ(セリエAのウディネーゼ)に変更してみた。アンリの突破力に頼ってばかりでは、いつまでたってもこのゲームの真髄に迫れないと思ったからだが、その予想は正しく、アーセナル時代には貴重な得点源だった中央突破がまったく通用しない。ウディネのCFを務めるファバもそこそこのアタッカーなのだが、個人技だけで勝負するには能力不足。周囲にお膳立てしてもらって、エリア内でボールを受ける必要があるようだが、中央でディフェンスの裏に抜け出してスルーパスを受けようにも、相手のCBが2人であれ3人であれ、CPUのスルーパスをインターセプトする思考が優秀で、カウンター時などのよほど守備が手薄な状況でなければ中央突破は困難といった雰囲気。
となると、近代サッカーの代表的な戦略であるサイドアタックに光明を見出すことになる。これが、ラインの裏におもしろいようにボールが出る。「オフ・ザ・ボール コマンド」を併用して、タッチライン際を走らせた選手にパスを出せば、かなりの確率でパスが通ると言っても過言ではない。そこから低いクロスを送り、やはり「オフ・ザ・ボール コマンド」を使ってファバを中央から飛び出させると、飛び出してくるキーパーの手前でボールを受けてのシュートや、飛び出す前に放つダイレクトボレーで得点の山を築くことができるのだ。
確かに、ウディネのフォーメーションは3-4-3で、ファバの両脇を固めるヤクインタとヤンクロフスキーがウインガーとしても機能するため、よりサイドアタックに適した布陣ではある。だが、それを差し引いてもCPUのサイドアタックへの対応は大きな疑問。そして、それがCPUに限らず、プレーヤーにとっても脅威なのだということを思い知らされるのにそれほど時間はかからなかった。
数的不利を作られた時点でこちらの負け、という発想もあるにはあるのだが、ディフェンダーが攻撃参加するセットプレイに失敗して、カウンターを仕掛けられた時点で数的不利になるなというのも無理な話。その場合の定石としては守備的ミッドフィルダーでプレスをかけて攻撃を遅らせ、その間に味方ディフェンダーの戻りを待つということになるのだが、「守備側の選手がボールに近づくと、自動的にプレスをかけに行く」という仕様に意外な罠が待ち受けている。
というのも、ボールを持った選手と守備側の選手の距離の問題だと思うのだが、カーソルを切り替えた直後に自動的にボールを奪いに行く位置合わせがうまくいかないようで、操作選手がその場でくるりと回転するという現象が起こる。また、この現象が起きなくても、ボールに対して最短距離を走ってチェックしにいこうとするので、相手の先に回り込んでから1対1を仕掛けるという行動がやりにくく、自動的に最短距離を走ろうとする操作選手に対して、反対方向にスティックを倒すことで横走りさせる、という工夫が必要になる。
こういった現象が相手のサイドアタック時に発生すればどうなるか? ライン際を疾走する相手ドリブラーに対し、正面からチェックに行けないのに、ゴール前にはフリーのアタッカーが待ち受けている。こうなるとプレーヤーに残された選択肢は少ない。パスコースを塞ぐために□ボタンでセカンドディフェンダープレスをかけようとしても、ボールからある程度以上の距離があると、セカンドディフェンダーとなる選手がプレスにこない……。 そういうわけで、サイドアタックで得点を積み重ね、相手のサイドアタックや数的不利な状況で失点という光景が繰り返されていくことになる。ノーガードの殴り合いのようで楽しいことは楽しいが、同じ得失点パターンばかりではさすがにつらい。「せめて守備時の操作選手の切り替えが自由に行なえれば」、「せめて自動的にプレスをかけに行く仕様がなければ」と、わずかな詰めの甘さが気になる。 なお、なぜ中央突破にこだわらず、サイド攻撃偏重になってしまうかについては、もうひとつの大きな理由がある。会心のスルーパスで中央突破に成功しても、相手ディフェンダーが真後ろからスライディングを仕掛けてきて、シュートに持ち込めないことがあまりにも多すぎる。もちろん不当なタックルなのでファウルは取られるし、カードも出るが……。さらには、ペナルティエリア内に進入していても、悪質な妨害者はひるむことなくタックルを仕掛けてPKを献上する。そんなシーンが繰り返されれば、そのうちにサイドに逃げてしまいがちになってしまうのもわかっていただけるのではなかろうか。
CPUの思考レベルを高くすると無用なファウルが増えるのは本作だけでなくサッカーゲームの常だが、これによってどんどん人間的なサッカーから遠ざかっていることに対して、そろそろメーカー各社からの前向きな回答を見せてほしい。そう思っているサッカーゲーマーは少なくないはずだ。
