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「ソウルキャリバーII」インタビュー
~ 3プラットフォーム移植の実際~

2月27日インタビュー



 プレイステーション 2、ニンテンドーゲームキューブ、そしてXboxと3つのプラットフォームにて3月27日に同時発売される株式会社ナムコの「ソウルキャリバーII」。そのグラフィックエンジンなどの開発を手がけたプログラマの小保田氏に、3ハード同時開発にあたってのエピソードをお話しいただいた。



株式会社ナムコ ソウルキャリバープロジェクト ダークサイドプログラマー 小保田宏幸氏
●分業制はアーケード版の開発からスタート

--今回、アーケード版の制作中に、家庭用が3機種同時に発売されることが決まっていたと思うのですが、プログラマスタッフはどういった構成で作業されていたんでしょうか?

小保田氏(以下小) プロデューサーの世取山(氏)いわく、OSのようなもの=ライブラリを作る人と、ゲームの部分を作る人を分けようと。この体制は業務用の開発が始まったときに決まりました。

 今まではスタッフ全員が一枚岩で作ってたんですが、「ちょっと作業方法として古いんじゃないか」という話になっていまして。家庭用の話はまだ決まっていない時期で、業務用の開発当初から分業体制にしようという話だったんです。

--移植が決まる前に、スタッフを分業制にした理由はどんなところにあるのでしょうか?

小 以前の体制では、誰もが同じハードウェアを触れるとなると、いろんなところに同じコードが出てきちゃうんですよ。この人用の同じことをやるコード、この人用の同じことをやるコードというように。トータルの作業量で考えると、その部分はムダになる。少しずつプロジェクトの規模が大きくなるにつれて、作業効率を重視した結果ですね。

 それから、知識的なものも理由のひとつですね。ハードウェアがだんだん高度になってきて、ただポリゴンを1枚画面に表示させるといったところから、プログラマ全員がイチから学んでコードを書くというのは時間的にももったいないので、そういうところを手法的に、知識レベルでまとめておくということは重要だと思います。

--グラフィックエンジンの開発は、全体的な工程からすると早めに作業を始めて終わるんですか?

小 グラフィックエンジンの設計というものは、デザインの作業に直接関わることなので、デザイナーが制作したものが、どう画面に出るかがわからないとデザインできないという部分があって、(グラフィックエンジンを)先行して作ってました。だから、家庭用のプロジェクトの半ばくらいには、ほとんどできてる状態なんです。「こうなりますよ」っていう形で、見た目にはほぼでき上がっているという感じまでは早い段階で追い込みますね。1月に発表会を開催した時点で、見た目にはもうみんなわからないくらいのところまでは作業は終わっていました。


●遊び心のあるPS2、無駄のないGC、パワーのXbox

--今回、ハードウェアに関していろいろ違いがあると思うんですが、それぞれどんなイメージを持たれましたか?

小 PS2は、ある意味「アジアっぽいハード」ですね。ハードウェアそれぞれにすごいポテンシャルがあって、一見統率が取れてないんですけど、その統率を取ることがプログラマの役目なんですよ。そういう意味で、プログラムの面白さが詰まってる、すごく遊び心がある。「難しい」といわれるとそれまでなんですけど、面白いって言い方をすればすごく面白いハード。それゆえに、“探究心のある開発者”を捕らえやすいハードかなって気がします。こういうことって、ハードウェアを作る上で面白い重要性ですよね。ただ作りやすいだけじゃなくて、あえて挑戦的なハードウェアにしてるという感じがします。

 GCは、「ヨーロッパっぽい」というか、老練なハードですね。長年ゲーム機を作ってきたメーカーならではのムダのなさがあります。ゲームに必要なものが、ホントに必要なところにちゃんと置いてあって、メモリの特性とか、使いやすいものが多いんです。スペックの数字だけではわからない、一回使ってみると、「性能いいなぁ」というところがあるんですよ。贅肉のようなものが何もない素晴らしいハード。月並みな言い方だと「バランスがいい」と言えると思いますね。

 Xboxは使っても見た目もそうなんですけど、圧倒的なパワーがありますね。そのパワーを余らせておくのはもったいないので、D4に対応したりとか、フルシーンアンチエイリアスをかけてみたりしています。これからのゲーム機はたぶん、性能的にも何にしてもXboxを基準にして作られるのではないでしょうか。

--今回、家庭用への移植ということで個人的に気になったのは、GC版がディスク1枚に収まっているということです。他の2機種に比べてディスクの容量が仕様上控えめになっているということで、1枚に収めるのは、相当苦労されたのではないかと勝手に想像したのですが?

