【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

「リネージュII」開発者インタビュー
韓国での現状、そして未来とは?

11月20日収録

会場:NC Soft本社内


「リネージュII」プロデューサーのJaehyun Bae氏(左)と、リードデザイナーのHyungjin Kim氏(右)
  11月20日、KAMEX開催に先駆けて、取材班がNC Soft本社に取材をさせていただいた。同社は「リネージュ」の世界的ヒットにより、韓国のみならず、世界にも名を知られることとなったゲームメーカーである。

 「ウルティマオンライン」ほか、「ウルティマ」シリーズを開発したリチャード・ギャリオット氏をスタッフに加え世界に衝撃をもたらしたNC Soft。今年のE3では、多くの北米向けタイトルを発表・展示し、その国際的地位をアピール。韓国だけではなく、世界を舞台として発展していく勢いを伺わせている。

 現在、そのNC Softを代表するタイトルとなったのが「リネージュII」である。「Unreal」エンジンをベースに美しくリアルな世界を構築、韓国では10月より正式サービスをスタート。稼働サーバーは25個を越え、同時接続者数は96,000人、登録会員数は195万人という人気を誇っている。

 本作は日本でも11月よりクローズドβテストを開始。応募者数7万人、同時接続者数5,000人以上と、非常に人気が高い。

 お話を伺ったのはプロデューサーのJaehyun Bae氏と、リードデザイナーのHyungjin Kim氏。本誌でもたびたび登場していただいている「リネージュII」の“顔”ともいえるおふたりだ。今回は韓国で予定されているアップデートを中心に、韓国サーバーで激しく行なわれている血盟戦、さらにクローズドβテストをプレイしている筆者の疑問についてお答えいただいた。


■1,000人規模で行なわれた韓国の血盟戦

Q. 本作において、明確な形で提示されている“ゲームの目的”として、血盟を作り、世界に覇をとなえるというものがあります。現在、韓国で行なわれている血盟戦の規模はどのくらいでしょうか?

A. サーバーによって、血盟同士による争いが激しかったり、そうでないサーバーがあります。血盟にはレベルがあり、それによって規模が異なります。レベルの小さな血盟は無数にありますが、レベルの高い血盟は少ないです。

  現在、もっとも大きい血盟レベルは4で、25のサーバーにも10ほどしか存在しません。血盟のレベルを上げるには、特別なアイテムや資金が必要なので、成し遂げているキャラクタも少ないですね。血盟に参加しているキャラクタのレベルはバラバラです。血盟レベル4のグループは、レベル50を超えるメンバーが参加しています。

 規模としては1パーティー9対9が最小で、一番大きなものだと1,200名くらいが同時に戦ったことがありました。これはこちらも全く予想をしない規模での戦いだったので、驚きました。この戦いは単独の血盟同士の戦いではなく、“同盟”を結ぶことで行なわれた戦いでした。本作では戦略的にマップを俯瞰し、組織的に動くことは難しいだろうと考えていたんです。しかし、ユーザーたちは魔法部隊や、弓部隊を編成し、チャットを使い分けることでまるで軍隊のように動き、大規模な戦いを実現させてしまった。プレーヤーの応用力に改めて驚かされました。

 チャットだけではなく、携帯電話などを使ってプレーヤー間で連絡を取ったり、PC房に集まって、声をかけながら戦闘を行なったプレーヤーたちもいました。ひたすら戦うだけではなく、見物気分で参加した人も多かったようです。1,000人を超えるような戦いは、開発の方では想定すらされていませんでした。多くて100対100くらいだろうと考えていたのです。サーバーやクライアントに、かなりの負担をかけてしまう結果になってしまった。

 この大規模な戦いが起こったことにより、次に予定されている攻城戦にも大きな人数が参加する事が予定され、それにきちんと対応したシステムが必要となってきました。アイデアの1つに、クライアント側での処理を早めようというのがあります。具体的には、“グラフィックレベル”を多少落として、サクサク動かせることを考えています。

 グラフィックレベルを落とすといっても、動的光源で描画されているものを静的にするなといったように、現在プログラムで自動生成されているものを、固定にするといった処理を行なうので、決してグラフイック的に見劣りのするものではありません。しかも攻城戦といったイベント時に、“切り替わる”ようにするので、プレーヤーに失望させないように調整をしています。

 こういった見直しや新システムを盛り込んで、今後は、1,000人以上での戦いも快適に楽しめるように改良をしていこうとしているわけです。


■ 攻城戦はプレーヤー同士の戦いが本番

Q. 次のアップデート内容の中で、ユーザーがもっとも注目を集めている攻城戦ですが、どんなスケジュールで、どういった内容を予定しているのでしょうか?

A. まず、テスト専用のサーバーを1月初旬に立ち上げる予定です。ここで攻城戦にユーザーが参加する形でデータを取り、1月下旬には各サーバーに実装していきたいと考えています。攻城戦で戦うことができるテストキャラクタを作成するために、現時点でもある程度のレベルのキャラクタを持つプレーヤーを対象に参加をしてもらう予定です。

