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★PS2ゲームレビュー★

「きみがいつか見た物語は、終わらない旅の途中だったんだ」
「ワイルドアームズ アルターコード:F」



 初代プレイステーションで発売され好評を博した「ワイルドアームズ(以下、WA)」が「アルターコード:F」として、装いを新たに復活を遂げた。それも単なる復活に留まらず、グラフィックの3D化に加えてムービーシーンの大幅な追加、戦闘バランスを含めた難易度の再調整と、もはや完全なる新作といっても過言ではない仕上がりとなっている。

 特にグラフィックに関しては、現RPGの中でも最高峰ともいえる出来栄えで、シーンが変わるたびに画面を見ているだけで飽きることはなかった。個人的に「WA」シリーズは初代からプレイしているファンであっただけに、今回のリメイク作にはいい意味で期待を裏切られた。

オープニングより吹雪の中にそびえ立つ謎の城 魔族と対峙する「フェンリルナイト」呼ばれる騎士達
描きこまれたグラフィックをご覧いただきたい。もはやリメイクという域を通り過ぎている



■ 作りこまれた戦闘システムとバランスの良さが、歯切れ良いテンポを作り出す

 「WA」シリーズ初体験で説明書を読まずにプレイすると、戦闘システムがかなり理解しにくいと思う。といっても「攻撃」、「魔法」のようなベーシックとなるコマンドは、通常のRPGと何ら変わりはない。これらに加えて、本作には「フォースポイント(以下、FP)」という概念が存在する。

 これは敵に攻撃を仕掛けた時や、逆に攻撃を受けた時にたまっていくポイントのことで、「FP」が上昇するとスキルが発動しやすくなったり、攻撃力や防御力がアップだけでなく、100%の状態になると全てのマイナスステータスが回復するオマケつき。しかし、これらはオマケ要素でしかなく(オマケというには効果充分だが)、たまった「FP」を消費することで「フォースアビリティ(以下、FA)」が発動できるのだ。「FA」はキャラクタごとによって様々で、また、数種類存在する。例えばロディならば「FP」を25%消費することで「ロックオン」を発動することができる。「ロックオン」は命中率を100%にするもので、回避率が高い相手には勿論、「オリジナル」コマンドである「カードリッジ」を使用する時に非常に効果的だと感じた。「FP」の存在は通常のコマンドRPGと比べて作業感を拭うばかりでなく、戦略性をも作り出していると感じる。例えそれがボスキャラクタ以外の通常戦闘においてでも同様のことがいえる。ちなみに「FP」は次の戦闘に持ち越されることはない。つまり「FP」がたまっている状態で戦闘が終了しそうな時は、積極的に使い切ってしまった方がいいだろう。

ロディの「フォースアビリティ」選択画面。本文でも紹介しているとおり、いずれのアビリティを使うにしても「フォースポイント」を消費する こちらはザックの「オリジナル」コマンドのひとつである「スピードファング」


 さて、本作はリメイク前と比べて、格段に戦闘の難易度が下がっている。それでも通常モンスターを毎回1ターンで倒すことができるか? というと、そういうわけでもない。そのため、通常戦闘においても「FP」を考えながら戦闘を行なう必要がある。

 例えば仲間の一人である「セシリア」は通常攻撃が乏しく、戦闘では魔法と「FP」ポイントを使用した「ミーディアム」による召喚魔法が主力となる。そのため、特にボスキャラクタとの戦闘では仲間に戦闘支援や回復魔法を使用するか、攻撃で「FP」ポイントの上昇を優先するか、といった戦略が生まれてくる。

左の画像はセシリアの「フォースアビリティ」である召還魔法。この画像だけでも迫力が伝わると思う。右はクレストソーサーと呼ばれる紋章魔法のうちの1つ



敵の出現が迫ると画面のように「!」マークがあらわれる。通常は白だが、これが緑だとゲージを消費せずにキャンセルできる。また、赤の場合は強制戦闘となる
 また、本作には強制戦闘以外では戦闘をキャンセルする「エンカウントキャンセルゲージ(以下、ECCG)」が存在する。本作は通常のRPGと比べて非常にエンカウント率(敵との遭遇率)が高い。しかし、このエンカウント率の高さが「ECCG」の伏線となっていると感じた。エンカウント率が高すぎれば不快感を生み、逆に低すぎるとやり応えがなく、戸惑ってしまうものだが、本作では、戦闘好きなプレーヤーならばエンカウント率が高めに設定されているので問題はなく、逆に、早くストーリーを進めたいというプレーヤーには「ECCG」が残っている限り戦闘をキャンセルして先に進むことができる。

