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★PCゲームレビュー★
■ユーザーが待ち望んだ拡張パック
前作は発売後にエディタープログラムが公開され、海外ではユーザーの手によってさまざまなアドオンが制作された。日本のユーザーもオリジナルシナリオを作り、ネットで公開するといった活動を行っている。オリジナルなキャラクタ、自分たちが作り上げたシナリオで、自由に冒険が楽しめるのが本作の大きな魅力だった。 本作「ダンジョンシージ 拡張パック:アランナの伝説」(以下、「アランナの伝説」)は、多くのユーザーが待ち望んだ初の公式拡張パック。新シナリオのみならず、さまざまな新ルール、新アイテム、新魔法が追加されている。エディターでは作成できない改良や追加要素により、さらに楽しいマルチプレイも楽しめる。 なお、「アランナの伝説」は旧シナリオも同梱されたお得なパッケージとなっている。アドオンソフトとは違い、本作だけで前作を含めたプレイが可能だ。前作をプレイしたユーザーは、そのキャラクタデータを持ち越し、マルチプレイで新シナリオを楽しむことができる。シングルプレイの場合は、新規キャラクタで冒険に挑戦することになる。シングルプレイでは前作同様、多彩なNPCが冒険をサポートしてくれる。 特に今回のシナリオではストーリー、舞台ともにパワーアップしており、充実したシングルプレイが楽しめるだろう。前作の内容を丸ごと含むということで、前作を購入したユーザーの中にはちょっと複雑な気持ちを持つ人もいるかもしれないが、シナリオのボリュームや、新システムの充実には驚かされることとなるだろう。特にマルチプレイを楽しんでいたユーザーは、ゲームを通じてできた友人達と、この新しい冒険を楽しんでもらいたい。
■勇者の血が、新しい世界の冒険を誘う 「アランナの伝説」は、前作の数十年後の物語。アーホックという雪に包まれた村から始まる。主人公は「勇者」の血を引く若者である。彼は村に向かったキャラバンが怪物に襲われた事件を始まりとして、やがて世界を揺るがす大きな事件との対決をすることになる。 寒々とした雪山での戦い、謎に包まれた古代遺跡、そこからいきなり南国を思わせる海岸、そしてさらに未知なる世界へと冒険の舞台は続いていく。キャラバンで運ばれていた「天星の杖」という大きな力を持ったアイテムを持ち去った敵を追って、物語は続いていくのだ。 ストーリーは、NPC達の会話だけではなく、ステージに落ちているさまざまな本やメモによっても語られる。かつて強大な文明を築いていたという「ウトラエ」という種族の記録が物語を彩っている。彼らがどれだけ栄え、そして衰退していったのかが、当時の手記によってわかり、冒険者に強い印象を残すだろう。 さらに、メモの中にはプレーヤーキャラクタである主人公の両親が残した日記も見つかる。また、旅先で訪れる村人達の会話からも、両親と仲間の足跡を耳にすることになる。彼らもまた、主人公達と同じように、世界を覆わんとする邪悪な意志と過酷な戦いを続けていたことを知るのだ。偉大な両親と再会できるかは、プレーヤーにとっても大きな関心となっていく。 今作は演出が非常に優れている。ファンタジー世界をベースにしていながらも、機械と魔法を融合させたSF的なウトラエの文明を盛り込むことで、独特の世界観を作り上げている。また、新種族であるハーフジャイアントや、優れた呪術師であるイリコーたちとの出会い、つぎつぎと開ける新世界の驚きも体験できる。これらは緻密なグラフィックとともに、ポイントを押さえた会話や、暗い地下迷宮を抜けた先に広がっていたりすることで、強くプレーヤーの心に訴えかけるように作られているのである。 また、音声の充実も今作を他のゲームに勝るとも劣らない楽しさを提供してくれている。プレーヤーを助け冒険を共にしてくれるNPCは、日本のRPGのように長い台詞をしゃべったり、人生を語ったりは決してしないが、プレーヤーの動作に応える短い台詞でその個性を主張する。 