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「コルムオンライン」CEO/ローカライズマネージャインタビュー
日本進出に対する意気込みと具体的プランを聞く

1月26日収録

会場:Netclue本社ビル

 Netclue本社では、「コルムオンライン」体験ツアーのほか、各種インタビューが行なわれた。本稿ではCEO Kang Tai Hyun氏、ローカライズとマーケティングのマネージャを担当しているKang Bong Suk氏の2本のインタビューをお届けする。

 Kang Tai Hyun氏は、柔らかな語り口に強烈な意志を内在させた粘り腰の経営者といった感じで、これまでの長いIT企業経験を生かした独特のMMORPG哲学が興味深かった。Kang Bong Suk氏は、これまでに他のゲームメーカーでいくつかのMMORPGの運営に携わってきており、その実績に裏付けされた自信たっぷりの語り口が印象的だった。


■ 「メーカーに文句を言うのもMMORPGの楽しみのひとつです」

Netclue CEO Kang Tai Hyun氏。日本滞在20年というだけあって、実に流暢に日本語を操られる
編集部 最初の挨拶の時に自然な日本語を使われたので、少し驚きました。

Kang Tai Hyun氏 私は日本大学へ留学した経験があり、その後も日本と韓国を行ったり来たりしながら仕事をしてきましたので、日本語は多少できます。

 ということは、Netclueの日本進出は、創業以来の宿願だったというわけでしょうか。

Kang そういってもいいでしょう。日本はゲーム大国で、グラフィックス、システム、デザイン、何をとっても高いクオリティを備えている。私は何を持って日本進出するかと考えた際に、韓国はたまたまブロードバンドが日本より少し早く普及しましたから、これはオンラインゲームだろうという結論に達しました。

 韓国のゲームと日本のゲームを比較したときに、韓国のゲームはグラフィックスや安定性においてやや劣るところはありますが、コミュニティシステムは進んでいるという印象があります。このメリットを活かしつつ、日本人好みの要素を拡充していくことで、またひとつ新しいゲーム文化が華開くのではないかと考えています。

 Netclueというとオンラインゲーム業界ではまだ新進というイメージがありますが、もともとどういう業務を行なってきたのでしょうか?

Kang 日本と韓国の両方に関わるIT関連の業務に携わってきました。オンラインゲームに関わり出したのは2年前からです。中でも自信作が今回の「コルムオンライン」です。冒険の対象となるダンジョンが3,000個もあり、ギルドによる攻城戦(バトルダンジョン)などもあって、日本人にも幅広く受け入れられるのではないかと考えています。今では誇張ではなく、Netclueは「コルムオンライン」を日本にパブリッシングするための会社だと認識しています

 「コルムオンライン」は、ユーザー数から見ると、韓国でも比較的成功の部類に入るMMOだと思いますが、この人気の理由とは何だと捉えてますか?

Kang ひとつは、韓国では8年前から「コルム」というPC向けのアクションゲームを発売してユーザーの間で知名度が高かったこと、もうひとつはeSofnetが「Dragon Raja」や「N-Age」といったMMORPGの開発によってノウハウが蓄積されていたことが大きいと見ています。

 我々が「コルムオンライン」を選んだ理由というのは、単純にこれなら日本でも受け入れられそうだという手応えを感じたからです。

 そうすると、韓国での人気というのはNetclueの運営努力が実ったというよりむしろ、eSofnetのネームバリューと実績に寄るということですか。

Kang まったくそのとおりです。繰り返しますが、我々の仕事は「コルムオンライン」をいかに日本で成功させるかということです。これまで韓国ゲームのローカライズというと、単にハングルを日本語に訳しただけでしたが、我々はゲーム性まで踏み込んだゲーム全体のローカライズを考えています。

 といっても何も奇抜なことをやろうというのではなく、オープンβテストで日本のユーザーが何を求めているのかしっかり把握した上で、じっくり新しい要素の導入に取り組んでいくことになります。

 韓国メーカーが日本展開するときに良くないケースは、韓国と日本で運営しているメーカーが異なることです。これではユーザーの声を、開発者に直接届けるのは難しい。できるだけユーザーと開発者との距離を縮める必要がある。そこで私は社内で取り交わされるメールをすべてCCを付けてeSofnetにも送るようにしました。これで開発側は我々の考えをダイレクトに知ることができます。

 私の日課として日本の掲示板のチェックがあるのですが、「コルムオンライン」に関する情報はほぼ漏らさず目を通すようにしています。その中には手厳しいご意見もあります。また、私自身レベル70ですから、1ユーザーとして、共感できる部分もあります。