小 容量を占めているのは、やっぱりムービーとか音とかなので、「バランスが調整できないか」といわれると、できなくはないですね。今回、GCディスク1枚の容量ギリギリなんですけれど、入らなくはなかった。そういうところを調節すれば。ハードの特性上、データの圧縮はやりやすいので、そこを生かしていろいろと縮めてます。そのお陰で、結果として収まりました。

【ソウルキャリバーII】
ニンテンドーゲームキューブ版 Xbox版 PS2版

●ツールの利用で効率化

--今回開発にあたってどのようなツールを使用されたか教えていただければと思うんですが。

小 3Dのモデリングは「Maya」を使ってます。モーションの作成は「SOFTIMAGE」、テクスチャ素材の作成は「Photoshop」ですね。デザイナによっては「Painter」などを使っている人もいます。2D画像の圧縮・減色※1には「OPTPiX iMageStudio」を使ってます。

--ツールを使うということで、どれくらい効率よくなるものですか?

小 「OPTPiX iMageStudio」はあるスタッフの薦めもあって「ソウルキャリバー」の開発当初から採用していたツールなんです。当然各プラットフォーム向けにいろいろ最適化されているので、元の絵さえちゃんと作ってあればどんどんテクスチャを作れますし。結果かなりキレイに画面に出てますからね。その点で、安心できますね。

--個人的に「『SC』って色がキレイだな」というイメージがすごくあるんですが、具体的にどこがどう違うからキレイに見えているんでしょうか?

小 うちのゲームは「グラフィック的には贅沢にいこう」ということで、贅沢な作りになっています。たぶん一番の違いは、テクスチャをすごく使えるようにしてるってところですね。

--それはデータ量的にということですか。色数的にということですか?

小 デザイナーが好きなだけ使えるように作ってあります。好きなだけといっても、速度的な制限はありますけど、「パワーのある限り使ってください、容量の許す限り使ってください」というふうに作ってあるのが他と一番異なる点ですね。ライティングの制御とかもすごく細かくやってますので、そういうひとつひとつの細かい積み重ねによって、綺麗に見えているのだろうと思います。

--アーケード版のときでも、処理に負担がかかっていたステージなどがあったと思うのですが、家庭用で新しいステージも追加されたりとかしてますね。家庭用では全般的な処理が軽くなったりしているのでしょうか?

小 少しは軽くなった、というくらいですかね。家庭用ならではのプログラムを追加しますので、どうしても普通のゲームでもちょっと重くなってしまいます。その重くなった部分をどこかで軽くする必要があるので、チューニングはしてます。でも、テクスチャやポリゴンレベルでの、デザイン的に軽くしたところはありません。

--テクスチャの話を続けてお伺いしますが、解像度の高いものからそうでないものも含めて制作されている今回の家庭用のデータ作成は、今までとは違った苦労はあったのでしょうか? 例えばPS2だと、S3TCテクスチャ※2が使えなくて、他の2機種は使えるじゃないですか。そうすると、制作されたテクスチャを各ハードに渡すときに、やっぱりOSのようなもの=ライブラリに渡すときに、PS2に渡すのは原色テクスチャで、GCやXboxで使うときはS3TCを使う、といった使い分けはされてるんでしょうか?

小 そうですね、エクスポーターが受け取るテクスチャがその機種にあったテクスチャになっているというのが正確な表現です。もう、Mayaのシーンの時点で、PS2用のシーンと、Xbox用のシーンと、GC用のシーンというのが、厳密に言えば分かれているという感じなんですよ。要するにiMageStudioで最適化したデータを、デザイナはシーンとして見てるんですよ。Maya上で。だから、そのエクスポーターとか、グラフィックエンジンが勝手にデータを変換するという形ではないんですよ。あらかじめ、そうやって作業をしてもらってるっていう感じです。

