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Originが放つ3DMMORPG「Ultima X: Odyssey」詳報 |
会場:San Francisco Yerba Buena Center
昨夜の制作発表会に引き続き、本日も「Ultima X: Odyssey」(以下、UXO)のデモンストレーションイベントが開催された。イベントは、UXOのSenior Producer Rick Hallのプレゼンテーションを皮切りに、PTプレイのデモ、体験会、フィードバックフォーラム(Q&A)と続き、最後にはPvP(Player vs Player)トーナメントも開催されるなど、まだβ前のαバージョンにもかかわらず、実にオープンな内容だった。
同社ではこのイベントをたたき台に、年内開始を予定しているクローズドβテストに向けて再開発に取り組む意向だ。すなわち、インターフェイスやメニューまわりといった基本仕様を含め、あらゆる仕様が今後修正が加えられる可能性は非常に高い。あらかじめそのことを念頭に置いた上で本稿を読み進めて頂きたい。
なお、掲載した画面に一部日本語化が実装されているが、これもまだ暫定的な内容で、テキスト内容やフォントに関しても今後変更される可能性がある。現時点で日本語版について言えるのは、年内開始予定のβテストを日本でも国内サーバー、日本語クライアントで実施する計画を進めているということだ。UXOは、今期発売されるのは英語版と日本語版だけ。このことでもいかにEAが日本市場を重視しているかがわかる。
■ 基本的なゲームシステムについて
アバタールが創造した世界だけあって、過去のシリーズでブリタニアに存在した街や人物も登場し、世界の基本ルールも共通性がある。その最たるものが徳システムの存在だ。ともかく、UXOの舞台は、平たく言えば何が出てきてもおかしくない、フレキシブルな世界観ということができる。
プレーヤーの成長については、先日のレポートでも触れたように、「Ultima Online」のようなスキル制を廃し、レベル制の成長システムを採用している。ただし、そのシステムは他のMMORPGに見られるようなオーソドックスなスタイルではなく、「Ultima」らしさプラスMMORPG界のデファクトスタンダードの完全打破を狙った独創的な内容となっている。
順を追って説明していくと、UXOでは敵を倒すと経験値が獲得できる。ここまでは他のMMORPGと同じだが、経験値を蓄積することによって上がるのはレベルではなく、ステータスポイントとアビリティポイントとなっている。ステータスポイントは文字通り、キャラクタの能力(STR、DEX、INT、CON)を底上げするもので、アビリティポイントはスペシャルアビリティと呼ばれる特殊技を覚える、もしくはその能力を磨くためのポイントだ。これは「Diablo」でレベルアップごとに割り振れるスキルポイントと同質と考えれば理解しやすい。
レベルアップは、それらの蓄積の経過として発生する。つまり、レベルアップするとポイントを獲得できるわけでなく、ポイントを獲得/消費する課程のひとつの節目としてレベルという要素が存在する。他のMMORPGとはまったく逆の発想だ。
次にキャラクタのスペシャライズに関して。今回、選択可能な種族は、人間、オーク、ガーゴイル、エルフ、ピクシー、フォーダの6種族。それぞれ男女が存在し、ヤング、アダルト、オールドの3つの世代が用意される。カスタマイズ要素は、髪、顔、髭などを検討しているということだ。
この種族選択でユニークなのは、種族間に能力差が存在しないところだ。つまり、小人のピクシーと、怪力の亜人種のオークのSTRはまったく同じになる。いかにも不自然なルールだが、これは、種族によってキャラクタのスペシャライズを固定化してしまわないための措置で、わかりやすくいうとオークのスペルキャスターも、ピクシーのバーバリアンも大歓迎というルールだ。こうした点も非常にユニークだ。
ジョブに関しては、最初にクラスを固定化してしまわないという点で、UOにもやや近いシステムだが、これもまたPATH(道: 剣道、柔道の道と同意)システムと名付けられたユニークなシステムを採用している。
具体的にはBlade、Arcane、Balance、Natureの4つの道を用意し、それぞれに3つのクラスを用意している。たとえばスペルキャスター系でまとめられたArcaneであれば、Mage、Tinker、Sorcererの3つがあり、それぞれ異なる系統のスペシャルアビリティが習得できるようになっている。
このシステムのおもしろいところは、Mageの攻撃系スペルを押さえつつ、Tinkerの回復補助系も同時にマスターしていくことができるところだ。とはいえ、ひとつのスペシャルアビリティに複数のポイントを割り当てることで、その効果をより高めることもでき、また、特定のクラスに多くのポイントを割り当てることでより高位のスペシャルアビリティにアクセスできるようにもなるため、あまり多くのアビリティに手を出しすぎると、中途半端なキャラクタになってしまう。なかなか難しいところだ。
