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★PCゲームレビュー★

新しい世界とルールを提示する拡張パック
マイクロソフト ダンジョンシージ
拡張パック:アランナの伝説
  • ジャンル:ロールプレイング
  • 発売元:マイクロソフト株式会社
  • 価格:6,800円
  • 対応OS:PC Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2004年1月30日発売



■ユーザーが待ち望んだ拡張パック

3Dグラフィックで再現されたフィールドで、スピーディーな戦いが楽しめるファンタジーRPG。前作以上にユニークなモンスターが多数出現する
 重厚なファンタジー世界を表現したグラフィック、カジュアルな操作性、メカニカルなモンスターも出てくる独特な世界観。「ダンジョンシージ」は、日本でも人気の高いアクションRPG。マイクロソフトのマッチングサービス、「ZONE」でマルチプレイを楽しんでいるユーザーも多く、シングルプレイ、マルチプレイともに快適でスリルのある冒険が堪能できる作品である。

 前作は発売後にエディタープログラムが公開され、海外ではユーザーの手によってさまざまなアドオンが制作された。日本のユーザーもオリジナルシナリオを作り、ネットで公開するといった活動を行っている。オリジナルなキャラクタ、自分たちが作り上げたシナリオで、自由に冒険が楽しめるのが本作の大きな魅力だった。

 本作「ダンジョンシージ 拡張パック:アランナの伝説」(以下、「アランナの伝説」)は、多くのユーザーが待ち望んだ初の公式拡張パック。新シナリオのみならず、さまざまな新ルール、新アイテム、新魔法が追加されている。エディターでは作成できない改良や追加要素により、さらに楽しいマルチプレイも楽しめる。

 なお、「アランナの伝説」は旧シナリオも同梱されたお得なパッケージとなっている。アドオンソフトとは違い、本作だけで前作を含めたプレイが可能だ。前作をプレイしたユーザーは、そのキャラクタデータを持ち越し、マルチプレイで新シナリオを楽しむことができる。シングルプレイの場合は、新規キャラクタで冒険に挑戦することになる。シングルプレイでは前作同様、多彩なNPCが冒険をサポートしてくれる。

 特に今回のシナリオではストーリー、舞台ともにパワーアップしており、充実したシングルプレイが楽しめるだろう。前作の内容を丸ごと含むということで、前作を購入したユーザーの中にはちょっと複雑な気持ちを持つ人もいるかもしれないが、シナリオのボリュームや、新システムの充実には驚かされることとなるだろう。特にマルチプレイを楽しんでいたユーザーは、ゲームを通じてできた友人達と、この新しい冒険を楽しんでもらいたい。

【スクリーンショット】
物語のスタートは雪に覆われた小さな村から。主人公は村人に請われて冒険に旅立つ “天星の杖”を奪う謎の敵。強大な杖を持つこの杖を巡って物語は展開していく 本作は新シナリオの他に、前作のシナリオも収録している。こちらのボリュームもたっぷり



■勇者の血が、新しい世界の冒険を誘う

 「アランナの伝説」は、前作の数十年後の物語。アーホックという雪に包まれた村から始まる。主人公は「勇者」の血を引く若者である。彼は村に向かったキャラバンが怪物に襲われた事件を始まりとして、やがて世界を揺るがす大きな事件との対決をすることになる。

 寒々とした雪山での戦い、謎に包まれた古代遺跡、そこからいきなり南国を思わせる海岸、そしてさらに未知なる世界へと冒険の舞台は続いていく。キャラバンで運ばれていた「天星の杖」という大きな力を持ったアイテムを持ち去った敵を追って、物語は続いていくのだ。

 ストーリーは、NPC達の会話だけではなく、ステージに落ちているさまざまな本やメモによっても語られる。かつて強大な文明を築いていたという「ウトラエ」という種族の記録が物語を彩っている。彼らがどれだけ栄え、そして衰退していったのかが、当時の手記によってわかり、冒険者に強い印象を残すだろう。

 さらに、メモの中にはプレーヤーキャラクタである主人公の両親が残した日記も見つかる。また、旅先で訪れる村人達の会話からも、両親と仲間の足跡を耳にすることになる。彼らもまた、主人公達と同じように、世界を覆わんとする邪悪な意志と過酷な戦いを続けていたことを知るのだ。偉大な両親と再会できるかは、プレーヤーにとっても大きな関心となっていく。

