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E3レポート セガブース“ソニック新作”勢ぞろい。中でも一押しは「SONIC HEROES」 |
会場:Los Angeles Convention Center
E3においてセガは伝統的にWEST HALLにブースを出展している。ハード撤退以来、残念ながらその規模は減少しているが、今年はソニックチームの新作を中心にしたクオリティの高い新作群でなかなか侮れない展開となっている。そんな中でも期待の新作のひとつなのが、同社初の3プラットフォーム同時発売となる「SONIC HEROES」はひとつの大きなターゲットポイントになるべく作品で、制作しているソニックチームも東京と米国のスタジオで協力して制作中であることなど、かなり力が入っている。
発売はこの冬にプレイステーション 2、ニンテンドーゲームキューブ、Xboxの3機種同時発売を予定していると言うことで、完成までにはもう少し待たなければならないが、今回は同作品のディレクタとして米国で制作を行なっておられる飯塚隆氏にお話を伺う機会を得たのでレポートする。
ディレクターの飯塚隆氏(右)とプロデューサーの中裕司氏(左)。取材陣の質問に丁寧に答えてくれた |
そもそもソニックチームのゲーム制作の根本に、「普通のアクションゲームではなく、ユーザーにドキドキわくわくしてもらえるSomthing Newがあるゲームを作りたい(飯塚氏)」というのがあり、「SONIC HEROES」ではその何かが“チームアクション”に集約されているようだ。
今回ゲームでは3人一組でチームを組んでゲームをスタート。基本的にプレーヤーが操作できるのは1人だが、いつも2人のキャラクタがそばにつかず離れず行動を共にする。プレーヤーはボタン1つでステージのどこでもキャラクタを変えることができる。たとえばソニックのスピードを生かしてガンガン突き進んでもいいし、ナックルズのパワーを生かして、他のキャラを敵に投げつけながら着実に進むこともできる。今回のE3ではソニック、ナックルズ、テイルズのヒーローチームが海辺の島で活躍するステージを遊ぶことができたが、登場するチームは4チームあり、製品版ではプレーヤーはどのチームででも遊び始めることができる。それぞれのチームにストーリーがあり、ゲームを進めていくことでそれらのストーリーがチームごとに交錯し、謎が明らかになっていく。
今回初めての3機種同時発売となるが、3機種による違いはないという。飯塚氏は「僕の使命はどの機種で遊んでも同じものが遊べるようになること」と話す。Xboxに5.1chサラウンドなどが搭載されているなど、機種ごとに若干の違いがあっても、その癖をことさら強調する作りにはしないという。この理由について「たまたまハードを持っていないだけでプレイできないというのは不親切だ」と説明する。
この件に関してはインタビューの途中から加わった中裕司氏も「プラットフォーム戦争は無意味」とし、「ソニックをより多くの人に遊んでもらえることはうれしいことだ。すでに12年間シリーズを作り続け古いユーザーもいるし、テレビアニメもスタートして新しい子供達のユーザーも多い。こういった人たちすべてが遊べるものを広く提供する。そのために3機種で同時に発売していく」と語っている。中氏はまた「これまでは自社ハードがあったため、ソニックはそこでしか発売できなかった。しかし幸か不幸かその制約がはずれてしまった。そういった意味からもトータルでソニックユーザーを増やしていきたい」と話していた。
同社にとって3機種同時発売は初めてのこととなるが、RenderWareという制作ツールを使い、効率的に進めているという。それでも機種間の違いが出ることもあり、ひとつひとつその差を埋めていくには時間がかかっているようだ。中氏は「1機種だけで制作していれば先のスケジュールも読めるが、3機種同時は初めてのことでもあるのでわからない。3倍というわけではないが、それなりに時間がかかる」と制作の苦労について語った。
前述のように制作は日本のソニックチームだけでなく米国のソニックチームも共同で制作している。「ソニックアドベンチャー」は日本で制作され、「ソニックアドベンチャー2」は米国で制作されているが、このことについて飯塚氏は「日本のユーザーはじっくりと捜し物をしたりして、長く楽しみたいユーザーが多い。逆に米国のユーザーは日本と違いエキサイトしてワァーと短時間盛り上がって楽しみたいユーザーが多い。ソニックのテンポを考えるとアメリカ向きにしたいという考えもあった」という。米国で作ることがなければ「ソニックアドベンチャー2」はなかったと言うほどで、そういった意味では米国で作る意味はかなり大きいといえるだろう。
