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Electronic Entertainment Expo 2003現地レポート「DEUS EX2」と「THIEF3」が姿を現す |
会場:Los Angeles Convention Center
■ DEUS EX:INVISIBLE WAR
カリスマゲームクリエータのひとりWallen Spector氏の代表作ともなっているアクションアドベンチャーシューティングの「DEUS EX」の続編がついに今年発売される。本作は「DEUS EX」の正当な続編ではあるが、タイトルから「2」が取り除かれることが決定した。
【DEUS EX:INVISIBLE WARが“DEUS EX2”ではない理由】
Wallen Spector氏によれば「1作目が発売されてからだいぶ時間が経っている」、「一作目を知らなくても本作が十分楽しめる内容になっている」、「本作はXboxでもリリースされるが、Xbox用DEUS EXとしては本作が第一弾となるため」といった理由からだという。ただし、本稿では便宜上「DEUS EX2」という表現を用いることにする。
ゲームの舞台は、自分の体をサイボーグ化できるほどテクノロジーが発達した近未来。主人公は国際テロリズムを撃退するために生まれた国際警察組織に所属するエージェント。ストーリーは第一作目から15年後に設定されている、登場するキャラクタも前作から継承され、一作目に登場したステージも様相を変えて再登場する。ゲームシステムは、前作を踏襲した一人称シューティング(FPS)とRPG要素を融合させたスタイルを採用している。
ION STORM代表、Wallen Spector氏。アメリカが誇るカリスマクリエーターの一人 |
たとえば、扉を開けるにしても、管理者からキーを奪ってもいいし、コンピュータをハッキングしてセキュリティシステムを無効化してもいい。発想を転換して、この扉を使わずに別の場所から侵入するといったことも可能。このように、現実世界でも特定の問題に対する解法がひとつではないように「Deus Ex」の世界もいくつかの解法が用意されていた。
このフィーチャーは今作でも健在。ストーリーはプレーヤーの行動によって分岐し、最終的には4~5のエンディングを迎えるシステムになっている。
【DEUS EX2をプレイするにはGeForce FX5900シリーズが最適!?】
今作では、ゲーム中のインタラクティビティがグラフィックスエンジンと物理エンジンのパワーアップによってリアリズムをまとってプレーヤーに迫ってくる。
グラフィックスエンジンは「Unreal」エンジンをベースにしているが、開発元のION STORMの技術スタッフDOUG CHURCH氏によれば、オリジナルコードはほとんど残っていないという。レンダリングエンジン部は、完全にION STORMオリジナルのものになっているといい、いうなれば「Deus Ex(2)エンジン」といっても差し支えないようだ。
基本的な物理エンジンは「Havok」からライセンスされたコアを、ほぼそのままの形で活用。ただし、上層レイヤーでゲームに必要な物理現象を適切にマネージメントするシステムは、今作用に書き下ろしているという。
グラフィックスの見所は、なんと言ってもリアルタイムシャドウ生成。今作は「ステンシルボリュームシャドウ技法」を利用している。これは、光源からオブジェクトのエッジ上の各頂点を引き延ばして影の領域(シャドウボリューム)を生成する技法。影領域の中にあるものが影となり、それ以外の領域は普通にレンダリングされる。
この技法でセルフシャドウや相互投射影までをまじめに処理すると非常に負荷が高くなるが、RADEON 9700以降、GeForce FX以降にはこれをアクセラレーションする仕組みがあるため、現実的な形で使えるようになってきている。
5月14日に発表されたNVIDIA GeForce FX5900シリーズのUltraShadowテクノロジーではこれをさらにアクセラレーションできるため、GeForce FX5900奨励ゲームとして本作がピックアップされている。
【DEUS EX2はDirectX8.0ベース~ただしDirectX9.0に対応する可能性あり】
開発はPC版とXbox版が並行して進んでおり、ゆえにレンダリングエンジンはDirectX8.0相当がベースになっているという。これは、プログラマブルシェーダでいうところの頂点シェーダ1.1とピクセルシェーダ1.3レベルということになる。
PC版については、Xbox版の開発が完了後、シェーダプログラムをDirectX9世代にモディファイしていく可能性もあるとDOUG CHURCH氏はコメントした。