 今作は演出が非常に優れている。ファンタジー世界をベースにしていながらも、機械と魔法を融合させたSF的なウトラエの文明を盛り込むことで、独特の世界観を作り上げている。また、新種族であるハーフジャイアントや、優れた呪術師であるイリコーたちとの出会い、つぎつぎと開ける新世界の驚きも体験できる。これらは緻密なグラフィックとともに、ポイントを押さえた会話や、暗い地下迷宮を抜けた先に広がっていたりすることで、強くプレーヤーの心に訴えかけるように作られているのである。

 また、音声の充実も今作を他のゲームに勝るとも劣らない楽しさを提供してくれている。プレーヤーを助け冒険を共にしてくれるNPCは、日本のRPGのように長い台詞をしゃべったり、人生を語ったりは決してしないが、プレーヤーの動作に応える短い台詞でその個性を主張する。

 「俺の大きな体に隠れな!」、「我が民のために!」、「承知した」といった短い台詞ながら、それらはすべて日本語化され、さらに声優によって絶妙な調子で発せられる。たった数語のワードで、彼らの個性を感じ取るようになったのはRPGとしての大きな進化といえる。さらにひとりのキャラクタに用意されている台詞は非常に多く、冒険を続けていくことで、「こんな台詞もあったんだ」と、驚かされることだろう。

 仲間以外も音声は充実しており、村人達の会話以外にも、迷宮で敵のボスがどこかからプレーヤーを監視し、脅しをかけてきたりする。筆者のお気に入りは「ウトラエの遺跡」のひとつに入ったときの「観光案内」だ。今は強力なモンスターが徘徊しているその場所は、かっては巨大なレジャー施設であったらしく、場違いなアナウンスがパーティーを出迎えるのだ。遊園地を思わせる底抜けに陽気な声が、時の浸食を受け、早回しになったり、雑音混じりになっていたりと「歪んで」しまっている。思わずニヤリとさせられる演出である。

 モンスターがフィールドを徘徊し、闇の力が増している本作の世界は、非常に殺伐とした過酷なところである。また、日本人とは違った価値観で練り上げられた物語は、日本のRPGとは、まったく違う感触をプレーヤーにもたらす。ゲームはひたすら戦いを繰り返す事で進行していく。しかし、その過酷な世界を力でもって押し進み、未知の世界を「開拓」していく興奮が本作にはある。ゲームの難易度は調整が可能で、さらに細かい探索を行なうことでたっぷりと回復アイテムが入手できるので初心者にも充分挑戦できる。海外のRPG入門作としてもオススメできる作品だ。

 自由度の高さもこの作品のウリのひとつ。本作のキャラクタは、接近戦闘、弓戦闘、回復系が多い自然魔法、ダメージを与える戦闘魔法の、4つのスキルを上げていくことでキャラクタを育成する。一度倒した敵は復活しないため、経験値稼ぎができず、ゲーム中盤からの転職や、いくつかのスキルを同時に成長させ続けるのは難しい。スキルを高めていかなくては、後半で登場する強力な魔法や、アイテムが使用できなくなってしまうため、冒険の成功もまた困難になってしまう。

 序盤に仲間になるNPCは、自然魔法の使い手と、弓の使い手なため、プレーヤーキャラクタを戦士にしてしまいがちだが、出発点にある村で装備の調整を行なっておけば、魔法使いや、弓の名手としても育てることは可能だ。そのかわり、ふたりのうちのどちらかを壁になる戦士タイプに育てればよい。序盤に頑張ることによって、好きなタイプの主人公に挑戦できるのだ。一度クリアした後も、新しい主人公の育成を狙ってみるのも楽しいかもしれない。