「俺の大きな体に隠れな!」、「我が民のために!」、「承知した」といった短い台詞ながら、それらはすべて日本語化され、さらに声優によって絶妙な調子で発せられる。たった数語のワードで、彼らの個性を感じ取るようになったのはRPGとしての大きな進化といえる。さらにひとりのキャラクタに用意されている台詞は非常に多く、冒険を続けていくことで、「こんな台詞もあったんだ」と、驚かされることだろう。 仲間以外も音声は充実しており、村人達の会話以外にも、迷宮で敵のボスがどこかからプレーヤーを監視し、脅しをかけてきたりする。筆者のお気に入りは「ウトラエの遺跡」のひとつに入ったときの「観光案内」だ。今は強力なモンスターが徘徊しているその場所は、かっては巨大なレジャー施設であったらしく、場違いなアナウンスがパーティーを出迎えるのだ。遊園地を思わせる底抜けに陽気な声が、時の浸食を受け、早回しになったり、雑音混じりになっていたりと「歪んで」しまっている。思わずニヤリとさせられる演出である。 モンスターがフィールドを徘徊し、闇の力が増している本作の世界は、非常に殺伐とした過酷なところである。また、日本人とは違った価値観で練り上げられた物語は、日本のRPGとは、まったく違う感触をプレーヤーにもたらす。ゲームはひたすら戦いを繰り返す事で進行していく。しかし、その過酷な世界を力でもって押し進み、未知の世界を「開拓」していく興奮が本作にはある。ゲームの難易度は調整が可能で、さらに細かい探索を行なうことでたっぷりと回復アイテムが入手できるので初心者にも充分挑戦できる。海外のRPG入門作としてもオススメできる作品だ。 自由度の高さもこの作品のウリのひとつ。本作のキャラクタは、接近戦闘、弓戦闘、回復系が多い自然魔法、ダメージを与える戦闘魔法の、4つのスキルを上げていくことでキャラクタを育成する。一度倒した敵は復活しないため、経験値稼ぎができず、ゲーム中盤からの転職や、いくつかのスキルを同時に成長させ続けるのは難しい。スキルを高めていかなくては、後半で登場する強力な魔法や、アイテムが使用できなくなってしまうため、冒険の成功もまた困難になってしまう。 序盤に仲間になるNPCは、自然魔法の使い手と、弓の使い手なため、プレーヤーキャラクタを戦士にしてしまいがちだが、出発点にある村で装備の調整を行なっておけば、魔法使いや、弓の名手としても育てることは可能だ。そのかわり、ふたりのうちのどちらかを壁になる戦士タイプに育てればよい。序盤に頑張ることによって、好きなタイプの主人公に挑戦できるのだ。一度クリアした後も、新しい主人公の育成を狙ってみるのも楽しいかもしれない。 ■追加、改良されたさまざまな要素 かつて海外や日本でユーザーの手によって開発されてきたアドオンは、正統派RPGから、プレーヤーの剣がライトセーバー風になったりとユニークなモノまであった。しかし、新しい魔法を導入するといったプログラムの拡張は不可能だった。今回新たに実装された多彩な新魔法や、アイテムなどは前作のファンが待ち望んだものだ。 特に力を入れられているのが魔法である。自然魔法ではウルフやスコーピオンに変身できる「転移」魔法が用意されている。これを唱えると呪文は使用できなくなるが、非力な魔法使いが強力なモンスターに変身して、強力な物理攻撃が可能になる。罠のように設置して敵を待ち受ける“グリフ”という魔法もある。アシッドグリフや、ファイアグリフなど色々な種類がある。 筆者が使っていて便利だと感じたのは“オーブ”の魔法。これは詠唱者の周りを浮遊し、攻撃などを行ってくれるオーブを造り出す魔法。特にヒールをしてくれるヒーリングオーブが便利だった。オーブを作ると、モンスターを召喚する事ができなくなる。また、召喚モンスターに比べてオーブの使用時間は短く設定されている。効率と共に、好みも考えて使っていきたい魔法だ。 武器も非常に多く追加された。