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★PS2ゲームレビュー★
PS2「北へ。~Diamond Dust~」は'99年3月にドリームキャストで発売された「北へ。~White Illumination~」の続編。ゲームの目的は、主人公が夏休みの1カ月を北海道で、現地在住のヒロインたちと愛を深めること(冬編有)。いわゆる恋愛ADVに近いカテゴリだが、ゲーム画面の背景には北海道に実在する300カ所以上の観光地や店舗の実写を使用するなど「北の大地を旅すること」にもウェイトが置かれている。
■ 膨大な量の北海道情報を搭載し、旅情感は満点
「北へ。~Diamond Dust~」が一般的な恋愛ADVと一線を画すのが、舞台である北国「北海道」を前面に打ち出している点にある。前作は主に札幌市内が行動範囲であったが、今作では、札幌、函館、旭川、帯広、北見の5都市から逗留地(友人宅)を選択可能。その都市ごとに、市街、近郊の主要な観光地や飲食店へと移動できる。ひとつの都市に用意された数十カ所もの目的地は、実写が取り込まれた背景を使用。情報は2003年1月現在のものというから、開発スタッフの取材力の高さがうかがい知れる。
ヒロインと親しくなると、観光スポットや飲食店を案内してもらえる。さすがに現地人という設定だけあって、情報はリアル。単なる観光情報ではなく「北海道で焼き鳥といえば、豚肉」、「北海道では、『手袋をする』ではなく『手袋をはく』という」といった、ご当地ならではのトリビアネタやうんちくが愉しめる。
ここで、「北へ。」シリーズの特徴として筆者が強調したいのが、内地の人間(主人公)と道内の人間(ヒロイン)の間で交わされる会話の面白さ。温度差というかズレというか、両者のコミュニケーションが食い違う様子は“天然ボケ”のようで楽しい。北海道を舞台にすることがそのまま演出になっているという、とてもほのぼのとできる光景だ。
女の子とのデート以外でも、プレーヤーは任意の各都市を車で移動することが可能だ。車でのマップ移動中には「ドライビングブレイクシステム(DBS)」を使用することができる。DBSは、目的地へ向かう途中に、ある道の駅(道路利用者のためのサービスエリア)や観光地へ自由に寄り道できるシステム。まさに“気分はぶらり旅”だが、DBSを使用しなくてもヒロインとのトゥルーエンドを迎えることができるため、攻略で有効的に活用できないのが惜しい。
せめて、ゲーム中に登場するインターネット占い「旅ナビ! 青春占い(右写真)」が、抽象的な言葉ではなく、ヒロインの居場所だけでも正確に示してくれたら、と思うのだが……。
■ 原画家は前作に引き続きNOCCHI氏を起用
原画家NOCCHI氏の描いた水彩画のようなタッチのキャラクタは、「北へ。」シリーズの大きな魅力。5人のヒロインたちの容姿や境遇はそれぞれ異なるが、基本的に一途で純粋。一般的な恋愛ADVの、ベタな定番キャラクタ設定の二番煎じに甘んじていない点に好感が持てる。
通常画面での女の子のグラフィックパターンは、「驚き」、「笑い」などのグラフィックが多数用意されており、状況とともに変化する。服装もデート時、夏服、冬服、水着と、数多く用意されている。冬編ではヒロインの口端から白い吐息が立ち上ったりと、細かな演出も光る。 キャラクタの声優には、新人が多く起用されている。現地人という設定にもかかわらず“標準語”を話すのには違和感を覚える(正確には、生粋の現地人は少ない)が、これらについては、ゲーム中のヒロインの言葉を借りると、「(主人公と会うときは)方言が出ないように注意している」ということになっている。 レビューの執筆するにあたり、筆者はヒロイン5人のシナリオをすべてクリアした(攻略に4日ほど費やしましたが……)。涙腺を緩ませるイベントも多く、情景の効果も手伝ってグッと胸が詰まるものがあった。悲嘆にくれるヒロインを主人公が支え、互いが精神的に成長するうちに恋に発展するケースが多いように感じられた。人の生死が関係するヘヴィなシナリオが展開されるヒロインもいたが、個人的には許容範囲であった。