個人的にプレイしてみての感想は「スピード感とアクションがとにかく気持ちいい」の一言に尽きる。実にソニックらしいゲームなのだが、これまで以上に爽快感があるといえるだろう。プレイすることができたステージは、美しい島を舞台にしておりそこをスゴイスピードで駆け抜けていくすっきりとした気持ちの良い楽しさは、他のゲームでは味わうことができない。
しかし、逆に言えば3人のヒーローを使い分けて進んでいくというゲームスタイルは前述のように自由度が高いこともあってゲームバランスが難しくなるのではないかとも考えられる。この点について飯塚氏と中氏は口をそろえて「ユーザーがプレイを工夫していくことでどんどん感覚が変わっていく。アクションが手になじんでくるまで『ここはこうした方が良いかもしれない』とかユーザーが成長し、達成感を味わうことがゲームとして重要だ」と説明。
飯塚氏は「たとえば何度もゲームをプレイすることで隠しルートやショートカットが見つかったり、もっとテクニックを使えば、たとえばソニックで走っていきジャンプした瞬間にキャラクタチェンジし着地時に違ったアクションを行なうことだって可能だ。アクションが手になじむことで、楽しみ方がどんどん変わっていく」という。「SONIC HEROES」は、こういったユーザーが工夫することができる余地の残された、自由度の高いアクションゲームなのだ。自由度が高いのは何をすればいいかがわからなくなると言うことではなく、プレイスタイルをプレーヤーに強要しない……ということであり、100人プレーヤーがいればそれぞれの方法でゲームをクリアすることができるというワケだ。
中氏は「やっと次世代機ならではのソニックが作れるようになったのではないだろうか。アクションゲームがどう進化していくのか、その答えはすぐに出ないが、遊びという面でハードをうまく使うことができるようになった」と「SONIC HEROES」がひとつ進化した形のアクションゲームである点を強調した。
インタビューが終わりブース内で写真を撮っていると、通りすがりの米国人に「なんで写真を撮っているんだ?」と聞かれた。「彼がこのゲームを作っている人ですよ」と英語で答えるとその外人はいきなり高いテンションで「彼がミスター中なのか?」と聞いてきた。ソニック=中裕司氏ということが浸透するほど有名なキャラクタであり、そのゲームの最新作の登場なのだ。ソニックらしいのに、これまでにないアクションゲームであるという点に注目しながら完成を楽しみに待ちたいところだ。
■ ついに復活? 3Dになって帰ってきた「獣王記(ALTERED BEAST)」
ブースの端っこの方に何気なくムービーで展示されていたのが「ALTERED BEAST」だ。往年のセガファンであればそのタイトルに聞き覚えがあるだろう。そう、アーケードで登場し、メガドライブのリリース時に対応ゲームとしていち早く発売された作品「獣王記」だ。独特の世界観を持つ硬派なアクションゲームで、未だにファンもいることと思う。WOW ENTERTAINMENTが制作中の新作はまだ謎が多いが、2004年にプレイステーション 2でリリースされる。グラフィックは当然隔世の感がある出来で、3D化されフィールドを自由に走り回ることができる。
獣人への変身はムービーで迫力満点の出来だ。白い息を吐くWEAWOLFに変身し、敵をなぎ倒していく様は圧巻なのだ。もちろん、発売までまだまだ間がある作品だし、今回のE3でも操作できなかったので詳しい感想を語ることはできないし、そもそもどういった仕様になるかは不明だが、特に往年のセガファンは完成を待っていてほしい。
【ALTERED BEAST】 | ||
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1分程度のごく短いムービーが常に上映されている。3Dになっているが、独特な世界観の雰囲気は決して変わってはいない。プレーヤーが獣人に変化し、白い息とともにほえるシーンは迫力満点だ。制作はWOW Entertainment。ちなみにムービーの最後にロゴと一緒に「2004」と表示されているのがおわかりだろうか? |
■ ガンガンと敵を撃ち抜いていく爽快感「VECTORMAN」
このほかにセガブースのプレイステーションソフトとしては、「VECTORMAN」などが面白そうなところだった。こちらは、ソニックとはまた違った正統派アクションゲームに仕上がっている。
【スクリーンショット】 | ||
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PS2で発売される「VECTORMAN」。マシンのデザインが硬派な未来警察のようでなかなか良い感じだ |
(2003年5月16日)
[Reported by 船津稔]
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