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★PS2ゲームレビュー★
射影機(カメラ)を駆使して、ファインダー越しの1人称視点から“霊を撮影して倒す”という戦闘スタイルが特徴のアドベンチャーゲーム「零 ~zero~」。そのシリーズ最新作である「零 ~紅い蝶~」が、プレイステーション 2で発売された。ゲームの目的は、双子姉妹の妹「天倉澪」を操作して、襲い来る悪霊をカメラで退けつつ、呪われた村から脱出すること。姉である「天倉繭」は、基本的に澪の後を追走するNPCだが、プレーヤーが繭を操作する場面もある。ゲームオーバーの条件は、澪のヒットポイントが無くなることと、繭が長時間霊から攻撃を受けて倒れることだ。
■ ただ驚かすだけではない! 「零~紅い蝶~」の恐怖ポイントを再確認 ホラーアドベンチャーと銘打つからには“さぞやプレーヤーの恐怖心を煽ってくれるだろう”と期待しつつプレイした「零~紅い蝶~」。その期待感は裏切られることなく、徹頭徹尾、テンポよく恐怖感が押し寄せるという印象だ。まさに「静と動」といった感じであり、単に恐怖感を煽るイベントを乱発するのではなく、イベントの間に絶妙な間(ま)が保たれている点が、次に訪れるであろう恐怖を倍増させてくれる。具体的に“何がどう怖いのか”についてを、以下にまとめてみた。ひとつでも琴線に触れるポイントがあったのならば、是非とも実際にプレイしていただきたい。 ●ポイント01 「随所に出現する霊」
「零~紅い蝶~」には、主人公に攻撃を仕掛けてくる霊のほかに、3Dフィールドの移動中に突如として現れる霊がいる。主人公の脇を笑いながら駆け抜けていく子供の霊、廊下を横切る女性の霊……。お化け屋敷の「驚かし」のようなものだが、怖い物はコワイ。ホラー映画の宣伝文句のようであるが、5分に一度は霊が出現するという不意打ちで、ついビクついてしまった。
●ポイント02「村という設定」
双子の少女が迷い込んだ先は、地図から消えた村「皆神村」。ゲーム中は常に夜という設定で、深い闇に覆われた屋敷内では懐中電灯一本しか使えない。不穏な空気のなかに放り込まれたプレーヤーは、徐々に平常心を失っていく。また、皆神村では古来より伝わる儀式が執り行なわれており、ゲームの要所要所では禍々しい祭式のムービーが挿入される。このざらついたムービーのなかに、衝撃的なシーンが散りばめられている。これにより、嫌が応にも皆神村に対する恐怖感が植えつけられていく。
●ポイント03「霊の造詣」
登場する霊はすべて人間型。過度にスプラッターな霊は存在せず、せいぜい首が90度に折れている程度。全身が濡れた女性、動く日本人形など、和風テイストで統一されている。霊の周囲に見受けられる空気のゆらぎ、肌の透度など、人外の存在を表現する効果も前作からさらに磨きがかかっている。
●ポイント04「サウンド」
居るはずのない人の気配、耳元にささやく声すらも、本当にそこに居るように感じさせるリアルな音響技術が秀逸。今作のサウンドは、屋敷内に「音のうねり」というか、自然音に近い、なおかつ悪意を感じさせる重低音が部屋ごとに割り当てられている。なによりも必聴すべきはボイス。歪んだ感じに加工されているか、あるいはストレートに発音される霊の笑い声や問いかけは、ゲームとわかっていても背筋が凍りついてしまう。
■ 霊を待ち受けるプレッシャー ~射影機による霊との戦闘~
天倉澪が使用する武器は、霊を写すカメラ「射影機」のみ。射影機を構えると、画面は3Dフィールドからファインダー越しの1人称視点にシフト。ファインダーモードの画面中央には“キャプチャーサークル”という円があり、この円内に被写体(霊)を収めてシャッターを切ることで霊にダメージを与えていく。ガンシューティングにたとえるならば、射影機は「銃」、フィルムが「弾薬」といったところだ。霊に与えたダメージ量に応じてポイントを入手でき、ポイントを消費することで射影機の機能を強化できる。
ほとんどの霊は移動速度が遅いため、わりと簡単にフォーカスできそうなのだが、いざ撮影するとなると想定外のプレッシャーがのしかかる。これは、霊に大ダメージを与える「シャッターチャンス」、「フェイタルフレーム」の条件が至近距離であったり、あるいは攻撃モーション中の一瞬であったりと「霊を引き付ける」ことが条件になってくるからだ。近接距離での撮影に失敗すれば、十中八九に主人公はダメージを受けるが、成功した時の恩恵(ダメージ+ポイント)は大きい。呪詛を呟きながら近づく霊を「シャッターチャンス」や「フェイタルフレーム」で退けた時に得られるプレッシャーからの解放感は、「零」シリーズ特有の醍醐味といえるだろう。
