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★Xboxゲームレビュー★

彼らが走れば、街は大騒ぎ
「ミッドタウンマッドネス3」
  • ジャンル:爆走アクションレーシング
  • 発売元:マイクロソフト
  • 価格:6,800円
  • プラットフォーム:Xbox
  • 発売日:発売中(8月7日)



 PCで人気を博したコミカルなドライブゲーム、「ミッドタウンマッドネス」の最新作は、Xboxでの登場となった。パリとワシントンを舞台に、よりパワーアップした演出で、非常に楽しいゲームとなっている。プレーヤーが走れば、街はパニック。街の住人にはちょっと迷惑だけど、プレイをしていると思わず笑みが浮かんでしまう、そんな面白さと爽快感がこの作品にはある。



街の迷惑顧みず、目的目指してまっしぐら

派手に壊れるオブジェクト。高いプログラム技術で“ハチャメチャ”を表現
 街をハイスピートでクルーズ、タイヤをきしませて急カーブ、ところが目の前に信号機の鉄柱が! こんな時、大概のレースゲームはゴツンとぶつかって停止。ヘタをすると車が壊れてゲームオーバーだ。しかし、本作は違う。「鉄柱の方が折れてしまう」のである。物売りの屋台、看板、鉄柵、そんな障害物ではプレーヤーを止めることはできない。大きな音を立てながら、吹っ飛んでいく。

 なんと、対向車ですら「主役」の前にはただの引き立て役でしかない。プレーヤーがワーゲンで大きなトラックにぶつかっても、吹っ飛ぶのはトラックの方なのである。信号待ちで列を作ってるような車はプレーヤーを阻む壁でしかない。それがウエハースのような壁なら、ぶち破ってすすむのが正解だ。ハリケーンか、爆風のように、プレーヤーの車に触れた車は吹っ飛んでいく。紙の箱のように転がっていく車を見るのは、爽快以外の何ものでもない。

 とはいっても、それなりに「法則」がきちんと働いているのも本作の魅力。スピードののってない状態で車にぶつかってもずるずる押していくだけだし、質量に勝る車に当たる場合も、正面からぶつかるとスピードが殺されてしまうなど、ちょっとした注意が必要だ。爽快感を全面に出しながらも、ゲームとしての駆け引きも必要になっている。デフォルメされていながら、きちんとした物理法則を感じさせる高度なゲームエンジンが、本作に独特のリアリティーを与えているのである。

 また、街の住人達の反応も楽しい。暴走車に人々は驚き、逃げまどうことになるのだがその悲鳴と抗議の声もきちんと日本語化。「車道走れ!」、「マジかよ!」、「警察よんでぇ!」などなど、ちょっとアンモラルだけど、「街の無法者」っぽいこの感触は楽しい。高速で走り抜けるので気がつかないが、荷物を持った人があたふたしたり、ピエロがバック転で車をかわしたり、ビジネスマンが建物に張りついたりと、車に対する“動き”も注目だ。

 パリとワシントンの街のモデリングの細かさもすごい。エッフェル塔やホワイトハウスはもちろん、道をひとつひとつモデリングしている。自由に走ることができるクルーズモードでゲームから離れてチェックをしてみると観光気分が味わえる。また、このゲームは「ショートカット」も楽しいので、それを探してみることもできる。細い道を車体をこすりながらすすむことができれば、意外な場所への近道が見つけられる。この経験は、他のさまざまなモードで応用可能なのである。

【スクリーンショット】
コースはパリとワシントン。その街ならではの名所はもちろん、裏路地までも非常に細かく、リアルに再現している
右スティックを押し込むことでマップを拡大できる。名所を探すのに便利 渋滞につっこみ、車を吹っ飛ばして駆け抜ける。この感触が本作のウリのひとつ 住人達は実に巧みに車をかわす。怒声や悲鳴も非常にバリエーション豊か
クルーズモードでは設定により様々な表情を見せる街を走ることができる。ゲームを進めていくことで多彩な車に乗ることも可能となる



おバカなストーリーが炸裂するキャリアモード

 今作の特徴は「ドラマ性の挿入」である。パリとワシントンでは別々のストーリーが展開。パリではプレーヤーは警察の捜査官として、世界的に有名なレーサーを護衛。ワシントンでは探偵とコンビを組んで、映画プロデューサーを巡る陰謀を探る。

