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Electronic Entertainment Expo 2003現地レポートMicrosoftブースレポート パート2 |
会場:Los Angeles Convention Center
Microsoftのゲーム事業の表の顔がXboxに象徴される派手な3Dグラフィック/サウンドとオンラインエンターテインメントの提供元とするならば、裏の顔はかつては同社のゲーム事業の柱だった「Flight Simulator」シリーズに代表される手堅いシミュレータ作品の提供元ということになるだろう。今年もMicrosoftは「Train Simulator 2」と「Flight Simulator 2004」の2本のシミュレータタイトルを出展。いずれもクオリティが高く、真の意味で新バージョンを迎えたという印象を受けた。さっそくその衝撃的な中身をご紹介していこう。
■ 今度は乗客となってのんびり旅ができる「Train Simulator 2」
脅威の2万ポリゴン機関車M1B。奥のプラットフォームには人が並んでいるのが確認できる |
北米市場での直接的なウリとしては、ペンシルバニア鉄道を1964年当時の風景で、蒸気機関車M1Bでペンシルバニア-ジョーンズタウン間を走行できるというところにあるが、仮に知らない人が見ても充分興奮できる内容に仕上がっている。
画像を見ればわかるように、列車のクオリティは前作に比べてまた一段と上がっており、たとえばM1Bは、前作平均の3倍相当となる2万ものポリゴンが使用されている。ペンシルバニアに保存されている実車をあらゆる角度から撮影し、「完全再現した」というM1Bの躍動感たっぷりの動きは感動的ですらある。勢いよく吹き上げる煙、蒸気の力を車輪に伝えるアームの反復運動など、外部ビューでは実に見応えある映像が繰り広げられる。
TS2は、こうした根幹部分はしっかりグレードアップしつつ、細かい箇所にもたっぷり手を加えている。たとえば、今回、運転室ビューは、「Flight Simulator」シリーズでお馴染みのバーチャルコクピットモードになっていて、左右上下自由に見渡すことができるほか、細かい計器類に目を通すためにズームインズームアウト機能まで搭載している。車内のアナログ計器を画面一杯になるように表示させても、表示が荒くならないほどに解像度が高く、見回す楽しみも充分だ。
そして今回何より衝撃的なのが、今回は乗客が存在することだ。客室に視点を移すと、客席に男女さまざまな服装をしたポリゴンキャラクタが座っており、ときおり乗客たちが車窓に視点を映したり、時計に目をやっている光景を目にすることができる。また、駅のプラットフォームには、列車を待つ人の群れができており、列車が止まるとまず列車から乗客がぞろぞろと降り、次いで待ち列が車内に吸い込まれていく。ここまでやるかというこだわりようだ。
この乗客の存在は、新しいゲームモードである「Passenger」モードのリアリティの向上に必要不可欠な要素だ。「Passenger」モードは、駅の始点から終点まで文字通り乗客となって、車窓や外部ビューで外の風景を堪能するというゲームモード。鉄道の旅を仮想体験するにはこれ以上ないゲームモードだ。ちなみに現在開発中の秩父鉄道は、日本人のテクスチャが別に用意されるという。公開が楽しみだ。
とはいえ、同作のメインは鉄道シミュレータとして、世界の鉄道の運航アクティビティに従って、さまざまなシチュエーションで運転を愉しむことにある。アクティビティモードで新しい要素としては車庫入れがある。停車場で細かく前進後退を繰り返して、ターンテーブルを回して正しい車庫にきっちり止めるという内容。車庫入れに関しては、これ単体のアクティビティになっているようだ。もちろん、坂道、降雨時、貨物過重時などでの列車のリアクションは、前作以上にリアルになっているということだ。
最後にインターフェイスについて触れておくと、「難しすぎる」という声を反映させて2個のキーで運転ができるシンプルモードを新しく搭載するという。もちろん、上級者は従来どおり、すべての操作をマウスとキーボードで行なうモードも搭載している。今回、中、上級者にとって楽しみなのは、バーチャル運転室モードで、レバーやハンドル、ブレーキを直接マウスドラッグで操作できるようになっているところだ。まさに全方位強化された強烈な鉄道シミュレータといえそうだ。
【車庫入れ】 | ||
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これが車庫入れシーン。左右画面の小屋の大きさの比較で、施設の広さが実感できるだろう |
■ 航空史100周年にふさわしい充実したフライトシム