特に“セットアイテム”の存在は、コレクション欲、探索する楽しさを刺激してくれる存在だ。セットアイテムとは名前が冠せられたアイテムのセットで、名前の同じアイテムを身につければつけるほど、アイテムの効果が増していく仕組みになっている。プレーヤーキャラクタの両親が使用していた「アーホックの宿命」の他、さまざまなものが用意されている。 戦闘魔法の呪術者向けに作られた「創案者の特権」というセットは、ボウ、シールド、魔導書の3つで、これら全部を身につけると、非常に強力なキャラとなる。セットアイテムは青く輝く宝箱に収められており、見つけにくい場所に置かれている場合もある。マップの隅々まで探索して、コンプリートを目指そう。 アイテムの収集も快適になっている。“整理”ボタンが追加され、アイテムを自動的に整頓してくれるほか、ポーションなども自動配分される。戦士キャラクタには必要のないマナポーションはきちんと魔法使いに回されるという便利さである。 本作はフィールドにアイテムが入ったオブジェクトが配置されており、これを壊したり開けたりすることでアイテムを入手できるのだが、その数はものすごく多くて、収集していくのが大変になってくる。本作ではこれにも対応している。ひとつ目がアイテムの持ち運べる量を増やしてくれるリュックサック。序盤は高価に感じるが、店で売ることもできるアイテムをより多く持ち運べるようになるので、早めに入手しておきたい。 前作のマスコットキャラクターであるラバは、多くのアイテムを運んでくれる動物だったが、今作に登場する“トラッグ”は一味違う。イリコー族の飼育する恐竜のようなモンスターだが、ラバのようにアイテムを運んでくれるだけではなく、その角で戦ってくれるのだ。さらに戦闘を繰り返すことで成長もする。また、トラッグを強化する魔法まで用意されている。思い入れに応えてくれる有能なペットである。 他にもインターフェイスにおいてさまざまな改良がほどこされており、より快適な冒険が楽しめるようにアイデアが込められている。日本人プレーヤーにとっては、多少3D酔いの可能性が捨てきれないが、スピーディーで楽しい冒険ゲームとして完成度もかなり高くなった作品である。 ■よりゲームを極めるためのマルチプレイモード シングルプレイで育てたキャラクタをさらに高みに登らせることができるのが、このマルチプレイだ。「アランナの伝説」では、初期キャラクタでもマルチプレイを楽しめるようになっているが、こちらでは冒険を助け、一緒に戦ってくれるNPCは存在しないため、必然的にきつい戦いになる。強いキャラクタの方が、楽しめるはずだ。 ジャーナルをセーブできるようになったのもうれしい。友達と、昨晩途中まで進めたシナリオを挑戦できるのだ。ZONEで知り合っても良いし、ゲームのファンが集まっているところを訪ねて仲間を募るのも良いだろう。本作が発売されれば、そういった動きは活発になっていく。アイテムの交換を持ちかけ、セットアイテムのコンプリートを目指すなど、交流が期待できるだろう。 マルチプレイでは「アランナの伝説」、前作のシナリオであるエッブ王国のシナリオ、そしてマルチプレイ専用のウトラエアン半島のシナリオが楽しめる。冒険のセーブが可能になったことで、仲間達と長期にわたって経験を共有し、最強のキャラクタ育成を目指せるだろう。 海外ではユーザーの手によって大規模なシナリオも作られつつあるという「ダンジョンシージ」。海外のシナリオをプレイするのに大きな壁となるのが言語の問題だが、マルチプレイの仲間に詳しい人がいれば即解決。また、モニターの文字を辞書で調べながら、仲間と英文の解釈をするのも楽しいだろう。
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□マイクロソフトのホームページ (2004年1月23日) [Reported by 勝田哲也]
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