 もちろん、シリアスなストーリーなんて進展しない。プレーヤーは目標の人物の周囲を探るため、様々な職業をこなしていくのだが、展開するのはピザの配達からタクシー、リムジンでの送迎などアイデアだけの一発勝負。基本的にはチェックポイントを回るだけ、というゲームルールに様々なシチュエーションをかぶせているのだ。プレーヤーが走れば前述のように街は大パニック。前に走る車を木の葉のように吹っ飛ばしながら荷物を運送するなんて、不条理たっぷりで、楽しい。

 ライバルとして高飛車な女ドライバーが出てくるのもユニーク。パリではマチルダ、ワシントンではアンジェリーナがプレーヤーの前に立ちふさがる。彼女たちは本気でライバル心をむき出し、プレーヤーが仕事を変えてもしつこく追いすがり邪魔をする。

  熱々のピザをお客さんのところに運んでいるときなどは、こちらに車をぶつけて、車内のピザをぐちゃぐちゃにしようとしてくる。もちろん、ピザよりもドライバーの身体がどうにかなりそうな攻撃なわけだが、そのアホなシチュエーションが楽しい。シナリオによっては、トラックで突っ込んできたりする。彼女たちのアルゴリズムはちゃんとドジで、目の前で障害物にぶつかったり止まらなければならないポイントで行き過ぎたりもしてくれるなど芸が細かい。

 単調になりがちなドライブゲームにストーリーをかぶせることで非常にユニークなゲームとするこの感触は新鮮で、面白い。しかし、個人的な不満が少しある、「難易度が高い」のだ。これは実は後述するが、それなりの理由があるわけだが、非常にぎりぎりのタイム制限と、リアルなマップがこのゲームのクリアを一筋縄ではいかないものにしている。

 画面には目的地を示すマップと最短距離を示す矢印があるのだが、矢印はちょっとしたトラップと考えてもいい。矢印はあくまで「目的地を指し示す」ととらえないと、特にワシントン編ではクリアは難しい。矢印が絶対の正解ではないのだ。何しろ道を一本間違えればそれでもうクリアは不可能。何度も何度もやり直す感触はゲーマーとしてのやりがいはあるのだが……。
 非常に多彩なミッションがあり、スピード勝負だけではなく、現金輸送車での重量感あふれるバトルなど、アイデアも多彩だ。だからこそ、どんどんクリアして先のステージを見たいという気にさせる。

 ゲームそのものだけではなく、声優達による演出もすばらしい。こにくらしい女ライバルだけではなく、自分の犬のことしか興味のないドッグコンテスト出場者、愚痴ばっかり言う金持ちの老婦人、女の方がスピード狂のカップル、などなど性格がぶっ飛んだ乗客が、自分勝手にプレーヤーにさまざまな要求をしてくるのだ。ステロタイプなキャラクタ達をノリノリに演じてくれるおかげで、臨場感はグッと高まる。良くできた翻訳と、声優の演技があることで、非常に良くできたドライブゲームである本作は、その魅力を何倍にも増している。


【スクリーンショット】
凝った演出が楽しいキャリアモード、多彩なミッションをプレイしていく。ライバルの女ドライバーは、ファニーな悪役。ライバル心むき出しでプレーヤーにつっかかってくる
コースの先にある緑の円がチェックポイント。矢印は次のポイントの方向を示す 遅刻した介添人を花婿より先に教会に送り届ける。公園を突っ切って時間短縮! パワフルな現金輸送車でレース。周りの車をごりごり押しのけて、先を急ぐ
街中のピザ配達人と腕を競う。がっつんがっつん車をぶつけて相手を邪魔する 愛犬家をリムジンに乗せて。その自己中な性格に、ワザと悲鳴を上げさせたくなる お金持ちの婦人を美容室へ送ると、ちっともうれしくないイベントシーンが展開する




海外の人と楽しめるマルチプレイモード

 Xbox Liveを使えば、オンラインでプレイすることができる。これがまた非常に楽しい。街にばらまかれた現金をかっぱらっていく「キャプチャー ザ ゴールド」、鬼ごっこをする「ハンター」、「タグ」などオンラインだけのゲームも楽しめる。

 ただ、ちょっとした問題としては外人さん達とのプレイが多くなってしまう……ということである。アメリカではXboxのソフトの売り場はPS2に次いで大きく、プレイ人口も多い。本作をオンラインに繋げてしまえば、そこはワールドワイドだ。必然的に入ってくるプレーヤーは英語圏の人が多い。
 結論から言えば、無言プレイでもオッケーである。ドライブゲームなのだから、多少気まずくてもアクセルとハンドルで返事をすればいい。簡単な挨拶集みたいなものを作っておけばもっと楽しくプレイできそうだ。プレイしながら突然歌っちゃったりする人もいて、お国柄を感じさせられる。

