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「リネージュII」GMの視点
ユーザーに信頼されるGMを目指して

11月20日収録

会場:NC Soft本社内


現在はGM用のソフトの開発を中心に行なっているJohn S.Kim氏(左)と、インターナショナル・ビジネス・アソシエーツのLee,Jin Woo氏(右)

  開発者インタビューに続き、「リネージュII」でGMを担当していたJohn S.Kim氏にお話を伺った。彼は2002年の9月より韓国でのクローズドβからGMを担当、現在はGMをサポートするためのソフトの開発を中心に活動を行なっているという。

 今回、特に興味深く質問させてもらった内容としては、「GMというのは、どんな職業的感覚を持って仕事をしているのか?」ということである。プレーヤーに近い立場で、開発者との「板挟み」にあう、GMという職業は、どんなものなのだろうか。

 さらに「韓国プレーヤー」の傾向にも、質問させていただいた。日本でもβテストが始まり、同じソフトによって比較が可能になったことでみえてくる、韓国のプレーヤーの姿とは?


■ユーザーと開発者の橋渡しをするGMの仕事

Q.  GMとはどんな仕事をしているのでしょうか?

A.  現在、サーバー1つあたり、4人のGM、全部で128名が勤務しています。3交代制で、常にユーザーの要望に対応できるようにしています。私はこの前までは第4サーバーを担当していました。現在はGMのサポートをするためのツールを作成するチームにいます。現在も手伝いとしてGMをやったり、サポートもしています。現場の雰囲気をわかっていなくては、GMのためのツールは作れないですからね。

 GMの仕事として1番気をつけるのは「すべてのユーザーたちが、快適にゲームを楽しめるようにしていく」ということです。常に問題がないかを監視し、サーバーを管理しています。GMコールに迅速に対応できるようにしているのはもちろんですが、サーバー内のユーザーのデータを把握しておく必要もあります。各キャラクタの職業や種族といったキャラクタ自身こと。さらに出回っているアイテムの数など、“経済状態”も把握しています。普及しているアイテムはどんなものか、高価なアイテムは何か? こういったユーザーの情報は、ゲームのバランスに密接に関係してきます。非常に細かい部分まで調べてデータを把握し、分析しています。

 ユーザーと直接コミュニケーションをすることになるGMコールは、1日数百件、多い場合は1,000件を越えることもあります。その中では、比較的「キャラクタが動かなくなった」というものが多い気もします。3Dゲームということもあって、特定の座標や地形に引っかかってしまうこともあるようなんですよ。それでも、この問題のみが目立って多いというわけではなく、実にさまざまな要望がGMには寄せられます。

 韓国のプレーヤーは、PvPの質問に対しても熱心ですね。特にバランスの面では、「自分のキャラクタの強さはこれで正常なのか?」という質問が多いです。やはりどうしても自分の短所と、他の職業の長所が気になるようで、「どうしてなんだ!」と、すごい勢いで聞いてくる人もいます。こういった点は、韓国のプレーヤーの気質もありますが、「リネージュII」が抱える問題でもあります。

 ユーザーから寄せられるバグ報告を開発に伝えるのも大事な仕事ですね。さらに、今あるサービスの感想を聞くだけではなく、これから予定されているサービスへの意見を求めることもあります。ユーザーと開発者の橋渡し、というものがGMの大きな仕事だと考えています。ユーザーの意見を開発者に届けるのも大事な仕事です。透明さと公正さを持って、ユーザーの立場に立っていると信頼してもらえることを目指しています。

Q.  ゲームでGMとして登場するときには、どんな姿をとっていましたか?

 ヒューマンの男の姿が多かったです。装備は質素なものを心がけています。最初はプレーヤーたちに目標を提示するつもりで、派手で豪華な装備をつけていたのですが、「ねたまれる」というか、かなり反発されることもあったので、普通の装備にしました。

 そうすると今度は「こんな季節なのに、そんな装備で寒くないですか?」と、言われて手袋をかってもらったり、装備などをもらうこともありました。そういったアイテムは、私にとって宝物ですね。

 GM達は独自の血盟を組んでいて、血盟戦のギルド表示としてプレーヤーからわかる形で表示されています。だから、コールをしたプレーヤーと話しているときに、他のプレーヤーから話しかけられることも多いですね。プレーヤーに会うときは、テレポートでその場にあらわれます。だから、プレーヤーのところへ走っている途中に呼び止められて遅れてしまう、ということはありません。

Q. GMをしていて、よかったな、と感じることはありますか?

 そう感じることは、もちろん多いです。特に、プレーヤーが失ってしまったアイテムをきちんと返してあげたとき、感謝されるとうれしいですね。アイテムロストの問題は、プレーヤー自身の問題だけではなく、システムの問題の場合もある。ほとんどの場合アイテムをあきらめてもらうことになってしまうのですが、無事に解決したときはうれしいです。

 プレーヤーとできるだけ緊密にコミュニケーションをとっていこうというのが「リネージュII」のGMの特徴です。ユーザー達の立場に立って仕事ができた、と感じるときには強いやりがいを感じますね。プレーヤーもそういったところを評価してくれている部分もあります。GMごとのファンクラブも設立されているんですよ。「ご飯はきちんと食べているんですか?」といったように、こちらに気を使ってくれるプレーヤーもたくさんいます。非常にやりがいのある仕事ですよ。