■ 徳システムについて
クエストをクリアして徳ポイントを稼ぎ、それを割り振っているシーン。得た徳はValor(武勇)で、ポイントを割り振っているアビリティはSupremacy of Valorだ |
この画面はPATHに属するスペシャルアビリティを確認しているところ。スペシャライズはTinkerで、Healingなどのアイコンが見える |
UXOの徳システムは、後述するクエストシステムと直結しており、謎解きそのものが徳探求の唯一の手段となっている。徳は慈悲(Compassion)、誠実(Honesty)、名誉(Honor)、謙譲(Humility)、正義(Justice)、献身(Sacrifice)、霊性(Spirituality)、武勇(Valor)の8種類にわけられ、クエストをクリアすることで、特定の徳ポイントを得ることができる。徳ポイントは、それぞれの徳が備えるスペシャルアビリティに割り振ることが可能で、どのタイプの徳を専攻するかによって異なる特性を備えたキャラクタができあがることになる。
UXOの徳システムのユニークなところは、1人のキャラクタで8つの徳を全部マスターする設計にはなっていないところだ。同作では、1アカウントにつき8人(予定)のキャラクタスロットが用意されている。1人がメインキャラクタで、残りはフォロワー(弟子)用で、ひとつの徳をマスターすることにより、フォロワーキャラクタが作成可能になる。
フォロワーは、能力的にはメインキャラクターの性能をコピーしているが、種族やクラスは自由に再選択することができる。フォロワーを作成するとメインキャラクタの徳アビリティのロックがはずれ新しいアビリティの習得が可能になる。これはフォロワーが別の徳を習得し、新しいフォロワーを作成することでさらにロックが外れていく仕組みで、究極のキャラクタを作成しようと思えば、8キャラクターを育てる必要があるようだ。
もちろん、フォロワーを作成せずに、メインキャラクターのみで、すべての徳を上げていくことも可能だが、ひとりで得られる徳ポイントには当然限りがあり、またフォロワーを作成して初めてアクセス可能になるアビリティの存在、さらに後述するPvPシステムの実装なども考えても、マルチキャラクタによるゲームプレイは推奨されているといえる。スタッフの話によれば、ひとつの徳をマスターまで上げるのに3カ月かかるということで、究極のキャラクタを作成するにはずいぶん長い時間が必要になるようだ。
■ インターフェイス
これがα版レベルのゲーム画面。ペーパードールをクリックするとメニューが開く。ペーパードールはHPバーとパワーバー、方位盤の役割も兼ね、その右側にショートカットアイコンが並ぶ。左上がチャットウィンドウだ。 |
これはインテリジェントアイテムと呼ばれるレアアイテム。アイテムそのものが成長要素を持ち、レベルアップによる性能強化を図ることができる |
さらにチャットウィンドウの発言者はすべてハイパーリンクになっていて、名前をクリックするだけで返事を返したりできる。また、アイテムも自動的にハイパーリンク化されるため、「このブロードソード強いでしょ?」といったチャットに対し、それを聞いた全ユーザーがマウスクリックひとつでその武器のステータスを確認することができる。
これらの操作は革新的とまではいえないが、いままでありそうでなかったものばかりだ。UXOの登場により、MMORPGのインターフェイスが、ようやくWindowsレベルにまで追いついたという印象である。
キャラクタの基本操作は、Unreal系のFPSとおおむね同じで、WASDキーでキャラの移動、マウス操作で視点変更となっている。Cキーを押すことでマウスカーソルモードに移行でき、モンスターのターゲッティングや、ドロップアイテムの回収、バックパックの操作などを行える。マウスカーソルモードだと、移動系の操作に若干の遅延が出てしまうため、実際のゲームプレイでは極力ショートカットキーを使うということになりそうだ。
戦闘時は、左クリックで攻撃、右クリックで防御。敵のターゲットは現状オートターゲットになっており、もっとも近い敵がターゲットされる。ターゲット状態になると、敵を中心に追尾するかたちになり、攻撃等のアクションが取りやすくなる。戦闘中は、ターゲットした敵の左右に目盛りと一緒にパーセンテージが表示される。左は攻撃命中率を指し、ターゲット後徐々に上昇していく。意識を集中して狙いを付けるという考え方だ。右は攻撃回避率を指しており、これは戦っているうちにどんどん下がっていく。こちらは隙ができるという考え方だ。このため、効率よく戦うためには、適度に防御を行ない、回避率を上げながら戦う必要があるわけだ。体験会では実際に何度も体験したが、非常にシンプルながら奥深いシステムだ。
■ クエストシステム「Odyssey Adventure System」?
