【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PS2ゲームレビュー★

透明な純愛と、北海道ツアーを同時に楽しめるADV
「北へ。~Diamond Dust~」

  • ジャンル:トラベルコミュニケーション
  • 発売元:株式会社ハドソン
  • 価格:6,800円(税別)
  • プラットフォーム:PS2
  • 発売日:発売中(10月30日)



 PS2「北へ。~Diamond Dust~」は'99年3月にドリームキャストで発売された「北へ。~White Illumination~」の続編。ゲームの目的は、主人公が夏休みの1カ月を北海道で、現地在住のヒロインたちと愛を深めること(冬編有)。いわゆる恋愛ADVに近いカテゴリだが、ゲーム画面の背景には北海道に実在する300カ所以上の観光地や店舗の実写を使用するなど「北の大地を旅すること」にもウェイトが置かれている。


■ 膨大な量の北海道情報を搭載し、旅情感は満点

 「北へ。~Diamond Dust~」が一般的な恋愛ADVと一線を画すのが、舞台である北国「北海道」を前面に打ち出している点にある。前作は主に札幌市内が行動範囲であったが、今作では、札幌、函館、旭川、帯広、北見の5都市から逗留地(友人宅)を選択可能。その都市ごとに、市街、近郊の主要な観光地や飲食店へと移動できる。ひとつの都市に用意された数十カ所もの目的地は、実写が取り込まれた背景を使用。情報は2003年1月現在のものというから、開発スタッフの取材力の高さがうかがい知れる。


ネームエントリー~プロローグの後、北海道の5つの都市から宿泊先の友人宅をセレクトする 移動コマンドで任意の目的地に移動する。所持金がなくなるとゲームオーバーになる 気球からの上空写真、動物との遭遇シーンなど、実写ムービーもあり。スタッフの取材の賜物


 ヒロインと親しくなると、観光スポットや飲食店を案内してもらえる。さすがに現地人という設定だけあって、情報はリアル。単なる観光情報ではなく「北海道で焼き鳥といえば、豚肉」、「北海道では、『手袋をする』ではなく『手袋をはく』という」といった、ご当地ならではのトリビアネタやうんちくが愉しめる。

 ここで、「北へ。」シリーズの特徴として筆者が強調したいのが、内地の人間(主人公)と道内の人間(ヒロイン)の間で交わされる会話の面白さ。温度差というかズレというか、両者のコミュニケーションが食い違う様子は“天然ボケ”のようで楽しい。北海道を舞台にすることがそのまま演出になっているという、とてもほのぼのとできる光景だ。

イラストと実写背景という取り合わせだが、違和感はそれほどでもない 豚丼について一生懸命語るヒロイン。狙ったものではないと思うが、自然と笑える


 女の子とのデート以外でも、プレーヤーは任意の各都市を車で移動することが可能だ。車でのマップ移動中には「ドライビングブレイクシステム(DBS)」を使用することができる。DBSは、目的地へ向かう途中に、ある道の駅(道路利用者のためのサービスエリア)や観光地へ自由に寄り道できるシステム。まさに“気分はぶらり旅”だが、DBSを使用しなくてもヒロインとのトゥルーエンドを迎えることができるため、攻略で有効的に活用できないのが惜しい。

移動距離に比例して、到達所要時間と移動料金が変動する。女の子と会うためには、この移動時間を考慮しなければならない ふと立ち寄りたくなる地点に差し掛かったら、DBSで訪問してみよう。旅情感はあるのだが、DBSを利用したヒロインとのイベントは非常に少ない

女の子を捜すまでが難しい。旅ナビは抽象的なアドバイスしか与えてくれない
 まさに広大な北海道のシミュレーターと言わんばかりの観光地・飲食店の数だが、それだけにヒロインを見つけるのは一苦労。ヒロインの1日の移動範囲は狭く、所定の目的地の正確な時間に辿り着けないとイベントが発生しない。トゥルーエンドを迎えるには、セーブ・ロードをひたすら繰り返し、目的地をローラー作戦する必要がある。