DirectX7世代以前のGPUでも一応は動作するそうだが、その際はステンシルボリュームシャドウ要素をオフにせざるを得なくなる。そうなると、影がリアルタイム生成されている本作ではシーン内の影がなくなり、非常に明るいシーンばかりのゲームになってしまうため、制作者の意図しているシーンを再現できなくなってしまうそうだ。最終的な発売バージョンでは、どう解決するかを現在検討中だとしている。
これは筆者の意見だが「DEUS EX2」を快適かつ制作サイドの意図するビジュアルで楽しむためにはプレイするためには最低でもGeForce 3やRADEON 8500が必要になると思う |
ゲームモードはシングルモードのみで、現時点ではマルチプレーヤーモードの搭載の予定はなし |
プラットフォームはXboxとPC。発売時期は2003年秋を予定。日本語版の発売予定はあるが発売時期は未定だという |
■ THIEF(サブタイトル未定)
こちらもWarren Spector氏の代表作で、タイトルから数字が取れているものの、実際にはTHIEFシリーズ第3作にあたる。俗に「THIEF3」と呼ばれていた作品だ。
数字の「3」が取れた理由は「Deus EX2」の「2」と同じ理由のようだ。こちらも「Deus EX2」の「DEUS EX:Invisible War」のように何かサブタイトルが付くのではないかと推察される。なお、本稿では便宜上「THIEF3」と呼ぶことにする。
今回の冒険は、「THIEF1」、「同2」で描かれた“機械と魔法の世界”のその後。プレーヤー扮する主人公は、今回も「富めるものから盗み“"自分”に分け与える」大泥棒ギャレット(Garrett)。
彼の任務は、いにしえより語り継がれている「暗黒時代(Dark Age)」の到来を阻止するというもの。暗黒時代が到来する危機は、実は彼が不本意ながらも呼び覚ましてしまった“悪魔”が要因。この悪魔たちを封印するために必要となる宝物は、今回もやはり「富める者」が持っている。今作のギャレットは、世界を救うために「盗む」のだ。
Wallen Spector氏の監修の下で「THIEF3」のプロデュースを務めているKRISTINE COCO氏 |
前作まではほぼ決めうちだった“光と影”が、今作ではリアルタイム生成されているため、光源をつぶすことで動的に影を作り出せるのだ。
「なにを当たり前のことを」と思うかもしれない。しかし、これまでの3Dゲームのほとんどは、陰影処理こそ複数光源に対して行なってきたものの、影生成はプリレンダー生成されたライトマップによる決めうちが大半を占めていた。
よって、これまでにリリースされた多くのスニーキングアクションゲームでは、あらかじめ用意された「物陰」にしか潜めなかったのだが、「THIEF3」では自ら光源をつぶして影を作り出したり、逆に光源を作り出して一定領域に意図的に影を作り出すことができるようになっている。
「THIEF3」が採用するゲームエンジンは「DEUS EX2」エンジンだ。「DEUS EX2」と「THIEF3」は開発がオーバーラップして進行してきたこともあり、双方のゲームで必要な影生成フィーチャーが高い汎用性を発揮できるよう作り込まれているという。
さて、時代設定が中世付近におかれた「THIEF3」では、光源のほとんどが松明などの燃焼系光源であり、水をかければ消え、火種を投じれば簡単に点くようになっている。プレーヤー扮するギャレットは、水の矢、炎の矢などの特殊弾頭の点いた弓矢を所持しており、ゲーム中の要所要所でこれらを使い分けていくことで、光と影を操りつつ先へ進んでいくことができる。
弾頭の種類はゲームを進めるごとに増えていき、催眠ガス弾頭や、その他の特異効果を周辺に及ぼす矢が手に入るようになるという。
【強化されたギャレットの運動能力】
「THIEF1」、「同2」では、このゲームの特徴でもあり欠点でもあった「敵に見つかったら終わり → やり直し」といったゲームシステムに対して「ギャレット自身の能力の強化」という形で対応を試みている。
とはいえ、ギャレットは泥棒であり戦士ではないため、戦闘が不得意であるという点は変わらない。ギャレットの能力が強化されたと言っても、戦闘能力が向上されたわけではなく、強化されたのは彼の運動能力のほうだ。
たとえば、袋小路で敵に見つかった場合、前作までは「追いつめられて袋だたき」という結末しかなかったが、今作のギャレットは壁をよじ登ったり、壁を伝うことができるようになったため、敵を煙に巻いて逃げることができるのだ。
これは、前作までのゲーム性における難点を解決するだけでなく、プレーヤーに対して新しいプレイスタイルを提供できている点で、筆者は高く評価している。
プラットフォームは「DEUS EX2」同様にPCとXBOX。発売時期は欧米で2003年秋を予定 |
こちらもビデオカードはGeForce FX奨励タイトルになっている。Xbox版とPC版でゲーム内容に違いは無い |
(2003年5月16日)
[Reported by トライゼット西川善司]
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