■ クラブを運営する魅力の一端を感じさせる「フランチャイズモード」 そういうわけで、サイドアタックからの得点パターンを確立し、CPUの思考レベルが最高のビッグクラブにも勝てるようになってくると、リーグ戦やトーナメントなどで自分の実力を誇示したくなってくる。そこでようやく、プレイ前に最大のお楽しみだと感じていた「フランチャイズモード」に取りかかることにした。カテゴリ分けされているリーグに所属するチームから任意のチームを選び、スポンサーと契約してリーグ戦を戦って大きなクラブに育てていくという、ちょっとしたクラブ経営気分を味わうことができるモードだ。もちろん、選手の移籍も行なうことができ、選手育成の楽しみもそれなりに用意されている。 ここで選んだのはまたもやウディネ。敬愛するゾラが所属するイタリアリーグ02のカリアリを選び、リーグ01に昇格してヨーロッパの舞台に躍り出るというシナリオもあったが、ゾラ以外の選手を知らなさすぎるために感情移入の部分で問題があり、このシナリオは却下された。 「フランチャイズモード」を選び、イタリアリーグ01からウディネを選択すると、まずはスポンサーとなる会社を決定することになる。スポンサーにはいろいろな性格があって、契約した時点でまとまった資金だけを提供してくれる会社もあれば、契約時の資金提供は抑えめで、スポンサーが設定した目標を達成した場合に、契約更新ボーナスとして膨大な資金を与えてくれるところもある。また、別個でテレビ会社とテレビ放映権売却の契約も結べるのだが、スポンサー契約とテレビ放映権がセットになっていたり、選手が負傷した場合に保険料を支払ってくれたり、スポンサーお抱えの選手を強制的に獲得させられるといったものもある。どのスポンサーであっても、契約更新の条件とされる成績ノルマがあり、そのノルマを達成できないと翌年もスポンサー探しの手間を強いられる点は同じ。契約更新は強制ではなく、より良い成績を残した場合には、新規でさらなる大口のスポンサーと契約することもできる。
スポンサーとの契約が完了すると、続いて試合の放映権を売却するテレビ会社の選択となる。初年度は1社しか選ぶことができないが、2年目からは複数の会社と交渉することができるようになる。高い視聴率を誇る会社ほどいい値段で放映権を買ってくれるが、もちろん、クラブの実績がないうちはそういった会社との契約はかなわない。地道にステップアップしてクラブの名声を高めることで視聴率の高い会社と契約できるようになり、視聴率が高まることによってクラブの知名度がさらに広がり、観客動員数が底上げされていくという仕組みだ。ビッグクラブになると7万人もの観客が詰めかけ、ホームで試合を行なうたびにかなりの収益を上げていけるが、駆け出しのチームでは1万人強が精一杯。チームの成績を上げていくだけではなく、より良い会社と契約して知名度を高め、観客動員数による評価も受ける……こういった「ごほうび」的な要素はモチベーションが高まるのでありがたい。 チームの強さが動員数に直結しているわけではなく、ヨーロッパで最強のクラブになっているのに観客はわずか2万人というような現象が起こるのは残念だが、そもそもスタジアムの改築とかどうなっているんだという面倒な部分もあるわけだし、「好成績を続けていれば少しずつ観客が増える」というだけでも個人的にはそれなりに満足である。試合を楽しみにしてくれるファンやサポーターが増えるということが、クラブ運営の醍醐味のひとつであることに間違いはない(スタジアムを改築する必要があるため、より経営面でのバランスが必要になる、というゲーム性も、それはそれで大歓迎なのだが……)。
ともあれ、観客12,500人程度からスタートした我らがウディネは、伝家の宝刀であるサイドアタックが冴え渡り、初年度の前半戦をリーグ2位という好成績で折り返すことになる。そして12月、待望の移籍シーズンが到来。獲得できる選手のリストを見ると、フランチャイズモードをプレイできるすべてのリーグから、放出要員の選手がリストアップされている。これらの選手は指定された金額を払いさえすれば無条件で獲得が可能だが、必ずしも要望にかなう選手が放出要員に挙がるわけではない。任意の選手を獲得したい場合には、「任意獲得交渉」の項目を選んだのち、各クラブや代表チームに所属する選手を指定することになる。