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Electronic Entertainment Expo 2003現地レポート次世代FPS「Far Cry」プレビュー |
会場:Los Angeles Convention Center
Ubi Softの子会社、独Crytekが現在開発しているアクションシューティング「Far Cry」は、ビデオチップの発表会などでたびたびテクノロジーデモとして使用された実績を持つゲームエンジン「Cryエンジン」を採用した初のゲームタイトルだ。本稿では2003年度のFPS界を担う同作のプレビューをお伝えしたい。
■ 次世代ゲームエンジン「Cryエンジン」を初めて採用したFPS
ゲーム全編このクオリティで展開される。この広大な島全域が戦場となる。山頂の少し手前に要塞があるのが確認できる。水面の表現にも注目 |
オブジェクトモデルも非常に細かい。ジャングルを見せられないのが残念だが、リアルなテクスチャで構築された熱帯樹をかき分けつつ進んでいくことになる |
これがスタート地点。周囲は鉄板で区画され、足下の鉄板には滑り止め加工が施されている。そう、ここは廃屋と化した空母の中なのだ |
同作が魅力的なのは、親会社にUbiを迎えたことで、グラフィックだけでなく、シナリオや敵AIにもじっくり力を注ぐことができ、その結果、無名デベロッパーのファーストタイトルながらいきなり高い完成度を誇るところだ。また、これは現在検討中ということだが、さらにアドバイザーとしてトム・クランシーを迎え、「Tom Clancy's Far Cry」に名前を変更することも検討しているという。まさに全面バックアップのもと発売されるわけである。
さて、「Far Cry」のストーリーはかなり独創的で、舞台設定もユニークだ。ゲームの舞台は、南太平洋にある孤島。かつて日本軍が軍港としていたところで、湾口には朽ち果てた航空母艦が体を横たえ、島の高台には古びた要塞が配置されている。
プレーヤーは腕の立つ元傭兵で、南太平洋に妻とふたりでバカンスに訪れたところを突然囚われてしまう。ゲームの目的は、基本的にこの島からの脱出にあるが、ストーリーを進めていくうちに、少しずつ謎が明らかになり、なぜ主人公はさらわれなければならなかったのか、その真相が明らかにされていく。
ゲームは、朽ちた船室から丸腰の状態からスタートし、ナイフを取得して敵を倒し、倒した敵の武器を取得してさらに奥に突き進むという展開で進んでいく。いわゆるリアル系のゲームではないため、比較的わかりやすい位置にアイテム類が落ちており、さくさく進んでいくことができる。
画面右下にはレーダーマップが配置されており、そこには自分と敵の位置が輝点として表示され、さらにそれぞれに視界範囲が扇状に表示されている。レーダーマップの隣には縦方向に伸びるバーが置かれ、自分と敵が近くなるとバーが上に上がっていく。バーが天井まで上がりきると敵に発見されたことを意味し、それ以降、敵を全滅させない限り彼らの攻撃は止まらなくなる。
同作の大きな特徴のひとつに敵AIの優秀さが挙げられる。このAIの凄さは、エネミーを発見すると仲間を呼び、次いで戦闘配置につき、隠れながら射撃しつつ、包囲体勢を敷いてじわじわと攻め掛かってくるところだ。デモを担当してもらったCrytekのプロデューサーが「怖いだろ? 怖いだろ?」とにやにやしながら言ってきたが、確かに怖い。このままでは確実に殺されるという自覚が芽生えた瞬間のわき上がる恐怖感が味わえるFPSはそうそうない。
FPS上級者なら「包囲してきた敵を適当に引きついてつるべ打ちにすればいいだけでしょ」と軽く考えたかもしれないが、そうはうまくいかないところが同作の凄いところだ。同作の敵AIは、パターンで行動するのではなく、周囲の状況に応じて適切な行動を取ってくる。具体的には相手からの死角を理解し、周囲のオブジェクトを活用して安全な位置に隠れつつ射撃のタイミングを狙ってくる。適当に立ち撃ちで処理しようなどと思おうものなら一方的に撃たれてしまう始末で、じっくり取りかからなければまったく前に進めないゲームだ。そういう意味では、同作は「Splinter Cell」より遙かにスニークアクションとしての要素が濃い作品だといえる。
また途中で入手できるデジタル式のゴーグルを使うことで、遠くにいる敵の会話を直接耳にすることができる。敵の話を聞かなくてもゲームはクリアできるが、敵の会話を丹念に集めることで、ストーリーに関わる情報や、そのエリアのウィークポイントなどを知ることができる。ただし、敵の会話を聞くためには、ゴーグル内に敵の姿を収めなければならず、匍匐前進でじわじわ敵の位置に寄っていくことになる。同作はこのようにスパイアクション的な楽しみもたっぷり用意されている。
ところで船室では、Cryエンジンのパワーをいきなり見せつけられることになった。広い船室につり下げられている電球を撃つと、傘が激しく揺れ、それに伴いライティングも同時に揺れ、さらにオブジェクトの影も光源の移動に従ってリアルタイムに形を変えて揺れ動いた。このダイナミックライティング(&シャドウ)処理は、いまやテクノロジーレベルでは当たり前の話になっているが、発売済みのタイトルでは「Splinter Cell」などまだ数えるほどしか存在しない。
続いて驚かされたのは、船室から外に出た瞬間の表現。船室は暗く、外は南太平洋の太陽が照りつける明るい空間で、こういう場合、現実世界では眩しく感じられるが、これをゲーム内で再現しているのだ。具体的には外に出た瞬間、前が真っ白になって視界が遮られ、視界が戻り真っ青な海と空が見えてくるといった案配で、非常にリアルな表現だ。
同作の優れたグラフィック技術は触れだすときりがないので、もうひとつだけにしておくと、同作には海や川、湖など多くの水面が登場する。水面にはリアルなさざ波を立たせると同時に、周囲のオブジェクトの映り込みをダイナミックバンプマッピングによってリアルタイム処理で表現している。これも強烈な3D表現だ。
ゲームモードは、Cryエンジンで磨き上げられた美しい南太平洋の孤島を舞台にしたシングルプレイキャンペーンが中心となるが、マルチプレイモードも用意するという。現時点ではまだ実装しておらず、話だけ聞いてきたが、シングルプレイマップで使われているジャングルや砂浜をアリーナ式に改良したマップを収録して最大32名対戦が楽しめるようにするという。同作の発売時期は今年の第4四半期が予定されている。
ライトのまぶしさにひるむ敵を撃つ主人公。いずれのカットも艦内ライトを使ったシーンだが、さびた鉄の表現が良くできている |
光と影の表現。ライトスポットの中心部は眩しいほどに明るく、外にいくほど光が弱まっている。右の画面は、中央にいる敵のズボンのしわに注目。丁寧にシャドウが配置され、実にリアルな陰影を作りだしている |
フィールドは広い意味で一本道となっているが、どこでどう戦うか、戦いを避けて進むかはプレーヤーの判断に任されている。ちなみに水中に入って泳ぎつつ進むことも可能 |
なお、本稿にて使用したスクリーンショットの原寸のものをZIP形式でアーカイブしたものを用意した。より高解像度となっているので、ダウンロードしてご覧いただきたい。
ダウンロードはこちらから
[ZIP形式:8.66MB]
□Ubi Softのホームページ
http://www.ubisoft.com/
(2003年5月16日)
[Reported by 中村聖司]
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