 とはいえ運営元の社長でもありますから、以前、夜間にサーバーがダウンしたときには、責任者に電話をかけて、「今サーバーが落ちたぞ、ゲームができないじゃないか」と直接怒鳴ったりもしました(笑)。

 社内には、「社長が掲示板を読むと仕事がしにくい」という声もあると聞いていますが、社長が情報を集めるのは当たり前の話です。もちろん、そこに書かれている要望のすべてを実現することはできませんし、個人の好き嫌いのようにどうにもならない問題もある。しかし、好き嫌いではなく、明らかに間違っているものは改善しなければならない。当たり前の話です。

 CEOの日本進出に対する熱意がよく伝わってきて、現在日本でプレイしているβテスターも確かな期待感を持ったのではないかと思います。それでは、先の話に戻りますが、ユーザーとの距離を近くという意味では、日本法人を置くべきだと思うのですが。

Kang いずれは法人を置くつもりではありますが、現在はもっとも効率のよい運営スタイルを模索している段階です。日本進出するから、日本法人は置かなければならないという考え方は必ずしも正解ではないと思っています。

 日本でも韓国産をはじめ、多くのタイトルがすでに正式サービスを行なっており、ユーザーの目も肥えてきています。「コルムオンライン」に対しても厳しい意見も多いのではないかと思いますが、こうした状況についてどのように捉えていますか?

Kang 日本はコンソールゲームがありましたから、日本人の目が肥えているのは昔からだと思います。また、完璧だという前提で出荷されるパッケージゲームと違って、オンラインゲームはある程度の状態でサービスが始まりますから、完璧を求めるユーザーは失望したかもしれません。実際、耳の痛い苦情もいっぱい届いています。

 我々としては、メーカーに文句を言うこともオンラインゲームならではの楽しみといいますか、ストレス解消だと思っています。文句が出るのはそれは今後改良される余地があるからこそで、パッケージゲームではこうした文句が出続けることはありません。日本のユーザーも、掲示板に書き込むことでそれが開発者の耳に届くという、オンラインゲームならではの文化、楽しさをもっともっと理解してほしいと思います。

 「文句を言うのも楽しみのひとつ」というのは新しい考え方だと思いますが(笑)、これまで数カ月βテストをしてきて、ご自身も日本ユーザーに混じってレベル70まで上げてみて、日本人コミュニティに対してどのような感触を持ちましたか?

Kang 少し過激さが足りないというか、単独行動を好むというか、他のユーザーと一定の距離を置くことを望む傾向が強いですね。最終的には3,000個ものダンジョンが用意されるわけですから、もう少し活発に行動して欲しいと思います。

 ズバリお聞きしますが、日本の有料化はいつに?

Kang 1月2月3月は、システムの安定と各種機能の拡充、4月頃にこれまでの状況を見て、有料化の時期を検討しようと考えています。私が1ユーザーの立場から納得いく内容になるまで有料化の話は進めません。ご安心下さい。


■ 3回に渡って導入される日本オリジナル要素とは!?

左から順にローカライズ&マーケティングチームのJi Han氏、マネージャーのKang Bong Suk氏、アシスタントマネージャーのSeok Nan Hee氏、テクニカルチームマネージャーのLee Sang Il氏
編集部 まず、日本語版におけるLocalizing & Marketing Teamの業務内容を教えてください

Kang Bong Suk氏 基本的にはeSofnetとユーザーの間のコミュニケーションを円滑にするお手伝いをする部署です。一番重要な業務が日本語へのローカライズ作業です

 ローカライズ作業は大別して3つの行程からなっていて、ひとつはゲーム内容そのものの習得、2つ目はテキストの翻訳に取りかかりますが、実際の翻訳そのものよりも日本の文化に合った最適な訳を探す過程に時間をかけます。3つ目は、翻訳したテキストをゲーム内に組み込む作業になります。

 現在日本語のローカライズを行なっているわけですが、今後、他の言語のローカライズを行なう予定はあるのですか?

Kang氏 今のところNetclueの海外展開は日本だけの予定ですので、日本語のみです。

 少し抽象的な質問になりますが、ハングルを日本語化するというのはどういうことなのでしょうか?

Kang氏 英語などの他の言語より難しいです。なんと言っても日本語は漢字変換を行なうために、IMEを入れなければなりませんから、より多くの作業が必要になります。「コルムオンライン」は開発当初は日本展開を考えていなかったので、以前は漢字変換したらクライアントが落ちるというようなこともありました。

 eSofnetの開発スタッフは日本語をまったく知らないので、現在ではNetclueから日本語ができるスタッフを派遣して共同で開発作業を行なっています。

 「日本の文化に合った翻訳」というのは具体的に何を指しているのですか?