もちろん、ビッグクラブの主力選手がほいほいと移籍してくれるわけがなく、ビッグクラブで控えに甘んじている選手や、代表チームに呼ばれていながら、まだどこのクラブにも所属していない選手あたりが狙い目となる。 選手データが膨大なだけに、「自分だけがお気に入りにしているあの選手」や、「本当はもっと活躍できるはずのあの選手」などが高い確率で存在するのは嬉しいところ。北中米やアフリカ勢の代表チームなど、まさに宝の山である。実際には心当たりの選手を検索してリストアップしているだけに過ぎないが、選手を「発掘」しているかのような喜びがある。 また、チームに所属している選手は試合に出場していくことで成長し、チームワークや能力が高まってより良い選手となる上に、試合での活躍度合いによって使用できる「オフ・ザ・ボール コマンド」も追加されていく。非常にシンプルなシステムで、活躍度合いのモノサシも不明なのだが、このわずかな楽しみのために、わざわざ能力の低い選手をスタメンで起用し続け、その成長を見守らされてしまう。育成マニアの諸氏には物足りないかもしれないが、「育てばそれだけで嬉しい」という初級育成マニアの筆者としては、十分すぎるほどに魅力的な要素だ(3年後、某選手が世界を代表するほどのプレーヤーに成長したときには、嬉しさと納得のいかない気分を同時に味わうことになったが)。 冬の補強でナイジェリア代表からジュリアス・アガホワ、そして日本代表から楢崎正剛を迎え入れ、攻守の両面が充実した我がウディネは、ナショナルカップ(国内でのカップ戦)を制覇し、EFA杯(U●FAカップと思われる)も優勝、国内リーグでは失速して3位となるも、来季ECC杯(U●FAチャンピオンズリーグと思われる)への出場権を獲得するという輝かしい成績で初年度を終了した。
得点パターンを確立したにしても、いくらなんでもできすぎな成績だが、これには「こだわりが生んだ悲劇」とでも言うべきカラクリがあるのだ。
■ こだわりが嬉しい「ホーム&アウェイ」の概念 「フランチャイズモード」をプレイしているうちに気付いたのが、同じチームでも崩しやすいときとそうではないときがあるということ。以前の対戦ではマークが厳しく、パスの出しどころに四苦八苦させられていたのに、2度目の対戦では驚くほどスムーズにパスが通り、得点の山を築くことができるといった具合だ。根が楽天的なので「おお、以前は勝てなかったのに、俺もずいぶんうまくなったもんだ。わはは」などと喜んでいたが、うまくなったわりに同じような体験が続くことに疑問を感じてはいた。たいてい、「以前は●●だったのに、今回は……」というパターンで。 もうおわかりだろうが、これはホームとアウェイとでCPUの戦術が切り替わるためである。傾向としては、CPUにとってのアウェイ(プレーヤーにとってのホーム)ではマンマークを主体としたディフェンシブな戦術となり、ホームでは積極果敢に攻め込んでくるといった感じ。つまり、我がウディネがリーグ戦で失速しながら、なぜかカップ戦を制覇できたことへの解答がこれだ。 リーグ戦の場合、アウェイゴールの概念がないために「負けは負け」でしかないのだが、カップ戦ではアウェイゴールが重要なポイントとなる。すなわち、CPUがディフェンシブになるこちらのホームゲームではスコアレスドローや0-1での敗戦になりやすいのだが、CPUがオフェンシブになるアウェイゲームでは、2点以上の大量得点で勝てるケースが増えるため、アウェイゴールの数で勝ち抜きが決まりやすいのだ。 ホーム&アウェイによるCPUの戦術の切り替えという概念は素晴らしく、実際、それによってプレーヤー側がホームでの勝ち星を落とすこともある。だが、本来なら有利なはずの「CPUにとってのホーム」では、CPUが攻撃的になるのがアダとなって、かえって失点しやすくなるというのは皮肉な話である。初戦で勝っていれば、2戦目はホーム&アウェイに関わらずディフェンシブに……といった切り替えができると見事だったのだが……。
個人的には高く評価している概念だけに、次回作があるのならばさらなる改善を望みたい。そして、できればホーム&アウェイによるジャッジの変化も導入していただきたい。もちろん、レフェリーは公正であるべきだし、導入されたにしても「必ずホームが有利」といったデジタルなものでは面白みがない。しかし、根深いこだわりで申し訳ないのだが、現状では「ホームチームなのにペナルティエリア手前で後ろからタックルされて、相手はたかだかイエローカード」という不満へのやりどころがないので……。
