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【東京ゲームショウ2003】

岩田聡任天堂代表取締役社長、基調講演
「ポケットモンスター」に無線ユニット同梱、中国展開について語る

期間:9月26日~28日(26日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ

最後に示された任天堂の今後への取り組み。E3などで発表されたことなども含まれている
 任天堂株式会社の岩田聡代表取締役社長は東京ゲームショウ2003において基調講演を行なった。テーマは「ファミコンから20年:ゲーム産業の今とこれから」で、厳しい現状分析から入り、中盤から任天堂がどのように対処しているのかを明らかにした。


 現状分析については最後で少し触れることとし、ここでは任天堂の“対応策”として引き合いに出された「ポケットモンスター」についてまずは触れておきたい。岩田氏が「大作主義でゲーム制作会社を圧迫し続ける現状において逆行するソフト」として紹介したのが「ポケットモンスター ルビー/サファイア」の2本だ。岩田氏はポケモンを「リアルではない、大容量でもない、3Dでもない」と紹介。「もうブームは去ったと言われたが発売したら、日本で479万個、北米で316万個、欧州で211万個、豪州で15万個、全世界で1,000万個販売するに至った」と続けた。

 「ルビー/サファイア」のヒットについて、間口の広さと奥の深さ、初心者にも優しい導入部、周囲の人といっしょに遊べる楽しみなどを挙げている。そこで次回作としてリリースするのが来春発売予定の「ポケットモンスター ファイヤーレッド/リーフグリーン」であるという。これは単なる焼き直しではなく、なんとソフトに無線通信を実現するワイヤレスアダプタをすべてのソフトに同梱する。さらに値段はこれまでの据え置きとなるという。いわばタダというわけで、これは衝撃とも言える。

 これについては、逆説的に任天堂のネットワークに対する現状への不信感が挙げられる。つまり、まだネットワークは難しく、子供にとって高価なもので、誰もが使えるものではないという思いがあるわけだ。E3でも同様の発言があり、ワールドワイドで商売を行なうときフランスなどではネットワークがそれほど繋がっていないため、ネットワークに特化したソフトを投入することができないとしている。このため、逆にアダプタを同梱してしまえば、ソフトを買った人すべてがそのアダプタを使用して遊べるわけで、ゲームのためにインフラまで作り出そうとする任天堂の姿勢はスゴイと言える。

 「無線通信アダプタ」は規格的にはブルートゥースに近いものだが、リアルタイムでの対戦が機能的に難しいため、モトローラの独自技術を使用しているという。有効範囲は数メートル。岩田氏は「これまでは有線だったので、わざわざ『繋げて下さい』と言わなければならなかったし、それだと逃げられてしまうかもしれない (笑)。でもこれからはバスの中などでもプレイフィールドになる」と進化を強調。

 さらに、無線の基地局を売店や駅に置くことで限定ポケモンの配布やスタンプラリーといったアイディアも実現できると続けた。また。その基地局をインターネットで接続することで、さらに遠方のユーザーとも対戦や交換できるといった構想もあるようだ。ポケモンに同梱されることで数百万台のアダプタが流通することになり、その数を武器に他のソフトでも利用できるようになればとしている。

【ポケットモンスターについて】


 「ポケットモンスター」の話題の後は、すでに参入を表明している「中国」についてだ。中国ビジネスについては、これまでとは違う形態をとるとしており、より中国に根付いたビジネスを目指すようだ。まずは中国で会社を設立。最終的にはゲーム開発者を育てるところまでやっていきたいという。

 さらに、中国市場用のゲーム機「神遊機 (iQue Player)」を開発。今回初めて公開された写真によれば、コントローラタイプで、カセットを差し込みテレビにケーブルを繋げれば即座に遊べるゲーム機のようだ。性能的にはニンテンドーゲームキューブ以前のソフト資産を活用できるよう設計されている。価格は税込みで498元。これは日本の円換算で7,000円程度と見込まれる。これにはソフトが同梱されていて、買って帰ればすぐに遊ぶことができる。価格設定について岩田氏は「お金持ちだけでなく、誰もが遊べる価格だと思う」として、ここに落ち着いたようだ。

 ソフトは48元。しかし流通形態が少しこれまでとは違ったスタイルとなる。各地に特約販売店を展開し、そこでオンデマンドのダウンロード販売とするのだ。これにより、コピー問題、広い国土の問題、代金の回収などの中国流通における問題が解決されるとしている。10月中旬以降に、上海、広州、成都などで展開し、来春には中国全土で展開していく予定なのだという。

【中国展開について】


 最後に取り上げるゲームの現状に関する分析だが、かなり厳しいものとなった。岩田氏は「ファミコン時代は数人で数カ月かけ開発しずいぶんと儲かった。効率的なビジネスができた」と振り返り、「しかし容量が13年で1,000倍になり、ユーザーの声に答えるために開発費をかけるようになった」と3Dのブームなどの話題を挟み込みながら「枯れた技術によって生み出されたゲームが、いつの間にか最先端技術を使ったリスクの塊になった」と続けた。

 ここで縮小傾向のゲーム産業について「新ハードが軌道にのるまでの一時的なものと思われていたが、それは違っていた」と分析。理由として「過去の成功体験で大容量化、複雑化に走ってきた現状では限界だ」と言い切った。「シューティングゲームや格闘ゲームは難しくなりすぎて、現在は壊滅している。それと同じことがゲーム業界全体で起きている」と説明。娯楽に費やされるユーザーの時間の奪い合いを引き合いに出し、「大作は時代に逆行している」とも語った。

 ここでさらに辛いデータが示された。海外市場が堅調であるというデータが示されたあと岩田氏は「しかし、昔ほど日本のメーカーが海外で売れなくなってきている」と厳しい現実を突きつけた。理由として挙げたのは、「リアルなグラフィックとなり、昔は想像力で補ってきた部分がはっきり表示されるようになった。このことが、文化の違いを浮き上がらせる結果となった。また、過去には日本の独壇場だった優れたインタラクティビティも差違が無くなってきた」と説明。

 また、海外市場も日本市場と同様の理由で縮小するときがくると語り、そのための対策が急務であるとしている。そこで、任天堂としてどうするのかといったところから冒頭のポケットモンスターの話題へと繋がっていく。このほかにも数多くの施策を打ち出している任天堂。E3では負けを認めたが、着実に次の一歩を踏み出しているようだ。

【ゲーム業界の現状分析】


□東京ゲームショウのホームページ
http://www.cesa.or.jp/tgs/
□関連情報
【9月25日】東京ゲームショウ2003開幕。焦点はネットワークゲーム
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030926/tgs01.htm

(2003年9月27日)

[Reported by 船津稔]


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