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Electronic Entertainment Expo 2003現地レポート鬼才ピーター・モリニュー氏監修の「Fable」開発者インタビュー |
Los Angeles Convention Center
イギリスの天才ゲームデザイナーであるPeter Molyneux氏が監修する、Xbox向け最新ゲーム「Fable」。今回E3で「Fable」の開発を担当するBig Blue BoxのIan Lovett氏に「Fable」に関する詳しい話を聞くことができ、これまで多くの謎に包まれていたゲーム性が徐々に明らかになってきた。ここでは、インタビューの様子を織り交ぜつつ「Fable」のゲーム性を紹介していこう。
■ 名声を高めて世界一のヒーローになる
「Fable」は、ゲームのカテゴリーとしてはRPGに分類されるゲームだ。しかし、最終目標となる絶対的な悪役はこれといって存在せず、主人公にもレベルといった一般的なRPGにおける明確な成長の概念も存在しない。では何が目的なのか? それは、様々なクエストをとおして名声を高め“世界一のヒーローになる”ということだ。
ゲーム開始時には、主人公は他の街の住人同様、単なる名もない人間だ。しかし、「ヒーローギルド」から様々な依頼を受け、その依頼を成し遂げることで、主人公の名声が徐々に上がっていく。そして、最終的に世界一の名声を勝ち取ることがこのゲームの目的となる。
では、名声を上げるにはどういった行動が必要となるのだろう。もちろん、ヒーローギルドで受けた依頼を成し遂げれば、それなりの名声は得られる。しかし、ゲーム内には、主人公以外にも多数のヒーロー予備軍が存在している。もちろん、すでに主人公よりも高い名声を得ているキャラクタもいるわけだ。そうなると、単純にミッションをクリアするだけではなく、より高い名声を得られるような行動が必要になってくる。そこで「Fable」には、ミッションを遂行する前に、そのクエストの内容や、どういった条件でクエストを遂行するのか、住民に対してアピールできるという機能が用意されている。
広場に用意されているお立ち台に立ち、お立ち台を囲む群衆を前に、これから行なおうとしているミッションの内容を語り、そのミッションを「武器を使わずに遂行する」とか、「ヒーリングを行なわずに遂行する」といった内容の追加的なアピールができるのだ。ミッションの内容が難しく、さらに自分でクリア条件を厳しくすれば、それだけクリア時の名声も大きく上がることになる。
ところで、主人公のゲーム内での行動には非常に制約が少ない。ヒーローになるには、ミッションをクリアするだけではなく、普段の行動も品行方正であるほうがよいと考えるのが普通だろう。確かにそうなのだが、このゲームでは常に品行方正でいる必要はない。例えば、ミッション遂行中に他のヒーローが敵に襲われていたとする。このときに、そのヒーローを助けるべく一緒になって敵と戦ってもいいし、ライバルとなるヒーローを見殺しにしたり、逆に敵と一緒になってそのヒーローを殺してしまってもいい。
ライバルとはいえ、他のヒーローを見殺しにしたり殺したりすると、名声が下がるのではないかと思うかもしれないが、一概にそうとは言えない。その現場を誰かに見られていると、名声は下がってしまう。しかし、当事者以外に誰も見ていなければ、名声は下がることはない。つまり、名声を評価する群衆の前では品行方正でいて、誰も見ていないところで悪の限りを尽くすといった遊び方もできるのだ。善のヒーローを目指すもよし、悪のヒーローになってもいい。このあたりの判断は全てプレーヤーにゆだねられているのだ。
ゲームの進行に関しては、時間的な制約はない。つまり、ゲーム内で決められた制限時間内(例えば10年以内などというようなもの)に世界一の名声を勝ち取らなければならないというようなことはない。基本的には、ストーリーに関連するミッションを順次クリアしていけば、世界一の名声を得られるようになっているという。
受けたミッションの内容を広場のお立ち台で披露。さらに厳しいクリア条件を提示することで、クリア時の名声アップが高まる | 誘拐された人を助けるミッションでは、誘拐された人の目の前で敵と対戦することになり、誘拐されている人も名声を左右する証人になる | 助け出した女性は、街に帰っても主人公のことを覚えていて、好意的に接してくれる |
「Fable」の大きな特徴のひとつとして、プレーヤーの行動によって主人公の容姿が変化していく、という点がある。例えば、終始品行方正な行動を取っていれば、主人公の顔は凛々しくなっていくし、逆に悪の限りを尽くしていれば、暗い悪人の顔に変化していく。
顔の変化だけでなく、体つきも行動によって変わってくる。例えば、いつも強力な剣をふりまわして敵と対戦していると、筋肉隆々の体になるし、逆に食べたり飲んだりばかりで怠けていると、とたんにおなかの周りがふくらんでくる。魔法を使っていると、体に怪しい模様が出てきたり、魔法を使いすぎると、その影響で髪が抜け落ちたり、目が白くなったりといった変化が現れる。