ひとりの攻略を開始すると対象ヒロインに掛かりきりになり、攻略スケジュールはハードになる。ほかのヒロインがいる都市とは移動距離が離れているために、基本的に同時攻略は困難。ひとりとトゥルーエンドを迎えた後、また「はじめから」やり直すのがベストといえる。
■ ユーザーフレンドリーに改良された継承システム「CBS」 「北へ。」シリーズ特有の会話システム「コミュニケーションブレイクシステム(以下CBS)」は、女の子の発言中に主人公が割り込みができるシステム。今作のCBSには、大幅な変更が加えられている。 前作のCBSは、女の子が喋っている最中にボタンを入力することで話を遮ってセリフの選択肢を表示させ、相づちを打ったり、自分の話題を振るなどして会話の内容を変化させることが可能なシステムだった。日常で交わす会話のリズムをゲームに反映するシステムだが、CBSを挟むポイントが判別しづらく、失敗すると好感度が下がるためにおいそれと使えないという欠点があった。 それに対し「北へ。~Diamond Dust~」のCBSは、よりわかりやすくシステムが改良されている。女の子のセリフがCBSの可能なポイントに差し掛かると、テキストが白色から黄色に変化してCBSアイコンが出現するため、ポイントが一目瞭然。CBSアイコンが表示されている時に△ボタンを入力してCBSウィンドウ(セリフ)を出現させて、選択肢を選ぶというユーザーフレンドリーなシステムにリファインされている。
流れとしては、女の子が完全に喋り終わったあとのレスポンスになるため、今作のCBSは「会話に割り込む」、「ツッコミを入れる」という感覚ではない。前作のCBSのような、女の子のセリフを即中断させる強引さが懐かしく思えるほど、オーソドックスなADVのシステムになっている。わかりやすさは前作より今作の方が断然上であり、好感度の上がるCBS選択肢が多く出現するため、前作で苦労したユーザーにはありがたい変更ではないだろうか。
■ ADVとしての機能は必要最小限
オプションで調節できるゲーム環境は以下の通り。
「メッセージ速度の変更」や、既読テキストを読み返せる「過去ログ機能」は搭載してほしかったが、このゲームのジャンルはトラベルコミュニケーション。一期一会の臨場感を演出するために、あえて機能を必要最小限に留めたという解釈もできる。
前作の登場人物は、キャラクタとしては登場しないが、ヒロインとの他愛のない会話の中に川原鮎(前作のヒロインのひとり)という名前が出てくるなど、多少リンクしている部分がある。そのほかにも前作の既視感を感じさせるシーンは多く、特にヒロインがカラオケでキャラクタソングを歌うシーンは、シリーズをプレイした人ならニヤリとする演出だろう。
“実在の都市をヒロインと巡る”という旅情感を存分に愉しみたいが、まったりと楽しむには、本作は少々難易度が高いように感じられる。「やりがいがあるぜ! CGを全部埋めるために何十時間でもセーブ・ロードしてやる!!」といったコアなユーザーでもない限り、筆者としては素直にゲーム雑誌や攻略本とセットでプレイすることをオススメする。
攻略本に従って選択肢を選ぶだけ、というプレイスタイルを嫌悪するユーザーもいるかもしれないが、難易度という壁に阻まれて「旅と北国と少女」という絶妙なマッチングをスルーするのはもったいない。前作をプレイした人はもちろん、プレイしたことのない人にも、トラベルコミュニケーションというジャンルの極北である「北へ。~Diamond Dust~」の世界に触れていただきたい。
□ハドソンのホームページ (2003年11月13日) [Reported by 福田柵太郎]
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