 最初に抱いていたイメージとは違い、オンラインのプレーヤーはそんなに技量が高くない人も多いようだ。ただひたすらプレイしていくのも楽しい。Xboxには声を変えられる機能もあるので油断はできないが、外人の女の子の声が聞こえると、ちょっとドキドキしてしまう。

 英語というのは、日本人なら多少は基礎を学んでいるだけあってか、なんとか相手がいってることはわかる場合が多い。人生相談やナンパには会話技能が必要だろうが、ちょっとだけ受け答えを準備しておけば、簡単な会話は可能だ。基本的に相手を賞賛できるメッセージだけでも話せれば、楽しいドライブができるだろう。

 ただ、やっぱり日本語でプレイしたいという気持ちもある。日本人と思われるプレーヤーさんが、頑張って英語でしゃべっているのを聞くと、思わず応援したくなる。それなのに間違っていたらと思うと恥ずかしくて結局声をかけず、無言プレイをしてしまった。Xbox Liveはもっと評価されていい、気軽なシステムである。もっと日本でのプレイ人口が増えればより楽しいのにと、切実に思った。

【スクリーンショット】
ロビー画面。ゲームを立ち上げると、結構たくさんの人が参加してくれる 画面に見える車は世界のどこからかつないでいる他のプレーヤーなのだ 観戦することも可能。うまいプレーヤーもいるが、ヘタでも充分楽しめる


 最後にこのゲームのキャリアモードの難易度についてもう一度語っておきたい。このゲームの楽しさは非常に「普遍的」なものである。例えば彼氏がプレイをしている画面を見たら彼女が、父親がプレイをしているのを見たら子供が、コントローラを貸してと言ってくるような、じつにわかりやすい爽快感を持っている。しかし、この高い難易度が彼らの気まぐれをうち砕いて、相手にコントローラを返してしまうだろう。

 編集の方に「ちょっと難しすぎますよー」などと愚痴っていたら、「それはちよっと表面的な問題ですね」と指摘された。米国のゲームにとって、クリアとは「努力に対する報酬」なのだ、ということである。頑張って、試行錯誤して、その結果手にできるものだというのである。

 日本でRPGが人気なのは、誰でもクリアできる、という一面があるからだ。また、難易度を調整することでゲームが得意でない人も楽しめ、クリアすることができるゲームが多くなってきている。
 クリアまでを「ゲーム」として見せていく価値観。この作品を「クリアできないからこのゲームはおかしい」とした場合、それはゲーム制作に対する価値観の違いを一方的に判断してしまっているにすぎないのだ。

 とはいえ、アメリカもまた日本式の価値観を受け入れ始めている風潮もある。昔のゲームはとてもクリアできないゲームばかりだったのだが、現在ではそのゲームが好きな人が多少頑張れば進めるゲームも多い。また、それを考えてきちんとゲームバランスを練りこんでいる「丁寧さ」を感じさせるのだ。

 本作もまたそういった丁寧さを感じさせるゲームではある。しかし、完全に個人的なわがままだが、日本での発売の場合、もっともっと、難易度を下げた調整をおこなって欲しかった。原作の良さを殺すことになりかねない、ゲームバランスというものをあえて無視した意見であるが、このゲームはもっと女の子や子供でも楽しめる、楽しんでほしいゲームなのだ。

 昨今のグラフィックのリアルさ、物理エンジンの確かさは、プレーヤーに創造力を必要としたかつての「ゲーム」とはちょっと違った、より広い層が興味を引いてくれるものになりつつあると思う。特にアメリカ製のゲームの中には、欲求が直線的かつ現実的で、「わかりやすい楽しさ」を提供してくれる作品も多い。

 難易度が高い、というのは「洋ゲー」に対する常套句であった。それはクリアに対する価値観だとしたら、あえて日本語版の移植にあたり「もう少しクリアへのハードルを下げる」というアプローチも可能ではないだろうか。これだけ見事に日本語にローカライズしてくれた作品を見ると、どうしてもわがままな要求をしたくなってしまう。「日本語化」という視点には、そういった価値観の違いもまた視野に入れて欲しいのだ。  


(C)2003 Microsoft Corporation. All rights reserved.


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□xbox.comのページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□「ミッドタウン マッドネス 3」のページ
http://www.xbox.com/jp/games/midtown3/
□関連情報
【6月5日】マイクロソフト、迫力のカーチェイスゲーム
Xbox「ミッドタウン マッドネス 3」を8月7日発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030605/mmxbox.htm

(2003年9月10日)

[Reported by 勝田哲也]


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