行動による変化は、主人公の容姿にとどまらず、街の住民の主人公に対する反応も刻々と変化していく。例えば、名声が上がると、ミッションをクリアして街に戻った時に、街の入り口で多数の住民が出迎えてくれるようになるし、街で買い物をする場合でも安く買えるようになる。また、強盗にとらわれた住民を助け出した場合などは、助け出した住民が主人公を見つけてお礼を言ったり、手を振って挨拶してくれる。
ただ、主人公に対して好印象を持っている人でも、その人の前で下品な行動を取ったりすると、とたんに態度が変わってくる。つまり、ゲーム中に登場するキャラクタは、主人公の行動を見て、どういった行動を取ったかを覚えており、それによって主人公に対する接し方が変わってくるわけだ。これこそ「Fable」の醍醐味であり、他のゲームにはない特徴的な部分と言えるだろう。
そして、こういった「Fable」の特徴を思う存分楽しむには、単純にミッションをクリアしていくだけではだめだ。本筋のストーリーとは関係のないクエストも多数用意されており、それらをこなしつつ、街の住民達の会話や行動の変化を楽しんでこそ「Fabel」の世界にどっぷり浸れることになるのである。
ところで「Fable」では主人公の性別を選択したり、開始時に容姿をエディットするといった機能は用意されていない。企画段階では主人公に女性を入れようと考えていたそうだが、ゲームの規模があまりにも巨大になりすぎてゲームが完成しなくなる可能性があったために、決まった男性キャラのみに限定したという。
通常、主人公はこのような凛々しい(?)風貌をしている | しかし、行動内容によって、このような年老いた姿になることもある | 酒場で住民に酒をおごるといった単純な行為でも主人公に対する接し方が変化する |
そもそも「Fable」を制作するきっかけとなったのは「誰でも簡単に楽しめるRPGを作りたかった」からだという。一般的なRPGは、内容や操作性が非常に複雑なものが多く、難しすぎて敬遠するユーザーも少なくない。そういったこれまでのRPGを敬遠していたようなユーザーでも、すぐに楽しめるゲームにするというのが「Fable」の基本コンセプトになるわけだ。
操作面に関しては、剣による攻撃だけでなく、魔法を利用する場合でもメニュー形式での操作ではなく、簡単なボタン操作のみで利用できるようになっている。ゲーム中の操作性をとにかく簡略化することで、これまでのRPGにはない遊びやすさを実現しているという。技術的な部分も大きいとは思うが、Xbox Liveに対応せずシングルプレイのみのRPGとなっている点も、遊びやすさという点ではいい判断だろう。
今回インタビューを行なったIan Lovett氏をはじめとする開発担当の人たちは、以前から様々なゲームのおもしろい部分を集めてひとつのゲームを作りたいと考えていたという。とはいっても、他のアクションゲームやRPGの真似をするのではなく、他にはないユニークなものを作りたかった。そこから生まれたのが、この「Fable」というわけだ。
ゲームの目的である「世界一のヒーローになる」という点は、なんだか曖昧なように感じられるが、ゲームを進めていけば、住民達の反応によってナンバーワンのヒーローになれたかどうかが明確にわかるようになっているという。ただ、それがどのような形になるのかは、詳しく教えてもらえなかった。また、エンディングの仕様も現時点では固まっていないそうだが、ナンバーワンのヒーローになった時点で、それまでに訪れた街を改めて訪問できるようしたり、エンドロールを表示させた後に、再度ゲームの世界に戻ってプレイできるようにする可能性もあるそうだ。
Fableの開発を担当するBig Blue Box社のIan Lovett氏。質問に丁寧に答えていただき、Fableの内容が良く理解できた |
しかし、ゲーム内容を聞けば聞くほど、とにかくプレイしたいという感情が芽生えてくる。ゲームシステムは様々な部分で自由度が高く複雑なようだが、実際にはかなり単純であり、間違いなく日本人に合っていると思われる。日本市場において欠かすことのできないRPGを増やすことこそ、Xboxを日本市場で活性化させる有効な方策であることは間違いない。そういった意味では、この「Fable」は、間違いなく日本で発売すべきタイトルと言っていいだろう。とにかく、1日も早い日本における発売決定の知らせを期待したい。
ところで、インタビュー中に、続編となるであろう「Fable2」の構想もかいま見ることが出来た。主人公が年老いていくような容姿の変化も見られるため、主人公が死んで、その主人公の子供が主人公の名声を受け継いでプレイを継続できるような仕組みがあるのかどうか聞いたところ、「『Fable2』の冒頭は、そういったシナリオで始めようかと考えているところだ」というコメントが得られた。まだ「Fable」自体が登場していないので気の早い話ではあるが、こちらも期待したい。
【スクリーンショット】 | ||
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(2003年5月18日)
[Reported by 平澤寿康]
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