 「FP」と「ECCG」の存在は在りきたりな戦闘に戦略性を持たせ、ゲームのテンポを保つ為に重要な役割を担っている。特に「ECCG」は、強制戦闘以外のプレイをユーザーの手にゆだねることによって、ここまで爽快感と緊張感が感じられるものなのか、と感銘を受けたほどだ。

ファルガイアを救うために立ちあがった渡り鳥達。一番最後(右下)の女の子は「カラミティジェーン」の異名を持つ、凄腕の渡り鳥。何かと主人公達に関わってくることに。隣の老人はメイドのマクダレンだ



■ パズルとRPGの融合がもたらす新しい感覚

 「WA」シリーズをプレイしたことがある方には旧知の事実だが、本作は至るところにパズル要素が盛り込まれている。これはサブイベントだけに留まらず、シナリオを進める場面においても、多数のパズルが存在する。筆者がプレイした感想では、難易度的には中の上といったところか。当然パズルの内容によって難易度はばらつきがあるので、一概に評価を下すことはできないのだが、それでも思考を巡らせることによって大抵の謎は自力で解くことができるだろうし、謎が解けたときの爽快感は折り紙つきである。

 また、本編とは直接的に影響はないのだが、物語の舞台となる「ファルガイア」には「パズルボックス」と呼ばれる施設が点在している。これはその名が示す通り「パズル」が仕掛けられており、バラバラに散らばったカラーキューブを同じ色ごとにつなげて、全部消去するとクリアとなる。あまりイメージが湧かない、という方は「倉庫番」をイメージしてもらえるとわかりやすいだろうか? 見事、全部のカラーキューブを消去することに成功すれば、本編を進めているだけでは手に入れることができない貴重なアイテムを貰えることがあるのだ。

 普通にプレイしているだけでは手に入らないアイテムが存在する時点で、なるべくならばクリアしておきたいところだが、個人的にはそういった意味合いではなく、あまりパズルが好きではないプレーヤーにこそプレイして欲しいと思う。ブロックを消していくだけの単純作業なのだが、逆に誰にでもわかりやすいルールだからこそ、「パズルボックス」は中毒性が高いという印象を受けた。

 勿論、「パズルボックス」の存在を無視したとしても、本作のRPGとしての完成度は高く、シナリオもグイグイと引き込まれる濃厚なものとなっている。しかし、発見した「パズルボックス」を確実にこなしていくことで、更なる「WA」の魅力に気付くことだろう。


■ 描き下ろされた美麗なグラフィック、それを際立たせるサウンドの魅力は健在

 冒頭でも述べたとおり、本作はリメイクにあたって大幅なグラフィックの書き換えが行なわれている。その出来栄えは、もはや別のゲームだといっても過言ではないだろう。キャラクタや建造物などは勿論、空や海、砂といった、特に自然に関する描写は芸術の域まで達しているという印象が強かった。



 また、サウンドには定評がある「WA」シリーズだが、個人的には「2」や「3」よりも「1」、つまり本作が一番気に入っている。「荒野と口笛をテーマとしたRPG」をモチーフとしているだけのことはあり、いかなる場面においてもサウンドがミスマッチしているせいで展開が盛り下がる、といった印象は感じなかった。特に旧作からのファンならば、「WA」を象徴するサウンドともいえる“名曲「荒野の果てへ」”に思わずニヤリとした方も少なくないだろう。

 さて、ゲームを評価するポイントは人によって様々だが、RPGを評価する上で重要なカテゴリーは「サウンド」、「グラフィック」、「シナリオ」、「戦闘システム&バランス」だと筆者は考えている。本作は、それらをどの視点から眺めても素晴らしい完成度。

 「ワイルドアームズ アルターコード:F」の購入を悩んでいる方へ。まずは描き込まれたグラフィックと“名曲「荒野の果てへ」”をどこででも構わないので味わってみてほしい。きっと購入を見送ることはできなくなっているはずだ。

(C)2003 Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのホームページ
http://www.playstation.jp/
□「ワイルドアームズ アルターコード:F」の公式ページ
http://www.playstation.jp/scej/title/code_f/

(2003年12月10日)

[Reported by 林 智加良]


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