 せめて、ゲーム中に登場するインターネット占い「旅ナビ! 青春占い(右写真)」が、抽象的な言葉ではなく、ヒロインの居場所だけでも正確に示してくれたら、と思うのだが……。


■ 原画家は前作に引き続きNOCCHI氏を起用

 原画家NOCCHI氏の描いた水彩画のようなタッチのキャラクタは、「北へ。」シリーズの大きな魅力。5人のヒロインたちの容姿や境遇はそれぞれ異なるが、基本的に一途で純粋。一般的な恋愛ADVの、ベタな定番キャラクタ設定の二番煎じに甘んじていない点に好感が持てる。

【茜木温子】
函館の朝市、茜木鮮魚店の明るく世話好きな看板娘。成人しているので、酒も嗜む
【原田明理】
夢を追う父親にかわって、帯広の菓子屋のアルバイトで家計を支える健気な少女
【白石果鈴】
自然気胸を患い、北見の病院で療養中の少女。主人公をお兄ちゃんと呼ぶ
【朝比奈京子】
札幌の大学のシネマ研究会で自主映画を制作している。男勝りだが、繊細な一面も
【北野スオミ】
日本人の父とフィンランド人の母を持つハーフ。現在は旭川にホームステイ中


 通常画面での女の子のグラフィックパターンは、「驚き」、「笑い」などのグラフィックが多数用意されており、状況とともに変化する。服装もデート時、夏服、冬服、水着と、数多く用意されている。冬編ではヒロインの口端から白い吐息が立ち上ったりと、細かな演出も光る。

 キャラクタの声優には、新人が多く起用されている。現地人という設定にもかかわらず“標準語”を話すのには違和感を覚える(正確には、生粋の現地人は少ない)が、これらについては、ゲーム中のヒロインの言葉を借りると、「(主人公と会うときは)方言が出ないように注意している」ということになっている。

 レビューの執筆するにあたり、筆者はヒロイン5人のシナリオをすべてクリアした(攻略に4日ほど費やしましたが……)。涙腺を緩ませるイベントも多く、情景の効果も手伝ってグッと胸が詰まるものがあった。悲嘆にくれるヒロインを主人公が支え、互いが精神的に成長するうちに恋に発展するケースが多いように感じられた。人の生死が関係するヘヴィなシナリオが展開されるヒロインもいたが、個人的には許容範囲であった。

 ひとりの攻略を開始すると対象ヒロインに掛かりきりになり、攻略スケジュールはハードになる。ほかのヒロインがいる都市とは移動距離が離れているために、基本的に同時攻略は困難。ひとりとトゥルーエンドを迎えた後、また「はじめから」やり直すのがベストといえる。


■ ユーザーフレンドリーに改良された継承システム「CBS」

 「北へ。」シリーズ特有の会話システム「コミュニケーションブレイクシステム(以下CBS)」は、女の子の発言中に主人公が割り込みができるシステム。今作のCBSには、大幅な変更が加えられている。

 前作のCBSは、女の子が喋っている最中にボタンを入力することで話を遮ってセリフの選択肢を表示させ、相づちを打ったり、自分の話題を振るなどして会話の内容を変化させることが可能なシステムだった。日常で交わす会話のリズムをゲームに反映するシステムだが、CBSを挟むポイントが判別しづらく、失敗すると好感度が下がるためにおいそれと使えないという欠点があった。

 それに対し「北へ。~Diamond Dust~」のCBSは、よりわかりやすくシステムが改良されている。女の子のセリフがCBSの可能なポイントに差し掛かると、テキストが白色から黄色に変化してCBSアイコンが出現するため、ポイントが一目瞭然。CBSアイコンが表示されている時に△ボタンを入力してCBSウィンドウ(セリフ)を出現させて、選択肢を選ぶというユーザーフレンドリーなシステムにリファインされている。

 流れとしては、女の子が完全に喋り終わったあとのレスポンスになるため、今作のCBSは「会話に割り込む」、「ツッコミを入れる」という感覚ではない。前作のCBSのような、女の子のセリフを即中断させる強引さが懐かしく思えるほど、オーソドックスなADVのシステムになっている。わかりやすさは前作より今作の方が断然上であり、好感度の上がるCBS選択肢が多く出現するため、前作で苦労したユーザーにはありがたい変更ではないだろうか。

