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Taipei Game Show 2003現地レポート
Gamania CEO 劉柏園氏インタビュー |
Gamania Digital Entertainmentは、平均年齢26歳と非常に若い会社だ。同社を引っ張るCEO 劉柏園(Albert Liu)氏もまだ32歳と、最高経営責任者としては驚くほど若い。面持ちはまさに精気みなぎるといった印象で、声は野太く、笑い声も豪快。失礼を承知でいえば「三国志」時代でも一国の将になれそうな豪傑の雰囲気を感じさせてくれる方だ。
元々はプログラマーで、自分で開発したゲームソフトで数百万台湾元の利益を上げ、25歳の時にこれを元手にゲーム会社「富峰群企業」を設立。'99年に社名変更し、今に至っている。同氏は、現在、中国を中心に東アジア各地を飛び回る日々を送り、社内にいることはほとんどないという。
インタビューは、同社のミーティングルームで行なわれた。豪快な笑い声が良く響く総石造りの部屋で、個人的に今回のインタビューで台湾市場におけるMMORPG大流行の謎がすべて氷解した気がする。すべての元はコピー製品の氾濫にあったというのだ。
■ 台湾MMORPG市場の55%を占めるGamania Digital Entertainment
Gamania CEO 劉柏園(Albert Liu)氏 |
劉柏園(以下、劉) もともと台湾のゲーム市場は小さなものだったが、オンラインゲームの登場後は、劇的な変化を遂げた。具体的な数字を挙げると、4年前は5億台湾元(約20億円)だった市場が、去年は40億台湾元にまで成長した。年間200%近くの成長を遂げていることになる。この成長はまだまだ続くだろう。
編 それは日本市場から見ると大変うらやましい話ですね。現在、Gamaniaさんは台湾市場での大きさはだいたい何番目ぐらいなのでしょうか?
劉 一番大きな会社に成長することができた。シェアでいうとGamaniaだけで55%だ。
編 なるほど。ところでMicrosoftは、台湾でも「Age of Empires」シリーズをはじめ、いくつかのヒット作を出してます。今年はXboxを大々的に出展していますね。同社の台湾での存在についてどのように捉えていますか?
劉 Microsoftについては2通りの考え方がある。ひとつは優秀なタイトルラインナップを擁した強力なライバル、もうひとつはXboxという新しいゲームハードウェアを軸にした新しいパートナーだ。
やはりPCゲームに関しては、ライバルという認識は変えられない。Microsoftは優秀なオンラインゲームを数多く抱えている。ただし、純粋にMMORPG分野に関してはMicrosoftの存在はほとんど意識していない。ただし、Xbox分野で見た場合は、将来においてGamaniaが台湾でXboxタイトルを出す可能性もあるから、今後新しい協力関係を結ぶことも考えられるだろう。
編 とすると、現時点ではまだGamaniaはXboxタイトルを出すことはないということでしょうか?
劉 ううむ、それは難しい質問だ(笑)。すでにソニーのプレイステーション 2とのパートナー関係もスタートしているし、Xboxについてもその動きはある。近い将来にXboxタイトルを出すこともあるかもしれない。いずれにしても現時点でははっきりいえない。
編 昨年、日本法人では「エターナルカオス」1タイトルだけでした。台湾ではどのような動きがあったのでしょうか?
劉 2003年第一四半期までで運営しているMMORPGは6種類ある。「リネージュ」、「Hellbreath」、「エターナルカオス」、「Cococan」、「巨商」、「EverQuest」の6つだ(βテストを含む)。
編 「リネージュ」の成功ぶりはよく伝えられるところですが、そのほかのタイトルはいかがですか?
劉 今年に入って運営開始した「Cococan」の調子が一番いい。これは誰でも手軽に遊べるということもあり、運営から10日で、同時アクセス1万人を突破し、現在19台のサーバーが稼働している。それから「巨商」も1週間で、同時アクセス7,000人を獲得した。
「EverQuest」は1週間で同時アクセス2,200人を突破した。人数としてはそれほどでもないが、同作の世界展開の中でもっとも成績のいい数字だ。
編 なるほど。いまお話しがあったように台湾ではMMORPGの調子が軒並みいい状態が続いています。まるで出れば必ずヒットするかのような。この人気の秘密はどこにあるのでしょうか?
劉 台湾ではもともと(シングルプレイ)RPGの人気が高かったという事情がひとつある。そして、台湾では昔からエンドユーザーの間でコピー製品に対する問題意識が薄いところがあり、RPGはコピー版でやればいいといった認識が広まっていた。しかし、市場のメインがオンラインゲームに変わった時に、コピー問題の代わりに、友人との結びつきというメリットだけが浮上し、1人がやれば2人、3人と、いわば芋づる式にユーザーを集めることができた。
編 非常に興味深い話ですね。それはつまり、台湾市場で海賊コピー製品が氾濫しているという下地があったことが、今日のMMORPGの流行に繋がったということでしょうか?