射影機まわりの使い勝手は、すこぶる良好。シャッターやモード切替のレスポンスが早いので、フィールドモードで霊の攻撃を回避した後、素早くファインダーモードで撮影するといったアクティブな操作も可能だ。ただし、慣れないうちは、モード切り替え時の操作ミスに注意したい。これはフィールドでの移動とファインダーモードでの視点操作が同じ左スティックを使うことから起こるミスで、移動中にファインダーを切り替えてしまい視点があらぬ方向にズレてしまうというもの。目の前に霊が居ると焦るかもしれないが、一旦アナログスティックをニュートラルに戻してからファインダーモードに切り替える癖を付ければ、特に問題はないはずだ。
ちなみに、霊と遭遇すると心臓の鼓動に似たSEが鳴り響き、鼓動音と同調してコントローラーの震動機能が働く。「揺らしすぎではないですか?」と問いたくなるほどワイルドなバイブレーションは、緊張感を煽るだけの演出ではなく、撮影時の“手ぶれ”を引き起こすので侮れない。筆者の未熟さをコントローラーのせいにするようで情けないが、ハイスコア確実のシャッターチャンスに、震動で手が滑りアナログスティックを倒してしまい痛恨のミスという事態もあった。震動の有無はタイトル画面からオプションで変更可能なので、ボス戦などの前では震動をオフにしておいたほうが無難だろう。
■ 多くのフィーチャーでポイント稼ぎが熱いスコアシステム
さらに、シャッターチャンス中に画面上部の赤いランプが点滅する瞬間があり、これが「フェイタルフレーム」の合図になっている。この瞬間に撮影すれば、シャッターチャンスより大きいダメージとポイントが獲得できる。だが、フェイタルフレームのタイミングは霊によって異なり、赤いランプが付くタイミングはシビア。それだけに、成功したときの達成感は格別だ。
究極の稼ぎフィーチャーは、このフェイタルフレームでダメージを与えた霊のヒットバック中に、再度フェイタルフレームを決めるというもの。最大3HITコンボまで連続撮影が可能。ヒットバックで吹っ飛んだ霊を手動でフレームインさせながら、フェイタルフレームのタイミングに合わせる必要があるために難易度は高いが、成功すれば数千ポイントが入手できるので積極的に狙っていきたいフィーチャーだ。
こうして稼いだポイントで、射影機をパワーアップできる。特に基本性能のなかでも重要な「範囲(霊を捉えるキャプチャーサークルが広がる)」と、「感度(ダメージ値が高くなり射程距離が伸びる)」を早期にアップさせるためにも、フェイタルフレームなどでポイントを稼いでおきたい。
なお、特定の場所にランダムで何度でも出現する霊がいるため、部屋の出入りを繰り返して霊を出現させて稼ぐといったやり方も有効だ。筆者の場合は、フェイタルフレームの狙いやすい落下してくる女の霊に的を絞ってポイントを稼いだ。
■ 各賞に山場があり、やりごたえのある内容 難易度ノーマルのクリアに要した時間は、9時間50分と30秒。それぞれの章に話の山場が用意されているため、尺が長く感じることはないはず。パズルなどの謎解きは数が少なく手軽に解ける一方、「念写をして、特定の場所を探し出す」というタイプのクエストは行き詰まりやすい。よほど勘が鋭くない限り、捜索は難航することと思われる。それでも、メモやアイテムによるヒントは豊富に用意されているのが救いだ。
なお、一周目をクリアすると、追加要素が大幅に増える。ネタバレになるので詳細は明らかにしないが、本作がツボにきた人なら、とことん楽しめる内容であることは間違いない。
以上、ここまでは手放しで褒めちぎってしまったわけだが、唯一不満なのがエンディング。これもネタバレになるので詳細を語るわけにはいかないが、こうしてレビューを書いている今でも、衝撃的なエンディングで生じた“やるせ無さ”がモヤモヤと噴出している。ある意味“有り難いこと”ではあるのだが、再チャレンジ必須のゲームがまた一本増えてしまったわけだ。さぁ、レビューも書きあがったし、今からやるとしますか……。 (C)TECMO,LTD.2003
□テクモのホームページ (2003年12月09日) [Reported by 福田柵太郎]
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