 攻城戦とは、「リネージュII」の世界に同時に5つの“城”が出現することでイベントの開始になります。この城の奪取を目指して、プレーヤーは侵攻を開始するわけです。攻城戦は一種の「ボス戦」ととらえています。城を守るNPCは、100以上の数と、ものすごい強さを備えています。しかも彼らは、前衛を盾にして遠距離攻撃を行なうような、組織的な攻撃まで行なってきます。プレーヤーたちはまずこの守護者を倒して進まねばなりません。

 城は超古代の技術で作られています。城の中央には“コア”があり、独自の意識を持っています。城に認められた血盟の君主が、城の所有者として認められるわけです。城には守護者のほか、さまざまな仕掛けがプレーヤーたちを阻みますが、それを越えたプレーヤーたちは、コアに認めてもらうため、タイムリミットまでコアの前に居続けなくてはいけません。

 コアの前は、熾烈なプレーヤー同士、血盟同士の戦場になります。今まで協力して進んでいったプレーヤーたちも、ここでは敵同士になるのです。城のコアに認められるのは、イベントのタイムリミットにコアとアクセスしている血盟のみ。この席を巡っての戦いが繰り広げられるわけです。

 城を手に入れた血盟は、ほかのプレーヤーたちから羨望の的になるでしょう。そして次の攻城戦の場合は、全力でほかのプレーヤーたちから城を守らなくてはならなくなります。城を手に入れるためキャラクタを鍛え、覇権を夢見る。城は、ゲームの大きな目的の1つなのです。

 また、今回出現する城は5つですが、今後この数を増やしていく予定です。また、攻城戦時にある特定の城の戦いが激しいと、ほかの城の攻略の難易度が下がるシステムになっています。穴場をねらったり、掲示板を使って攻略作戦を打ち合わせしたりと、さまざまな要素が絡んでいくゲームデザインをしていきます。


■ いつかはワイバーンに! 「ドラゴンテイミングシステム」

Q. 日本のGMが乗りこなしていることで、プレーヤー間でも話題になっているワイバーンなどの騎乗動物ですが、これは城主に認められることで何人かのプレーヤーが使うことができると以前アナウンスされていました。城が解禁になると、これらに乗るプレーヤーがいよいよ出現するのでしょうか?

A. 騎乗動物は、「ドラゴンテイミングシステム」というアップデート計画で段階的に実装していきます。第1弾では卵からかえったドラゴンの赤ちゃん「ハッチリング」をプレーヤーが育成可能になります。

 このハッチリングの最初のレベルは35。これ以上のレベルのプレーヤーが育てていくわけです。卵を得るにはドラゴンバレーでのクエストを成功させなければなりません。ハッチリングはプレーヤーのペットとして戦闘を経ることで成長していきます。成長させることで「ストライダー」という、馬のように騎乗可能なドラゴンになります。そしていつかは空をかける「ワイバーン」へと進化していくのです。

 ハッチリングを育成させるのは誰でも気軽に挑戦可能ですが、そこから進化させるためには困難なクエストなど、さまざまな条件が絡んでいきます。限られたプレーヤーのみのステータスシンボルとなっていく予定です。当初は血盟の協力なしには成し遂げられないものにする予定でしたが、ソロプレイでも挑戦可能なものにしていきたいと思っています。しかし、成し遂げるためには大変な努力が必要になるでしょう。

 攻城戦を含めたPvPシステムの改良や、ハッチリングの登場などは、今後予定される「リネージュII」のアップデート計画「クロニクル」に密接に関係しています。これは来年から6カ月に1度アップデートが行なわれる予定の計画なのですが、次回のアップデートがその「クロニクル1」となります。

 クロニクルは現在7までを予定しています。クロニクルには自分たちで動かすことができる船の存在や、その船を使った戦い。さらに血盟メンバーを乗せて飛ぶことができる「飛行船」など、さまざまなアイデアを盛り込んでいく予定です。


■ 筆者が感じた現在のゲームの疑問点

Q. 次に、私がプレイをして感じた本作の疑問点を聞いていきたいと思います。まず、プレーヤーの移動なのですが、世界が広大で、移動するのにすごく時間がかかる印象があるのですが、今後誰でも気軽に移動できるようなシステムなどがでてくるのでしょうか?

A. 開発側は、「距離」も冒険の大事な要素と考えています。今後のシステムで、遠くから遠くへ物資を運ぶことで利益がでてくるような“行商”を可能にしようと考えているのです。移動はわざと困難にデザインした部分でもあるのです。

 また、例えばダンジョンの出口にNPCの店員を配置して戦利品の売買を簡単にしたり、帰還スクロールや、蘇生スクロールを簡単に入手させていないのは、プレーヤーによるプライベートショップを推奨しているのです。距離の問題と同じように、プレーヤー同士の交流を考えてデザインしています。