■ ワールドカップを思わせる韓国プレーヤーの入れ込みよう

Q. 韓国のユーザーの現状を教えてください。

A. 種族では、エルフ、ダークエルフ、ヒューマン、ドワーフの女性が多いですね。オークはちょっとマニアックなイメージです。キャラクタとして作っている人は多いけど、メインとして使っている人は少ない。職業では戦士系の人気が高いです。魔法使い系と比べると、6:4、もしくは7:3くらい差が開いているサーバーもあります。レベル帯では20~25、1次転職をしたキャラクタが1番多いですね。

 韓国のプレーヤーの特徴としては“集団意識”というものがあげられると思います。韓国の人は「仲間」を非常に大事にします。血盟や、友達などは本当に親しく接しています。その反面、仲間に敵対する人には厳しく接します。

 PvPやPKが行なわれるのも、そういったことが発端になる場合もあります。血盟戦の時のプレーヤーの入れ込みようは、去年のワールドカップを彷彿とさせるものもありますね。

 それでも、PvPの頻度はサーバーによってまちまちで、まったくないサーバーもあります。反対に、1週間に1回は戦いが繰り広げられているところもあります。 戦いに情熱を傾けるプレーヤーは、現実でも統制がとれている場合も多くて、「何時に駅前に集合」と、ゲーム内で打ち合わせをして、みんなで集まって、声をかけながら戦いができるPC房へ向かうわけです。

 オフラインの時から、戦闘は始まっているんですよ。もっとも、こういったプレーヤーが居る反面、「血盟戦、もう始まってるぞ!」と、電話で起こされて、あわてて参加するような寝坊プレーヤーもいます。

 日本のユーザーと一番違うと感じたのは、「緊張感」でしょうか。日本では相手の獲物を間違って横取りしてしまった場合、必ず「すみません」、「いえいえ」、というやりとりが生まれます。これは、私にとってはかなり衝撃的でした。韓国のプレーヤーは、そんなことをすればすぐPKとなってアタックしてくるんですよ。

 韓国のプレーヤー間には強い緊張感があります。これは前述した「仲間以外の相手に対する厳しさ」という点でもあるでしょうね。日本のどこかなごやかなプレイと、韓国の厳しいからこその緊張感を伴ったプレイ。どちらも独特で楽しいです。


■ GMの視点から見たこれからの課題

Q. Kimさんが気になっている本作の問題点とは?

A. まず、GM同士の意識統一と、教育です。「リネージュII」は爆発的な人気を得て、急にサーバーを増やさなくてはいかなくなった。そのため、GMが不足して、教育時間が足りないことがあったんですよ。1つの問題に対してGMによって見解や対処が違うという問題も生まれてしまった。GM同士で話し合って、意識の統一を頻繁にはかっていくとともに、教育カリキュラムを、もっと積極的に取り入れていきたいと思っています。

 また、先程も述べましたが、ゲームのシステムの詳細がユーザーに公開されていない、ということも感じています。キャラクタのバランスなど、ユーザーがもっと正確に、細かく知りたいと思っている問題も、こちらの情報に対する不足によって、不安を生んでしまうことも多いのです。

 この問題に応える形として、150人ほどのユーザーと開発者が一堂に会し、直接説明を行なう “歓談会”も行なっています。我々はそこでユーザーの生の声を聞き、こちらも詳細な返答を行なう。この会は、βテストの時から行なわれていて、すでに4回目。ゲームのマスコミもこの集まりには参加します。ここで話された内容は、マスコミやユーザーを通じて、さまざまな形で他のユーザーに紹介されていくわけです。

 ユーザーの立場に立ってみれば、不安定になってしまうシステムというのは、できる限りさけなくてはなりません。運営側の事情もわかるのだけれども、開発側のちょっとした問題でも、受け取るユーザーにとっては大きな問題になってしまう。より安定したシステムを目指すことは、常に必要だと受け止めています。

 ユーザーにサービスする新ルールといった魅力のあるコンテンツは、2年以上先のことまで計画されています。しかし、運営側として現在よりもっともっと、安定したシステムを提供したい。情報を公開し、ユーザーたちとより密接なコミニュケーションをとっていきたいと思っています。ユーザーに信頼されるゲームの運営というのが目標ですね。

Q.最後に、日本のクローズドβのユーザーにアドバイスを

A. 「リネージュII」は、企画そのものから現実性と、自立性を重視して作られた作品です。韓国のユーザーは、ちょっとキャラクタに対して過剰なまでに思い入れをしてしまってそれがトラブルになってしまうことも多い傾向があります。

  日本のユーザーは、それに比べると穏やかにプレイをしている人が多いという印象を受けます。感情的なプレイをしすぎないように気をつけてもらいたいですね。

【NC本社ビル】
NCソフト本社。さまざまなリネージュグッズを見ることができる。日本にはない「リネージュII」のポスターも
GMの仕事室。ビルの1フロア全部が、128名を越えるGMに割り振られている。黒い覆いがかけられた部屋は仮眠室とのこと

□NC Softのホームページ
http://www.ncsoft.net/
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ
http://www.ncjapan.co.jp/
□「リネージュ 2」のホームページ(韓国語、英語)
http://www.lineage2.com/
□「リネージュ 2」のホームページ(日本語)
http://www.lineage2.jp/main.asp

(2003年11月23日)

[Reported by 勝田哲也]


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