劉 そういう側面は確かにあると思う。大陸(中国大陸)もコピー製品が氾濫しているが、最近の状況を見ていると、その考え方は正しいようだ。また、MMORPGならコピー問題も起こらないため、契約しやすいということもある。
ただ、付け加えておくと、MMORPGには、シングルプレイ専用のRPGにはない魅力がたくさんあるし、シングルプレイ専用のRPGの市場規模自体がだんだん小さくなってきて、やるゲーム自体がなくなっていることも挙げられる。我々もユーザーの支持を得続けるために新しいMMORPGを造らなければならない。このような事情もすべて踏まえて、現在のMMORPGの流行があると思う。
編 先ほど6本のタイトルを上げていただきましたが、多くがライセンス製品ですね。Gamaniaはいまや台湾トップのゲームメーカーに成長したわけですが、台湾から世界に発信できるような大規模なMMORPGを開発するプランなどはないのですか?
劉 ライセンス製品が多いのは確かだが、我々は販売代理業務を事業の中心にしており、これを軽視して大規模なMMORPGを開発することはありえない。また、「Cococan」は完全に自社開発製品だし、「巨商」も韓国の子会社が開発したもので、開発を放棄しているわけではない。現在、コミカルなMMORPG「ノアズアーク」を開発している。こうした開発技術は新しい提携先とパートナー契約を結ぶ際に有利に働くこともある。開発も重視していることを理解してほしい。
編 今後のGamaniaの展望について、話せる範囲内でお聞かせください。
劉 現在プロジェクトネームで「氷河プラン」というものが夏に向けて動いている。MMOG(Massively Multiplay Online Game)の考え方を大きく変えるものになるのではないかと考えている。これは一言でいうとカジュアルゲームで、現在アジアではMMORPGが流行しているわけだが、ここにそれを持ってくることで、「Gamania.com」というブランドを大きく育てたいと考えている。
この意義はMMOGというジャンルをアジアで根付かせたいということがある。通常、MMORPGの開発には2年ぐらいかかり、コストも膨大になるが、我々が考えているのは半年の期間で、半分のコストで、市場を大きく揺るがすエンターテインメントを提供することだ。
編 それは正式発表が楽しみですね。ところで昨年、日本で「エターナルカオス」の正式サービスが始まりましたが、予想よりも苦戦しているという印象を受けました。この点について台湾ではどのように分析していますか?
劉 確かに「エターナルカオス」は日本では必ずしも成功しなかった。しかし、それでも私は失敗だとは言い切れないと考えている。このプロジェクトを行なうことで我々が得た無形の利益は非常に大きいものがあったからだ。具体的には流通チャンネルの開拓、MMORPG運営のノウハウ、スタッフの教育などが上げられる。
一方、ゲーム内容そのものについて分析すると、日本のユーザーの好みに合致しなかったと捉えている。台湾でも3DグラフィックのMMORPGということで、快適に動かすことができなかったり、まったく動かない機種もあり、同様に苦戦している。日本ではまた新しく「巨商」をリリースする。私はこれに期待している。
編 昨年、韓国Gravityから「ラグナロクオンライン」という可愛さを前面に押し出したMMORPGがリリースされ、日本と韓国、そして台湾でも高い人気を集めました。韓国では、ユーザーレベルでは「リネージュ」をしのぐ人気だと伝えられています。同作についてどのような感想をお持ちですか?
劉 台湾でも悪くはない状況だと聞いている。我々の「リネージュ」で培ってきた運営ノウハウがうまく利用されているようだ。現時点では「ラグナロクオンライン」によって「リネージュ」の市場はびくともしていないが、そこそこの人気を集めるということは、市場にそれだけの隙間があったということだろう。
転じて日本市場に目を移すと、「ラグナロクオンライン」のような日本風の可愛いキャラクタのゲームが日本で受けることは認識していたが、10万を超えるユーザーを集めるとは予想もしていなかった。この結果を聞いて私も大変興奮した。Gamaniaが日本市場に参入したことは間違っていなかったと確信した。我々も可愛らしさを前面に押し出したMMORPGをリリースする予定だ。
編 ブームには一定の周期があると言われます。台湾でのMMORPGブームはいつまで続くと考えていますか?
劉 確かに現在台湾市場ではMMORPGがトレンドのひとつになっているということはいえると思う。そして、このトレンドには終わりはなく永遠に続く。新しいデジタルエンターテインメントとして、これからも台湾だけでなく、中国、香港などでも大いに成長していくはずだ。
編 これが最後の質問になります。これはあえて経営のことを無視してお答えいただきたいのですが、AlbertさんにとってベストなMMORPGとはどういったものでしょうか?
劉 まず、RPGであること。ストーリーがあって、インタラクティブ性の高いものがいい。将来的な予測でいうと、スポーツを題材にしたオンラインゲームもいくつか登場するだろう。これについても注目している。
編 あまりにぼんやりとしたお答えですね。具体的にどんなMMORPGが好みですか?
劉 ううむ、これはあまり記事にして欲しくないが、私自身はMMORPGはあまり好きではない(笑)。個人的に好きなゲームはスタンドアロンタイプのゲームで、具体的にはコーエーの「三國志」シリーズが好きだ(笑)
編 いやはや、ある意味とてつもない爆弾発言ですね(笑)。好きなナンバーはいくつですか?
劉 良い質問だ、確かに「三國志 VIII」など最近のシリーズはおもしろくない(笑)。個人的に最高だと思うのは「三國志 VI」だ。システムも個性的だし、内容もこれまでのシリーズと大きく変化した。もっともよく遊んだゲームだ。
編 「三國志」ファンとは意外でした。それでは長時間ありがとうございました。
□Gamania Digital Entertainmentのホームページ
http://www.gamania.com/
(2003年2月24日)
[Reported by 中村聖司]
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