Q. 現在相手をクリックしても、相手のHPもレベルもわからないようになっていて、ちょっと情報が少なく感じています。

A. これも意図があってやっている部分があります。「リネージュII」はPvPが大事な要素なので、相手の情報を簡単に知ることができないようになっているのです。相手のHPがどのくらい残っているかがわかってしまったら、簡単にPKができてしまう。また、外部から装備の詳細や、レベルがわかってしまうのも同じ理由で表示させていません。韓国のプレーヤーの中にはわざと初心者の装備でPKを誘い、返り討ちにする高レベルプレーヤーもいました。

 現在、日本ではレベルが高いキャラクタが低レベルの人とパーティーを組み、経験値を多く獲得している問題があります。この問題は、韓国は前回のアップデートで解決されました。レベル差が開いていると低レベルのキャラクタに経験値が入らないように調整されたのです。効率よく経験値を得るには、レベル30以上のキャラクタならば、レベル差が5くらい、より低レベルなら、2から3以上離れてしまうと、得られる経験値に大きな差が出てしまいます。

 また、日本の場合、「チャットシステムが使いにくい」という意見も多く寄せられています。これは全角/半角を使う問題で、チャットのチャンネルを切り替えるコマンドが有効に働かない場合があるのです。台湾からも報告が上がっていますので、今後早急に対応していく予定です。


■ PKの存在に対する、開発者の捉え方と対応

Q. 「リネージュII」にはPKが存在しています。これは最近のMMORPGでは珍しい点だと思うのですが、本作におけるPKの存在意義とは、どういったものなのでしょうか。

A. まず、ひとつくらいはPKを容認するゲームがあってもいいんじゃないか? という想いもあります。「リネージュII」を作るにあたってチームが考えたのは、「できる限り自然なゲームを作ろう」ということだったんです。

 基本的に、まず全てができて、そこから面白くない部分を除いていこう、というデザイン感覚だったわけです。「モンスターとの戦いができるなら、プレーヤー同士も戦いができる」という発想で、“ゲーム的”な発想ではありません。プレーヤー間で戦うことができるのは自然なことだと思うんです。

 プレーヤー間でできることが多ければ、それだけさまざまな場面が発生します。その多様な場面こそがオンラインゲームのおもしろさだと私たちは捉えています。時にはその体験が不愉快なことがあっても、それ以上におもしろさや感動を発見することも多い。さらに、悪さもないとおもしろさもない、という考えも持っています。

Q. GMにPK被害の報告があったり、プレーヤー間のトラブルになったりはしていないでしょうか?

A. それはもちろんあります。私たちはその方面には力を入れて対応しているんです。悪いことを取り締まる、という意味でGMの役割を重要視しているのもそこなんです。「リネージュII」は1サーバーに5名というほかのMMORPGより多くのGMを割り振っています。これは、プレーヤーとGMがきちんと対話することができるようにするためなんです。

 PK被害によるプレーヤー報告があった場合、GMは専用ツールにより関連したチャットログやプレーヤー間の受け取りのログを検索し、事実関係をできるだけ正確に把握します。PKにあったログを読むことで、できるだけ客観的に把握し、判断するようにしているわけです。ほとんどの場合は「両成敗」という形になることが多いです。よほど悪質な場合は別ですが。

Q. GMが積極的に両者の間に入る、ということでしょうか。殺したPKと、殺されたプレーヤーを呼びだして3人で会話をするのですか?

A. そういったことは多いです。また、悪質なPKはきちんと取り締まります。「リネージュII」のGMはプレーヤーに積極的に関わって対応していくことにしています。

  プレーヤー間のトラブルを積極的に解消するためにログをとっておくようなGMを支援するツールは、ゲームそのものと同じくらいに力を傾けて開発を行なっています。非常にマンパワーのいる体制ですが、きちんと人が対応することに、意味があると思います。

 疲れるシステムなのは確かです。しかし、最初からゲームの思想自体が、問題をなくすのではなく、多様な場面を作ってみよう、というゲームデザインなのです。運営側もそれに対応するようにしています。一般プレーヤーがPKに遭遇する確立が一定より低い場合は、プレイを面白くする大事な要素だととらえています。きちんと対応しつつ、プレーヤーたちのストレスとならないように考えていきたいと思っています。

□NC Softのホームページ
http://www.ncsoft.net/
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ
http://www.ncjapan.co.jp/
□「リネージュ 2」のホームページ(韓国語、英語)
http://www.lineage2.com/
□「リネージュ 2」のホームページ(日本語)
http://www.lineage2.jp/main.asp

(2003年11月23日)

[Reported by 勝田哲也]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.