わかりやすさが強調されたCBSシステム。CBSに差し掛かると×ボタンで会話がスキップできなくなるため、慌てて飛ばしてしまうという事故が起きない
CBSで登場させた選択肢は、時間の経過で増えることがある。選択肢ウィンドウの枠が完全に赤くなるとタイムオーバーなので、時間ギリギリまで粘ったほうがいい



■ ADVとしての機能は必要最小限

 オプションで調節できるゲーム環境は以下の通り。

  • 「ロード」、「セーブ(セーブ箇所:15カ所)」
  • 「サウンド設定(サウンド出力/BGM音量/会話音量/SE音量)」
  • 「コントローラー振動の有無」
    ※これに、タイトル画面から選択できる「北海道観光ガイド」と、ヒロインひとりとトゥルーエンドを達成した後に出現する「イベントグラフィック集(CG閲覧モード)」が加わる。
 ヒロインとの連鎖イベントが多い今作では、イベントの取り逃しがバットエンドに直結しかねない。ヒロイン攻略に関しては、慎重を期して1日ごとにセーブ場所を取っておきたいところだが、セーブカ所が15カ所ではやや不足が生じる。メモリーカードを2枚差しておけば、解消できる問題ではあるのだが……。

 「メッセージ速度の変更」や、既読テキストを読み返せる「過去ログ機能」は搭載してほしかったが、このゲームのジャンルはトラベルコミュニケーション。一期一会の臨場感を演出するために、あえて機能を必要最小限に留めたという解釈もできる。

イベントグラフィックは各ヒロインごとに25枚前後が用意されている。クリア後のイベントグラフィック集はあるが、シーンを回想する機能はない



 前作の登場人物は、キャラクタとしては登場しないが、ヒロインとの他愛のない会話の中に川原鮎(前作のヒロインのひとり)という名前が出てくるなど、多少リンクしている部分がある。そのほかにも前作の既視感を感じさせるシーンは多く、特にヒロインがカラオケでキャラクタソングを歌うシーンは、シリーズをプレイした人ならニヤリとする演出だろう。

広井王子氏が作詞した楽曲も多い、今回のボーカル曲。ポップな楽曲から演歌まで、ジャンルは広い
オープニングアニメとともに流れる曲「なんとなく北へ。」は、前作のオープニングテーマ同様に北への旅を呼びかける歌となっている


 “実在の都市をヒロインと巡る”という旅情感を存分に愉しみたいが、まったりと楽しむには、本作は少々難易度が高いように感じられる。「やりがいがあるぜ! CGを全部埋めるために何十時間でもセーブ・ロードしてやる!!」といったコアなユーザーでもない限り、筆者としては素直にゲーム雑誌や攻略本とセットでプレイすることをオススメする。

 攻略本に従って選択肢を選ぶだけ、というプレイスタイルを嫌悪するユーザーもいるかもしれないが、難易度という壁に阻まれて「旅と北国と少女」という絶妙なマッチングをスルーするのはもったいない。前作をプレイした人はもちろん、プレイしたことのない人にも、トラベルコミュニケーションというジャンルの極北である「北へ。~Diamond Dust~」の世界に触れていただきたい。

(C)1999,2003 HUDSON SOFT / RED イラスト:NOCCHI

□ハドソンのホームページ
http://www.hudson.co.jp/
□「北へ。」公式サイト
http://www.kita-he.com/
□関連情報
【2003年10月30日】ハドソン、PS2「北へ。~Diamond Dust」発売記念イベントを秋葉原で開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031030/kita.htm
【2003年10月10日】北海道を舞台に展開する恋愛物語。ハドソン、PS2「北へ。~Diamond Dust」を10月30日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031010/kita.htm
【2002年11月1日】ハドソン、PS2「北へ。~Diamond Dust~」制作を発表。発売は2003年夏
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021101/hudson.htm

(2003年11月13日)

[Reported by 福田柵太郎]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.