【スクリーンショット】
最初の仲間になるジョンダール。彼は仲間のHPを回復するヒールを操る自然魔法の使い手だ 冒険の先々で手に入れる本。主人公の両親の足跡の他、遺跡の本来の機能など、世界観を深めるものが多い 序盤のダンジョンにある強力なモンスターの死体。いずれ生きている怪物に出会うことがあるのだろうか?
強力なボスモンスター。その大きさに圧倒される。ポーションを使いまくる、力押しの戦いで挑もう 迷宮から一気に街に運ぶ転送装置。古代に栄えていたというウトラエの文明の遺物。現在も稼動し続けている 雪山の迷宮を抜けると目の前に広がるのは南洋を思わせるジャングル。激しい環境の変化は驚きである
巨大な望遠鏡。冒険を進めることで、島のあちこちにある、ウトラエの文明の遺跡を目にすることとなる モンスターの徘徊する迷宮に残っていた機械教師。かってこの場所は魔法学校だったのだろうか? ワールドマップ。ストーリーを進めることで影が取り払われ完全な地図になっていく
進んだ魔法文明をもつイリコー族の村。現在は力を強めつつある闇の勢力によって守勢に立たされている 沼から多くのゾンビが襲いかかってくる。不気味なゾンビの挙動など、モデリングやモーションも凝っている マグマが流れる火山地帯。このほか南国の海岸や、暗い沼、怪しい地下迷宮など冒険の舞台はめまぐるしく変化していく



■追加、改良されたさまざまな要素

 かつて海外や日本でユーザーの手によって開発されてきたアドオンは、正統派RPGから、プレーヤーの剣がライトセーバー風になったりとユニークなモノまであった。しかし、新しい魔法を導入するといったプログラムの拡張は不可能だった。今回新たに実装された多彩な新魔法や、アイテムなどは前作のファンが待ち望んだものだ。

 特に力を入れられているのが魔法である。自然魔法ではウルフやスコーピオンに変身できる「転移」魔法が用意されている。これを唱えると呪文は使用できなくなるが、非力な魔法使いが強力なモンスターに変身して、強力な物理攻撃が可能になる。罠のように設置して敵を待ち受ける“グリフ”という魔法もある。アシッドグリフや、ファイアグリフなど色々な種類がある。

 筆者が使っていて便利だと感じたのは“オーブ”の魔法。これは詠唱者の周りを浮遊し、攻撃などを行ってくれるオーブを造り出す魔法。特にヒールをしてくれるヒーリングオーブが便利だった。オーブを作ると、モンスターを召喚する事ができなくなる。また、召喚モンスターに比べてオーブの使用時間は短く設定されている。効率と共に、好みも考えて使っていきたい魔法だ。

 武器も非常に多く追加された。特に“セットアイテム”の存在は、コレクション欲、探索する楽しさを刺激してくれる存在だ。セットアイテムとは名前が冠せられたアイテムのセットで、名前の同じアイテムを身につければつけるほど、アイテムの効果が増していく仕組みになっている。プレーヤーキャラクタの両親が使用していた「アーホックの宿命」の他、さまざまなものが用意されている。

 戦闘魔法の呪術者向けに作られた「創案者の特権」というセットは、ボウ、シールド、魔導書の3つで、これら全部を身につけると、非常に強力なキャラとなる。セットアイテムは青く輝く宝箱に収められており、見つけにくい場所に置かれている場合もある。マップの隅々まで探索して、コンプリートを目指そう。

 アイテムの収集も快適になっている。“整理”ボタンが追加され、アイテムを自動的に整頓してくれるほか、ポーションなども自動配分される。戦士キャラクタには必要のないマナポーションはきちんと魔法使いに回されるという便利さである。

 本作はフィールドにアイテムが入ったオブジェクトが配置されており、これを壊したり開けたりすることでアイテムを入手できるのだが、その数はものすごく多くて、収集していくのが大変になってくる。本作ではこれにも対応している。ひとつ目がアイテムの持ち運べる量を増やしてくれるリュックサック。序盤は高価に感じるが、店で売ることもできるアイテムをより多く持ち運べるようになるので、早めに入手しておきたい。

 前作のマスコットキャラクターであるラバは、多くのアイテムを運んでくれる動物だったが、今作に登場する“トラッグ”は一味違う。イリコー族の飼育する恐竜のようなモンスターだが、ラバのようにアイテムを運んでくれるだけではなく、その角で戦ってくれるのだ。さらに戦闘を繰り返すことで成長もする。また、トラッグを強化する魔法まで用意されている。思い入れに応えてくれる有能なペットである。