--ツールの段階でそうして、それぞれの機種用にデータを生成したものを、後から普通の目では見てるっていう形になってると。

小 そうですね。

--一番最初の加工前のテクスチャからして違うわけですよね。例えばXboxだとD4対応だから解像度から違ったり。

小 そうですね。それはありますが、基本的には、例えばミップマップをオン※3にすれば、ほぼ自動的に解像度に対して必要なテクスチャが対応してくれるわけです。ある程度はそういうところを、(ハードに)任せないと作業量的に爆発してしまうんで(笑)。乱暴な言い方をすると、たとえD4でもテレビの大きさが変わらないので、テクスチャ1ドットに占める人間の見える割合もあまり変わってない。表示する解像度が上がっても、テクスチャの解像度を変えなくても、あんまり見え方は変わらないんですよ。

 むしろジャギーが目立たなくなるところが大きい。確かにテクスチャの柄などが細かく見えるようにはなるんですが、それが一番大きいです。元々アーケードの29インチのモニタで見てキレイに見えるように作ってあるので、D4にしたからといっても、それほど変わらないです。


--最後にこの記事を読んで頂いている方に、一言お願いできますか?

小 正直、私が担当しているパートは、見た目でわかるという内容ではないんですよね。皆さんが当たり前だって思っているところが、私の仕事なので。違和感を感じない=成功してるんですよ。そこが私のような層の一番の喜びというか。みんな当たり前だと思ってくれてるなというところが、一番うまくいってるという。3機種買ってもらって、じっと見比べてもらえると、細かな違いはいろいろとあると思うんですが、そこまでわかったらすごいなーとは思うんですが。

--ありがとうございました。

※1……特にメモリ周りがシビアとなるコンシューママシンの場合、色数を減らしつつ、キレイなグラフィックを実現する圧縮技術が必要となる。とくに、ポリゴンに貼り付けるテクスチャは色数を少なくすることで少ない容量で美麗なグラフィックを実現することが要求される。「減色」も同義。

□OPTPiX iMageStudioの情報
http://www.webtech.co.jp/istudio/

※2……S3TCテクスチャは、グラフィックカードベンダーであるS3社が独自に開発したテクスチャ圧縮技術。テクスチャデータを最大6分の1に圧縮できる。S3TCは、MicrosoftのDirectXにも採用され、S3TCを利用すればメモリを消費せずに、大きなテクスチャを格納することが可能になる。

※3……ミップマップとは、同じ画像を徐々に低解像度にした、連続したテクスチャデータを用意し、カメラの視点から近いオブジェクトには、高解像度ミップマップ画像が使用され、オブジェクトが遠ざかるに従って、低解像度のミップマップ画像が使用されるという処理。これにより、レンダリングしたテクスチャの品質が向上するが、使用するメモリは増加する。

 <GC版著作権表記>

(c)1995 1998 2002 2003 NAMCO LTD.
The Legend of Zelda : (C) 1986-2003 Nintendo
The Character named "Necrid" is created and designed by NAMCO as the derivative work of the Illustration drawn by Todd McFarlane Productions, Inc.
The Character: (C) 2003 by Namco Limited. All rights reserved.
Illustration: (C) 2003 by Todd McFarlane Productions, Inc. All rights reserved.

<PS2版著作権表記>

(c)1995 1998 2002 2003 NAMCO LTD.
The Character named "Necrid" is created and designed by NAMCO
as the derivative work of the Illustration drawn by Todd McFarlane Productions, Inc.
The Character: (C) 2003 by Namco Limited. All rights reserved
Illustration: (C) 2003 by Todd McFarlane Productions, Inc. All rightsreserved.

<Xbox版著作権表記>

(c)1995 1998 2002 2003 NAMCO LTD.
Spawn(R), and its logo are registered trademarks of Todd
McFarlane Productions, Inc.The Spawn character is (c)1992 Todd McFarlane Productions, Inc. All rights reserved.
The Character named "Necrid" is created and designed by NAMCO as the derivative work of the Illustration drawn by Todd McFarlane Productions, Inc.
The Character: (C) 2003 by Namco Limited. All rights reserved.
Illustration: (C) 2003 by Todd McFarlane Productions, Inc. All rightsreserved.

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□製品情報
http://www.namco.co.jp/home/cs/lineup/soulcalibur2/index.html
□ナムコ公認「ソウル」シリーズファンサイト「ソウルアーカイブ」
http://www.soularchive.jp/
□【連載】ソウルキャリバーIIプレイヤーズガイド
http://game.watch.impress.co.jp/docs/backno/rensai/sc2/

(2003年3月24日)

[Reported by 佐伯憲司]


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