Kang氏 たとえば、韓国では男性女性、性別や年齢によって喋る言葉というのはほとんど変わらないのですが、日本語は大きく異なります。この点を気を付けています。

 日本のユーザーから寄せられた問い合わせにはどのようなものがありますか?

Kang氏 1番多いのはゲームのバグとジョブ間の性能差に関する問い合わせです。最近ですと不法プログラムなどの報告もあり、対応に追われています。あとは最近中国からのユーザーが増えています。

 全体の9割近くは日本人で、次にオーストラリア、中国と続きます。この中国ユーザーが不法プログラムを使用するケースが多いようです。こうしたケースが今後増えるようであれば、中国からのアクセスに制限をかけることも検討しています。3月からは代理店を経由して中国でもサービスが開始されますから、それまでには収束すると思います。

 ローカライズに関する問い合わせはないのでしょうか?

Kang氏 これまでに深刻なトラブルの問い合わせは来ていません。細かい誤字などの報告がある程度ですね

 今後の課題というものはありますか?

Kang氏 まず1月に関してはゲームの安定化。安全にゲームが楽しめるような環境を整えることを目標にしました。この取り組みは2月以降も、有料化後も続けていきます。

 2月には、「コルムオンライン」初となるメジャーアップデート「不滅のアメリタット」を実装します。これによってワールドマップがさらに広がり、高レベル向けのモンスターなども数多く追加されます。2月はゲーム内容の強化がメインになります。既存のアイテムに300以上の追加オプションを導入したり、フリーマーケット(露店)機能など、ユーザーのレベルや職業を問わず、よりゲームが楽しくなることと思います。

 3月からはいよいよ日本人の趣向に合わせたローカライズに着手します。日本サーバーのみのアイテムやダンジョンを順次追加していきます。もちろん、ゲームバランスを取りながらの作業になるので実装には時間が掛かりますが、これは確定事項としてプランの中に盛り込まれています。

 日本オリジナル要素がいくつかありましたが、日本サーバーを優遇する理由というのは何でしょうか?

Kang氏 優遇というと少し誤解があります。我々はゲームのローカライズというのは、単に言葉を他の言語に置き換える作業のみを指すのではなく、その国の趣向にあうようにゲームそのものを適応させていくことも含まれていると考えています。日本固有のアイテムなどの導入はあくまでその一環に過ぎません。

 まず第1次アップデートではアイテム、第2次ではダンジョンやワールドマップを日本風に変えていき、第3次では日本独自の職業も追加していく方針です。ただ、現時点で実装スケジュールを明らかにすることはできません。

 ここまで大がかりになると韓国ユーザーから羨ましがられそうですが(笑)

Kang氏 過去の経験からお話しすると、韓国のユーザーはアップデートに関してそれほど気を配りません。ですから、日本だけの要素がいくつかあるからといって、それを韓国サーバーにも導入しろと苦情が来ることはないと考えています

 それはちょっと意外ですね。日本だと、これは別のMMORPGの話ですが、熱心なファンは、韓国の公式サイトやファンサイト等をチェックして、最新情報の収集に余念がありません。こうした好きだからこその努力を韓国ユーザーはあまりしないということでしょうか?

Kang氏 「コルムオンライン」に関しては、韓国のほうがバージョンが進んでますので、まずそのようなことはないと思います。ただし、韓国のユーザーの中にも、日本人とプレイするために日本サーバーを選択しているユーザーがいるのは事実です。そうしたユーザーから他の韓国ユーザーに情報が流れることはあるかもしれませんね。

 数カ月間、日本向けにサービスを行なってみて、どのような感触を掴みましたか?

Kang氏 日本ユーザーは、細かいところまでこだわりを持っていて、小さなバグでも見逃しません。また、韓国に比べ、全体的にライトユーザーが多い。ですから、2月に実装される予定の「不滅のアメリタット」では、韓国では大まかな紹介しかしなかったのですが、日本ではできるだけ細かく解説しました。そうしないと日本ユーザーから多くの質問が来てしまうためです。

 これは社長が常に言っていることですが、日本人に共感されるようなサービスでなければダメだと。我々もそう考えております。今後もサーバーの安定化と、内容の充実に努めていきますのでどうぞご期待下さい。

□Netclueのホームページ
http://www.netclue.co.kr/
□「コルムオンライン」のホームページ
http://www.corum.jp/
□関連情報
【2004年1月29日】「コルムオンライン」開発者/GMインタビュー
ギルド戦にテーマを絞った世界で展開するドラマとは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040129/netcu03.htm
【2004年1月28日】Netclue、「コルムオンライン」体験ツアーを開催
バトルダンジョンやボスモンスターハンティングなどを体験
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040128/netcu01.htm

(2004年1月30日)

[Reported by 中村聖司]


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