クエストが発生する相手は人間だけではない。デーモンと会話することでもクエストを受けられる。ただし、その場で死闘になることも |
今回の体験会でクエストを与えるためにたびたび出現していた女ヒーラー。テキストがすべて日本語化されているところにも注目。内容を読む限りではチュートリアルのワンシーンのようだ |
シチュエーションとしては、クエスト終盤のボス戦エリアで使用したり、クエスト丸ごと利用したりされるようで、プライベートエリアに進入するにあたり、特にデータ読み込みやエリア切り替えなどは発生しない。ビジュアルもパブリックエリアの一部をそのまま流用するような形で、感覚的には、プレーヤーら一行がどこか特別なエリアに移動するというよりは、まわりのプレーヤーがいなくなるといったほうが近い。
先述したようにクエストを達成すると、そのクエストの性質に見合った徳ポイントが得られる。当然ひとりでクリアできるものばかりではなく、たびたびパーティーを編成する必要があるようだ。クエストの総数は300前後を目標とし、クリア想定時間は20分から1時間前後。
ただし、ストーリーに深く絡む大がかりなクエストもいくつか実装するということで、これらについてはもっと時間がかかるようだ。いずれにしてもクエスト途中でのログアウトやPT離脱を行なっても、クエストの途中からプレイを再開できる。こうした柔軟性も評価できる。
プライベートエリアの導入は、いうまでもなく現行のMMORPGで問題となっている、同じ目的の冒険者が多すぎることによるユーザー間でのシナリオ外のトラブルが発生したり、シングルプレイRPGではありえない無駄な待ち時間が発生することを防ぐためのものだ。同システムについては、まだ検討材料が多いとしているが、大きなポテンシャルを秘めていることの裏返しでもある。大いに期待したいところだ。
■ シンプルながら奥深いバトルシステム
デモで見られた6人PTの模様。キャラクタの移動速度は速めで、戦闘が始まると好き勝手に移動するため、誰がどこにいるのか一時的にわからなくなる。とにかく派手だ |
パブリックフィールドにもNPCがいるため、戦闘中に会話モードになることもあった。一応無敵の扱いになるようだ |
本日のイベントでは、MMOバトルの集大成ともいえるPvPのトーナメントが開催されたが、まるで「Unreal Tournament 2003」のようなアグレッシブは動きが印象的だった。戦闘バランスに関しては、スペルキャストが中断されなかったり、命中率100%の状態で魔法を撃つとホーミングして百発百中だったりして、いまひとつのできばえだったが、「これがMMORPGの戦闘か」と思わせるほどの激しい動きには驚かざるを得ない。これは視界が広く、起伏の多い地形も正確なディテールで描くUnrealエンジンの影響も大きいが、これならアクションゲームファンでも楽しめそうな雰囲気だ。
PvPに関してはギルドウォーも当然完備し、プライベートエリアを利用した集団戦も楽しめるようだ。アバタールの創造上の世界という設定のため、いくらPvPを行なっても徳や経験値を失わないというシステムもPvP好きにはうれしいところ。PvPトーナメントをひととおり見た印象では、クエストを数多くクリアして徳ポイントを稼ぎ、幾人ものフォロワーを育て、十分に強化したメインキャラでPvPに打ち込むといった戦闘特化タイプのMMORPGになりそうだ。
「Ultima Online」ユーザーは、ハウジング、ライディング、リソース収集、アイテム生産といった要素も気になるところだろう。こうした情報に関しては、Senior Producerインタビューの中で紹介したい。
UXOのバトルは、1対1はもちろん、1対多というシチュエーションも多い。スペルキャスターにはなかなかつらいゲームになるかもしれない |
エティンを相手に奮戦するキャラクタ。同じキャラクタでも通常攻撃以外に魔法やアビリティの使用により、バリエーションのある戦闘を行なうことができる。剣と盾を持って攻撃魔法を唱えるところなどはいかにも「Ultima」らしい |
(C) 2003 Electronic Arts Inc. All rights reserved.
□Electronic Artsのホームページ
http://www.ea.com/
□「Ultima X: Odyssey」のホームページ
http://www.uxo.jp/
□関連情報
【2003年8月22日】EA、シリーズ最新作「Ultima X: Odyssey」を正式発表
MMORPGとして生まれ変わるUltimaシリーズ第10弾
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030822/uxo.htm
(2003年8月23日)
[Reported by 中村聖司]
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