■ 耳に楽しい北川さんの実況と、豪華なオムニバス盤なみのアーティスト陣 最後に、本作の「音」の部分についていくつか。 淡々とした語り口ながらも、詩的に修飾された言葉が次々に飛び出す北川さんの実況は、耳にしたことがある人ならニヤリとさせられるデキで、そこに絡む言葉少な目の風間さんの解説は絶妙のコントラスト。この手のタイトルにありがちな、「微妙に噛み合っていないやりとり」もいくつかあるものの、お2人のパーソナリティを思えば、ファンなら許せてしまうレベルでは? あとは同じ単語が続いてしまうことがあったことだろうか。でも、なかなか聞けない北川さんの実況がいつでも楽しめるという希少価値を考慮すれば、そういった不満もそれほど気にならないレベルではあるが。
そして個人的に驚いたのが、メニュー画面でのBGMなどに使用されている楽曲の豪華さ! 今やゲームといえばテクノ系の楽曲が幅を利かせている状況だが、本作ではメジャーなアーティストの楽曲がジャンルを問わずに集められていて、オムニバス盤としてパッケージングされ、CDショップの店頭に並んでいるようなものに匹敵するほどのボリューム。「LOST PROPHETS」や「COOPER TEMPLE CLAUSE」というラウドロック系もいれば、「UNDERWORLD」に「PAUL VAN DYK」、「TIMO MAAS」というテクノ系の大物アーティストに、「STONE ROSES」に「RADIO HEAD」という大御所中の大御所まで。この贅沢な顔ぶれには本当に驚かされた。さらに特筆すべきは、OPTIONSのEA SPORTS TRAXの項目で、BGMに使用する楽曲を自由に設定できるという点。お気に入りの曲だけを延々流すも良し、同じジャンルだけで統一するも良しで、嬉しいばかりの心配りだ。
■ 新システムの搭載でしっかり遊べる
できればフランチャイズモードの2年目で対戦したレアル・マドリードの圧倒的な強さや、こちらの神経を逆撫でするロナウドのゴールパフォーマンスの憎たらしさなどについても触れたかったが、それらは他の機会に譲らせていただく。ぜひ、自分の手でプレイして、ファウルでなければ止められないほどの実力差や、(いい意味で)似すぎてて腹が立つパフォーマンスを体験してほしい。リーグ戦やUEFAカップ、チャンピオンズリーグが最高の盛り上がりを見せるこの時期だけに、欧州サッカーファンの良き友として、本作をおすすめしたい。そして気長にフランチャイズモードを楽しんでもらえればと思う。 (C)2004 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA SPORTS and the EA SPORTS logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. In the U.S. and/or other countries. All rights reserved. Official FIFA licensed product. The FIFA Logo (C)1977 FIFA TM. Manufactured under license by Electronic Arts Inc. Player names and likenesses used under license from The International Federation of Professional Footballers"(FIFPro)", national teams, clubs, and/or leagues. All sponsored products, company names, brand names and logos are the property of their respective owners. All other trademarks are the property of their respective owners. EA SPORTS TM is an Electronic Arts brand. (C) 1996 JFA (C) 2002 JFA.MAX
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2004年3月23日) [Reported by 平田 洋] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved. |
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