「Flight Simulator 2004: A Century of Flight」
これが「Century of Flight」モードのトップ画面。ここから100年史を辿ったり、各名機の歴史を追ったり、はたまた実際に飛んでみたりすることができる。このモードだけで1カ月は楽しめそうだ |
Wether変更画面。「Heavy Snows」、「Thunderstorm」といったテーマをピンポイントで指定してもいいし、現実の気候をインターネットから取り込んで反映させることも可能 |
インターフェイスは電子辞書のエンカルタのようになっていて、テキストは用語類がクリッカブルになっていて、動画はウィンドウに埋め込まれたWindows Media 9の再生ボタンを押せばダイレクトに参照することができる。ウィンドウも一新して白を基調としたスッキリしたものとなり、ワシントンDCの航空宇宙博物館に設置してもそのまま利用できるようなクオリティだ。
もちろん、テキストと動画だけではなく、アメリカ航空史に偉大な史跡を遺した9つの航空機を、当時のシチュエーションで飛ばすことができる。ライト兄弟機では、着地した位置に札が立てられ、そこを目安に初飛行にチャレンジしたり、「Sprit of St. Louis」では、チャールズ・リンドバーグと同じシチュエーションで大西洋横断飛行にチャレンジすることができる。
「Sprit of St. Louis」は燃料タンクが前にあるため、前方視界がまったくふさがれていて、バーチャルコクピットモードで首を左右に振らないと前が見えなかったり、燃料満載の状態は重すぎてなかなか飛び立てずにどきどきしたり、実際に搭乗してみないとなかなか気づかない要素を実感できて非常に楽しめた。このわくわくできる感覚はFSシリーズでも久々ではないだろうか。
ゲーム全般の改良点としては、なんといっても雲の表現が劇的に進化したことだろう。雲を突き抜けて飛ぶ楽しさ、雲を避けて上昇する感じがリアルに味わえる。ちなみにこの空の表現の進化は雲単体だけではなく、太陽光の表現や、雷雲などにも及んでいる。
また、フライトシミュレータとしての新要素としては「Dynamic Whether System」が魅力的だ。従来、1フライトでは固定だった天候が、エリアの位置によってダイナミックに変化するようになっている。フリーフライトモードで、ユーザー側で細かく指定することも可能。指定の仕方がユニークで、寒冷前線や温暖前線をマップ上に直接配置する。すると、フライトの際に、前線をまたぐと天候が変わるという仕組み。スコールの類など、もっとピンポイントに配置させることも可能。フライトシミュレータとしては来るところまで来たという印象だ。
ちなみにグラフィックエンジンは、完全に新開発のものを採用しているという。雰囲気としては「Combat Flight Simulator 3」に近いが、地表の遠近の表現がまったく異なっている。CFS3のように外部ビューで視点をぐるりと回しただけで遅延が発生するようなことはなく、周囲数キロの範囲は精細に描画され、それより奥は地表のテクスチャやオブジェクトは適当に間引きされて表示され、良好なパフォーマンスを維持すると同時に、実写の雰囲気により近づいている印象だ。
外部ビューで自機を写した場合も同様で、機体のポリゴンデータそのものは、前作「FS 2002」よりもさらに高くなっているにもかかわらず、遠影の場合は自動的に解像度を下げているためすこぶるパフォーマンスがいい。何もかも高解像度にすればいいわけではないというCFS3の反省が活かされているのだろう。
ちなみに世界マップのデータは、GPSデータをベースにすべて見直され、主要空港のデータなども同様に手が加えられている。適当に成田空港を見せてもらったところ、前作とはうってかわってすこぶるリアルな情景に変わっていた。同作はシミュレータとして、エンターテインメントとしてまたひとつ階段を上った印象だ。
【Flight Simulator 2004: A Century of Flight】 | ||
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地表データの美しさ、滑らかさ、空の自然な表現。山脈の隆起した感じなど、強化された箇所は枚挙にいとまがない。場面ごとに異なる雲の形にも注目したい |
□Microsoft Game Studiosのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
(2003年5月15日)
[Reported by 中村聖司]
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