 他にもインターフェイスにおいてさまざまな改良がほどこされており、より快適な冒険が楽しめるようにアイデアが込められている。日本人プレーヤーにとっては、多少3D酔いの可能性が捨てきれないが、スピーディーで楽しい冒険ゲームとして完成度もかなり高くなった作品である。

【スクリーンショット】
さまざまな動物に変身できる転移魔法。高レベルのものはトロールにも変身できる 魔法的な罠を作り出せるグリフ呪文。この魔法は酸を相手に吹きかけるアシッド・グリフ シューティングゲームのオプションのようなオーブ系呪文。特にヒーリングオーブが便利だ
さまざまな種類があるセットアイテム。集めるごとに、性能が飛躍的にアップする セットアイテムが収められた箱は青い光を放つ。期待に胸をふくらませる瞬間だ ゲームが進むと多彩なアイテムが手に入る。外見も非常に派手になる
アイテムが非常に多く出現するのが本作の特徴。持ち運べる量を増やせるバックパックはうれしいアイテムだ 恐竜のようなトラッグ。アイテムをたっぷりもてるだけではなく、戦闘もオッケーな頼れるベットである 地面に落ちたアイテムをお金に換えてしまう魔法。いらないアイテムはばんばんお金に換えてしまおう



■よりゲームを極めるためのマルチプレイモード

 シングルプレイで育てたキャラクタをさらに高みに登らせることができるのが、このマルチプレイだ。「アランナの伝説」では、初期キャラクタでもマルチプレイを楽しめるようになっているが、こちらでは冒険を助け、一緒に戦ってくれるNPCは存在しないため、必然的にきつい戦いになる。強いキャラクタの方が、楽しめるはずだ。

 ジャーナルをセーブできるようになったのもうれしい。友達と、昨晩途中まで進めたシナリオを挑戦できるのだ。ZONEで知り合っても良いし、ゲームのファンが集まっているところを訪ねて仲間を募るのも良いだろう。本作が発売されれば、そういった動きは活発になっていく。アイテムの交換を持ちかけ、セットアイテムのコンプリートを目指すなど、交流が期待できるだろう。

 マルチプレイでは「アランナの伝説」、前作のシナリオであるエッブ王国のシナリオ、そしてマルチプレイ専用のウトラエアン半島のシナリオが楽しめる。冒険のセーブが可能になったことで、仲間達と長期にわたって経験を共有し、最強のキャラクタ育成を目指せるだろう。

 海外ではユーザーの手によって大規模なシナリオも作られつつあるという「ダンジョンシージ」。海外のシナリオをプレイするのに大きな壁となるのが言語の問題だが、マルチプレイの仲間に詳しい人がいれば即解決。また、モニターの文字を辞書で調べながら、仲間と英文の解釈をするのも楽しいだろう。

ゲームのホスト画面。PVPの有無、全体の難易度設定、死んだときにアイテムを落とすかなど、細かい設定ができる マルチプレイではシナリオを最初からプレイすることも可能 シングルプレイで楽しめる2本のシナリオの他、マルチプレイ専用のシナリオも収録されている

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【マイクロソフト ダンジョンシージ 拡張パック:アランナの伝説】
  • CPU:Pentium 4 1.4MHz以上(最低 PentiumIII 600MHz以上 推奨)
  • メモリ:256MB以上(最低 128MB)
  • HDD:インストール時:2GB以上、実行時:400MB以上
  • ビデオカード:ビデオ メモリ 32 MB 以上 (最低 16 MB)
    DirectX 8.1 以上対応のビデオ カード


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「マイクロソフト ダンジョンシージ 拡張パック:アランナの伝説」のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/dungeonsiegeloa/
□関連情報
【2003年12月8日】マイクロソフト、「Dungeon Siege: Legends of Aranna」を1月30日に発売
本編同梱でたっぷり遊べる「Dungeon Siege」拡張パック
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031208/dsla.htm
【2003年11月27日】「Dungeon Siege: Legends of Aranna」Playable Demo
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031127/demo1127.htm

(2004年1月23日)

[Reported by 勝田哲也]


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